桜花姫第弐部特別編
第弐部
特別編
第一話
女体地獄
小町娘の悪霊小椿童女が出現するより二週間前…。西国の山奥では真夜中に大勢の女性達の呻き声が響き渡るとの噂話が全国的に出回ったのである。
『悪霊征伐なんて東大寺の樹体毘沙門天の事件以来ね!』
最上級妖女の月影桜花姫は久方振りの悪霊事件にワクワクする。
『噂話の内容では…大勢の女性達の呻き声だったかしら?』
呻き声の噂話が気になった桜花姫は真夜中の深夜帯…。大勢の女性達の呻き声が響き渡ったとされる問題の山奥へと移動したのである。
『一体何かしら?』
村里から移動してより一時間半後…。
『如何やら問題の場所は此処っぽいわね…』
桜花姫は目的地の山奥へと到達したのである。
『最近大勢の女性達が匪賊によって拷問されたのかしら?』
女性達の呻き声は大勢の匪賊達の仕業であると思考するのだが…。
『匪賊の仕業なら今頃社会問題化するでしょうし…東国武士団だって無視出来ないわよね?』
今現在大勢の女性達が匪賊によって連行されたとされる情報は存在せず別の原因であると推測する。
『匪賊以外なら…やっぱり悪霊の仕業なのかしら?』
桜花姫は彼是と思考し続ける。彼是と思考し続けてから数十分後…。
「えっ?」
遠方の山中より大勢の呻き声が響き渡ったのである。
『何かしら?』
呻き声を傾聴し続けると呻き声の声質は大勢の女性達であり桜花姫はハッとした表情で反応し始める。
『ひょっとすると噂話の呻き声かしら!?』
噂話の呻き声であると確信したのである。
『大勢の呻き声だわ…女性っぽいわね…』
桜花姫は咄嗟に行動を開始する。
『呻き声の正体は…一体何かしら?』
大勢の女性達の呻き声が響き渡る場所へと直行し始め…。十数分後である。
「なっ!?」
桜花姫は目前の光景に驚愕する。暗闇の自然林に存在するのは全長三十三間規模の巨大移動物体なのだが…。
「えっ…」
巨大移動物体の表面を凝視し続けると数千体もの全裸の女体が融合化した異形の状態だったのである。
『此奴は…無数の女体だわ…』
桜花姫は異様の光景に絶句する。
『此奴は女体の百鬼悪食餓鬼みたいだわ…』
悪食餓鬼の集合体である百鬼悪食餓鬼を連想したのである。女体の集合体はノソノソとした身動きで蠢動…。桜花姫に接近し続ける。
『ひょっとして此奴の正体は…【女体海鼠】かしら?』
女体海鼠とは数千体もの女体が融合化した集合体の悪霊である。女体海鼠の正体としては戦乱時代に奴隷として扱われた女性達の無念が集合体として実体化した超自然的存在とされる。女体海鼠は全体的に海鼠みたいな形状であり女体海鼠と命名されたのである。女体海鼠は一部の村里では地獄女体とも呼称される。
「女性達の呻き声の正体は…女体海鼠…あんただったのね!」
すると女体海鼠の体表に存在する無数の女体は呻き声を発生させる。
「うわっ…」
『呻き声が気味悪いわね…やっぱり呻き声の正体は女体海鼠みたいだわ…』
女体海鼠の呻き声は非常に不吉であり桜花姫は気味悪くなる。
『止むを得ないわね…』
桜花姫は最大の十八番である天道天眼を発動する。天道天眼の発動により桜花姫の妖力が普段の状態よりも数百倍へと急上昇したのである。
『天道天眼の効果で私の妖力が数百倍に急上昇したわね!』
桜花姫は満面の笑顔で女体海鼠を凝視…。
「早速あんたを成仏させるからね!覚悟しなさいよ!女体海鼠!」
一方女体海鼠の無数の女体が桜花姫に注目し始める。すると全身の女体が口部を開口させたのである。
「えっ…」
『女体海鼠は一体何を?』
女体海鼠は女体の口部より高濃度の瘴気を放出し始め…。
『猛毒の瘴気だわ!』
女体海鼠の瘴気は非常に強力であり周辺の植物が一瞬で枯死したのである。桜花姫は即座に呼吸を停止させる。
『女体海鼠の瘴気は僅少でも吸収しちゃうと毒死するでしょうね…』
桜花姫は息苦しい様子であるが…。必死に我慢し続ける。
『正直…呼吸を我慢し続けるのは困難だわ…』
桜花姫は呼吸を我慢し続けるのが辛苦に感じられる。
『止むを得ないわね!こんな場合は…』
桜花姫は浄化の妖術を発動したのである。清涼の冷風が発生し始め…。女体海鼠の全身から発生した瘴気を浄化したのである。
「浄化は成功ね!」
『女体海鼠の瘴気を浄化出来たわ!』
桜花姫は瘴気の浄化に大喜びするものの…。今度は桜花姫の方向に位置する一部の女体が口部より高熱の火炎を放射したのである。
『今度は火炎攻撃!?』
即座に妖力の防壁を発動…。女体海鼠の火炎攻撃を無力化出来たのである。
『間一髪だったわ…一歩間違えれば私は今頃黒焦げだったでしょうね♪』
一安心した桜花姫であるが…。女体海鼠の全身の女体が高音の奇声を発生させる。
「なっ!?」
『今度は奇声攻撃かしら!?』
女体海鼠の奇声は非常に強力であり通常の人間であれば鼓膜が破壊される程度には強力である。
『女体海鼠の奇声…普通の人間なら確実に気絶するでしょうね…』
桜花姫は正気を維持出来るものの…。女体海鼠の奇声攻撃により身動き出来ない。
『身動き出来ないわ…如何しましょう?』
すると直後である。女体海鼠の一体の女体口部から衝撃波が発生…。
「きゃっ!」
桜花姫は女体海鼠の衝撃波により地面に横たわる。
「ぐっ…」
地面に横たわった衝撃により脊髄を損傷したのである。
『脊髄が損傷しちゃったのかしら?身動き出来ないわ…』
桜花姫は脊髄の損傷で身動き出来なくなる。対する女体海鼠はノソノソと地面に横たわった状態の桜花姫に急接近する。
「あんた達は…私を如何するのよ?」
桜花姫は恐る恐る女体海鼠に問い掛ける。すると女体海鼠の無数の女体が冷笑した表情で桜花姫を凝視する。女体の無数の手腕が桜花姫の肉体に接触し始め…。
『如何やら女体海鼠は…私を捕食したいみたいね…』
女体海鼠に捕食される寸前である。
『私には…』
桜花姫は分身の妖術を発動すると女体海鼠に捕捉された桜花姫の肉体はポンッと消滅…。女体海鼠の無数の女体は突如として消滅した桜花姫にハッとした表情で周囲をキョロキョロさせる。すると女体海鼠の目前の地面より…。
「残念だったわね!女体海鼠!」
目前の地面から桜花姫が出現する。
「あんたが捕捉したのは私の分身体なのよね!」
桜花姫は女体海鼠に挑発したのである。
「折角だからね!早速定番の!」
桜花姫は十八番である変化の妖術を女体海鼠に発動する。
「女体海鼠!あんたは私の大好きな桜餅に変化しなさい!」
女体海鼠を標的に変化の妖術を発動した直後…。女体海鼠は全身からポンッと白煙が発生したのである。白煙が発生すると地面には小皿に配置された桜餅が確認出来る。
『変化の妖術は成功ね!』
女体海鼠は桜花姫の変化の妖術により彼女の大好きな桜餅に変化…。完全に無力化されたのである。
『桜餅…頂戴するわね!』
桜花姫は桜餅に変化した女体海鼠をパクッと一口…。捕食したのである。
「女体海鼠…」
『彼女の瘴気は厄介だったけど…仕留められたわね!』
女体海鼠を捕食した影響からか山中では霊気が感じられない。
『女体海鼠を退治出来たし…一先ずは安心ね!』
桜花姫は村里へと戻ったのである。元凶の女体海鼠が仕留められて以降…。西国の山奥では大勢の女性達の呻き声は響き渡らなくなる。
第二話
女子会
女体の悪霊…。女体海鼠との死闘から五日後の出来事である。南国の村里は非常に平穏であり一人の少女が村道を移動する。
「はぁ…」
『今日も村里は長閑だね…』
一人の少女とは誰であろう山猫妖女の小猫姫…。小猫姫は神族の一人とされ別名では蛇神とも呼称される蛇体如夜叉の列記とした孫娘の一人である。人一倍甘えん坊の性格であり非常に人懐っこい妖女の小猫姫であるが…。小猫姫は最上級妖女とされ自身にとって姉貴分である月影桜花姫を憧憬する一人である。造物主の妖星巨木との大激闘から半年後の十一月上旬の時期…。小猫姫は姉貴分の桜花姫を意識したのか常日頃から神出鬼没の悪霊の出現を希求し続ける。
「はぁ…」
『退屈だな…』
小猫姫は退屈凌ぎに南国の村里で散歩したのである。
『悪霊は…出現しないかな?私も桜花姫姉ちゃんみたいに極悪非道の悪霊とか悪人達を退治したいよ…』
すると村道の道中…。
「えっ?」
『女の人だ…』
村里の道端より白装束の小柄の女性と遭遇する。
『一体誰だろう?』
白装束の女性は黒髪の長髪であり表情は無表情であるものの…。女性は非常に容姿端麗であり摩訶不思議の雰囲気から人間の女性とは無縁であると感じる。
『ひょっとして彼女の正体は妖女なのかな?』
すると白装束の女性は小猫姫と遭遇すると小猫姫を直視…。微笑み始める。
「あんたって可愛らしい女の子だけど非常に異質的雰囲気ね♪ひょっとするとあんたの正体は人外の妖女かしら?」
「えっ!?」
『初対面なのに一目で私を妖女だって認識出来るなんて…彼女は一体何者なの!?』
小猫姫は女性の洞察力に驚愕する。
「如何してあんたは初対面の私を妖女だって察知出来るの?あんたは一体何者なの?ひょっとしてあんたも…人外の妖女なの?」
小猫姫は恐る恐る女性に問い掛けると女性は笑顔で自身の名前を名乗る。
「私はね…粉雪妖女の雪美姫よ♪」
「粉雪妖女の?雪美姫?」
『粉雪妖女の雪美姫って以前…』
小猫姫は雪美姫の名前に反応したのである。雪美姫は桜花姫に関連する人物であると思考する。
『雪美姫って…桜花姫姉ちゃんに退治された極悪非道の妖女の名前だったかな?ひょっとして彼女は桜花姫姉ちゃんに退治された雪美姫本人なのかな?』
小猫姫は雪美姫と名乗る女性が半年前の戦闘で桜花姫によって退治された粉雪妖女の雪美姫と同一人物か如何なのか恐る恐る問い掛ける。
「人違いだったら御免なさい…ひょっとして雪美姫姉ちゃんは以前…桜花姫姉ちゃんに退治されちゃった極悪非道の妖女なの?」
雪美姫は小猫姫に問い掛けられた直後である。
「えっ!?桜花姫ですって!?」
『如何して彼女の口先から桜花姫の名前が?』
雪美姫は桜花姫の名前の一言だけで一瞬動揺する。
「えっ…」
『雪美姫姉ちゃんの様子だとしたら…如何やら図星みたいだね…』
小猫姫は雪美姫の反応から桜花姫に退治された本人であると確信したのである。
『やっぱり彼女が桜花姫姉ちゃんに退治された粉雪妖女の雪美姫なのね…』
一方の雪美姫は動揺した様子であるが…。
「私は一度桜花姫に退治されてから改心したのよ!半年前みたいに誰かに八つ当たりしないから警戒しなくても大丈夫なのよ…私が極悪非道なんて勘違いしないでね!」
雪美姫は苦笑いした様子で自身は改心したと断言したのである。
「雪美姫姉ちゃんは改心したのね!」
すると今度は雪美姫が小猫姫に問い掛ける。
「あんたこそ一体何者なのよ?桜花姫を姉ちゃんなんて…ひょっとしてあんたは彼女の親戚なのかしら?」
「私の名前は山猫妖女の小猫姫!桜花姫姉ちゃんの妹分だよ!」
小猫姫は満面の笑顔で自身の名前を名乗る。
「あんたは桜花姫の妹分なのね…」
『彼女は桜花姫とは正反対で純粋無垢みたいね…』
小猫姫の様子から人一倍純粋無垢であると感じる。
「雪美姫姉ちゃん!折角だし私の家屋敷で一服しない?」
「えっ?」
雪美姫は一瞬困惑するものの…。
「折角だからね♪暇潰しにあんたの家屋敷で一服するわよ♪」
小猫姫は雪美姫の承諾に大喜びしたのである。
「雪美姫姉ちゃん!早速道案内するね!」
小猫姫と雪美姫は家屋敷へと移動し始める。二人が移動を開始してから数分後…。小猫姫と雪美姫は蛇体如夜叉の家屋敷へと到達する。
「蛇体如夜叉婆ちゃん!戻ったよ!」
「小猫姫よ…戻ったのかい?ん?」
『彼女は…』
蛇体如夜叉は玄関口にて佇立する雪美姫に注目したのである。
「誰かと思いきや…あんたは中堅の妖女みたいだね…」
「私は粉雪妖女の雪美姫よ…中堅って表現は不適切だけど…」
雪美姫は無表情で自身の名前を名乗る。
「あんたは粉雪妖女の雪美姫だって?」
すると蛇体如夜叉は恐る恐る…。
「あんたは半年前…大寒波の妖術で国全体を寒冷化させた極悪非道の粉雪妖女だね…あんたは最上級妖女の桜花姫ちゃんに喝破されたらしいね…」
「ぐっ…」
蛇体如夜叉の発言も雪美姫にとっては図星であり何も反論出来ず沈黙し始める。
『私って…別の意味で有名みたいね…』
雪美姫にとって半年前の出来事は忘却したい黒歴史だったのである。
「本当…あんたは人騒がせな妖女だよ…金輪際夫婦間の苛立ちで誰かに八つ当たりしたら駄目だよ…雪美姫…」
「承知です…」
雪美姫の反省した様子に蛇体如夜叉は一安心する。
「折角だし…あんたも一休みしな!雪美姫!」
「勿論よ!暇潰しには好都合だからね…」
「小猫姫よ…折角の客人だからね!客人の雪美姫に緑茶でも用意しな♪」
小猫姫は雪美姫に緑茶を用意したのである。
「緑茶だよ♪雪美姫姉ちゃん♪」
「感謝するわね♪小猫姫♪」
すると直後…。
「あんた達!邪魔するわよ!」
最上級妖女の桜花姫が家屋敷の居室へと乱入する。
「えっ!?あんたは桜花姫!?」
「桜花姫ちゃん!?」
「桜花姫姉ちゃん!?」
彼女達は突然の桜花姫の乱入に驚愕したのである。
「吃驚するじゃない!桜花姫!」
雪美姫は桜花姫に怒号し始める。
「何よ!?私に内緒であんた達だけで女子会なんて意地悪ね!私にも女子会に参加させなさい!」
「小猫姫よ…折角だから桜花姫ちゃんにも緑茶を用意しな…」
蛇体如夜叉は小猫姫に緑茶の提供を指示したのである。
「了解!蛇体如夜叉婆ちゃん!」
小猫姫は承諾する。
「桜花姫姉ちゃん!緑茶だよ!」
小猫姫は即座に桜花姫にも緑茶を用意したのである。
「感謝するわね♪小猫姫♪」
小猫姫に緑茶の茶碗を手渡された直後…。桜花姫は手渡された緑茶を数秒間で摂取したのである。
「桜花姫ちゃん…あんたね…」
「あんたは緑茶を一瞬で…」
「桜花姫姉ちゃん…飲み方が酒豪の親父さんみたいだよ…」
三人は緑茶を一瞬で摂取した桜花姫に苦笑いする。
「地上世界の女神様である私を酒豪の親父さんみたいって…小猫姫は失礼しちゃうわね…あんたを私の大好きな桜餅に変化させちゃおうかしら?」
「桜花姫姉ちゃん…桜餅って…」
小猫姫は一瞬戦慄…。身震いする。
「冗談よ!冗談!本気にしないでね♪小猫姫♪」
「はぁ…冗談か…正直吃驚しちゃったよ…桜花姫姉ちゃん…」
小猫姫は一安心したのである。
『桜花姫の冗談は冗談っぽくないのよね…』
雪美姫は内心冷や冷やする。
「桜花姫ちゃんは仕方ないね…」
蛇体如夜叉は桜花姫の冗談に苦笑いしたのである。すると直後…。
「ん?」
『一体何かしら?』
桜花姫は突如として不吉の気配を感じる。
「桜花姫?」
「桜花姫姉ちゃん?」
「不吉の気配を感じるのよ…悪霊かしら?」
「不吉の気配とは…如何やら村里の近辺で悪霊が出現したみたいだね…」
「えっ…悪霊が出現したの!?」
小猫姫が興味深そうな様子で悪霊の一言に反応する。雪美姫は恐る恐る…。
「悪霊って唐突に出現するのね…」
「雪美姫姉ちゃん!悪霊は神出鬼没だからね!唐突に出現するよ!」
小猫姫は笑顔で雪美姫に説明する。
「如何やら今回も…私の出番みたいね!」
桜花姫は大喜びした様子で出歩いたのである。
「えっ!?桜花姫姉ちゃん!私も神出鬼没の悪霊を退治するよ!」
小猫姫も即座に桜花姫を追尾…。外出したのである。
「小猫姫も…」
『彼女は大丈夫かね?』
蛇体如夜叉は小猫姫を心配する。
「二人とも仕方ないわね…私も暇潰しに彼女達に援護するわ…」
雪美姫も二人の様子が気になるのか外出したのである。
「はぁ…」
『結局全員出掛けちゃったね…』
蛇体如夜叉は彼女達の活発さに苦笑いする。
「彼女達は大丈夫だろうかね?」
『小猫姫が一番心配だよ…』
蛇体如夜叉は小猫姫が無茶しないか正直心配だったのである。
第三話
濃霧
妖女の三人が外出し始めてから数分後…。
『到着したわね…』
桜花姫は霊気の感じる場所へと到達したのである。霊気の感じる場所は殺風景の農村地帯であり人気らしい人気は何一つとして感じられない。
『一体何が出現するのかしら?』
桜花姫は悪霊の出現に警戒したのである。すると桜花姫の背後より…。
「桜花姫姉ちゃん!」
「桜花姫!」
「えっ…あんた達は…」
背後より小猫姫と雪美姫が近寄る。
「別に…今回も私一人で大丈夫なのに…あんた達は余程心配性なのね…」
桜花姫は内心呆れ果てる。
「桜花姫!あんたばっかり悪霊退治なんて欲張り過ぎよ!」
「今回は私達にも手伝わせてよ!桜花姫姉ちゃん!」
小猫姫も雪美姫も悪霊征伐に参加したかったのである。
「あんた達ね…今回ばかりは仕方ないわね…」
桜花姫は内心不本意であるものの…。彼女達の意向を承諾したのである。
『霊気から判断して…今回も大群みたいだわ…』
周囲より無数の霊気を感じる。
「二人とも!今回の相手も大群よ…油断大敵だからね!」
「桜花姫姉ちゃんこそ!油断大敵だよ!」
「悪霊の大群か…面白そうね!今回は何が出現するのやら?」
小猫姫も雪美姫も悪霊の出現にワクワクし始める。突如として周囲の空間より高濃度の濃霧が発生したかと思いきや…。周囲から気味悪い呻き声が彼方此方に響き渡る。
『悪霊の呻き声かしら?大群みたいね…』
突然発生した濃霧と無数の呻き声に彼女達は警戒したのである。
「悪霊が出現したのかしら?」
「呻き声が気味悪いわね…桜花姫…」
「一体何が出現するのかな?桜花姫姉ちゃん?」
周辺の空間は濃霧の影響により視界が不良化し始めるが…。
「えっ?人影かしら?」
濃霧より無数の人影が確認出来る。
「人影だよ…桜花姫姉ちゃん…相手は大群みたいだね…」
無数の人影は鈍足であるが…。無数の人影はふら付いた様子で桜花姫一行に急接近したのである。
「如何やら霊気の正体みたいね…」
無数の人影の正体とは全身が腐敗した小柄の人型であり両目の眼球は噴出…。皮膚の腐敗によって全身が血塗れの悪霊である。
「此奴は悪食餓鬼ね…久方振りの再会だわ…」
「悪食餓鬼って…半年前の大事件で桜花姫姉ちゃんが神通力で浄化させたのに復活しちゃったの!?」
造物主の妖星巨木との戦闘以降は悪食餓鬼の大群は出現しなかったが…。今回の悪食餓鬼の大量出現により小猫姫は動揺する。
「小猫姫…悪霊は神出鬼没よ…悪食餓鬼は唐突に出現するからね…」
「何方にせよ…悪霊は仕留めないと厄介なのよね…桜花姫…」
「私は早速…」
桜花姫は妖力を蓄積させたのである。
「桜花姫姉ちゃんの両目が瑠璃色に…十八番の天道天眼だね!」
桜花姫は神性妖術の天道天眼を発動する。
「桜花姫の両目…天道天眼かしら?」
天道天眼を発動すると半透明だった両面の血紅色の瞳孔が半透明の瑠璃色に発光したのである。天道天眼を発動した影響により桜花姫の妖力が普段の状態よりも数百倍へと増大化する。
『悪食餓鬼の大群が相手なら…小技で仕留められるわ…』
桜花姫は即座に火炎の妖術を発動…。
「あんた達!成仏なさい!」
突如として数体の悪食餓鬼の皮膚が火炎の妖術により燃焼し始める。彼等の全身が発火し始めてより数秒後…。地面には数体の黒焦げの焼死体が確認出来る。
「悪食餓鬼が一瞬で仕留められちゃったね…桜花姫姉ちゃんの妖術かな?」
「桜花姫だから当然でしょう…こんな雑魚なら私達だけでも事足りるわね!」
「私だって頑張れるよ!」
相手が悪食餓鬼の大群であり小猫姫と雪美姫は楽勝であると感じる。
「二人とも…相手が悪食餓鬼でも油断は出来ないわよ…」
小猫姫と雪美姫の方向にも無数の悪食餓鬼が殺到する。
「折角の機会だからね!今回はあんた達も手伝いなさい!」
桜花姫は二人にも手柄を提供したのである。
「私は早速!はっ!」
小猫姫は変化の妖術を発動…。体高のみで等身大の人間をも上回る巨体の妖獣に変化したのである。
「小猫姫は巨体の化け猫に変化したのかしら?」
「巨体の化け猫なんて失礼しちゃうね!雪美姫姉ちゃん…」
小猫姫は雪美姫の発言に落胆する。
「私は伝説の妖獣に変化出来るの!」
「伝説の妖獣ですって?」
『最上級妖女の桜花姫よりは若干下回るかも知れないけれど…小猫姫の妖力も非常に強力なのね…』
小猫姫は伝説の妖獣に変化すると妖力が普段よりも数十倍に急上昇…。妖力のみなら最上級妖女の桜花姫に拮抗する領域である。
「私は悪霊の大群を一掃しちゃうよ!」
彼女は口先より妖力を蓄積し始め…。雷撃の球体を形作る。
「悪霊!成仏しろ!」
小猫姫は口先から雷撃の球体を発射…。三人の前方より殺到する数十体もの悪食餓鬼を一瞬で一掃したのである。
「えっ!?小猫姫!?」
小猫姫の雷球の破壊力は絶大であり地面の射程圏内が焦土化する。小猫姫の妖力の強大さに雪美姫は驚愕したのである。
『彼女は…攻撃力だけなら桜花姫を上回るわね…』
小猫姫は完全に攻撃力に特化した妖女であり攻撃力のみなら最上級妖女の桜花姫をも上回る。
「攻撃力は私以上ね!小猫姫!」
桜花姫は小猫姫の攻撃力を高評価する。
「桜花姫姉ちゃん以上なのは攻撃力だけだけどね!」
『私って…攻撃力だけなら桜花姫姉ちゃん以上なのね!』
小猫姫は姉貴分の桜花姫に高評価され…。内心大喜びしたのである。すると雪美姫が恐る恐る…。
「油断大敵よ…小猫姫…」
「えっ?」
濃霧から再度数十体もの悪食餓鬼が再度出現し始め…。彼女達に殺到したのである。
「悪食餓鬼は私が一掃したのに…」
「悪食餓鬼は地面から無限に出現するからね!油断出来ないわよ!」
「如何やら今度は私の出番みたいね…」
雪美姫は恐る恐る両目を瞑目させる。
「無数の悪食餓鬼…氷結なさい!」
雪美姫は即座に氷結の妖術を発動したのである。直後…。地面から無数に出現した数十体もの悪食餓鬼が雪美姫の発動した氷結の妖術により全身が氷結したのである。
「氷結の妖術…成功ね!」
氷結から数秒後…。氷結の妖術により身動き出来なくなった無数の悪食餓鬼の肉体が崩れ落ちたのである。
「雪美姫!あんたでも悪食餓鬼程度なら仕留められるのね!」
「はっ!?失礼しちゃうわね!桜花姫!」
一方の雪美姫は笑顔で発言した桜花姫に睥睨し始める。
「私だって悪食餓鬼程度…何百体?何千体が相手でも仕留められるわよ!」
雪美姫は桜花姫に怒号したのである。
「御免♪御免♪冗談よ♪雪美姫♪」
桜花姫は満面の笑顔で雪美姫に謝罪する。
「桜花姫…私の実力を過小評価しないでよね…」
「雪美姫♪心配しなくてもあんたの実力も本物だから!」
濃霧の遠方より数体の巨体の人影が鈍足で彼女達に接近したのである。
「桜花姫姉ちゃん?今度は…」
「此奴…先程の悪食餓鬼よりは大物っぽいわね♪」
『如何やら悪霊の集合体みたいだわ…』
出現した悪霊は悪食餓鬼の亜種とされる悪霊の集合体…。百鬼悪食餓鬼が五体も出現したのである。
「二人とも…此奴は百鬼悪食餓鬼よ!こんな場所で百鬼悪食餓鬼が五体も出現するなんてね!」
「えっ…此奴…気味悪いわね…」
「百鬼悪食餓鬼は全体的に肉団子みたいな体躯だね…」
百鬼悪食餓鬼は体表には無数の悪食餓鬼の頭部が確認出来…。雪美姫と小猫姫は百鬼悪食餓鬼の姿形を気味悪がる。
「初見では気味悪いかも知れないけれど♪私は平気よ♪」
「桜花姫姉ちゃんはこんな怪物が相手でも平気なの?」
「桜花姫は経験豊富よね…悪霊征伐の熟練者だから当然でしょうね…」
百鬼悪食餓鬼の出現頻度は数多く通常の悪食餓鬼と同様…。遭遇する可能性も高確率である。悪霊征伐の経験者である桜花姫も遭遇した当初は非常に気味悪かったものの…。数多くの百鬼悪食餓鬼との遭遇からか平然とした様子だったのである。
「早速♪」
桜花姫は変化の妖術を発動…。三体の百鬼悪食餓鬼を大好物の桜餅に変化させる。
「桜花姫姉ちゃんは百鬼悪食餓鬼を桜餅に変化させたのね♪」
小猫姫は口先から高熱の雷球を発射…。一体の百鬼悪食餓鬼を消滅させたのである。
「私だって…こんな悪霊!」
雪美姫は氷結の妖術を発動…。一体の百鬼悪食餓鬼を氷結させたのである。数秒間が経過…。
「あんたも成仏するのね!」
全身が氷結した百鬼悪食餓鬼は肉体が一瞬で崩れ落ちる。
「二人とも!如何やら片付いたわね!」
桜花姫一行が五体の百鬼悪食餓鬼を仕留めた直後…。
「濃霧が霧消し始めたわ…」
無数の悪霊を仕留めた影響からか周囲の濃霧が霧消し始めたのである。
「悪霊の大群を仕留めた影響でしょうね…」
「悪霊の大群を仕留められたし!一安心だね!桜花姫姉ちゃん!」
無数の悪霊を退治出来桜花姫一行は安堵したものの…。
「えっ!?」
『今度は何かしら!?』
桜花姫は突如として不吉の気配を感じる。
「桜花姫姉ちゃん?如何しちゃったの?」
小猫姫は恐る恐る桜花姫に問い掛ける。
「気配を感じるのよ…」
「気配?今度は何が出現したの?」
「ひょっとして今度も悪霊が出現したのかしら?」
小猫姫と雪美姫は悪霊の出現に警戒するのだが…。
「可笑しいよ!悪霊の霊気が感じられないけど!」
「本当だわ…霊気は感じられないわよ!本当に悪霊なの!?」
悪霊が出現する場合は僅少であっても悪霊特有の霊気が感じられるのだが…。不自然にも今回は悪霊特有の霊気が何一つとして感じられない。
『恐らく此奴は…小面袋蜘蛛みたいに自身の霊気を器用に消失させられるのね…』
大抵の悪霊であれば霊気は感知出来るものの…。唯一の例外として器物の悪霊である小面袋蜘蛛系統は悪霊特有とされる霊気やら気配を察知出来ない。
「非常に厄介だわ…」
『霊気を察知出来ないのは小面袋蜘蛛以来ね…』
桜花姫の様子に雪美姫と小猫姫も正体不明の気配に警戒する。
「二人とも!油断しないでね!」
「勿論よ!」
「桜花姫姉ちゃんこそ!油断大敵だよ!」
すると直後である。
「きゃっ!」
「えっ!?何よ!?桜花姫!?」
「大丈夫!?桜花姫姉ちゃん!?」
雪美姫と小猫姫は桜花姫の突然の悲鳴に吃驚する。
「ぐっ!左足が…」
何時の間にか桜花姫の左足に小針が刺さったのである。
「桜花姫姉ちゃんの左足に小針が!」
「小針ですって!?」
雪美姫が恐る恐る桜花姫の左足に接触…。
「紫色の…液体!?」
小針の表面から紫色の液体を発見したのである。
「此奴はひょっとして…毒針かしら!?」
「えっ!?毒針だって!?」
雪美姫の毒針の一言に小猫姫が大騒ぎし始める。
「小猫姫…如何してあんたが大騒ぎするのよ?」
桜花姫は一人で大騒ぎし始めた小猫姫に苦笑いしたのである。
「毒針だとしても私は列記とした妖女なのよ!大抵の毒素では非力の人間みたいに簡単には死なないわよ!」
桜花姫は満面の笑顔で無理矢理に左足の毒針を引っこ抜いたのである。
「桜花姫は大胆不敵ね…毒針を無理矢理に引っこ抜くなんて…」
「桜花姫姉ちゃん…本当に大丈夫なのかな?」
小猫姫は桜花姫を心配する。
「私なら大丈夫よ!小猫姫!あんたは心配性ね!」
桜花姫は満面の笑顔で大丈夫であると断言したのである。
「ん?」
桜花姫一行の背後より大蛇らしき移動物体が出現したかと思いきや…。大蛇らしき移動物体は神速の身動きで彼女達の前方へと移動したのである。
「彼女は…」
「下半身は大蛇みたいだけど…」
「上半身は人間の女体だわ…彼女は一体何者なのよ?」
桜花姫一行の前方より出現した大蛇らしき移動物体とは上半身が巫女装束の女性…。下半身が大蛇の怪物である。
「桜花姫姉ちゃん!?此奴は一体何者なの!?此奴の正体は神出鬼没の悪霊なの?」
桜花姫は小猫姫の問い掛けに恐る恐る…。
「彼女は巫女の亡霊…上級悪霊の【毒蛇巫女】でしょうね…」
「上級悪霊の毒蛇巫女ですって!?」
「えっ!?毒蛇巫女は上級悪霊なの!?」
雪美姫と小猫姫は驚愕する。毒蛇巫女とは名前と同様に巫女の悪霊であり上級悪霊の一角として知られる。毒蛇巫女は戦乱時代以前…。太古の大昔にとある儀式により人身御供として殺害された巫女の怨念が実体化した超自然的存在とされる。毒蛇巫女は上半身こそ巫女装束の女性であるが…。下半身は大型の毒蛇であり異形の悪霊である。
「桜花姫姉ちゃん?彼女って悪霊なの?毒蛇巫女から霊気は感じられないよ…」
「本当だわ…毒蛇巫女からは霊気が感じられないわね…奇妙だわ…」
毒蛇巫女は器物の悪霊である小面袋蜘蛛同様に霊気が感じられない。
「如何やら毒蛇巫女は器物の悪霊…小面袋蜘蛛みたいに体内の霊気を器用に消失させられるみたいね…」
「桜花姫ならこんな悪霊…楽勝よね?」
雪美姫に恐る恐る問い掛けられた桜花姫であるが…。
「えっ…桜花姫?」
「桜花姫姉ちゃん?」
桜花姫は毒蛇巫女に畏怖したのか恐る恐る後退りする。
「彼女は…毒蛇巫女は相当危険かも知れないわ…」
「えっ!?危険なの!?此奴!?」
「本当に危険なの!?桜花姫姉ちゃん!?」
小猫姫と雪美姫は毒蛇巫女に畏怖する桜花姫の様子に不安がる。
『桜花姫姉ちゃんは毒蛇巫女を退治出来るのかな?』
『最上級妖女の桜花姫が悪霊を相手に畏怖するなんて…毒蛇巫女って悪霊は余程強力なのね…』
すると毒蛇巫女は桜花姫一行に冷笑し始める。
「中央の妖女は本能的に私の危険性を察知出来たみたいね♪」
毒蛇巫女は高知能であり人語で喋り始めたのである。
「えっ!?」
『毒蛇巫女って悪霊なのに喋れるの!?』
彼女達は人間の口言葉で発言する毒蛇巫女に驚愕する。
「早速♪あんた達の身動きを封殺するわね♪」
毒蛇巫女は金縛りの効力で三人の身動きを封殺したのである。
「なっ!?」
『身動き出来ないわ!金縛りかしら!?』
桜花姫一行は毒蛇巫女の霊能力によって身動き出来なくなる。
「金縛りの効果よ!あんた達は身動きしたくても身動き出来ないでしょう?」
毒蛇巫女は身動き出来なくなった桜花姫一行に冷笑する。
「ぐっ!」
すると桜花姫は突如として全身の筋力が低下し始め…。グッタリとした様子で地面に横たわったのである。
『何かしら?全身の筋力が…』
桜花姫は全身の筋力低下により全身が麻痺し始める。
「私の毒針の効果よ!相手が人外の妖女でも猛毒の効果は抜群みたいね!」
毒蛇巫女の体内で生成される猛毒の毒針は非常に強力だったのである。毒蛇巫女の毒針は常人の何十倍もの屈強の肉体である超自然的存在の妖女でさえも麻痺させられる。
「私の毒針は普通の人間なら数分間で毒死するでしょうね!純血の妖女であれば二日間?一日が限度かしら!」
毒蛇巫女の体内の毒液は猛毒であり通常の人間であれば数分間程度で毒死するとされ…。通常の瘴気では死なないとされる屈強の妖女でも一日か二日程度で毒死させられる。
「親玉っぽいあんたは妖女の血統みたいだけど…非力の人間との混血みたいだし半日間が限度かしら?肉体的には貧弱ね!」
『半日間ですって?』
桜花姫は毒蛇巫女の半日間の一言に身震いしたのである。
『私は…半日間で死んじゃうのかしら?』
すると桜花姫は意識が遠退き始める。
『最上級妖女の桜花姫が毒針だけでこんなにも衰弱化するなんて…』
『毒蛇巫女の猛毒は予想以上に強力みたいだね…』
雪美姫と小猫姫は毒蛇巫女の強大さを実感したのである。
「親玉の彼女は人間の混血だから半日間で衰弱死するでしょうね!いい気味だわ!彼女が衰弱死するのは時間の問題よ!」
毒蛇巫女は地面に横たわった状態の桜花姫に冷笑し始める。
『天下無敵の桜花姫が半日間で!?』
『桜花姫姉ちゃん…』
雪美姫と小猫姫は戦闘不能の桜花姫に絶望したのである。すると毒蛇巫女は満面の笑顔で…。
「無論!あんた達二人も私の毒針で毒死させるから安心なさい!遅かれ早かれ…今日はあんた達の命日なのだから!」
毒蛇巫女は雪美姫と小猫姫に命日を断言する。
「えっ!?」
『此奴…』
雪美姫と小猫姫は毒蛇巫女に恐怖したのである。
『私達は…一体如何すれば?私達も毒蛇巫女に殺されるかも知れないわ…最強の桜花姫姉ちゃんがこんな状態だし…』
『最上級妖女の桜花姫がこんな瀕死の状態では…上級悪霊の毒蛇巫女なんて凡庸の私達では無理でしょうね…』
雪美姫と小猫姫が絶望し始めた直後…。
「上級悪霊の毒蛇巫女よ…」
突如として小柄の老婆が毒蛇巫女の背後に出現したのである。
「其方!?一体何者だ!?其方は妖女とも…人間とも該当しない存在だな…」
毒蛇巫女は小柄の老婆に警戒し始める。すると小柄の老婆は満面の笑顔で…。
「私は神族の一人…蛇神の蛇体如夜叉だよ♪」
雪美姫と小猫姫の背後より出現したのは誰であろう蛇神の蛇体如夜叉である。
『蛇体如夜叉婆ちゃんだ!』
蛇体如夜叉の出現に小猫姫は大喜びする。
「神族!?蛇神の蛇体如夜叉だと!?」
毒蛇巫女は突如として出現した蛇体如夜叉に驚愕したのである。
「毒蛇巫女…古代文明時代に人身御供として惨殺された巫女の怨念よ…あんたを昇天させるよ!」
「神族の老婆風情が…私を昇天させるって?片腹痛いわ!」
蛇体如夜叉は毒蛇巫女に強制成仏の神術を発動…。
「なっ!?其方…一体私に何を!?」
「成仏しな…毒蛇巫女よ…」
すると毒蛇巫女の身体髪膚が無数の発光体に覆い包まれる。
「一体何が!?私は…こんな神族の老婆を相手に!?」
毒蛇巫女は無数の発光体に覆い包まれてより数秒後…。蛇体如夜叉の発動した強制成仏の神術によって完全に消滅したのである。
「毒蛇巫女は私の強制成仏の神術で昇天しちゃったね♪」
毒蛇巫女を強制成仏させた影響からか桜花姫一行の金縛りの効力が解除される。
「はっ!?蛇体如夜叉婆ちゃん!?」
「はぁ…私達は…身動き出来るわね…」
小猫姫と雪美姫は金縛りが解除され一安心する。
「蛇体如夜叉婆ちゃんの神術で毒蛇巫女の金縛りが解除されたのね!」
「あんたは蛇体如夜叉だっけ?感謝するわね!」
雪美姫は蛇体如夜叉に一礼したのである。
「命拾い出来たね…二人とも…」
一方の桜花姫は毒蛇巫女の毒針の影響で衰弱化…。地面に横たわった状態である。
「蛇体如夜叉婆ちゃん!?桜花姫姉ちゃんが毒蛇巫女の猛毒で毒死しちゃうよ…」
桜花姫は毒蛇巫女の毒針によって瀕死の状態であり小猫姫は落涙し始める。
「小猫姫…心配しなくても桜花姫ちゃんなら大丈夫だよ♪」
蛇体如夜叉は桜花姫の背中に接触したかと思いきや…。
「えっ…蛇体如夜叉婆ちゃん?」
蛇体如夜叉の神力は非常に強力であり桜花姫の体内の毒気を完全に解毒させたのである。一方の桜花姫は毒蛇巫女の毒素で息苦しそうな表情であったが…。体内の毒気の浄化で皮膚が元通りの色白へと戻ったのである。
「毒蛇巫女の毒素は完全に解毒したから桜花姫ちゃんは大丈夫だからね♪」
「はぁ…桜花姫姉ちゃんは大丈夫なのね…」
「桜花姫…彼女は冷や冷やさせるわね…」
桜花姫は無事であり小猫姫と雪美姫は一安心する。
「桜花姫ちゃんは命拾い出来たけれど油断は出来ないよ…桜花姫ちゃんは毒蛇巫女の毒針で相当体力を消耗した状態だからね…数日間は安静にしないと…」
すると小猫姫は恐る恐る…。
「桜花姫姉ちゃんが畏怖しちゃう上級悪霊の毒蛇巫女を強制成仏させちゃうなんてね!やっぱり蛇体如夜叉婆ちゃんの神通力は千人力だね!」
「私の神力が千人力なんて大袈裟だね…小猫姫は…」
「最上級妖女の桜花姫を畏怖させた毒蛇巫女を一撃で仕留められたのよ!蛇体如夜叉の神通力は千人力よ!」
小猫姫と雪美姫は蛇体如夜叉の神力を絶大であると再認識する。
「毒蛇巫女は上級悪霊の一体だからね…通常の妖女では最上級悪霊の毒蛇巫女は対処出来ないだろうよ…」
毒蛇巫女は上級に君臨する上級悪霊の一体である。上級に該当する上級悪霊の対処は通常の妖女は勿論…。一握りの最上級妖女でさえも今回の毒蛇巫女みたいな上級の悪霊を対処するのは非常に困難とされる。
「今回ばかりは蛇体如夜叉婆ちゃんが参上しなかったら私達…今頃毒蛇巫女に殺されたかも知れないよ…感謝するね!蛇体如夜叉婆ちゃん!」
一段落すると桜花姫一行は村里へと戻ったのである。
第四話
安静
悪霊の大群と上級悪霊とされる毒蛇巫女との死闘から四日後の真昼…。毒蛇巫女の毒針攻撃により身動き出来なくなった桜花姫は蛇体如夜叉の家屋敷で長時間休眠し続けたのである。
「えっ?」
『此処は…』
突如として休眠中の桜花姫が恐る恐る目覚める。
「えっ…私は…一体何を?」
「蛇体如夜叉婆ちゃん!桜花姫姉ちゃんが目覚めたよ!」
小猫姫は目覚めた桜花姫に大喜びしたのである。
「桜花姫ちゃん♪如何やら目覚めたみたいだね!あんたが元気そうで安心したよ!」
蛇体如夜叉と小猫姫は桜花姫の復活に一安心する。
「えっ…目覚めたって…何が?私は今迄何を?」
桜花姫は寝起きした直後であり今迄の記憶が曖昧なのか何が何やら理解出来なかったのである。
「仕方ないね…桜花姫ちゃん…あんたは四日前にね…」
蛇体如夜叉は桜花姫に一連の出来事を一部始終説明する。
「えっ!?私!?毒蛇巫女との戦闘から四日間も熟睡しちゃったの!?」
桜花姫は四日間も熟睡し続けた事実に驚愕したのである。
「桜花姫ちゃんは毒蛇巫女の猛毒の影響で体力が相当消耗しちゃったからね…」
「私って…毒蛇巫女の毒針で瀕死の状態だったのよね…」
『最上級妖女の私が毒蛇巫女の毒針程度で瀕死なんて…』
桜花姫は自身の非力さに落胆する。
「蛇体如夜叉婆ちゃんが神力で毒蛇巫女の猛毒を解毒したから大丈夫だよ!桜花姫姉ちゃん!」
「今回も感謝するわね♪蛇体如夜叉婆ちゃん♪心配させちゃって御免なさいね♪」
桜花姫は蛇体如夜叉に感謝したのである。
「あんたは気にしないの!桜花姫ちゃんに死なれちまったら極悪非道の悪霊が国全体に出回っちまって大変だからね!」
すると直後…。
「桜花姫様!?大丈夫ですか!?」
僧侶の八正道が大慌ての様子で蛇体如夜叉の家屋敷に乱入する。
「えっ!?八正道様!?」
「八正道よ…騒然とするね…一体何事かね?」
「八正道様?如何しちゃったの?大丈夫かしら?」
一同は大慌ての八正道に困惑したのである。
「桜花姫様が悪霊の猛毒で瀕死の状態であると町民達の噂話を傾聴しまして!」
今回の出来事は国全体の噂話として彼方此方に出回る。
「桜花姫様!?体調は大丈夫なのですか!?」
桜花姫は八正道の必死の問い掛けに恐る恐る…。
「私なら…大丈夫よ…八正道様…心配しないで…」
『やっぱり八正道様は人一倍心配性だわ…』
桜花姫は心配性の八正道に苦笑いした様子で返答する。
「今現在の桜花姫様の様子なら大丈夫そうですね!はぁ…一瞬ですが心配し過ぎて私自身の心臓が心停止しちゃうかと…」
八正道は桜花姫の元気そうな様子から一安心したのである。
「八正道様にも心配させちゃったわね♪御免なさいね♪」
「謝罪は不要ですよ!桜花姫様!桜花姫様が無事なのが何よりですからね!」
「八正道様♪」
桜花姫は八正道に感謝する。
「桜花姫様…折角ですし!」
「えっ…私に桜餅を?」
八正道は桜花姫に大好きな桜餅を手渡ししたのである。
「感謝するわね♪八正道様♪」
桜花姫は手渡された桜餅を一口で平らげる。
「桜餅を一口で平らげちゃうなんて…桜花姫ちゃんらしいけど…」
『桜花姫ちゃんの食欲は…悪霊の悪食餓鬼以上かも知れないね…』
「桜花姫姉ちゃん…」
『失礼かも知れないけれど…桜花姫姉ちゃんは食いしん坊の怪物みたいだね…』
蛇体如夜叉と小猫姫は桜花姫の様子に苦笑いする。桜花姫は桜餅を頬張り続けた影響からか消耗した体力と妖力が戻ったのである。
「私!元気が戻ったわ!やっぱり桜餅の効果は抜群ね!」
桜花姫に元気が戻った直後…。
「折角だから一先ず温泉よ!」
桜花姫は力一杯爆走し始める。
「えっ…桜花姫様は猪突猛進ですね…」
桜花姫は爆走した状態で西国の精霊故山へと直行したのである。
「桜餅を頬張った影響なのかな?桜花姫姉ちゃんに元気が戻ったみたいだね…」
「桜餅の効果だろうかね?」
『恐らく桜花姫ちゃん特有の超常現象なのかも知れないけれど…疾走出来るだけの元気なら…彼女は大丈夫そうだね!』
一同は桜花姫の活発さに苦笑いする。
第五話
巨人
人魚王国アクアユートピアで大事件が発生した同時期の出来事である。時間帯は真夜中の深夜帯…。東国郊外での出来事である。
「蛇体如夜叉婆ちゃん…私は一日中歩きっ放しで疲れちゃったよ!空腹だし!」
「小猫姫は疲れちゃったのかい?であれば思う存分に川辺の川魚でも食べちゃいな!私も一休みしたいからね…」
山猫妖女の小猫姫と神族の蛇体如夜叉が川辺にて一休みする。
「早速!川魚を!」
小猫姫は川辺を眺望したのである。
「美味しそうな川魚が沢山!」
小猫姫は大喜びした様子で川辺へと移動する直前…。
「えっ…」
無数の気配を感じる。
「何だろう?気配?」
小猫姫は周囲を警戒したのである。
「如何やら小猫姫も察知したみたいだね…異様の気配を…」
蛇体如夜叉も小猫姫と同様に異様の気配を察知する。暗闇の自然林は勿論…。周囲の地中より数十体もの悪食餓鬼が出現したのである。
「奴等は悪食餓鬼だね…こんなにも大群とは…」
「悪食餓鬼の大群!?こんな場所に出現するなんて!」
『気配の正体は悪食餓鬼だったのね…悪霊なんて毒蛇巫女との戦闘以来だよ!』
小猫姫は悪食餓鬼の大量出現に毒蛇巫女との死闘を想起する。悪食餓鬼の大群は小猫姫と蛇体如夜叉に殺到したのである。
「極悪非道の悪霊!蛇体如夜叉婆ちゃんには手出しさせないよ!」
「小猫姫!?」
小猫姫は殺気立った様子で両手から雷撃の妖術を発動する。
「雷撃の妖術!はっ!」
小猫姫は殺到する悪食餓鬼の大群を雷撃の妖術で瞬殺…。無数の黒焦げの焼死体が周囲の地面に埋没したのである。
『伝説の妖獣に変化しなくても悪食餓鬼が相手なら大群でも瞬殺だね!』
数秒間が経過すると無数の悪食餓鬼の焼死体が砂粒へと変化し始め…。彼等の肉体は一瞬で崩れ落ちたのである。
「悪霊は成仏したみたいだね!一安心だよ!蛇体如夜叉婆ちゃん!」
一安心した小猫姫と蛇体如夜叉であるが…。
「えっ…今度は何だろう?」
「此奴は厄介だね…」
悪食餓鬼よりも強大なる霊気が接近するのを感じる。
「蛇体如夜叉婆ちゃん?今度は何が出現するのかな?」
「ん!?黒雲!?」
すると目前より黒雲が発生したかと思いきや…。
「此奴は…」
無数の悪食餓鬼が一体化した百鬼悪食餓鬼が出現する。
「此奴は百鬼悪食餓鬼だね…其処等の悪食餓鬼よりは強力だよ…」
「百鬼悪食餓鬼は悪食餓鬼の親玉だったよね?蛇体如夜叉婆ちゃん?」
「百鬼悪食餓鬼が相手なら相応の妖力が必要不可欠だよ…小猫姫…」
「相手が強敵なら仕方ないね!」
小猫姫は全身の妖力を急上昇させると変化の妖術を発動…。全身から白煙が発生すると小猫姫は巨体の妖獣形態へと変化したのである。
「神出鬼没の悪霊…覚悟するのね!」
百鬼悪食餓鬼は鈍足の身動きで妖獣形態の小猫姫へと近寄り始める。全身の体表に存在する無数の悪食餓鬼の口先より高熱の火炎を放射したのである。高熱の火炎を放射された小猫姫であるが…。
「こんな程度の火炎攻撃…妖獣の私には通用しないよ!」
妖獣形態の小猫姫は肉体も頑丈であり無傷だったのである。
「今度は私が反撃するからね!」
小猫姫は猛スピードで百鬼悪食餓鬼の真正面から突進…。小猫姫の突進攻撃により百鬼悪食餓鬼はバラバラに粉砕されたのである。百鬼悪食餓鬼の肉体は非常に貧弱であり容易に砕け散る。砕け散った百鬼悪食餓鬼の肉片は数十体もの悪食餓鬼に分裂…。悪食餓鬼の大群は妖獣形態の小猫姫へと殺到したのである。
「今度は…」
小猫姫は全身から衝撃波を発生…。衝撃波の発生により悪食餓鬼の大群は容易に粉砕されたのである。小猫姫の孤軍奮闘によって悪食餓鬼の大群は退治され小猫姫と蛇体如夜叉は一安心する。
「小猫姫…悪霊を一掃出来たね!」
「今度こそ一安心だよ!蛇体如夜叉婆ちゃん!」
小猫姫と蛇体如夜叉が安堵したのも束の間…。
「えっ…今度は?」
小猫姫は不吉の気配を感じる。
「悪食餓鬼は勿論…百鬼悪食餓鬼とは別物だね…」
「一体何が出現したのかね?今度の相手が強豪なのは確実そうだけど…」
蛇体如夜叉も不吉の気配に警戒する。
「蛇体如夜叉婆ちゃん?今度は何が出現するのかな?」
数秒間が経過した直後…。突如として二人の目前より大山をも覆い包む黒雲が発生したのである。
「えっ!?黒雲!?」
「如何やら此奴が今回の本命みたいだね…」
すると黒雲の内部より背丈が百間にも相当する規格外の巨体僧兵が実体化し始め…。出現したのである。巨体僧兵の霊気は非常に強力であり小猫姫と蛇体如夜叉を身震いさせる。小猫姫は恐る恐る…。
「蛇体如夜叉婆ちゃん?此奴は一体何者なの?」
問い掛けられた蛇体如夜叉は恐る恐る返答する。
「此奴は…【亡霊破戒僧】だね…」
「亡霊破戒僧って?」
亡霊破戒僧とは戦乱時代に戦死したとされる僧兵達の無念の集合体であると認識され…。戦死者達の無念の集合体として知られる骸骨荒武者と類似する。亡霊破戒僧は背丈百八十メートルにも相当する規格外の巨体は勿論…。顔面中央には閉眼した状態の縦長の単眼が特徴的である。亡霊破戒僧の装備品として全長が一町規模にも相当する巨大携帯式大砲が確認出来る。特定の地方だと亡霊破戒僧の名称は単純に巨人僧兵やら単眼僧侶とも呼称される。
「小猫姫…此奴は上級悪霊の一体だからね!油断出来ないよ…」
「亡霊破戒僧は上級悪霊なのね…」
一方の亡霊破戒僧は小猫姫を標的に携帯式の大砲で砲撃したのである。小猫姫は咄嗟に亡霊破戒僧の砲撃を間一髪回避する。
「こんな砲撃!妖獣の私には通用しないよ!」
小猫姫は断言したのである。
「小猫姫!亡霊破戒僧の武器を破壊しな!」
蛇体如夜叉は小猫姫に大砲の破壊を指示する。
「亡霊破戒僧の武器だね!蛇体如夜叉婆ちゃん!」
小猫姫は口先より得意の高熱の雷球を発射したのである。高熱の雷球は亡霊破戒僧の携帯式大砲に直撃…。携帯用の大砲は破壊されたのである。
「亡霊破戒僧の武器を破壊出来たよ!蛇体如夜叉婆ちゃん!」
小猫姫と蛇体如夜叉は大喜びする。
「小猫姫!亡霊破戒僧を無力化出来たね!」
最早装備品の武器を破壊され…。亡霊破戒僧は無力化した状態だったのである。
「今度こそ亡霊破戒僧を退治するよ!」
小猫姫が攻撃する直前…。突如として亡霊破戒僧の閉眼し続ける縦長の単眼が開眼し始めたのである。
「えっ?」
「ん?」
開眼し始めた亡霊破戒僧に小猫姫と蛇体如夜叉は動作が一瞬停止する。蛇体如夜叉は亡霊破戒僧の動向に危惧したのである。
『此奴は…奥の手だろうか?』
「小猫姫!亡霊破戒僧の動向に注意しな!」
小猫姫は蛇体如夜叉の警告に反応する。
「えっ…蛇体如夜叉婆ちゃん…」
亡霊破戒僧の縦長の単眼がピカッと発光したかと思いきや…。開眼した単眼の瞳孔中心部より高熱の眼光が射出されたのである。亡霊破戒僧の高熱の眼光は妖獣形態の小猫姫に直撃…。
「きゃっ!」
小猫姫は吹っ飛ばされ地面に横たわる。小猫姫は妖獣形態であったが…。大ダメージの影響からか元通りの姿形に戻ったのである。
「小猫姫!?大丈夫かい!?」
蛇体如夜叉は地面に横たわった状態の小猫姫に近寄る。
「ぐっ!蛇体如夜叉婆ちゃん…私…」
小猫姫は先程の大ダメージにより大半の妖力を消耗する。
「やっぱり亡霊破戒僧は奥の手を…」
『小猫姫の変化の妖術を一撃で解除させるなんて…亡霊破戒僧…やっぱり此奴が上級悪霊の一角なのは確実だね…』
小猫姫と蛇体如夜叉は亡霊破戒僧の強大さを実感したのである。
「蛇体如夜叉婆ちゃん?如何するの?」
「亡霊破戒僧は非常に強力だからね…一先ずは逃げないと!」
小猫姫と蛇体如夜叉が逃亡を余儀無くされた直前…。突如として亡霊破戒僧の頭部が氷結し始めたのである。
「えっ!?亡霊破戒僧の頭部が…」
「氷結!?突然何が!?如何して亡霊破戒僧の頭部が氷結したのかね?」
突然の超常現象に二人は愕然とする。すると二人の背後より…。
「あんた達!逃げなくても大丈夫よ!」
「えっ…」
「あんたは…一体誰だい?」
二人の背後には扇子を所持した水色の煌びやかな着物姿の女性が佇立する。
「貴女は…花魁かな?」
「あんたからは妖女特有の妖力を感じるけれど…あんたは一体何者かね?」
蛇体如夜叉は恐る恐る花魁の女性に問い掛ける。蛇体如夜叉の問い掛けに花魁の女性は笑顔で…。
「私は粉雪妖女…雪美姫なのよ♪」
花魁は自身を粉雪妖女の雪美姫と名乗り始める。
「えっ!?雪美姫姉ちゃんは花魁だったの!?」
「雪美姫よ…あんたが花魁だったとはね…」
花魁の正体が雪美姫である事実に小猫姫と蛇体如夜叉は驚愕したのである。
「暇潰しよ!暇潰し!今後は花魁として活動するのよ!」
雪美姫は満面の笑顔で返答する。
「随分と一変したね…雪美姫よ…あんたは一瞬別人かと…」
「私も吃驚しちゃったよ!雪美姫姉ちゃんが花魁だったなんて!」
雪美姫は亡霊破戒僧を直視したのである。
「亡霊破戒僧は随分と巨体だわ…此奴が今回出現した悪霊みたいね…こんなにも規格外の悪霊は弁天島の海難姫君以来ね…」
雪美姫は半年前に発生した弁天島での大事件を想起する。
「亡霊破戒僧の頭部を氷結させたのは雪美姫姉ちゃんなの?」
「勿論私よ♪」
雪美姫は小猫姫に問い掛けられると満面の笑顔で即答したのである。
「毎回不寝番の桜花姫ばかりに活躍させないからね!私だって列記とした妖女の一人なのよ!私も彼女みたいに活躍したいわよ!」
小猫姫と蛇体如夜叉は桜花姫の名前に苦笑いし始める。
「兎にも角にも…亡霊破戒僧は小猫姫…あんたが仕留めなさい!」
「えっ?雪美姫姉ちゃん?」
「あんたも姉貴分の桜花姫みたいに神出鬼没の悪霊を退治したいのでしょう?折角の機会よ!今回はあんたが大物を仕留めなさい!」
「雪美姫姉ちゃん!」
雪美姫の親切心に小猫姫は大喜びする。小猫姫は残存した妖力を最大活用…。再度変化の妖術で伝説の妖獣に変化したのである。
「今度こそ亡霊破戒僧を仕留めるよ!」
小猫姫は口先より妖力を凝縮…。高熱の雷球を形成させたのである。
「死滅しろ!亡霊破戒僧!」
小猫姫は口先から高熱の雷球を発射する。発射された高熱の雷球は亡霊破戒僧の頭部に直撃…。亡霊破戒僧の頭部は一瞬で破壊され亡霊破戒僧は絶命したのである。一方の小猫姫は妖力が空っぽの状態であり地面に横たわる。
「はぁ…はぁ…」
一方の亡霊破戒僧は完膚なきまでに消滅したのである。
「小猫姫…あんたは精一杯頑張ったね…亡霊破戒僧は仕留められたよ…」
蛇体如夜叉は小猫姫に近寄ると疲労状態の彼女の腹部に接触する。すると小猫姫の消耗した妖力が蓄積され回復したのである。
「如何やら一件落着ね!私は東国の中心街で夜遊びしましょう!」
雪美姫は東国の中心街へと移動する。
「小猫姫よ…私達も戻ろうかね…」
蛇体如夜叉が問い掛けると小猫姫は満面の笑顔で返答したのである。
「戻ろう!戻ろう!蛇体如夜叉婆ちゃん!私は腹ペコだよ!」
「小猫姫は精一杯頑張ったからね…御馳走を用意しないとね!」
「御馳走だって!蛇体如夜叉婆ちゃん!」
小猫姫は大喜びする。
第六話
三眼
深海底の魔女…。ダークスキュランと配下の深海底アンデッドによる人魚王国アクアユートピア侵略大事件から二週間後の出来事である。同年十一月下旬の真夜中…。近頃の出来事である。北国の村里では真夜中の深夜帯に正体不明の高身長の女性が一人で徘徊中との噂話が出回り始める。高身長の女性と遭遇した人間は正体不明の女性に対する恐怖心で全身が膠着化…。身動き出来なくなったとの怪奇的内容である。桜花姫は高身長の女性の正体が気になったのか真夜中の深夜帯…。
『噂話の女性は高身長みたいだけど…一体何者なのかしら?』
北国の村里へと移動したのである。
『北国の村里に到達したわね…』
時間帯は真夜中であり村里を出歩く人間は誰一人として確認出来ない。悪霊特有の霊気は何一つとして感じられず…。妖女特有の妖力も感じられなかったのである。
『周辺は物静かだわ…』
村里は全体的に物静かであり山中の川音と風音が響き渡る。
『不吉ね…ひょっとすると嵐の前の静けさかしら?』
数秒間が経過した直後…。
「えっ…」
『何かしら?』
突如として不吉の気配を感じる。
『気配だわ…気味悪いわね…』
桜花姫は警戒した様子で恐る恐る背後を確認するのだが…。
「えっ?」
『何も…』
背後には何も存在しなかったのである。
『誤認識かしら?』
探索を再開する寸前…。
「えっ!?」
桜花姫の前方には高身長の女性が佇立する。女性は煌びやかな青色の着物姿が特徴的なのだが…。
『ひょっとして彼女が噂話の…』
女性の前額部には第三と思しき縦長の眼目が確認されたのである。僅少であるが高身長の女性からは悪霊特有の霊気が感じられる。
『霊気だわ…やっぱり彼女は神出鬼没の悪霊みたいね!』
すると前方の女性は無表情で桜花姫を凝視し続けるのだが…。
「あんたは私の三眼を直視しても…膠着しないなんてね♪」
高身長の女性は冷笑した表情で発言する。一方の桜花姫は恐る恐る…。
「ひょっとしてあんたは…【三眼婦女子】ね…」
三眼婦女子とは戦乱時代に両目の眼球を引っこ抜かれた女性の亡霊とされる。外見は高身長の女性であり前額部の三眼が特徴的である。三眼婦女子は霊気が規格外に強力であり三眼婦女子の第三の眼目を直視した場合…。極度の恐怖心により卒倒するとされる。三眼婦女子の三眼を直視した人間は三日後には衰弱死するのが通例である。
『如何やら村人達が膠着した原因は此奴の仕業みたいね…』
桜花姫は村人達が目覚めず…。膠着し続けるのは三眼婦女子の強大なる呪力が原因であると確信したのである。すると三眼婦女子は満面の笑顔で…。
「普通の人間なら確実に卒倒しちゃうのに…あんたは私の眼目を直視しても卒倒しないわね♪ひょっとするとあんたは人外の妖女かしら?」
三眼婦女子は桜花姫が人外の妖女であると確信する。三眼婦女子の三眼の呪力は非力の人間には有効であるが…。常人よりも屈強の妖女には無効である。すると桜花姫は満面の笑顔で名乗り始める。
「私はね…妖女は妖女でも!最上級妖女の月影桜花姫なのよ!私はあんたの眼力程度で卒倒しないから安心してね!」
「あんたが卒倒しないのであれば仕方ないわね…」
三眼婦女子は両目を瞑目させる。
「私の霊気で卒倒しないあんたは…」
前額部の三眼の瞳孔が赤色にピカッと発光したのである。
『彼女の第三の瞳孔が赤色に?三眼婦女子は一体何を?』
三眼が赤色に発光した直後…。三眼の瞳孔から高熱の光線が照射されたのである。
「えっ…」
桜花姫は三眼婦女子の光線により胸部を貫通させられ…。
「がっ!」
吐血したのである。桜花姫は吐血した直後に地面に横たわる。
「ぐっ…」
三眼婦女子は地面に横たわった状態の桜花姫に近寄り始める。
『彼女は即死したかしら?』
三眼婦女子が桜花姫の皮膚に接触した直後…。
「ん?彼女は…」
地面に横たわった状態の桜花姫の肉体から白煙が発生したのである。同時に桜花姫の肉体が一瞬で消滅する。
『彼女の肉体は分身体みたいね…』
三眼婦女子は周囲に警戒したのである。
『小癪だわ…彼女の本体は?』
すると三眼婦女子の背後より…。
「残念でした!三眼婦女子!」
三眼婦女子の背後には無傷の桜花姫が近寄る。
「あんたは月影桜花姫!?今度こそ死になさい!」
三眼婦女子は再度三眼の光線をピカッと射出するのだが…。
「残念だったわね!三眼婦女子!」
桜花姫は妖力の防壁により三眼婦女子の光線を無力化したのである。
「私にはあんたの攻撃なんて二度も通用しないわよ!」
すると桜花姫は満面の笑顔で…。
「三眼婦女子…あんたは覚悟するのね!」
桜花姫は天道天眼を発動すると普段よりも妖力が数十倍に急上昇したのである。
「えっ…」
『彼女…両目の瞳孔が瑠璃色に発光してから…先程よりも妖力が急上昇したわ…』
三眼婦女子は桜花姫に警戒する。
「如何かしら?三眼婦女子!」
桜花姫は満面の笑顔で三眼婦女子に挑発したのである。
「此奴…」
三眼婦女子は桜花姫の態度に腹立たしくなる。
「であれば私も奥の手よ…月影桜花姫!」
三眼婦女子は再度前額部の縦長の三眼を瞑目させたのである。
「奥の手ですって?」
『三眼婦女子は一体何を?』
桜花姫は三眼婦女子の動向に警戒する。
「覚悟するのね!桜花姫!」
三眼婦女子は前額部の三眼をピカッと橙色に発光させたのである。
「此奴は奥の手よ!私の瞳孔を直視すれば人外の妖女でも容易に卒倒させられるわ!あんたは二度と身動き出来なくなるのよ!」
三眼婦女子は勝利を確信するのだが…。
「あんたの霊能力!私以外の其処等の妖女だったら有効的だったでしょうね!」
桜花姫は平気だったのである。
「なっ!?あんたは…如何して身動き出来るのよ!?」
三眼婦女子は平気そうな桜花姫に動揺し始める。
「天道天眼を発動した状態では…金縛りやら幻術系統は無力化出来るのよ!三眼婦女子の効力も私には通用しないのよ!」
「天道天眼ですって!?」
天道天眼はあらゆる妖術を発動出来るのは当然であるが…。金縛りやら幻術系統の特殊能力さえも無力化出来る。
「何しろ私は列記とした最上級妖女なのよ!」
桜花姫は十八番の変化の妖術を発動…。
「三眼婦女子…折角だからね!あんたは美味しそうな林檎の飴玉に変化しなさい!」
すると三眼婦女子は変化の妖術により林檎の飴玉に変化する。
『林檎の飴玉!頂戴するわね!』
桜花姫は林檎の飴玉に変化した三眼婦女子を捕食したのである。
『やっぱり神出鬼没の悪霊だとしても…林檎の飴玉も美味だわ!』
桜花姫は林檎の飴玉に大満足…。即座に西国の村里へと戻ったのである。三眼婦女子が仕留められた同時刻…。三眼婦女子の呪力で全身が膠着化した村人達は三眼婦女子の呪縛から無事に解放されたのである。
第七話
殺人鬼
三眼婦女子との戦闘から三日後の真夜中…。東国の中心街にて正体不明の殺人鬼が出没するとの通り魔事件が四件も発生したのである。目撃者達の証言としては事件現場では十代前後の少女が確認され…。少女が歩行するとカラカラッと作り物らしき物音が響き渡るとの内容だったのである。連続殺人事件は小椿童女の悪霊事件以来であり度重なる殺人事件に町民達は戦慄…。武士団の邏卒も夜番が出来なくなる事態へと発展したのである。前回の小椿童女の一件から殺人鬼は悪霊であるとの噂話が各地に出回り始める。当然として不寝番の桜花姫も殺人鬼の情報は熟知したのである。町民達から殺人鬼の情報源を入手すると桜花姫は早速行動を開始…。東国の中心街へと移動したのである。
「今度は東国中心街で殺人鬼ね…」
『東国の中心街で殺人事件なんて…小椿童女の事件以来ね…』
桜花姫は先日の小椿童女による斬首事件を想起する。
『今回の事件では何が出現するのかしら?』
西国の村里から移動してより三時間後…。
『東国の中心街だわ…』
桜花姫は東国の中心街へと到達したのである。
『人気は無さそうね…真夜中だし当然かしら?』
時間帯は真夜中の深夜帯であり中心街を出歩く町民達は勿論…。夜番の邏卒も誰一人として確認出来ない。殺人鬼の噂話が出回った影響からか誰しもが真夜中の時間帯は出歩かなかったのである。
『無人なのは好都合だけど!』
桜花姫は気軽の気分であり早速調査を開始する。
『今夜は…殺人鬼は出現するかしら?』
桜花姫は一時間程度中心街全域を探索するのだが…。
『殺人鬼らしき人物は確認出来ないわね…』
殺人鬼らしき人物は発見出来なかったのである。
『今回も簡単には出現しないわね…』
「村人達の噂話の内容だと殺人鬼の特徴は十代前後の少女だったかしら?彼女が歩行すると作り物みたいな物音が響き渡るのよね?悪霊の一種なのかしら?」
今回の標的も悪霊であると予測するのだが…。悪霊特有の霊気が感じられない。
『悪霊特有の霊気が感じられないわ…ひょっとすると今回は小面袋蜘蛛みたいな器物の悪霊とか?』
器物の悪霊小面袋蜘蛛を連想した直後である。
「えっ…」
『何かしら?』
背後よりカラカラッと作り物らしき物音が響き渡る。
『作り物みたいな物音だわ…一体何が?ひょっとして事件の元凶かしら?』
桜花姫は警戒した様子で恐る恐る背後を確認したのである。
「如何やら物音の正体はあんたみたいね…」
背後には自身よりも一回り小柄の少女が佇立する。小柄の少女は煌びやかな赤色の着物姿であるものの…。少女の表情は無表情であり全身の素肌の質感は非常に無機的だったのである。
「あんたは…姿形は可愛らしい外見だけれども…」
『作り物の人形みたいな風貌ね…』
人形みたいな小柄の少女は只管無表情であり桜花姫を凝視し続けるのだが…。
「ワタシハ…クグツ…ニンギョウダ…」
小柄の少女は片言の人語で自身が傀儡人形であると発言する。
『此奴はやっぱり傀儡人形なのね…片言だけど人語で喋れるみたいだし…』
すると直後…。無表情だった少女の顔面が不吉の鬼面の形相へと変形したのである。ギロッと桜花姫を睥睨し始める。
「なっ!?」
一方の桜花姫は少女の表情の変化に驚愕したのである。
「オマエハ…ジャマモノ…コロス…ゼッタイニコロス…」
小柄の少女は無機質の傀儡人形であるものの…。少女の無機質の肉体からは僅少の霊気が感じられる。
『悪霊特有の霊気だわ!彼女はひょっとして【傀儡処女】かしら!?』
傀儡処女とは機械類の悪霊として知られる。正体としては通り魔によって殺害された少女の怨念が機械式の傀儡人形に憑霊…。誕生したとされる機械式の悪霊である。傀儡処女は別名としては殺戮人形やら無感の殺人鬼とも呼称される。
「如何やら殺人鬼の正体は傀儡処女!あんたみたいね!」
すると傀儡処女は口部を開口させた直後…。
「オマエヲ…ヤキコロス!シネ!」
傀儡処女は口先から高熱の火炎を放射する。
「なっ!?火炎!?」
傀儡処女の火炎攻撃は非常に強力であるものの…。霊気による超常現象ではなく単なる物理的攻撃だったのである。
『止むを得ないわね!』
桜花姫は咄嗟に妖力の防壁を発動…。
「はぁ…」
間一髪傀儡処女の火炎放射を無力化したのである。
『危機一髪だったわ…』
傀儡処女の火炎攻撃を無力化出来…。桜花姫はホッとする。
「コンドコソ…オマエヲコロス!カクゴシロ!」
傀儡処女は両腕の表面をパカッと開放させたのである。両腕内部から内蔵型の機械式刀剣が解放され…。傀儡処女の両腕が機械式の刀剣に変形したのである。
『傀儡処女の両腕が刀剣に変形したわね…』
傀儡処女は神速の身動きで桜花姫に急接近…。
「えっ!?」
桜花姫は傀儡処女の神速の身動きに驚愕する。
『彼女は…身動きだけなら随一だわ…』
傀儡処女の物理的速度は随一であると評価したのである。傀儡処女が高スピードで桜花姫に急接近した直後…。
「オマエヲキリコロス…シネ!」
傀儡処女は桜花姫に斬撃したのである。
「えっ…」
一瞬の出来事により桜花姫は何が発生したのか理解出来なかったが…。
『腹部から…出血だわ…』
自身の腹部を注視し続けると腹部から鮮血がドロドロと流れ出るのを理解する。
『私は…』
傀儡処女に斬撃された直後…。桜花姫の上半身がボトッと地面に落下し始める。桜花姫は傀儡処女の斬撃により上半身と下半身が両断されたのである。
『今日が私の命日なんて…こんな悪霊を相手に…』
桜花姫は腹部を両断された影響により意識が消失する。一方の傀儡処女は即死状態の桜花姫を確認したのである。
「ジャマモノハ…シンダノカ?」
傀儡処女は両断された状態の桜花姫の皮膚に接触する。
「ウゴキハナイナ…タダノシカバネノヨウダ…」
桜花姫の即死を確信したのである。
「ジャマモノハ…ハイジョシタ…コンドハ…」
傀儡処女はカラカラッと歩き始める。傀儡処女が歩き始めた直後…。突如として両断された桜花姫の遺体から白煙が発生し始めたのである。
「ン?アイツノ…」
桜花姫の上半身と下半身は完膚なきまでにポンッと消滅する。
「シカバネハ?ドコダ?アイツハ…ドコニ?」
傀儡処女は警戒した様子で周辺をキョロキョロし始める。
「分身の妖術!成功ね!」
突如として傀儡処女の目前より無傷の桜花姫が出現したのである。
「オマエハ…イキテイタノカ?」
「当然でしょう!相手を油断させないとね!」
桜花姫は傀儡処女の問い掛けに満面の笑顔で返答する。
「デハコンドコソ…オマエヲキリコロス!カクゴシロ!」
傀儡処女は先程と同様に両腕を刀剣に変形…。身構え始める。
「傀儡処女!今度は私が反撃するわよ!」
すると桜花姫は傀儡処女に十八番の変化の妖術を発動したのである。
「所詮機械式の傀儡人形が最上級妖女の私に挑戦するなんて無謀なのよ!傀儡処女…あんたは美味しそうな桜餅に変化しなさい!」
傀儡処女は変化の妖術により小皿に配置された桜餅へと変化…。
「変化の妖術も成功ね!」
桜花姫は桜餅に変化した傀儡処女を捕食したのである。
「やっぱり桜餅は美味だわ!」
傀儡処女を捕食してより数分後…。桜花姫は西国の村里へと戻ったのである。傀儡処女による事件後…。悪霊関連の夜間の通り魔事件は発生しなくなる。
第八話
吸血鬼
傀儡人形の悪霊…。傀儡処女との死闘から三日後の出来事である。近頃東国の歓楽街に位置する定番の宿屋では吸血鬼が出現するとの噂話が東国全体に出回り始める。宿屋の吸血鬼の噂話が出回り始めてより二日後の真昼…。桜花姫は暇潰しに八正道の寺院に訪問したのである。
「八正道様!」
「桜花姫様ですか!本日は如何されましたか?」
「暇潰しよ!暇潰し!」
「今回も暇潰しですか?」
すると八正道は満面の笑顔で…。
「桜花姫様…三日前は中心街に出没したとされる悪霊の傀儡処女を退治されたみたいですね!見事ですよ!」
八正道は桜花姫の傀儡処女の征伐に大喜びしたのである。
「別に…私にとって悪霊征伐は娯楽同然だし!」
桜花姫は悪霊征伐を娯楽であると返答する。
「ですが桜花姫様にとって悪霊征伐は娯楽だとしても…桜花姫様の孤軍奮闘で私達は安心して熟睡出来るのも事実なのですからね!」
「八正道様は大袈裟ね…」
「折角訪問されたのですし…桜花姫様の大好きな桜餅でも食べられますか?」
「えっ!?桜餅ですって!?」
桜花姫は桜餅に大喜びしたのである。
「勿論よ!食べさせて!桜餅!」
「承知しました!桜花姫様!早速応接間に案内しますね…」
八正道は桜花姫を応接間へと案内する。
「えっ…随分と異国風だわ…八正道様は応接間の室内を改装したのかしら?」
応接間の室内は全面的に洋風へと改装された状態であり異世界に感じられる。
「勿論ですとも!応接間を洋室に全面的に改装したのですよ!異国の異文化も最高ですね!桜花姫様!」
「面白いけれど…応接間だけ異世界みたいな雰囲気だわ…」
桜花姫は返答に困惑し始め…。苦笑いしたのである。桜花姫は恐る恐る洋式風のソファーベッドに着席する。八正道は再度満面の笑顔で…。
「将来的には自室も洋室に改装させる予定なのですよ!」
八正道は人一倍異国の異文化が大好きであり少しでも異国の雰囲気を吟味したかったのである。
「えっ…頑張ってね…八正道様…」
桜花姫は反応に再度困惑し始め…。
『やっぱり八正道様は存在感もだけど…趣味も摩訶不思議よね…』
八正道の個性的趣味に苦笑いしたのである。
「兎にも角にも…桜花姫様に桜餅を用意しなくては!」
八正道は一時的に退室する。
『本当…八正道様は余程の物好きだわ…』
桜花姫は周囲全体をキョロキョロしたのである。
『八正道様は面白いけれど…相当に異国の異文化が大好きなのね…』
桜花姫は応接間でリラックスしたいのだが…。
『アクアユートピアのアクアヴィーナスの家屋敷もだけど…』
桜花姫は室内の雰囲気に緊張したのかソワソワしたのである。
『異国の家屋敷に順応するには時間が必要だわ…』
緊張し始めた数秒後…。
「桜花姫様!」
八正道が応接間へと戻ったのである。
「八正道様…」
「準備出来ました!念願の桜餅ですよ!」
八正道は桜花姫に桜餅を提供する。
「桜餅だわ!感謝するわね!八正道様!」
桜花姫は大喜びした様子で桜餅をパクパクと平らげる。
「桜花姫様?相談なのですが…」
「えっ?相談って何かしら?八正道様?」
八正道は深刻そうな表情で恐る恐る…。
「数週間前の出来事でしょうか…」
八正道は近頃の出来事を桜花姫に口述し始める。
「近頃…歓楽街の宿屋での出来事らしいのですがね…」
近頃の出来事である。大都市部である東国中心街の隣町には大勢の町民達が娯楽を吟味出来る歓楽街が存在する。東国の歓楽街は昼間の時間帯は勿論…。真夜中の深夜帯では町民達の夜遊びの場所であり大勢の町民達が行き来する場所としては持って来いである。こんな歓楽街の中心地にはとある人気の宿屋が存在する。
「歓楽街の宿屋って…大人気の?」
「勿論です…本題なのですが…」
歓楽街の宿屋は各地の旅人達にとって極楽浄土の場所であり大勢の客人に愛好されたのである。こんなにも町民達から大人気の宿屋であるが…。近頃歓楽街の宿屋に一泊した旅人が宿屋に一泊して以降神隠しに遭遇するとの行方不明事件が七件も連続的に発生したのである。
「歓楽街の宿屋で神隠しが七件も発生したのね…」
「人気の宿屋で神隠しが発生するなんて不自然ですし不吉ですよね…行方不明者達が無事なのか気になりますし…一説では西洋の悪霊…吸血鬼の仕業であるとか?」
「不自然ね…」
『人気の宿屋で神隠しの事件なんて面白そうだわ!吸血鬼の存在も気になるし!』
宿屋の神隠しに興味深くなったのか桜花姫は満面の笑顔で…。
「如何やら調査が必要みたいね!私が宿屋の神隠しの正体を判明させるわ!吸血鬼の存在も明確化出来るし!」
『吸血鬼関連の神隠しの事件なんて面白そうね!』
桜花姫は事件発生にワクワクし始める。
「不寝番の桜花姫様なら大喜びで宿屋を調査されると予期しましたよ!是非とも桜花姫様には宿屋の調査を依頼しますね…」
「私は今夜…問題の宿屋に一泊するわね!」
「事件の解決を期待しますよ…桜花姫様!」
「勿論よ!八正道様!」
桜花姫は満面の笑顔で即答する。
第九話
宿屋
同日の夕方である。桜花姫は観光気分で歓楽街の宿屋へと到達…。宿屋の看板に彫刻された文字を確認する。
『如何やら此処が問題の宿屋みたいね…』
桜花姫は神隠し事件の調査を目的に神隠しが発生したとされる歓楽街の宿屋に一泊したのである。
「一見すると普通の宿屋だわ…」
『宿屋の内部も特段問題無さそうだけど…』
宿屋は全体的に純和風の楼閣である。…。宿屋の各室内には機械式の歯車やら昇降機が設置され先進的設備が無数に確認出来る。
「此処の設備は随分と先進的なのね!」
『面白そうな設備だわ…八正道様なら気に入りそうね!』
珍妙の機械式装置が多数確認出来…。歓楽街の宿屋が旅人達にとって人気の理由も納得である。一通り宿屋の見物終了後…。桜花姫は一泊用の応接間へと戻ったのである。
『結局…宿屋では悪霊特有の霊気らしい霊気は感じられなかったわね…』
桜花姫は今回の神隠しの事件が神出鬼没の悪霊の仕業であると予想するのだが…。
『如何してこんな宿屋で神隠しが発生するのかしら?悪霊特有の霊気が感じられないのが不吉ね…』
宿屋では悪霊特有とされる霊気らしい霊気は何一つとして感じられない。
「恐らく神隠しは悪霊の仕業でしょうけど…非常に不自然なのよね…」
『ひょっとすると今回宿屋に出現した悪霊は小面袋蜘蛛やら毒蛇巫女みたいに自身の霊気を雲隠れさせられるのかしら?』
桜花姫は神隠しの正体を彼是と思考したのである。
『此処で悪霊を発見するのは非常に厄介ね…』
すると直後…。
「えっ?何かしら?」
宿屋の従業員が恐る恐る応接間の板戸をノックする。
「御客様…失礼します…本日の食事を用意しました…」
宿屋の従業員は夕食を提供したのである。
「夕飯かしら!美味しそうね!」
宿屋の食事は非常に豪華であり高額そうな寿司料理は勿論…。高級そうな炭火の鶏肉が数多く提供されたのである。
「御客様…失礼しました…」
従業員は恐る恐る応接間から退室する。
「食事がこんなにも豪華なんて…やっぱり歓楽街の宿屋は贅沢三昧ね!」
『無事に神隠しの事件が解決出来たら蛇体如夜叉婆ちゃんや小猫姫にも勧奨しちゃおうかしら!折角だからね!』
桜花姫は提供された食事をペロリと平らげる。
「御馳走様!」
『やっぱり美味だったわ!』
桜花姫は満足したのかゴロリと畳表へと寝転び始める。
「はぁ…」
『探索で疲れちゃったし…眠たくなったわ…』
満腹なのか突然眠気を感じる。
「折角だし…」
『一眠りしちゃおうかしら!』
桜花姫は室内の中央で熟睡したのである。
第十話
視認
熟睡し始めてから数十分後…。
「えっ…」
『私は…長時間熟睡しちゃったのかしら?』
熟睡から目覚めた桜花姫であるが…。
『入浴したくなったわ…』
途端に入浴したくなる。
『折角の宿屋だし!定番の温泉にでも入浴しちゃおうかしら!』
桜花姫はルンルンの気分で女子更衣室へと移動したのである。
『温泉!温泉!』
着物を脱衣し始め…。桜花姫は全裸の状態で女湯へと突入する。女湯には数人の女性が入浴中だったのである。
「温泉♪温泉♪極楽浄土♪極楽浄土♪」
周囲の女性達は子供みたいに大はしゃぎし始める桜花姫にドン引きする。
「えっ…彼女は変人かしら?」
「彼女は子供みたいだわ…一体何者なの?」
周囲の女性達にドン引きされた桜花姫であるが…。当然桜花姫にとって周囲の反応は気にならず只管全裸の状態で浴場へと驀進したのである。
「やっぱり旅館の温泉も最高よね!」
すると桜花姫は洗浄中の女性に満面の笑顔で…。
「あんたの素肌は純白だわ♪雛人形みたいな素肌ね♪」
「なっ!?誰が雛人形ですって!?」
女性は桜花姫の発言に苛立ったのである。
「失礼しちゃうわね!」
「御免あそばせ♪」
桜花姫はヘラヘラした様子で女性の背中に接触する。
「きゃっ!突然何するのよ!?助平!」
桜花姫は入浴中の女性に怒号されたのである。
「女同士だし♪大丈夫だって♪気にしないの♪気にしないの♪一休み♪一休み♪」
女性に怒号された桜花姫であるものの…。
「極楽浄土♪極楽浄土♪」
桜花姫は只管ヘラヘラした様子で浴槽へと入浴したのである。
『温泉は本当に地上世界の極楽浄土だわ♪最高ね♪』
桜花姫は入浴出来大満足する。入浴終了後…。
『再度宿屋を探索しますかね…』
桜花姫は再度宿屋全体を一回りする。
「はぁ…」
『やっぱり宿屋では霊気らしい霊気は何一つとして感じられないわね…』
悪霊特有の霊気が感じられず…。本当に神隠しが神出鬼没の悪霊の仕業なのか疑問視し始める。
『ひょっとして今回の事件は…人間の仕業なのかしら?』
再度彼是と思考したのである。
『ひょっとすると宿屋の従業員達が意図的に客人を誘拐したとか?』
可能性としては否定出来ないものの…。宿屋の従業員達が何を目的に七人もの客人を誘拐するのかは不明瞭だったのである。
『如何やら再調査が必要不可欠みたいね…』
桜花姫は自身の応接間に戻ろうかと思いきや…。突如として極度の寒気を感じる。
「えっ!?」
背後からの寒気にゾッとしたのである。
『彼女は…何者かしら?』
桜花姫の背後には橙色の着物姿の女性が無表情でジロジロと凝視し続ける。
『気味悪いわね…』
桜花姫は警戒した様子で恐る恐る背後の女性に問い掛ける。
「あんたは…何よ?私に用事かしら?」
女性の雰囲気は異質的であり普通の人間とは無縁であると感じる。
『彼女は…一体何者なの?雰囲気が異質的だわ…人外っぽいわね…』
女性が人外なのは確実であり一目瞭然であるが…。
『彼女の肉体からは悪霊特有の霊気が感じられないわ…』
女性からは悪霊特有の霊気が感じられない。
『彼女は悪霊とは無縁の存在なのかしら?』
女性は警戒し続ける桜花姫に不吉の笑顔で…。
「貴女は…私を視認出来るのね♪」
「はっ!?視認って…あんたは一体何者なのよ!?」
桜花姫は女性の突発的発言に驚愕したのである。
『彼女の姿形は…私以外の人間には視認出来ないのかしら?』
桜花姫は睥睨した様子で女性を凝視する。
「私はね♪」
女性が名前を名乗る直前…。宿屋の従業員が何気無い様子で通行すると女性の姿形がパッと消失したのである。
「えっ!?」
『彼女の姿形が一瞬で消失したわ…彼女は一体何者だったのかしら?』
桜花姫は恐る恐る通行中の従業員を観察する。
『従業員には彼女の姿形が認識出来なかったのかしら?』
桜花姫は自身の応接間へと戻ったのである。
「先程の正体不明の女性…結局彼女は何者だったのかしら?」
『ひょっとすると彼女は今回の神隠しの事件と関係しそうね…』
先程の女性が今回の神隠し事件と関連するのではと予測する。
『私は一度…一休みしましょう…』
時間帯は消灯時間であり桜花姫は熟睡したのである。
第十一話
吸血姫
桜花姫が客室で熟睡してより二時間後…。
「えっ…」
時間帯は真夜中の深夜二時半であるが通路より無数の悲鳴が響き渡る。
「何事なの?誰かの悲鳴だわ…」
『通路では一体何が発生したのかしら!?』
桜花姫は通路から響き渡る無数の悲鳴により目覚めたのである。
「如何やら一大事みたいね!」
『通路から無数の霊気を感じるわ!』
突如として宿屋全体に悪霊特有の無数の霊気が充満し始める。
『やっぱり今回の神隠し事件…神出鬼没の悪霊が関係したみたいね!』
今回の神隠し事件が悪霊関連であると確信したのである。
『如何やら最上級妖女としての私の出番が到来したみたいね!』
桜花姫は即座に神性妖術の天道天眼を発動…。妖力が普段の状態から数百倍にも増大化したのである。
『準備は万全ね…』
桜花姫は恐る恐る警戒した様子で客室用通路へと移動する。
『行動開始よ!』
客室用通路には彼方此方に鮮血やら肉片が確認出来…。逃走中の客人の背後には数十体もの悪霊が多数確認出来る。
「奴等は悪食餓鬼ね…やっぱり神出鬼没だわ…」
『如何してこんな場所に悪食餓鬼の大群が出現したのかしら?』
悪食餓鬼の大量出現に疑問視するものの…。
『悪霊が出現した要因は後回しよ!一先ずは!』
桜花姫は彼等に対する反撃を開始する。
「あんた達!桜餅に変化しなさい!」
桜花姫が変化の妖術を発動したのである。すると客人に襲撃中の無数の悪食餓鬼が小皿に配置された桜餅に変化…。無力化されたのである。
『やっぱり楽勝ね!』
すると逃走中の客人が恐る恐る桜花姫に近寄る。
「貴女様はひょっとして…西国の月影桜花姫様では!?」
「私は最上級妖女の月影桜花姫よ…」
彼等は桜花姫に一礼したのである。
「感謝します!桜花姫様の妖術で私達は命拾い出来ました!」
「こんな宿屋に不寝番の桜花姫様が参上されたなんて…非常に心強いですよ!」
一方の桜花姫は逃走中の客人に宿屋からの脱出を指示する。
「今現在宿屋は悪霊の巣窟だからね…こんな場所で死にたくなかったらあんた達は宿屋から脱出しなさい…」
「承知しました!桜花姫様!」
彼等は即座に宿屋から脱出したのである。
『再度…悪霊を退治しますかね!』
すると数十体もの悪食餓鬼が客室用の通路に出現し始め…。彼等は殺気立った様子で桜花姫に殺到したのである。
「毎度…毎度…あんた達は命知らずね!」
桜花姫は呆れ果てた表情で悪食餓鬼の大群を変化の妖術で瞬殺する。客室用の通路には無数の小皿と桜餅がポツンと配置された状態だったのである。
「悪食餓鬼の大群は片付いたわね…」
『悪食餓鬼は一掃出来たけど…違和感が…』
宿屋では悪食餓鬼以外の霊気を感じるのだが…。通常の霊気とは異質的であり生者同様の生命力も感じられる。
『神出鬼没の悪霊だけど…生命力も感じられるわね…』
「違和感の正体を確認しましょう…」
桜花姫は不吉の霊気の感じる場所へと移動したのである。不吉の霊気の感じられる場所とは宿屋の窓口であり数人の従業員達が床面に横たわった状態で確認出来る。
『宿屋の従業員達だわ…彼等は大丈夫かしら?』
桜花姫は恐る恐る従業員達に近寄る。
『従業員達は気絶した状態みたいね…』
彼等の状態を確認すると全員気絶した状態であり皮膚は土気色だったのである。
『彼等は悪霊に体内の血液を吸収されちゃったのかしら?』
すると背後より異質の気配を感じる。
「誰なの?」
桜花姫は警戒した様子で恐る恐る背後を確認する。
「誰かと思いきや…」
桜花姫の背後には先程遭遇した正体不明の女性が佇立…。女性は無表情で桜花姫を凝視したのである。
「あんたは先程遭遇した…」
『彼女の正体は恐らく…』
一方正体不明の女性はニコッと冷笑したかと思いきや…。
「如何やら貴女の様子から判断して…私の正体を察知出来たみたいね…」
すると直後である。女性の黒髪の長髪が白銀の銀髪に変化し始め…。全身の皮膚も死没者を連想させる灰白色に変化したのである。服装も平安貴族の女官を連想させる和装に変化し始める。
「えっ…」
『悪霊特有の霊気!?やっぱり此奴の正体は人外の悪霊だったのね…彼女も小面袋蜘蛛やら毒蛇巫女みたいに体内の霊気を最小限に遮断出来るのね…』
突如として女性の肉体から悪霊特有の霊気が感じられるのだが…。
『此奴の霊気…恐らくだけど地獄朧車は勿論…毒蛇巫女以上だわ…』
女性の霊気は上級悪霊とされる地獄朧車やら毒蛇巫女をも上回る破格の霊気である。今迄出現した悪霊では正体不明の女性は最強の分類に君臨する。
「あんたの正体は…最上級悪霊の【吸血羅刹女】ね…」
吸血羅刹女とは戦乱時代以前の古代文明時代に存在したとされる悪霊である。吸血羅刹女の正体はとある儀式により人身御供として利用され…。惨殺された少女達の怨念が吸血鬼として実体化した超自然的存在とされる。西洋の異国では別名として吸血鬼やら吸血妖婦とも呼称され…。吸血羅刹女の存在は桃源郷神国以外の異国でも同様の事例が多数報告されたのである。
『吸血羅刹女…別名吸血姫…西洋の異国でも多数出現したって噂話の…最強の悪霊がこんな宿屋に出現するなんてね…』
吸血羅刹女は一握りとされる最上級悪霊であり今現在吸血羅刹女の霊気を上回る悪霊は存在しない。
『吸血羅刹女は非常に強力だわ…彼女は対峙するだけでも気味悪いわね…』
吸血羅刹女の霊気は非常に強力であり桜花姫は吸血羅刹女と対峙するだけでも極度の嘔気が感じられ…。気味悪くなる。
『普通の妖女なら彼女と遭遇しただけでも卒倒するでしょうね…』
桜花姫は警戒した様子で恐る恐る後退りする。
「宿屋に無数の悪食餓鬼を発生させた張本人は…あんたの仕業なのかしら?」
「亡者達を発生させたのは私だけれども…何かしら?不都合でも?」
吸血羅刹女は意外にも率直に返答したのである。
『吸血羅刹女…悪霊だけど意外と率直なのね…』
率直に返答する吸血羅刹女に驚愕する。桜花姫は再度吸血羅刹女に問い掛ける。
「最後の質問だけど…宿屋で七人の客人が行方不明なのだけど…ひょっとして客人の神隠しもあんたの仕業なのかしら?」
「私の仕業だから何よ?折角の機会だし…あんたの鮮血も吸収しちゃおうかしら?あんたの血液は其処等の人間よりも美味しそうだからね…」
桜花姫は吸血羅刹女の発言に警戒…。恐る恐る後退りする。
『吸血羅刹女…神隠しはやっぱり此奴の仕業だったのね!』
「如何やら吸血羅刹女には手加減なんて無用みたいね!」
桜花姫は吸血羅刹女に変化の妖術を発動する直前である。
「妖術は駆使させないわよ…妖女の小娘!」
吸血羅刹女は自身の霊能力により桜花姫の肉体を切断…。
「えっ…」
桜花姫の両腕と頭部がポロッと落下したのである。
『如何して…両腕が?』
桜花姫は突然の両腕の切断に愕然とする。
「ぐっ…」
桜花姫は出血多量によりバタッと床面に横たわったのである。切断された両腕と頭首からは大量の鮮血がドロドロと流れ出る。一方の吸血羅刹女は冷笑し始める。
『如何やら彼女は失血死したみたいね…』
「所詮妖女なんて他愛無いわね!」
床面は桜花姫の鮮血により赤黒く染色したのである。
『所詮人外の妖女でも…小娘風情が私を仕留めるなんて無謀なのよね…』
吸血羅刹女は実質上級悪霊とされる地獄朧車やら毒蛇巫女をも上回る一握りの最上級悪霊…。通常の妖女では最上級悪霊の吸血羅刹女を仕留めるのは自殺行為であり一握りの最上級妖女でも吸血羅刹女を仕留めるのは困難とされる。
『早速彼女の美味しそうな血液を…』
「頂戴するわね!」
吸血羅刹女は惨殺した桜花姫の遺体に近寄るのだが…。
「えっ?」
突如として切断された桜花姫の遺体から白煙が発生したのである。
『白煙かしら?』
全身から白煙が発生してより数秒後…。
『彼女の肉体が消滅したわ…』
桜花姫の遺体はポンッと完膚なきまでに消滅したのである。
『ひょっとして彼女は分身の妖術を駆使したのかしら?』
吸血羅刹女は背後を警戒し始める。
『彼女は子供騙しの雲隠れの妖術でも駆使したのかしら?』
桜花姫は雲隠れの妖術により姿形を透明化させたのである。
『彼女の本体は?』
吸血羅刹女は桜花姫の気配を察知したのか自身の背後より桜花姫が雲隠れしたのを逸早く察知する。
「妖女の小娘…私に子供騙しの雲隠れの妖術なんて通用しないわよ…」
吸血羅刹女は桜花姫に金縛りを発動…。背後で雲隠れし続ける桜花姫の身動きを封殺したのである。
「残念だったわね…妖女の小娘!」
吸血羅刹女は金縛りで身動き出来なくなった桜花姫に冷笑する。
「ぐっ!」
『やっぱり吸血羅刹女には小手先の妖術なんて通用しないわね…』
一方の身動き出来なくなった桜花姫は雲隠れの妖術による肉体の透明化を維持出来ず…。姿形が表面化したのである。
「所詮あんた程度の浅知恵なんて私には通用しないのよ!」
吸血羅刹女は身動き出来なくなった桜花姫に近寄り始める。
「今度こそあんたの血液を頂戴するわね…妖女の小娘…」
桜花姫の血液を吸血する寸前…。
「残念だったわね!吸血羅刹女!」
桜花姫は満面の笑顔で発言する。
「私に血液を吸収されるのに何が可笑しいのよ?あんたは私を苛立たせるわね…」
冷静だった吸血羅刹女であるが…。ヘラヘラし続ける桜花姫に苛立ったのである。
「今度も…分身体なのよね!」
桜花姫の肉体がポンッと消滅する。
「彼女の肉体が消滅したわ…」
『寸前で分身の妖術を駆使したのね…小癪だわ!』
今度も吸血羅刹女の背後より桜花姫の本体が出現したのである。
「今度こそ…吸血羅刹女は私の大好きな桜餅に変化しなさい!」
桜花姫は今度こそ吸血羅刹女に変化の妖術を発動するのだが…。
「きゃっ!」
反対に術者である桜花姫自身が小皿に配置された桜餅に変化したのである。
「残念だったわね…妖女の小娘!悪因悪果かしら?あんたは私に妖術を発動したのを後悔するのね!」
吸血羅刹女は自身の強大なる霊能力により相手が自身に発動させたあらゆる妖術を無条件に反射出来る。反射の霊能力は吸血羅刹女特有の最大の特異能力である。当然として相手の術者が発動させた妖術は発動した相手の術者に問答無用に発動させられ…。あらゆる妖術を無条件に無力化出来る。
「私は反射の霊能力が駆使出来るのよ…私にはあんた程度の子供騙しみたいな妖術なんて通用しないのよ…私を其処等の亡者達とは同一視しないでね…」
吸血羅刹女が地獄朧車やら毒蛇巫女をも上回る最強の悪霊と呼称されるのは実質的に反射の霊能力が最大の理由とされる。
『折角美味しそうな血液だったのに…彼女の鮮血を吸収出来ないのは非常に残念だったわね…』
吸血羅刹女は床面の小皿に近寄る。
「ん?」
『一体何かしら?和菓子?』
吸血羅刹女は小皿の中央に配置された桜餅をパクッと頬張り始める。
『和菓子も意外と美味ね…』
吸血羅刹女は満足したのか宿屋から脱出する。
『折角だからね…今度は中心街の人間達の血液を吸収しちゃおうかしら?』
吸血羅刹女は行動を開始する直前…。
「ん?」
吸血羅刹女は突如として身動き出来なくなる。
「えっ…」
すると数秒後…。
「一体何が?はっ?」
吸血羅刹女の体内から白煙が発生したのである。ポンッと白煙の中心部より桜花姫が出現する。
「はぁ…はぁ…」
『今回ばかりは危機一髪だったわ…』
自身の発動した変化の妖術の反動により自身が桜餅へと変化した桜花姫であるが…。吸血羅刹女に捕食された桜花姫は吸血羅刹女の体内で奥の手の融合化の妖術を発動したのである。
『一か八かの大博打だったけれども…融合化の妖術は成功したみたいね…』
融合化の妖術は自身の肉体に密着した他者の肉体を吸収する妖術…。体内であろうと相手の血肉に接触出来れば僅少の妖力で常時発動出来る。桜花姫は滅多に駆使しない妖術であるが…。吸血羅刹女に捕食された桜花姫は吸血羅刹女の体内で融合化の妖術を発動したのである。今現在吸血羅刹女は桜花姫の肉体の一部として消化される。
「吸血羅刹女が無力化した影響かしら?宿屋の霊気も浄化されたわね…」
吸血羅刹女を仕留めた影響からか宿屋の不吉の気配が感じられなくなる。
「吸血羅刹女は久方振りの強敵だったけれど…無事事件は解決ね!」
吸血羅刹女を仕留めてより数分後…。
『神隠しの事件は解決出来たし!私は戻ろうかしら!』
桜花姫は西国の家屋敷へと無事戻ったのである。吸血羅刹女による悪霊事件が発生した翌日の早朝…。東国の武士団が早急に事件現場である宿屋全体を徹底的に再調査したのである。東国武士団が再調査した結果…。宿屋の地下壕より七人もの旅人達が衰弱化した状態で発見されたのである。宿屋の従業員達と七人もの旅人達は吸血羅刹女に体内の血液を吸血されたものの…。早急の治療によって旅人達全員が無事だったのである。悪霊事件が発覚したものの…。一週間後には営業が再開されたのである。
最終話
事後報告
吸血羅刹女による宿屋の悪霊事件が解決してから十日後の真昼…。桜花姫は再度八正道の寺院へと訪問したのである。
「八正道様♪御免あそばせ♪」
「桜花姫様!宿屋の大事件解決…非常に見事でしたな!宿屋での行方不明事件が無事に解決出来たので一安心ですよ!桜花姫様が参上されなければ更なる被害の拡大化は確実だったでしょうし!」
八正道は事件の解決に大喜びする。
「今回の相手は本当に強敵だったわよ…私でも仕留めるのに一苦労だったわ…」
「ですが桜花姫様…宿屋の被害者達が全員無事だったみたいなので一安心ですよ!桜花姫様には感謝しても感謝し切れませんね!」
すると桜花姫は満面の笑顔で…。
「今回の悪霊事件も案外面白かったわよ!何よりも宿屋では入浴も食事も最高で豪華だったし!折角だから八正道様も宿屋に一泊しちゃえば?」
「桜花姫様がこんなにも絶賛されるなんて興味深いですな!是非とも私も宿屋には一泊したいですね!」
「八正道様も今度宿屋に一泊したら?女性とも混浴も出来るわよ!」
「なっ!?混浴ですと!?」
途端に八正道の表情が赤面し始める。
「私は列記とした僧侶なのですからね!僧侶の私が女性と混浴なんて…非常に破廉恥ですな…桜花姫様は…私は…混浴なんて…大嫌いですからね!」
八正道は苦し紛れな表情で女性との混浴を否定するのだが…。
『無理しちゃって!八正道様は本当に助平ね!』
桜花姫は八正道の苦し紛れの否定発言に微笑み始める。
「冗談よ♪冗談♪」
「冗談ですか…突発的なので吃驚しましたよ…桜花姫様は時たま意地悪ですね…」
「御免あそばせ♪八正道様♪」
桜花姫は満面の笑顔で謝罪したのである。すると八正道は深刻そうな表情で…。
「ですが今回出現した悪霊…吸血羅刹女でしたね?本当に西洋の悪霊が宿屋に出現するなんて…」
「吸血羅刹女…今迄に出現した悪霊では最強の部類だったわよ…私の変化の妖術が反射されるなんてね…」
今迄に出現した悪霊でも妖星巨木の樹木を使用した小面袋蜘蛛系統には妖術を無力化されたが…。妖術を無力化出来るのみならず反射する悪霊は前例が無かったのである。吸血羅刹女が上級悪霊を超越した最上級悪霊なのは確実視出来る。
「今回の大事件…桜花姫様以外の妖女では事件を解決するのは不可能だったのかも知れませんね…」
最悪の場合…。吸血羅刹女が出歩けば被害は宿屋のみならず各地の村里へと拡大化した可能性も否定出来ない。
「何はともあれ…桜花姫様が最強の吸血羅刹女を退治されたので一安心ですよ!」
八正道は一息したのである。
「昼食の時間帯ですな!折角ですし…桜花姫様も一緒に食事しませんか?昼食を用意しますからね!」
「昼食ですって!勿論よ!八正道様!食事しましょう!」
八正道は応接間から退室…。空腹の桜花姫に昼食を提供したのである。
完結