今年は高市早苗政権が国家安全保障戦略など安保関連3文書を前倒し改定する年だ。
令和8年版防衛白書は、現行の3文書を決定した4年当時と比べて、「安保環境の変化が様々(さまざま)な分野で加速度的に生じている」と指摘した。
備えるべき安全保障の現実を提示した白書を、年末にかけて進む3文書改定や防衛費増額をめぐる議論に生かしたい。
白書は、安保環境の変化として、中国・北朝鮮の軍事力増強▽中露や露朝の連携強化▽各国が、ウクライナ侵略を教訓に、無人アセット(装備品)の大量運用を含む「新しい戦い方」や長期戦の備えを急いでいる―などを挙げた。
ウクライナでは、安価な無人機(ドローン)が大量投入され、高価な装備品や生活インフラへの攻撃に使用されていることや、AIやネットワーク使用による軍事的意思決定の迅速化が進んでいると説いた。
海に囲まれた日本を守る在り方は、大陸国家ウクライナのそれとは異なるが、無人機やAIなどを活用する「新しい戦い方」への適応なしには十分な抑止力と対処力を構築できないと知るべきである。
この適応を成功させるため、白書が、防衛生産・技術基盤の強化や、防衛装備品の海外移転を通じた同盟国・同志国との協力を説いたのはもっともだ。
中国軍をめぐっては、今年5月末までに空母「遼寧」が13回、同「山東」が9回にわたって太平洋へ進出したと説明した。台湾周辺での演習は「台湾の統一に向けた軍事作戦の一部が演練されている可能性」があるとした。活発化する中露両軍の共同飛行、共同航行を取り上げ、「わが国に対する示威活動を明確に意図したもの」で「安全保障上、重大な懸念」と指摘した。
中国の対外姿勢や総体的な軍事動向については、前年の白書と同様に「深刻な懸念事項で、これまでにない最大の戦略的な挑戦」と記した。「従前よりも一層重大かつ差し迫った脅威」だと北朝鮮について記してきたのとは大きな落差がある。
日本は、中国とロシアも「脅威」であるとはっきりとらえて備えるべき時期にきている。高市首相や茂木敏充外相、小泉進次郎防衛相には指導力を発揮してもらいたい。