1986年からタイムスリップした中年体育教師が、現代社会に戸惑いながらも旋風を巻き起こすTBS系「不適切にもほどがある!」は懐かしさと爽快さが相まって、久しぶりに楽しくドラマを見させてもらった。
業界関係者のみならず学生時代の友人も含め、50代男性から共感の声を数多く聞いた。阿部サダヲ(53)演じる中年教師が現代の常識や規則にあらがいエネルギッシュに奮闘する姿は、定年が近づくバブル入社世代の心に突き刺さった。かくゆう私も、その1人だ。
ときを同じくして、私を奮い立たせてくれた人物がいる。還暦世代への応援歌「人生上等!~O世代の身上書~」を歌うロック歌手、坂本つとむ(61)だ。昨年3月から全国のいろんな場所でこの曲をコミカルに歌い踊り、TikTokに次々とアップした動画が1年で累計7000万再生を突破。1億再生という数字まで見えてきた。
矢沢永吉(74)に憧れて41年前に上京し、歌手デビューをつかむも全く売れず、それでも夢を追いかけ歌い続ける。そんな自伝的な歌詞がオヤジ世代のみならず、TikTok視聴者層のZ世代にも受け、還暦を過ぎてブレークしたのだ。
高齢化社会が加速していく中、「ふてほど」や坂本から前向きに生きるヒントやオーバーに言うと金儲け(ヒット商品)のヒントが隠されているのではと思った。
坂本をブレークさせた仕掛け人の音楽評論家、富澤一誠氏(72)はJ-POPでも演歌・歌謡曲でもない大人が聴ける良質な音楽「AGE FREE MUSIC」を届けたいと数年前から提唱している。若者におもねるのではなく、50~60代に刺さる、そして若者までをも巻き込む音楽探し。
それを裏付けるように、昨年あたりから1980年代のシティーポップがリバイバルヒットしている。故松原みきさんの「真夜中のドア~stay with me」や竹内まりや(69)の「プラスティック・ラブ」が、時を超えた現代の欧米や東南アジアでブームとなり、日本に逆輸入。懐かしく感じるオジサン世代のみならず、新鮮に受け止めた若者たちにも聴かれるようになった。
その富澤氏が著書「『昭和ニューミュージック』の1980年代」(言視舎、税込み2200円)を刊行した。同氏が80年代に取材した42組のアーティストの言葉と、それに対する評論を当時のまま再録している。
懐かしい久保田早紀(現・久米小百合、65)や中原めいこ(64)をはじめ、鬼籍に入った谷村新司さん、葛城ユキさんらの80年代当時の言葉や将来の展望がつづられている。
興味深いのは83年に取材を受けた長渕剛(67)の言葉だ。初のスタジアムコンサートになる西武球場公演を直前に控えた長渕は「西武球場が終わったら、その次はどこかの野外で〝朝までやろう〟のオールナイトコンサート、今の段階ではそこまで見えている」と構想を披露していた。
21年後の2004年に鹿児島・桜島の特設ステージで実現させたのは誰もが知るところ。この本で42組のアーティストのその後の答え合わせをしてみるのも一計だ。
あまりにも漠然としていて恐縮だが、日本が元気だった1980年代が、高齢化社会、いや、いろんな意味での〝再生〟のキーワードになるような気がしてならない。(山下伸基)