鼻うがいのやり方と効果、注意点を耳鼻科医が解説
鼻うがいの目的と、当院でおすすめする理由
鼻腔内には、吸い込んだ異物を粘液でとらえ、線毛運動で外へ運ぶ働きがあります。粘り気のある鼻水、花粉、ほこり、かさぶたなどが多いときに鼻うがいを行うと、鼻をかむだけでは取り除きにくいものを洗い流し、鼻粘膜を清潔で潤った状態に保ちやすくなります。
粘い鼻水、花粉、ほこりを洗い流す
鼻をかんでも残るネバネバした鼻水、後鼻漏、花粉、ハウスダスト、かさぶたなどを物理的に洗い流します。鼻粘膜を湿らせ、ムズムズ感や鼻の奥の不快感を軽くする目的でも行います。
風邪を繰り返す方の予防的セルフケア
鼻は呼吸器の入り口です。鼻腔内に付着した細菌やウイルス、分泌物を物理的に洗い流すことで、感染リスクの低減が期待されます。当院では、風邪を繰り返す方や風邪を予防したい方にも、手洗い、十分な睡眠、加湿などと組み合わせておすすめしています。
花粉症・アレルギー性鼻炎
鼻から入った花粉やハウスダストなどのアレルゲンを洗い流し、鼻水、鼻づまり、ムズムズ感などの症状を和らげます。症状が強い場合は、点鼻薬や内服薬など必要な治療と組み合わせます。
副鼻腔炎・上咽頭炎
粘り気のある鼻水や膿性分泌物を洗い流し、鼻腔から上咽頭を清潔に保ちます。慢性副鼻腔炎や副鼻腔手術後では、生理食塩水による鼻洗浄が補助療法として推奨されています。
鼻うがいは、このような方におすすめしています
- 風邪を繰り返す方、風邪の予防をしたい方
- 花粉症・アレルギー性鼻炎のある方
- 後鼻漏、粘り気のある鼻水が気になる方
- 副鼻腔炎になりやすい方、慢性副鼻腔炎や副鼻腔手術後の方
- 慢性上咽頭炎のある方、EAT(Bスポット療法)を受けている方
- 鼻づまりや鼻の奥の不快感がある方
- 感染症のあとに鼻症状や後鼻漏が続いている方
感染症と鼻うがいに関する報告
新型コロナウイルス陽性後の高リスク成人を対象とした研究では、診断後早期から1日2回の鼻洗浄を行った参加者で、入院または死亡が少なかったと報告されています。鼻うがいは、感染予防を意識した日常の鼻腔ケアとしても、感染後の上気道ケアとしても活用できます。
| 症状・病気 | 位置づけ | ポイント |
|---|---|---|
| 慢性副鼻腔炎・術後 | 推奨される補助療法 | 成人では、スプレーよりも十分な量で洗う方法が有効なことがあります。 |
| アレルギー性鼻炎 | 補助療法 | アレルゲンの洗浄と症状緩和が目的。必要な薬は自己判断で中止しません。 |
| 上咽頭炎・EAT治療中 | 補助的セルフケア | 上咽頭付近の分泌物を洗い流し、粘膜を加湿する目的で行います。 |
| 風邪を繰り返す方 | 予防的セルフケア | 帰宅後や就寝前などに鼻腔内を洗浄し、手洗い・加湿・休養と組み合わせます。 |
鼻うがい器具の選び方|量と使いやすさで選びましょう
鼻うがい器具には、少量を手軽に使える製品から、ボトルを押して十分な量で洗う製品まであります。特定の製品でなければ効果が得られないわけではありません。洗浄量、ボトルの握りやすさ、ノズルのフィット感、手入れのしやすさを比べ、無理なく続けられるものを選びましょう。
| 容量の目安 | 現行ページで紹介している製品例 | 選び方のポイント |
|---|---|---|
| 少量 約20~50mL |
ハナノア(口から出すタイプ:約20mL)、ハナノアシャワー(50mL)、チクナイン鼻うがい(50mL) | 携帯しやすく、少量から試したい方に向きます。洗浄量が少ないため、粘い鼻水やかさぶたを十分に流したい場合には物足りないことがあります。 |
| 中量 約60~150mL |
ナサリン、ハナクリーンS | 持ちやすさと洗浄量のバランスを取りやすいタイプです。製品によって注射器型、ピストン型など操作方法が異なります。 |
| 大容量 約200~300mL |
フロー・サイナスケア、サイナス・リンス、ハナノアデカシャワー、ハナクリーンα、ウォーターパルス、EMSハナ通り | 慢性副鼻腔炎や術後などで、より広く洗浄したい場合に選ばれます。容量が多くても、強い水圧をかける必要はありません。 |
| 特大容量 約380~480mL |
ハナオート、サイナス・リンス メガボトル | 1回に多くの洗浄液を使えるタイプです。必要性や使用感には個人差があり、術後は担当医の指示を優先します。 |
ハナノア
専用洗浄液をそのまま容器へ入れて使うため、食塩水を作る手間がなく、携帯しやすい少量タイプです。鼻から入れて口から出すタイプは1回約20mL、反対側の鼻から出すシャワータイプは両鼻で約50mLが目安です。
洗浄液は体液に近い浸透圧で、グリセリンやミント系の香料などが配合されています。鼻へしみにくく、使用後に爽快感があることが特徴です。
製品ごとに使い方や対象年齢が異なります。使用前に説明書を確認し、上を向かず、勢いよく吸い込まないでください。
チクナイン鼻うがい
50mLの専用容器に、専用原液を表示どおりに薄めて使う少量タイプです。左右の鼻へ半量ずつ使用するのが目安で、持ち運びやすいサイズです。
炭酸水素ナトリウムを配合した弱アルカリ性の洗浄液で、ちくのう症・副鼻腔炎などで、かんでも残る粘り気のある鼻水や膿を洗い流すことを目的としています。香料配合による爽快感もあります。
鼻水や分泌物を洗い流すセルフケアです。強い鼻づまりや痛み、発熱などが続く場合は、耳鼻咽喉科で原因を確認してください。
サイナス・リンス
約240mLのやわらかいボトルを押して洗浄する大容量タイプです。専用粉末を表示どおりの水量で溶かして使います。
専用粉末には塩化ナトリウムと重炭酸ナトリウムが配合され、キシリトール入りの洗浄剤も販売されています。水量が多く、鼻腔全体をしっかり洗いやすいことが特徴です。ボトルは消耗品なので、メーカーの案内に従って定期的に交換します。
ハナクリーンS・α
ハナクリーンSは約150mL、ハナクリーンαは約300mLが目安です。温度表示やピストン式の操作など、洗浄液を準備しやすい工夫があります。
部品や器具の交換時期、洗浄・乾燥方法は、必ず各製品の最新の説明書に従ってください。
そのほかの手動式器具
- EMSハナ通り:静かな圧でやさしく洗浄するタイプ
- ナサリン:シリンジ・ピストン式で、水圧や注入速度を自分で調整しやすいタイプ。大人用と子ども用があります
- ウォーターパルス:重力を利用して洗浄液を流すタイプ。ボトルを強く押す操作が苦手な方にも選択肢になります
- フロー・サイナスケア:鼻から入れて反対側の鼻などから出すボトル式
電動式・特大容量
- ハナオート:電動式で一定の水流を得やすい鼻うがい器
- サイナス・リンス メガボトル:約480mLの特大容量タイプ
- 大量の洗浄液が必要とは限りません。鼻の状態、使いやすさ、洗浄後の手入れを含めて選びます
※製品名・容量・仕様は変更されることがあります。購入・使用時はメーカーの最新情報と説明書をご確認ください。掲載順は推奨順位ではなく、当院が特定製品の効果を保証するものでもありません。
鼻うがいに使う水と洗浄液の準備
日本国内では、水質管理された水道水を使って調製する鼻うがい製品も一般的です。市販の専用洗浄液や専用原液・粉末がある場合は、指定された水と水量を守ることが最も大切です。
使用できる水
- 日本国内の、にごりや異臭のない水道水
- 市販品で「蒸留水」と表示された水
- 市販品で「滅菌水」と表示された水
- 水道水をしっかり沸騰させ、清潔なふた付き容器で人肌程度まで冷ました水
避けた方がよい水
- 井戸水・湧き水
- 水質管理が確認できない水、海外で安全性が不明な水道水
- 長時間くみ置きした水
- 前日に器具内へ残した洗浄液
自宅で0.9%食塩水を作る場合
水500mL + 食塩4.5g
国内の清潔な水道水、または煮沸して冷ました水などを使用します。塩は計量器で正確に量って溶かし、使用直前に作って残りは捨てます。術後、免疫機能が低下している方、衛生面が心配な方は、煮沸して冷ました水、蒸留水、滅菌水を選ぶとより安心です。計量が難しい場合は、市販の専用粉末を使用してください。
※熱いまま使用しないでください。普通の水だけで洗うと強くしみるため、適切な濃度の食塩水を使います。
薬剤や消毒薬を自己判断で加えないでください
ポビドンヨード、精油、抗菌薬、ステロイドなどを自己判断で混ぜることは勧めません。薬剤を加えた鼻洗浄は、濃度や適応を医師が判断した場合に限ります。基本は生理食塩水です。
鼻うがいの正しいやり方
成人では、やわらかいボトルを押して洗うタイプが使いやすい方法のひとつです。使用する製品の説明書がある場合は、その指示を優先してください。
- 手を洗い、器具を確認する器具の内側が清潔で、前回の水分が残っていないことを確認します。
- 安全な水で生理食塩水を作る市販の専用粉末は、指定された水量で溶かします。濃くしたり薄くしたりしません。
- 洗面台で前かがみになるあごを軽く引き、顔を下へ向けます。上を向かず、口を軽く開けます。当院では「えー」と声を出しながら行う方法をおすすめしています。
- ノズルを鼻へ軽く当てる強く押し込まず、鼻の入口へやさしく当てます。反対側の鼻を指でふさぐ必要はありません。
- ゆっくり洗浄するボトルを急に強く押さず、痛みのない圧で注入します。液は反対側の鼻、同じ側の鼻、口のいずれから出ても構いません。
- 反対側も同様に洗う途中で耳の痛み、強い鼻の痛み、めまいが出た場合は中止します。
- 残った液をやさしく出す前かがみのまま頭を左右へゆっくり傾けます。その後、片方ずつ弱く鼻をかみます。強くかんだり、勢いよく吸い込んだりしません。
- 器具を洗い、完全に乾かす製品の説明書に従って洗浄し、次回まで十分に乾燥させます。定期的な交換時期も確認します。
鼻うがいでは「あー」または「えー」と発声する方法がよく使われます。声を出す目的は、洗浄液が耳や気管へ流れ込みにくくすることです。私は、「えー」の方が軟口蓋が上がりやすく、洗浄液が上咽頭付近を通りやすいと考えて患者さんへ案内しています。ただし、発声しにくい方は無理をせず、口を開けてゆっくり呼吸するだけでも構いません。
洗浄してしばらくしてから、水が出てくることがあります
洗浄時に鼻腔内のくぼみや副鼻腔へ入った洗浄液が、前かがみになったときや時間がたってから出てくることがあります。特に副鼻腔手術後など、洗浄液が副鼻腔へ入りやすい方で起こりやすく、多くの場合は異常ではありません。
安全な出し方:洗面台で前かがみになり、頭を左右へゆっくり傾け、最後に片方ずつやさしく鼻をかみます。逆立ち、強い鼻かみ、何度も勢いよく頭を振る方法は必要ありません。
上咽頭炎・EAT治療中の鼻うがい
上咽頭は、鼻のいちばん奥にある鼻とのどの境目です。十分な量で行う鼻うがいでは、洗浄液が上咽頭付近を通り、分泌物を洗い流したり粘膜を潤したりする可能性があります。
上咽頭の分泌物を洗い流し、粘膜を潤します
慢性上咽頭炎やEAT(Bスポット療法)を受けている方にも、鼻うがいをおすすめすることがあります。十分な量の洗浄液が鼻の奥を通ることで、上咽頭付近に付着した分泌物を洗い流し、乾燥した粘膜を潤すことができます。EATと生理食塩水による鼻うがいを併用した臨床報告もあり、当院では治療を支えるセルフケアとして案内しています。
行うときのポイント
- 上咽頭へ届かせようとして、水圧を強くしない
- 口を開け、すすらずにゆっくり流す
- EAT直後にしみる場合は、当日の実施を担当医へ確認する
受診を考える症状
- 後鼻漏、咳、のどの違和感が長引く
- 鼻うがいを続けても改善しない
- 片側だけの症状、血の混じる鼻水、強い痛みがある
頻度の目安と、中止・相談が必要な場合
一般的な頻度
- まずは1日1回程度から
- 症状に応じて1日1~2回程度
- 朝起きたとき、帰宅後、夜寝る前など、続けやすい時間に行う
- 副鼻腔手術後は1日3回程度を勧めることがありますが、担当医の回数・期間を優先
- 刺激、乾燥、鼻血が増える場合は回数を減らす
事前に相談した方がよい方
- 幼いお子さん
- 耳の治療中、または中耳炎を繰り返している方
- 鼻が完全につまって液が通らない方
- 免疫機能が低下している方
- 鼻・副鼻腔手術の直後
中止して耳鼻咽喉科へ相談してください
耳の痛み・強い耳閉感、聞こえにくさ、繰り返す鼻血、強い鼻痛、症状の悪化がある場合は中止してください。急性副鼻腔炎で膿性鼻汁や痛みが強いとき、鼻が完全につまって洗浄液が通らないときも、無理に行わずご相談ください。鼻うがい後に強い頭痛、発熱、嘔吐、意識の変化などが出た場合は、速やかな医療機関受診が必要です。
鼻うがいに関するよくある質問
反対側の鼻から出てきません。失敗ですか?
同じ側の鼻や口から出ても、鼻腔内は洗浄されています。反対側から出そうとして、水圧を上げたり、反対の鼻をふさいだり、強く吸い込んだりしないでください。
洗浄液が口へ入っても大丈夫ですか?
少量が口へ流れることはあります。飲み込もうとせず、そのまま吐き出してください。口を開けて呼吸すると行いやすくなります。
水道水は、日本ならそのまま使えますか?
日本国内の水道水は厳しい水質基準で管理されており、市販の鼻うがい製品にも国内のきれいな水道水で薄めるよう案内されているものがあります。まずは使用する製品の説明書に従ってください。自作する場合は使用直前に調製し、作り置きはしません。術後や免疫機能が低下している方、心配な方は、煮沸して冷ました水、蒸留水、滅菌水を使用するとより安心です。
塩を多くすれば、よく効きますか?
濃い食塩水は刺激や痛みが出やすくなります。一般的には約0.9%の等張食塩水が使いやすく、濃度を自己判断で変更する必要はありません。
毎回、耳が痛くなります。
水圧が強い、姿勢が上向き、鼻を強くかむなどで耳へ負担がかかることがあります。いったん中止し、方法を直しても繰り返す場合は耳鼻咽喉科へ相談してください。
子どもにもできますか?
年齢に合う器具を使い、本人が無理なく協力できることが前提です。嫌がる子へ強制したり、強い圧で行ったりしないでください。幼いお子さんは事前に医師へ相談してください。
鼻うがい後、時間がたって水が出ます。
鼻腔内などに残った液が遅れて出ることがあります。前かがみで頭を左右へゆっくり傾け、片方ずつやさしく鼻をかんでください。強い痛みや片側だけ大量に続く場合はご相談ください。
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症状が長引くときは、原因を確認しましょう
鼻うがいは便利なセルフケアですが、副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、上咽頭炎などの診断や治療の代わりにはなりません。後鼻漏、鼻づまり、のどの違和感が続く場合はご相談ください。
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個人的には、鼻腔へのフィット感とサイズ感からサイナス・リンスが好きです(全部試したわけではないので、あくまで感想です)。どの製品でも目的は達成できると思いますので、使用感がよいもので続けていただければ良いと思います。