元分科会長・尾身茂氏が語る新型コロナ…あのパンデミックの“真相”と「今も意識すべき3つのこと」
問われたワクチンの是非:重症化予防効果を示す論文は複数発表
編集部: ワクチンの効果の根拠となる研究はあるのでしょうか。 尾身先生: 今回のワクチンは、効果や副反応について、完璧なワクチンではありませんでした。しかし重症化・死亡予防効果は確かにあったとの指摘が、観察研究以外にも症例対照研究、二項分布を用いた数理モデルなど異なる研究方法によってなされ、国内外の信頼されている医学雑誌に論文として発表されています。 たとえばオランダの研究(EuroSurveillance、2024年)では60歳以上の入院予防効果が71%、米国の研究(JAMA Internal Medicine、2024年)では18歳以上で62%と報告されています。手法は研究ごとに異なりますが、いずれも一定の重症化・死亡予防効果が示されたとしています。国内の研究も複数あり、長崎大学熱帯医学研究所 VERSUS Study 第11報(2024年)や国立感染症研究所感染症疫学センターら4機構による共同報告(2021年)などで同様の指摘がなされています。 編集部: 複数の研究で科学的根拠が示されているのですね。近年はワクチン以外にも、抗ウイルス薬による治療という選択肢も登場しました。「様子見」で重症化を防ぐ手段を減らさないためにも、医療機関で早期に適切な診断を受けることが大切なのだと感じます。
次の感染症パンデミックに備えてできる「3つの意識」
編集部: 最後に、これからを生きる読者へ伝えたいことをお願いします。 尾身先生: グローバリゼーションによる人の流れの増加、気候変動、森林伐採などのリスク要因が高まっていることから、パンデミックはいずれまた起きると予測されます。だからこそ、平時から医療のひっ迫を招かないための体制を整えておくことが欠かせません。 みなさんにお願いしたいのは3つです。 ・手洗いなどの基本的な感染症対策を続けること ・SNSなどの情報を鵜呑みにするのではなく一次情報に目を通すこと ・偽情報が多くみられるが、真偽を見極める情報リテラシーを持つこと 私が現在理事長として関わっている結核は、今も世界で毎年100万人以上の命を奪い続けている「慢性的なパンデミック」であることも忘れてはいけません。新型コロナウイルスのような感染症の猛威は、いつでもまた私たちに襲い掛かってくる可能性があります。 しかし一人ひとりが身近な感染対策を意識して感染症と向き合い、社会全体で備えを積み重ねていけば冷静に立ち向かえます。その土台を築くことが、何より大切だと思います。新型コロナパンデミックの教訓から、国民一人ひとりが自分ごととして考えることで、感染症に強い日本社会が作られることを願っています。 ※:提言の根拠や用いた研究方法などについては、尾身先生の書籍「1100日間の葛藤 新型コロナ・パンデミック、専門家たちの記録」に詳細が記されています。
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