エース級の財務官僚が異例転出へ 官邸幹部「協力的でなかったから」
7日発表予定の財務省人事が波紋を呼んでいる。将来の次官候補と言われている一松(ひとつまつ)旬(じゅん)・主計局次長が東京税関長に転出する案で、エース級の財務官僚がこのポストに就くのは異例。消費減税などで意見が対立した高市政権の強い意向があったとされ、官邸幹部は人事について「(一松氏は)政権にあまり協力的でなかったから」と語った。
一松氏は1995年に入省。予算編成を行う主計局の社会保障担当や予算全体を指揮する企画担当の主計官、岸田文雄首相(当時)の秘書官などを歴任し、「10年に1度の大物財務官僚」との呼び声が高かった。
昨年10月から主計局次長として、政権肝いりの給付付き税額控除の実務を取り仕切ってきた。今後、制度設計が具体化するにあたり、留任が有力視されていた。
東京税関長はかつて、有力財務省官僚が次の役職が空くまでの「待機ポスト」としても使われていた。2002年に後に次官になった津田広喜氏が、主計局次長から就任した前例がある。ただ、津田氏以降の東京税関長は次官になっていなかった。
【申し込み開始】季刊DEEP POLITICS「霞が関人事、二つの異変 高市官邸の影」
この記事の筆者の大日向寛文編集委員とDEEP POLITICS編集部の林尚行編集長が今回の霞が関人事について、さらに詳しく語ります。
一松氏は強い財政再建論者で、政治家に直言することで知られている。官邸幹部は「(一松氏は)初めての挫折を味わっているんじゃないか」と「左遷」含みの人事であることを認めた。
首相官邸が人事に関与することは珍しいことではない。安倍晋三政権では、内閣法制局長官や総務省局長をめぐり、官邸の関与が取り沙汰された。ただ、「官庁の中の官庁」とされる財務省では、人事をめぐって官邸の意向が露骨に反映されることはなかった。
高市政権で初となる今回の財務省の定例人事をめぐっては、次官人事をめぐり、首相官邸が「待った」を掛けて、揺さぶりを掛けたとされる。結局、想定通り7日付で宇波弘貴・主計局長の次官昇格が決まったが、一松氏のほかにも「財務省外し」の人事がある。
7日付の人事では、内閣府から2人の財務省出身者が去る。井上裕之・次官が退任し、阿久沢孝・政策統括官が、財務省に戻り、理財局長に就く。内閣府の経済政策の分野で、局長級以上に財務省出身者がいなくなることになる。
一方、経済産業省出身者が新たに次官級の内閣府審議官と、政策統括官に就く。内閣府にはマクロ経済政策の司令塔の役割がある。高市政権下での財務省から経産省への主導権のシフトが一段と進む可能性がある。
「デジタル版を試してみたい!」というお客様にまずは1カ月間無料体験
- 加谷珪一経済評論家解説
今回、官邸が財務省の人事に介入しようとしたのは事実と思われますし、政治家というのは高市氏に限らず、自らの政治力を誇示するため、(実際に人事介入が成功するのかはともかく)人事に口出しすることもあります。しかしながら、よくメディアで報じられる官邸による介入話の多くは、憶測や噂に基づくものが大半で、現実と乖離しているケースが少なくありません。財務省の人事は、内部の事情をよく知る人間からすると、一定のルールに基づいて実施されており、幹部人事の多くは事前に予想することが可能です(私自身、長く財務省を見てきましたが、次官の人事予想を外したことはほとんどありません)。 世の中では財務省による陰謀論が跳梁跋扈しており、税制や財政をめぐって財務省内で派閥が対立している、あるいは財務省が強引な政治工作をしているとされますが、最強官庁のひとつとはいえ財務省も所詮、行政組織のひとつに過ぎません。官邸の状況をみながら、できるだけ自らの組織に有利になるよう、可能な範囲で動いているだけというのが現実です。
2026年8月6日 18:42 - 千正康裕株式会社千正組代表・元厚労省官僚視点
もう大物官僚はなかなか出てこないだろう。かつては、政治家にも直言するような大物官僚がいたが、そうした幹部が見られなくなってから久しい。 統治機構のあり方としては、正しいのかもしれないが、専門知とポピュリズムのバランスをどう取っていくかというのが、今日的な政策決定のテーマだと思う。 特に、国民から直接税や保険料を徴収する財政や社会保障の世界は、そのバランスをとるシステムを考えないといけないと感じる。
2026年8月6日 21:26