「生理バッジ」大炎上…それでも日本社会の月経観は「進歩」している

生理中かどうかを明かす意味と覚悟

「生理中であることを他人に知らせる必要があるの?」

大丸梅田店の新しい売り場「ミチカケ(michikake)」が導入した「生理バッジ」が波紋を広げている。

今月22日にオープンした「ミチカケ」には、“女性のリズムに寄り添う”をコンセプトにした、生理用品や下着、化粧品などの女性用品を扱う17店舗が並ぶ。

大丸梅田店「ミチカケ」オープンに先立つポップアップショップの様子
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これら店舗のスタッフたちが胸につけるバッジは、表は「ミチカケ」のフロアをアピールするものだが、裏返すと「生理ちゃん」(小山健さんの漫画『ツキイチ!生理ちゃん』のキャラクター)のイラストが描かれており、生理中であることを示すものとなっている。

この「生理バッジ」に対し、ツイッター上で「どうして生理中だということを他人に知らせる必要があるの?」「店員に生理中だとアピールされたらどうすればいいの?」「性をオープンにすることの方向性が間違っている」といった批判が巻き起こっている。

たしかに、生理中であることを他人に知らせなければならない謂われはない。本人が知らせたくないのに知らせなければならないのであれば、それはプライバシーの侵害、あるいは人権侵害である。

生理日を明かすことの意味

明治時代には、「生理中に頭を使うと、将来の妊娠出産に悪影響を及ぼす。したがって、数学の試験などを受けさせるべきではない」といった誤った考えから、文部省(当時)が全国の女学校に「担任が女学生たちの生理日を把握するように」とお達しを出していた。「富国強兵」をスローガンとして掲げる政府が、生殖を管理しようとした結果である。

かりに今、教育機関が女子生徒たちの生理日を申告させるようなことがあれば、大問題になるだろう。

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今年の夏、ある県立高校で水泳の授業を見学したいと申し出た女子生徒に、体育の教師が「生理の何日目か」を問いただしたということが明らかになった際も、問題になった(「女子生徒に生理日数を申告させる…学校の『水泳授業』が抱える大問題」)。

生理日の申告、ということで極端な例を一つ挙げれば、1974年に発生した甲山事件である。警察は「女は生理のときに犯罪を犯しやすい」という偏見から、事件関係者の女性たちの生理日を調べ、事件当日生理だった20代の女性を殺人容疑で逮捕した。女性は冤罪を主張し、事件から25年後に無罪が確定している。

「生理中かどうかを他人に明かす」という話題になると、私はこれらのことを連想し、不快になる。

「ミチカケ」の覚悟

したがって、今回の「ミチカケ」の「生理バッジ」が、当事者である女性スタッフたちの意志を無視したものならば、絶対に反対である。しかし、「生理バッジ」をつけるか否かは「強制」ではなく「任意」とのこと。

「任意といっても同調圧力によって、つけざるをえない女性がいるかもしれない」という意見もあろうが、そこは「圧力に負けないで」と言うしかない。

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「生理バッジ」の導入は、オモコロの『ツキイチ!生理ちゃん19』に描かれており、そこでは「生理バッジ」に対し、「そんなのお客様に気を使わせるだけじゃない。生理がツラいなんてお客さまには関係のないことでしょ。悟られた時点でプロ失格よ。わたしは絶対につけません」と語るベテラン女性店員も登場する。こうした態度も「あり」ということだ。

また漫画では、「生理バッジ」がツイッターで炎上したり、テレビの報道番組が「生理バッジ」について一般の人たちにインタビューを行ったり、「生理バッジが波紋」というテーマを取り上げたりといったことも、予言的に描かれている。つまり、「生理バッジ」を導入することで批判を浴びるということは、「ミチカケ」側はある程度覚悟していたということだ。

それは、「ミチカケ」のウェブサイトに掲載されている担当者の言葉からもうかがうことができる。これは特に「生理バッジ」について言及したものではないのだが、通じるものはあるだろう。

日本では、女性の性や生理は「隠すべきこと」「恥ずかしいこと」とされてきました。そのため、必ずしも肯定的な反応ばかりではないことを覚悟しています。
しかし一方で、話しにくい悩みだからこそ、相談できる場を必要としている方が多くおられます。そういったお客様にも「“常に”寄り添いたい」「少しでも心を軽くしてほしい」との想いで、タブー視されてきたジャンルにも向き合って、この新しいゾーンを作ります。(中略)温かく見守り、応援してくださいますと幸いです。

「生理バッジ」は“露悪”ではない

「ミチカケ」のPR担当者によれば、「生理バッジ」の主目的は、「生理であることをオープンにすることによって、(店員間で)気遣うコミュケーションができるようにするため」とのこと。

「生理が辛いなら生理休暇を取ればいい」という意見もあり、そのとおりだと思うのだが、休むほどではないという人もいるだろう。バッジでアピールせずに、「今日、生理なので」と自然に口にすることができれば、それが理想だとは思うが。

また、「ミチカケ」は、女性用品を販売するだけでなく、生理や性、身体のリズムについて客とスタッフがコミュニケーションをはかるということも重視しており、そのために「生理バッジ」が一役買うことも期待されている。

ただ単に「生理について語ろう」「オープンにしよう」と主張するのであれば、それは“露悪”と捉えられても仕方がない。しかし、女性スタッフの働きやすさや客とのコミュニケーションを真剣に考えた上での「生理バッジ」の導入は、それには該当しないだろう。

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いずれにしても、「生理バッジ」は「試験的な導入」とのことなので、批判を受けて廃止されることも考えられる。しかし、こうして「生理であることを明かすこと」に対する議論が巻き起こっただけでも、一石を投じた意義があったのではないだろうか。

私は、今回の批判の中に、「汚いことをアピールするな」「穢らわしい」といった意見がなかった(管見の限りだが)ことに、日本社会の月経観の「進歩」を感じた。数十年前なら、そういう意見もあったに違いない。

さらに、「ミチカケ」側も、それを批判する側も、どちらも生理について真剣に考え、女性たちの心身を慮っているということに、少なからず感動している。

今は月経観が変わり行く過渡期

現在、「生理バッジ」以外にも、ユニ・チャーム主導の「#NoBagForMeプロジェクト」(生理用品を購入する際に、中身が見えない袋に入れる必要はないと意思表示すること)など、生理や生理用品を「隠さない」「恥ずかしがらない」というムーブメントが起こっており、同時に批判も巻き起こっている。

そもそも生理用品は、生理であることを「隠したい」「他人から悟られたくない」という女性たちの思いとともに進化してきた面があるので、ここにきて「隠さない」というのは矛盾があるようにも取れる。

〔PHOTO〕iStock
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生理を“排泄現象”、“経血”を排泄物と捉えれば、それを「恥ずかしい」「隠したい」と考えるのは当たり前のことである。人が服を着て生活し、個室で用を足す限り、この感覚がなくなることはないだろう。

生理を「隠したい」「語りたくない」という気持ちも尊重しつつ、生理についての社会の理解を深めることが必要である。そうすれば、女性たちはもっと学びやすく、働きやすく、生きやすくなる。女性が生きやすい社会は、男性その他の性も生きやすい社会であるはずだ。

生理に関するさまざまな試みが“炎上”している現在は、月経観が変わり行く過渡期といえるだろう。

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