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新宿の夜: Kevin Poh, https://goo.gl/kgS4Zi, licensed under CC BY 2.0

ユニット 1 資本主義革命

  • 1700年代以来、多くの国の経済生活では、平均生活水準の上昇が永続的な特徴となった。
  • これは、資本主義という新しい経済システムの台頭のおかげだ。そこでは私有財産、市場、企業が大きな役割を果たす。
  • この経済を組織する新しいやり方の下で、技術進歩と生産物や作業の特化が一日の作業で生産できるものの量を増やした。
  • このプロセスは資本主義革命と呼ばれる。これは自然環境への脅威を高め、空前の世界的な経済格差ももたらした。
  • 経済学は、人々がその生活資材を作り出すにあたり、他の人々や自然環境とどんなふうに相互作用するかを研究する。

 14世紀にモロッコの学者イブン・バトゥータはインドのベンガルについて「広大な国であり、そこでは米がきわめて豊富である。いやまさに、私は世界で食糧供給がこれほど豊富な地域は見たことがない」と描写している。

イブン・バトゥータ (1304–1368) はモロッコの旅行者兼商人だった。かれの旅は30年にわたるもので、北アフリカと西アフリカ、東欧、中東、南アジアと中央アジア、そして中国にまで足を伸ばしている。

 そういうイブン・バトゥータは、世界の相当部分を実際に見ていた。中国、西アフリカ、中東、ヨーロッパに旅をしていたんだから。その3世紀後、17世紀のフランスのダイヤモンド商人ジャン・バプティスト・タヴェニエールもベンガルについての記述の中で、同じ気持ちを述べている:

 一番小さな村ですら、米、小麦粉、バター、牛乳、豆などの野菜、砂糖や、固形や飲料を問わず甘味類が豊富に調達できる。1

Jean Baptiste Tavernier, Travels in India (1676). 

 イブン・バトゥータが旅した頃のインドは、世界の他の部分よりも豊かというわけではなかった。でもそんなに貧しくもなかった。当時の観察者なら、人々は平均で見れば、日本やインドに比べてイタリア、中国、イングランドでのほうが豊かだとわかったはずだ。でもその旅人は、どこへ言っても金持ちと貧乏人とのすさまじい差に気がついたはずだ。その差のほうが、地域ごとの差よりもずっと激しかった。金持ちと貧乏人はしばしば身分もちがった。場所によっては封建領主と農奴、あるいは王侯貴族とその臣民、奴隷所有者と奴隷、商人とその商品を運ぶ船乗りたちとなる。当時は——今もそうだけれど——人生の先行きは、両親が経済のはしごでどの位置にいたか、そして男か女かで決まった。14世紀と今日とのちがいは、当時は世界のどの地域で生まれるかは、今ほど豊かさに大きくは影響しなかったということだ。

 時は変わって現在。インドの人々は、食糧、医療、住居、生活必需品へのアクセスで見れば、7世紀前よりははるかによい生活を送っている。でも世界の基準から見れば、その大半は貧困だ。

 図 1.1aでその一端がわかる。各国の生活水準を比べるときには、一人あたりGDP という指標を使う。人々は、財やサービスを生産して売ることで所得を得る。GDP (国内総生産) は一定期間 (たとえば一年間) に生産されたあらゆるモノの総価値なので、一人あたりGDPは平均年間所得に対応する。GDP はまた、国内総所得とも呼ばれる。図 1.1aでは、それぞれの折れ線グラフの高さは、横軸の時代における平均所得の推計値だ。

歴史のホッケースティック

5カ国の国内総生産 (GDP) 推移 (1000–2015)

図 1.1a 歴史のホッケースティック: 5カ国の国内総生産 (GDP) 推移 (1000–2015)

Jutta Bolt and Jan Juiten van Zanden. 2013. ‘The First Update of the Maddison Project Re-Estimating Growth Before 1820’. Maddison-Project Working Paper WP-4 (January). Stephen Broadberry. 2013. Accounting for the great divergence. 1 November. Conference Board, The. 2015. Total Economy Database.

 この見方だと、イギリスの人々は平均でインドの人々の六倍よい生活を送っている。日本人はイギリス人と同じくらい豊かで、14世紀も両者は同じくらいだったけれど、いまやアメリカ人は日本人よりもっと豊かで、ノルウェー人はそのさらに上を行く。

 図 1.1a のグラフが描けるのは アンガス・マディソンの研究のおかげだ。マディソンは、人々が過去千年以上にわたりどう暮らしてきたかについて、まともな比較を行うのに必要な乏しいデータを、生涯をかけて探しつづけてきた (かれの研究は マディソン・プロジェクトに引き継がれている)。この講義の中で、世界各地と、そこに住む人々についてのこうしたデータこそが、あらゆる経済学の出発点だということがわかるはずだ。次のビデオでは、経済学者ジェームズ・ヘックマンとトマ・ピケティが、データ収集こそ自分たちの経済格差やそれを削減する政策に関する研究の基盤となったことを説明している。