一世紀近く前、信楽焼にとりくんでいた少女が、大日本帝国の戦争に必然的に巻きこまれていく。ジャンプ+で2025年初頭から連載を初めて、2025年10月に完結した。単行本は上下巻。
美術品と実用品の中間にある工芸を題材にすることで、対米開戦以前から戦時体制に組みこまれていった子供という珍しいで期待させる作品だった。
戦時中の信楽焼を題材にしたジャンプ+新連載『陽光ヲ待ツ』に期待したい - 法華狼の日記
絵を評価されるために戦争を賛美していた時代は、戦争を賛美すれば絵を描けた時代ではあった。小説や映画もそうだった。そこで戦争を賛美しても工芸をつくれなかった信楽焼を主題にしたことで、日米開戦以前から戦争がつづいていたことと、いちはやく戦争が文化をうばうことに直面する物語として独自性が生まれている。
信楽焼が兵器に応用できる技術として利用された史実に題をとっていたことも良かった。陶器を地雷にすれば、鉄製と違って安いし、金属探知機で見つかることもない。
そうして信楽焼を守るために主人公たちは兵器製造に邁進していく。第二次世界大戦で日本の加害を、それに加担した子供の視点で描いたこと自体が貴重で良かった。
ただ残念ながら、掲載頻度の自由度が高いWEB媒体にしても休載が多く、それでいて一年間に満たない短期集中連載で終わったため、序盤で期待したほどの発展にはいたらなかった。
戦争協力初期の信楽焼は珍しい立場であったが、敗戦が近づくにつれて他の工芸も同じように軍事体制に組みこまれるようになった*1。それらを題材にした先行作との差異までは作りだせなかった。
こうした戦時日本を題材にした短期作品には珍しく、敗戦後の鬱屈した日々や進駐軍の到来もしっかり描いて、最終的には短いなりに読みごたえのある作品になったが……たとえばさらに一話つかって、戦後日本の兵器開発と距離をとった信楽焼の歩みや、それと並行してセラミックなどが最新兵器につかわれていく時代の流れなども描いて、現在に接続して終われば、もっと現代に描くべき切実な作品になれたかもしれない。
掲載頻度が低くなっても質を確保して、地味な題材の作品を掲載して媒体の幅を広げる試みのひとつだったのかもしれない、と今では思う。『こころの一番暗い部屋』や『伴天連怪談』のように。
思えば『少年ジャンプ』でもイジメ問題を題材にした短期連載作品を載せたりした時代があった。
*1:ネタバレになるが、2017 年のドラマは良かった。重い題材が謎解きの衝撃をよく支えていた。 『科捜研の女 season17』File3 折り鶴が見た殺人 - 法華狼の日記