アフガニスタン:大学構内へのスマートフォン持ち込み禁止とその反響
アフガニスタンで本邦を含む「国際社会」が後押しした政府が崩壊し、「テロとの戦い」の敵役の一つだったターリバーンが政権を奪回してから5年がたった。この間、ターリバーンが発信するニュースは月間機関誌『スムード』の記事を含めひたすら楽観的・肯定的であり、それ以外の発信源からは女子児童・生徒・学生の教育機会の剥奪のような、特定の分野についての問題提起がほとんどだった。そうした中、2026年8月13日付『シャルク・アウサト』紙(サウジ資本の汎アラブ紙)は、「アフガンの大学構内でのスマートフォン禁止への学生の評価は分かれる」と題し、現在のアフガンの学生生活の一端について要旨以下の通り報じた。なお、記事中には何人かの学生の証言が出てくるが、(当然ながら)その中に女子大生はいない。
*アフガンの大学生たちは、彼らのスマートフォンをキャンパス外に置くことを強いられている。6月にターリバーンのヒバトッラー・アーハンザーダ指導者が政府職員にスマートフォンの使用を禁止する命令を出して間もなく、禁止措置は大学にも拡大された。カーブルの大学生は、職員が講堂に現れ、これより大学にスマートフォンを持ち込むことは許されないと宣告したと述べた。
*ヘラート市では、大学や学生寮の壁にスマートフォンをキャンパス内に持ち込んだ者は、誰でも法的措置に直面するだろうとの警告が張り出された。AFP通信に証言した学生たちは、いずれもこの決定の詳細を伝えられておらず、学生たちの一部は安全上の理由で名前を名乗らなかった。
*カンダハル大学の報道官は、今般の決定は学生が講義、学習、実習に集中するためのものだと述べた。ちなみに、UNESCOの報告書によると世界の諸国の58%が学校への携帯端末の持ち込みを制限しているが、大学が調査対象となっているかは不明である。
*政権奪還以来、ターリバーン当局は理由を示さずにアフガンに技術が入るのを制限する措置を取っている。2025年には、複数の州で数週間インターネット接続が規制された。その後、政府は突如2日間にわたり全国各地でインターネットや電話網を切断した。それにもかかわらずスマートフォンは広く使用されており、諸都市にはインターネットについての最新広告があふれている。
*スマートフォン規制は、学生たちがインターネットを通じて検索や教材を得る能力を制限している。ヘラートのある大学生は、解説の録画、板書の撮影、復習などが目的で受講科目の約半数でスマートフォンに頼っていた。マザールシャリフの報道を学ぶ学生は、スマートフォンなしではよく学習できないと述べた。これについて、国連のアフガン支援団の人権局長は、「学生が技術を利用するのを統制する表面的な理由があるかもしれないが、政府の規制は情報の受容や表現の自由、ひいては個人が日常生活に完全に参加する能力を制限する恐れがある」と述べて懸念を表明した。カーブルのある学生は、規制により学生たちが多数の教科書を持ち運ぶようになってしまったと述べた。別の学生は、キャンパス内で通話をするために単純な携帯電話を購入したが、この学生もそれによる追加出費と最新技術が禁じられていることに不平を述べた。ちなみに、ノートPCは規制対象に含まれていないが、学生の多くはそれを購入するお金がない。
*今般の決定に反対する学生ばかりではない。カンダハルの医学生は、規制により教員と学生の関係が改善したと指摘した。この学生は、スマートフォンの通話によって妨げられることがないので学習や講義によく集中できると述べた。ただし、別の学生非常の際に家族と連絡する手段がなくなると心配している。一方、スマートフォンの持ち込み禁止により、成績が上がった学生もいる。この学生は、「仲間たちはスマートフォンを通じて学習に必要な情報を得る一方で、SNSなどで時間を浪費していた。禁止措置の後、彼ら
よりよく勉強するようになり、良い成績を取った」と述べた。
ターリバーンをはじめとするイスラーム過激派は近代的な技術に否定的だと思われがちだが、実は兵器だけでなく広報、通信、組織の運営の細部に至るまで最新の技術を積極的に利用する。例えば、5年前にターリバーンがアメリカの後ろ盾を失った当時のアフガン政府軍を打倒する過程で、SNS上に多数の活動家・協力者を配置し自派に有利な情報を拡散することで戦況を有利に導いたことが知られている。また、「イスラーム国」が増長を極めていた時期は、当局、報道機関、専門家の多くが最新の編集・発信・拡散のための技術や戦術を駆使した同派の広報を鵜呑みにし、同派の活動に正統性どころか歴史的意義さえあると誤認した。その一方で、イスラーム過激派は制圧下の住民がそのような技術を用いて情報を獲得したり発信したりすることを極端に嫌う。これは、イスラーム過激派の実践に広報しているものとは異なる点がたくさんあり、それが知られるのが困るという理由と、制圧下の住民が敵方と通じたり、外部の情報を得たりするのが嫌だという理由があるだろう。ただ、現実の問題の問題として、技術や情報を自らに都合のいい方にだけ使いたいという思考・行動様式はイスラーム過激派ほど極端でなくとも権力や財力を持つ主体の誰もが持っているものであり、このニュースもただ眺めるだけでなく自らを省みる機会にしたいところだ。