「上級国民は逮捕されなくて良いですね」自宅住所がネットに流出、嫌がらせ電話も…《12人死傷の池袋暴走事故》飯塚幸三の長男が直面した「加害者家族への暴力」
〈「飯塚幸三は上級国民だから逮捕されない」は間違いだった…《池袋暴走事故》警視庁幹部が「自民党議員」に呼び出されても逮捕を見送った理由〉 から続く 【写真】この記事の写真を見る(2枚) 2019年4月。母娘2人が死亡し10人が重軽傷を負った「池袋暴走事故」直後、世間では「飯塚幸三は上級国民だから逮捕されない」という怒りの声が爆発した。しかしその裏で、激しい批判とバッシングの矢面に立たされていたのは、事故を起こした本人ではなく、彼の家族だった。 「上級国民は逮捕されなくて良いですね」――ネット上に実家住所や電話番号が晒され、鳴り止まない嫌がらせ電話。逃げ場のない絶望のなか、長男は警察の捜査に全面的に協力し、「これは完全に踏み間違いです。私が父親を説得します」と苦渋の決断を下すのだが……。 長年取材を続けてきたTBSテレビ守田哲氏の新刊『 池袋高齢者暴走事故 遺族と加害者家族の2060日 』(文藝春秋)よりお届けする。(全3回の2回目/ 続きを読む ) ◆◆◆
懲罰としての「逮捕」の危うさ
世論は「逮捕」を懲罰目的のように捉えていた。しかし、懲罰的な思想に偏ると、警視庁公安部による大川原化工機冤罪事件のように刑訴法の精神を逸脱した逮捕や、人質司法を目的とした長期勾留が起こる。 東京地検の検事は池袋暴走事故の捜査を振り返り、警視庁に対してこう評した。 「逮捕したら二〇日間(刑訴法で定められた最長勾留期間)で、聴取などを全て終わらせる必要性があったが、在宅捜査で時間的余裕ができたため、捜査を十分に尽くせた」 当時、捜査関係者は私に対し、意外な事実を話していた。 「実は、飯塚の長男は『逮捕してほしい』と話してたんだよ。脅迫とかの攻撃から家族を守るためには、それがベストだと考えたんだろうね。皮肉なもんだけど」 では、捜査はどのように行われたのか。
事故当日、交通捜査課長が会見で話した。「飯塚は『アクセルが戻らなくなった』と供述しているが、運転ミスの線が強い。メーカーの検査も必要だと考えている」 警視庁は事故直後からアクセルとブレーキの踏み間違いを疑っていた。 池袋暴走事故の捜査は、通常の事件事故とは異なっていた。事件事故は一般的に送検、起訴、裁判という手続きを辿り、警察は送検、検察は起訴と、それぞれの捜査機関が役割に応じて目標を掲げる。 しかし、池袋暴走事故の場合、警視庁と東京地検は捜査の初期から強いタッグを組み、裁判で過失運転致死傷罪の法定刑の上限である禁錮七年(条文では「七年以下の拘禁刑若しくは禁錮又は百万円以下の罰金」)を求刑することを最重要目標として掲げていたという。実際に求刑をするのは検察官だが、その検察官が七年を求刑できるだけの十分な証拠を集めるべく捜査を進めたのだ。
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