小中学校道徳の教科書で情報(ネット・SNSトラブル)はどう教えられているのか、情報モラル校閲者が解説
小学校・中学校の教育指導要領では、道徳で「情報モラル」について指導することとなっています。
それぞれ、「児童(生徒)の発達の段階や特性等を考慮し、(中略)情報モラルに関する指導を充実すること。」と明記されています(平成29年度版)
では、小中学校道徳の教科書で情報(ネット・SNSトラブル)はどう指導されているのでしょうか。
私は光村図書の小中学校の道徳の教科書で情報モラルの校閲を担当してるため、光村図書を例にして解説したいと思います。
なお、各単元は「現代的な課題等との関わり」として、どの課題に該当する内容なのかについては巻末で明記されています。そこで「情報モラル」として取り上げられているテーマについて、解説していきます。
小学校の道徳で考えさせる内容
実は「情報モラル」と言っても、小学校1年生と2年生ではまだネット関係の話は出てきません。ネットにも関係する普遍的なことを考えさせる内容なのです。
しかし3年生以上になると、よくあるネットの問題が取り上げられ、具体的な対策について考えさせる内容となっているのが特徴です。
小学校1年生では、「みんなでつかうときには」を主題としています。なぜ約束や決まりを守る必要があるのか、みんなで使うものや場所の大切さについて考えさせています。
まだインターネットの話は出てきませんが、ネットを利用する際にも重要な公共性やルールを守る大切さについて考えさせる内容となっています。
小学校2年生では、「してよいこと、いけないこと」が主題です。お友だちの作品を勝手に改編する、人のものを使いたい時にお願いする、マネしたい時に許諾を得るなどが取り上げられています。
リアルの場での話ですが、ネットでよく問題となる他人の作品の剽窃を取り上げたものとなっています。
小学校3年生では既に、ネットの問題が具体的に言及されています。「気持ちのよい生活」を主題として、ゲームやインターネットをやめられない問題が取り上げられています。
ゲームがやめられず寝不足になる、インターネットの使い過ぎで目が痛くなる、課金のしすぎ、おかしな広告が出てしまうトラブル等、具体的なトラブルにまで踏み込んだ内容となっています。
1、2年生ではまだスマホやネットを駆使している子どもは多くありませんが、3年くらいでは既にそのようなトラブルが多発しているため、このような内容となっているのです。
小学校4年生では、「分かり合うために」が主題です。思いのままに「つまらなかった」と言い放つことで友達の心が離れるきっかけになる、気持ちのすれ違いが取り上げられています。
応用編として、インターネット上でのやりとりで「いつも楽しくない?(「楽しいよね」の呼びかけの意)」「楽しくない(否定)」という文章表現による行き違いが起きる例も紹介されています。
リアルでもきちんと説明をしたり、相手の気持ちを考えたりしないことで、ネット上では誤読によって行き違いが生まれる例が取り上げられているのです。
小学校5年生では、挨拶や礼儀の意味についてを主題としており、応用編として、「インターネットの特性とマナー」について取り上げています。
インターネットには、「非対面性」「匿名性」「拡散性」という特性があること。SNSに投稿した時に、不快なコメントを付けられることがあることについても取り上げています。お互いに気持ちよくインターネットを使うにはどうすればいいかについて考えさせる内容となっています。
小学校6年生では、ネットの問題中心の内容となっています。友達との集合写真を友達限定公開で投稿した話を題材にしています。写真を喜んでくれた子もいましたが、気に入らない写真を勝手に公開されて怒らせてしまった子もいました。写真を投稿する前にどんなことを考えるべきか、責任について考えさせる内容となっています。
応用編として、インターネット上の権利として、「肖像権・プライバシー権」「著作権」について取り上げています。
思った以上に実際の利用に即したテーマとなっていることに、驚かれた方も多いかもしれません。
それぞれの発達段階で、インターネットとの関わりで知っておきたいこと、知っておくべきことを学び、考えさせる内容となっているのです。
中学校の道徳で考えさせる内容
中学1年生は、ズバリ「節度のある端末の使い方について考えよう」というテーマが挙げられています。
「夜遅くにメッセージを送る」「受信したらすぐにメッセージを返す」「友達と話していてもスマートフォンを触る」「アプリゲームに課金している」「話題がいつもインターネットやゲームの話」等の具体例を挙げて、スマホやタブレットの使い方で「節度を守る」とは何かについて、具体的に考えさせています。
中学2年生では、いじめとデマの拡散がテーマとなっています。ある王様候補はライバルを蹴落とすために、相手の悪口やデマをメールで流します。これに民衆が尾ひれを付けて拡散させたことで、結局、悪い王様をのさばらせることになってしまうという訓話が取り上げられています。タイトルは「二番目の悪者」。二番目の悪者とは誰かを考えさせ、SNSを使うときにこの話での学びを思い出そうとしています。
中学3年生は、インターネットの先に社会がつながっていることを考えさせる内容です。
思ったことを投稿したことで大ごとになってしまった人、投稿に対して共感のコメントをしただけなのに思った以上に拡散してしまって戸惑う人が出てきます。
リアルではただの愚痴や共感で終わるはずが、インターネットでは思った以上に拡散したり、大騒ぎになったりしてしまうというリアルとネットの違いを考えさせているのです。
ネットに親しみトラブルを起こす子ども達
YouTubeを含めたほとんどのSNSは、利用規約で「13歳以上対象」となっています。日本でコミュニケーションインフラとなっているLINEも、「12歳以上推奨」です。
知らない大人も多いですが、つまり、小学生はSNSは使ってはいけないことになります。
ところで、小学生向けのネット関係の書籍の監修を頼まれることがよくあります。
その時に出版社側が悩むのが、「規約では使っていけないはずなので、SNSを使っている前提の話をしていいのか?」ということ。
私は、「規約では禁止されていることを明記しつつ、実際は使っているのだから、子どもを守れるよう、使っている前提で安全に使う方法をアドバイスすべき」と考えており、そのような内容にしていただいています。
こども家庭庁の「令和7年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果」によると、「動画視聴」は1〜17歳すべての年齢で9割前後の利用率となっています。
「コミュニケーション(SNS、メール等、LINE・Instagram・X・Facebook等)の利用率は、小学校1年生にあたる7歳で14.5%であり、11歳で52.1%と半数を超えます。中学生は8〜9割という高い利用率を誇ります。
小学生以下は使えないはずですが、使ってしまっているのが実態です。
つまり、道徳で各学年で取り上げているそれぞれのテーマは、利用率に裏付けられた子ども達に必要なテーマだったというわけなのです。
日々新しいサービスが登場し、被害が低年齢化しています。2025年の小学生のSNSを通じた性被害が10年間で過去最多となるなど、問題は拡大し続けています。
子ども達が直面している問題に対してアドバイスやヒントが与えられるよう、教科で取り上げていくことは今後も大切なことと言えるのではないでしょうか。