英ケンブリッジ大最年少の黒人教授が辞任 盗作疑惑は人種差別と反論
【ロンドン=下田恵太】英ケンブリッジ大で黒人として史上最年少で教授に就任したジェイソン・アーデイ教授が5日、教授職の辞任を発表した。過去の論文での盗用疑惑が指摘され「執拗な非難、臆測、そして世間の論評は、私自身と私の愛する人々に大きな負担をかけている」ことを理由に挙げた。
アーデイ氏は教育社会学が専門で、教育課程での人種差別の影響などを研究している。2023年に37歳でケンブリッジ大の正教授に就任した。幼少期に自閉症を抱え、11歳まで言葉を話せなかった経歴を持つ。
複数の英メディアの報道によるとアーデイ氏には25年にも博士論文の盗用疑惑が浮上したが、博士号を授与したリバプール・ジョン・ムーアズ大が調査の結果、研究不正には当たらないとして博士号を維持。ケンブリッジ大も「アーデイ教授は卑劣なキャンペーンの犠牲者であり、このような行為は直ちに止めなければならない」と擁護していた。
しかし今年7月以降、事態が再燃。元ケンブリッジ大研究者で、哲学者のネイサン・コフナス氏が、アーデイ氏の博士論文が別の論文と著しく重複していることを指摘した。さらに一部英メディアも同氏が過去に公表していた経歴について疑義があると相次いで報じた。
アーデイ氏は英紙タイムズの取材に対し、論文の誤りを認めたものの、それは自閉症に起因するものであると説明した。そのうえで「私の地位を奪おうとする、非常に周到に計画された運動が展開されてきた」とも主張し「その動機は人種差別だ」との見方を示した。
一方、今回の盗作を指摘したネイサン氏は、人種や知能を巡る論争的な主張で知られる。過去に人種問題に関する見解が批判を集め、24年にケンブリッジ大エマニュエル・カレッジでの研究員としての活動を終了した経緯がある。
アーディー氏が辞任を発表した5日、ケンブリッジ大は学歴や肩書に関する新たな情報が判明したとして調査を開始した。大学によると、研究不正に関する申し立ても引き続き審査中という。これまで同氏を擁護してきた大学側が調査に転じたことで、その対応にも関心が集まっている。
アーデイ氏は声明で「私はより強く、より賢く、そしてこれまで私の歩みを支えてきた揺るぎない決意を持って戻ってくる」と述べ、研究活動を続ける意向を示した。
今回の問題を巡っては、黒人として史上最年少でケンブリッジ大教授に就任したために通常以上に厳しい精査の対象になったとの同情的な見方が支持者の間である一方、名門大学が多様性を示そうとして同氏を象徴的に扱い「見過ごしてはならない問題に目をつぶった可能性がある」(哲学者のキャスリーン・ストック氏)との批判も出ている。