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福井県知事セクハラ問題の背景ーなぜ時代遅れの認識は修正されないのか #エキスパートトピ

筑波大学教授
写真:イメージマート

福井県知事をめぐるセクハラ問題は、単なる不適切発言や行為の是非にとどまらず、「時代遅れ」とされる認識が、社会的成功を収め知的にも評価されてきたはずの人物に、なぜここまで頑強に残り続けるのかを問う事例といえます。価値観の更新が起きにくい心理的メカニズムと、権力関係や組織文化がそれを補強してしまう構造に目を向けながら、本件を手がかりにセクハラの本質と再発防止を考えます。

ココがポイント

福井県の杉本達治前知事(63)がセクハラを認め辞職した問題で(中略)特別調査委員は7日、記者会見で調査報告書を公表した。
出典:秋田魁新報電子版 2026/1/7(水)

報告書は被害者らの現状にも言及した。今も苦痛や屈辱感に耐え、心身に大きな負担を負っていると指摘。
出典:毎日新聞 2026/1/8(木)

職場におけるハラスメントを防止するために、事業主が雇用管理上講ずべき措置が、法及び指針に定められています。
出典:厚生労働省

エキスパートの補足・見解

 一見すると、知事は高い見識と長年の行政経験を持ち、合理的判断ができる人物に見えます。しかし、時代遅れとされるセクハラ的認識が修正されない背景には、知能や知識とは異なる心理的・構造的要因があります。

 成功体験の蓄積は「自分の判断は正しい」という確信を強化し、外部からの修正的フィードバックを受け入れにくくします。とりわけ公的権力を持つ立場では、周囲が違和感を覚えても指摘を控えがちになり、その沈黙自体が「問題はない」という誤った学習を本人に与えます。さらに、年長者や実績ある人物の価値観を尊重する組織文化は、社会規範の変化よりも過去の慣行を温存しやすく、認識の更新を遅らせます。

 防止策として重要なのは、本人の善意や自省に期待するのではなく、構造を変えることです。独立性の高い相談・通報ルートの整備、無意識の思い込みを可視化する内省型研修、指摘した側が不利益を被らない制度的担保が必要です。さらに、今回の報告書の公表のように、経緯や対応の透明性確保も大切です。こうした積み重ねが、沈黙と忖度の文化を改め、セクハラの再発防止と組織への信頼回復につながります。

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ありがとうございます。
筑波大学教授

筑波大学教授。博士(保健学)。専門は, 臨床心理学,犯罪心理学,精神保健学。法務省,国連薬物・犯罪事務所(UNODC)勤務を経て,現職。エビデンスに基づく依存症の臨床と理解,犯罪や社会問題の分析と治療がテーマです。疑似科学や根拠のない言説を排して,犯罪,依存症,社会問題などさまざまな社会的「事件」に対する科学的な理解を目指します。主な著書に「あなたもきっと依存症」(文春新書)「子どもを虐待から守る科学」(金剛出版)「痴漢外来:性犯罪と闘う科学」「サイコパスの真実」「入門 犯罪心理学」(いずれもちくま新書),「心理職のためのエビデンス・ベイスト・プラクティス入門」(金剛出版)。

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