指導や演出の名の下に多発するハラスメントーー美術業界の体質に一石を、女性作家たちの挑戦
ジンさんは縦2メートル近い一対の油絵を、高橋さんは4つの掌編からなるエッセイを出展した。
美術史・ジェンダー史を研究する吉良智子さん(46)は、女性作家たちがこれほどまでに率直に、女である自分の経験を語る作品をつくったことが、この展覧会の特徴だという。 「女の作品だと見られることを恐れていないんだと思います。ジェンダーやフェミニズムをテーマに作品をつくるのは、すごく勇気がいることなんです。なぜなら、男性主流のアート業界から『フェミニストの作家』と括弧にくくられて端に追いやられたり、大学であれば講師から『個人の体験にすぎず、普遍性がない』などと低く評価されたりするからです」 展覧会は好評を博した。来場者は男女およそ半々。神谷さんの作品でも、当事者の語りに耳を傾ける男性の姿がいくつも見られた。ハラスメントが生じる環境は一朝一夕には変わらないが、彼女たちの勇気を受け取る人たちがいることは間違いない。 吉良さんに、この先どんな美術業界になってほしいと思うか、尋ねた。 「まずは、安心して作品をつくって、安心して発表できるようになってほしい。そのためにフェミニズムやジェンダーの考え方が必要で、ここに関係のない人は誰もいないんです」 安心して制作できる環境は女性だけではつくれないし、女性だけが恩恵を受けるものでもない。彼女たちが投じた一石は、次の誰かの勇気になるだろう。 ___ 長瀬千雅(ながせ・ちか)1972年、名古屋市生まれ。編集者、ライター。