【閲注CP注】日車「……俺が、Sub?」【Dom/Subユニバース】

  • 1◆jVm.lOfYeU26/08/13(木) 00:03:15

     
    「……冗談を話している場合ではないのでは」
    「冗談じゃないんでね」

     白衣を羽織った女性──家入の目が、タブレットを操作しながらわずかに細まる。
     オフィスチェアに座している彼女は、一昨日、高専到着早々に全員の身体と呪力の検査を矢継ぎ早にやりとげていた医師だ。
     揺れない柳のような佇まいだと思ったが、日車を診ながら興味深そうに口角を上げたのが印象的だった。誰も彼もが寝不足だが、彼女のクマはさらに酷い。

    「覚醒から三週間……よく正気でいますね? ステージが低いなら納得するけど、その呪力量と術式の複雑さでそんなわけないし」
    「コイツ間違いなく一級相当だぞ」

     傍らのデスクには、草臥れたスーツを纏う大柄の男が腰かけている。
     日下部という、この高専の教師だ。昨日の明け方近くまで、日車と高羽に『こちら側の世界』と事情について解説してくれたのは、彼だった。
     もたらされた情報の密度と比して、短時間ながら要点をおさえた非常に解りやすい講義だったのは、流石は教師と言うべきか。高羽は早々に寝ていたが。
     

  • 2導入26/08/13(木) 00:14:09

     
     高専滞在、三日目。
     家入から「検査の結果について話したいことがある」と人づてに聞いて訪れた昼下がりの医務室に、日下部もいた。
    「何故君がいるんだ」と訊いたら、「こーゆー時は同性がいたほうがいいんだよ」と苦虫を噛み潰したような顔をされた。
     そして、家入の目の前に座して、開口一番されたのが、ダイナミクス(第二の性)の話だ。

    「でしょうね。それだけ"強く"て、何もせずに平常なわけがない。回游中にどこかでPlayを? いや今まで知らずにいてそれは無理か……
    日車さん、体調はどうですか。食欲がないとか、あるいは気分の悪さがずっと付き纏っているとか」
    「気分は、悪いな。何せ人を殺している」

     嘘ではない。だが、理由としてのすべてではない。
     知っているだろうと言わんばかりの口調で晒してみるも、二人とも顔色一つ変えず、眉一筋動かさない。
     やはり、『こちら側』の倫理観は表のそれとは異なるのだ。
     それも、人命を軽んじているわけではなく、人命の為に人命が失われることに慣れてしまった者の匂いがした。
     

  • 3導入26/08/13(木) 00:25:39

     
    「俺から見ても、いきなりステージ上がった直後から三週間ケアされてないSubのツラにゃ見えねぇが」
    「私が診てもそうですよ。良くはないけど、顔色も呪力もそこまで荒れてない……その気分の悪さはずっと? それとも、どこかで『底』のようなものがあったとか」

     二人が、こちらに理解できない会話を交わすなかで辟易していた日車は、家入に投げかけられた言葉で我に返った。
     思わずスーツの襟に手を伸ばす。そこに、弁護士徽章は無い。

     ──底。

     得体の知れない力を手に入れ、人を殺め、殺し合いに足を踏み入れ、立て続けに奪った命。
     全てがどうでもよくなってしまった、あの日々。まさに、どん底と呼ぶにふさわしい心持ちで、血濡れたスーツごと己を湯船に沈めた日。
     唐突に訪れた、その終わり。
     

  • 4導入26/08/13(木) 00:36:31

     

     彼に出会ったあの日から、明確に世界の色は違って見えた。相も変わらず、呪力と殺意の満ちた結界に閉じ込められていたにも関わらず。

     またな、と言って劇場の扉を閉めた自分を、追いかけてきた彼の姿を思い出す。

     日車、と呼ぶ彼の声が脳裏に蘇るたびに、ずいぶんと呼吸がしやすかった。

     再会するまで、何度かコガネに彼の名前を表示させた。彼の生存と、点数に変化がないことを確認した後は、なお深く息を吐くことが出来た。


     虎杖悠仁。


     日車は彼の手を取って、今、ここに居るのだった。


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    ※Dom/Subユニバース×呪術世界 特殊設定SSスレ

    ※CPは日車と虎杖のみ

    ※ダイス・安価・Writingの可能性有

    ※動画化禁止/転載禁止


    Dom/Subユニバースについてはこちら(先に知っておきたい方はどうぞ)

    #BL Dom/Subユニバースのススメ(アドバンス編追加版) - Dukdukのマンガ - pixivオメガバースに似たDom/Subユニバース(ドムサブユニバース)というAUがあります。ざっくりいえば人間の性別が男女のほかにDom(SMでいうS),Sub(SMでいうM)に分かれている世界ですwww.pixiv.net

    以降、弁護士と医師と教師の先生トリオによる呪術×D/Sバースの"特殊設定"説明パートが開始します

     

  • 5導入26/08/13(木) 01:03:42

     
     東京都立呪術高等専門学校。

     登記上とは異なる名称の、この教育機関の存在意義と信憑性。
     それを受け入れざるを得ない世界の実情を、日車寛見は到着から一日半かけて──猛烈な葛藤の果てに──やっと飲み込んだところだった。
     この世の、この国の、社会の裏側に連綿と続く『呪い』の側面。
     覚醒から三週間たらずで自らの身に起きた事象を、解釈し、解析し、解体し、咀嚼し嚥下し、その上でここに至って聞かされた真実に、これが一時の悪夢でも突発的災害でもなく、ただ世界が裏返っただけなのだと、日車は理解していた。

    『呪いを学ぶ為の学び舎』が存在する。しかも都立で。都内に。
     素人目にもわかる、積み重ねられた歴史と広大な敷地、それを保つための膨大な予算。反して、ここに属する学生の少なさ。
    『呪い』の力を『呪術』として扱い、操り戦える者の希少さを痛感し、翻って、己が参加させられた『死滅回游』の異常性が身に染みる。

     一晩で語られた人界の危機。虎杖の中にいたはずの悪魔の行き先。引き換えに取り戻された最強の男。
     力ある者が集い、何を為さねばならないのかを、為さぬならば何が終わるのかを、日車は知った。
     知った上で、終わってしまうのは違うだろう、と思ったのも事実だ。
     ……事実ではあるが。

     あの瞬間差し伸べられた、小指の欠けた手を取る以外のことを、考えていたかと言えば、嘘になる。

     そうして──呪術高専の施設内、医務室と呼べるそこに日車は座して、今に至る。
     

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