なぜ昔ながらのゲームセンターは減っているのか
1プレー100円で、高額なゲーム機の代金を回収する厳しさ
平素よりプレイハウスエリナをご利用いただき、誠にありがとうございます。
近年、昔ながらのゲームセンターが次々と姿を消しています。
かつて駅前や商店街にあり、ビデオゲーム、対戦格闘ゲーム、音楽ゲーム、麻雀ゲームなどが所狭しと並んでいた店舗も、気がつけば閉店していたり、クレーンゲームを中心とした売り場へ変わっていたりします。
その一方で、ショッピングモールや繁華街では、大量のクレーンゲームを設置した大型店や専門店を見かける機会が増えました。
ゲームセンターそのものがすべてなくなっているというよりも、私たちが長年親しんできた「昔ながらのゲームセンター」が、少しずつ減っているように感じます。
今回は、なぜ昔ながらのゲームセンターを維持することが難しくなっているのか、実際に店舗を運営する立場から考えてみたいと思います。
売上高は伸びているのに、昔ながらのゲームセンターは減っている
ゲームセンターの閉店が相次いでいることから、業界全体が衰退していると思われる方も多いかもしれません。
しかし、日本アミューズメント産業協会が公表している資料によると、2024年度のゲームセンター全体の推計売上高は6,148億円で、2023年度の5,384億円を上回っています。
そのうち、クレーンゲームなどを含むプライズゲームの売上は4,177億円で、全体の約68%を占めています。全国のゲーム機の推計設置台数58万7,151台のうち、クレーンゲームなどのプライズ機は25万8,903台となっています。※1
数字だけを見ると、ゲームセンター業界は縮小しているどころか、成長しているようにも見えます。
それでも昔ながらのゲームセンターが減っていると感じるのは、売上を伸ばしている店舗と、閉店している店舗の形が大きく異なるためです。
駅前や商店街にある独立型の店舗が厳しい状況に置かれる一方で、ショッピングモールなどに展開する大型店は、クレーンゲームやキャラクター景品を中心に、家族連れや観光客など幅広い利用者を取り込みながら営業しています。
ゲームセンターが一様に減っているのではなく、ビデオゲームなどを中心とした従来型の店舗から、クレーンゲームを中心とした大型店へ、業界の中心が移りつつあるのだと思います。
1プレー100円を簡単には変えられない
昔ながらのゲームセンターが苦しくなっている大きな理由の一つが、料金を値上げしにくいことです。
ゲームセンターでは、長い間「1プレー100円」という料金が定着してきました。
電気代、人件費、店舗の賃料、筐体の購入費、修理費などが上昇しても、飲食店のように100円を120円や150円へ細かく変更することは簡単ではありません。
硬貨を使用する筐体の場合、100円の次は200円となります。
店舗側から見れば必要な値上げであっても、お客さまから見れば一度に倍の料金となるため、プレー回数が大きく減る可能性があります。
電子マネーやキャッシュレス決済を利用すれば、120円や150円といった設定もできます。
しかし、そのためには端末の導入費用や決済手数料が必要です。古い筐体では、そもそも対応が難しい場合もあります。
物価や電気代が上がっても、ゲームセンターだけは長年100円のまま。
この料金を変えにくい構造が、店舗の経営を少しずつ圧迫しています。
100円売れても、100円が利益になるわけではない
お客さまがゲーム機へ100円を入れたとき、その100円がそのまま店舗の利益になるわけではありません。
そこから、さまざまな費用を支払う必要があります。
ゲームによってはメーカーへ支払う費用が発生します。そのほかにも、電気代、通信費、更新費用、店舗の賃料、人件費、修理費、部品代、税金、決済手数料などが必要です。
帝国データバンクが2024年4月に公表した、ゲームセンター運営企業の財務データに基づく分析では、
本業の利益を示す営業利益は、売上100円当たり平均6円にとどまったとされています。
つまり、業界全体の平均的な利益率で考えると、100円の売上があっても、最終的に営業利益として残るのは平均6円という計算です。
もちろん、すべてのゲームや店舗が一律に6円という意味ではありません。
店舗の規模、設置機種、契約内容、賃料、人件費などによって実際の利益率は大きく異なります。
それでも、「100円入ったから、店が100円もうかった」というわけではないことは、知っていただきたいと思います。
4台で1,000万円を超える筐体を、何年で回収できるのか
現在の業務用ゲーム機の中には、導入費用が1台数百万円に及ぶものがあります。
プレイハウスエリナには、beatmania IIDXのLIGHTNING MODELを4台設置しています。
このような大型の最新筐体は、1台だけでも数百万円規模の設備投資となり、4台をそろえると総額は1,000万円を超える規模になります。
しかも、これは筐体を導入するための費用だけです。
導入後も、電気代、通信費、修理費、部品代、人件費などが継続的に発生します。
あくまで、筐体を購入するための費用だけです。
まず、1プレー100円の売上をすべて筐体代の回収に充てられると仮定します。
1台280万円を回収するには、2万8,000プレーが必要です。
4台合計1,120万円を回収するには、合計11万2,000プレーが必要になります。
しかし、これは100円の売上を一円も経費に使わず、そのまま筐体代へ充てるという、現実にはあり得ない計算です。
仮に4台それぞれが1日平均30回、4台合計で1日120回プレーされたとします。
1日の売上は1万2,000円です。
年間313日営業すると、年間売上は約375万6,000円になります。
この売上を全額筐体代へ充てられたとしても、4台分の1,120万円を回収するまでに約3年かかります。
しかし、その3年間も、電気代、人件費、通信費、賃料、修理費などは発生し続けます。
実際には、売上をすべて筐体代へ回すことなどできません。
「100円当たり利益6円」で考えると、さらに厳しい
ここで、帝国データバンクが示した「売上100円当たり平均6円」という営業利益率を、説明のために当てはめてみます。※2
仮に1プレー100円につき6円が店舗の営業利益として残るとすると、1台280万円を利益だけで回収するために必要なプレー回数は、
約46万6,667プレー
です。
4台合計1,120万円なら、必要なプレー回数は、
約186万6,667プレー
になります。
4台がそれぞれ1日平均30回、合計で1日120回プレーされた場合、年間のプレー回数は3万7,560回です。
この条件で、4台分の導入費用1,120万円を、1プレー当たり6円の利益だけで回収しようとすると、
約50年
かかる計算になります。
1台当たりの平均プレー回数別に見ると、次のようになります。
・1台1日平均10回の場合:約149年
・1台1日平均20回の場合:約75年
・1台1日平均30回の場合:約50年
・1台1日平均50回の場合:約30年
・1台1日平均100回の場合:約15年
もちろん、これはゲームセンター運営企業全体の平均的な営業利益率を、特定の筐体へ単純に当てはめた参考試算です。
beatmania IIDXの1プレーごとの実際の利益が6円という意味ではありません。また、会計上の営業利益と筐体購入費の回収を、そのまま同じものとして扱えるわけでもありません。
それでも、高額な筐体を「1プレー100円」の積み重ねだけで維持し、購入費を回収することが、どれほど難しいかを知る一つの目安にはなると思います。
さらに、筐体を50年間動かせばよいという話でもありません。
その間には故障や部品交換が発生します。メーカーの修理対応が終了することもあれば、オンラインサービスが終了することもあります。
新しい世代の筐体が登場すれば、再び高額な設備投資が必要になる可能性もあります。
導入した筐体の代金を回収し終える前に、修理や更新、買い替えの時期が来てしまうことも十分に考えられます。
11時間営業しても、常に遊ばれているわけではない
プレイハウスエリナは、営業日には1日約11時間営業しています。
「11時間も営業しているなら、その間にかなり売上があるのではないか」と思われるかもしれません。
しかし、営業時間中ずっと、すべての筐体が遊ばれているわけではありません。
平日の昼間や夜間など、お客さまが少ない時間帯もあります。
人気の筐体であっても、誰もプレーしていない時間はあります。4台設置していても、4台すべてが同時に動き続ける日は限られます。
仮に1プレーの所要時間を10分とすれば、理論上は1時間に6プレー、11時間で66プレーできます。
しかし、それは開店から閉店まで一度も途切れず、常に次のお客さまが待っている場合の最大値です。
地方の小規模なゲームセンターで、毎日そのような稼働を続けることは現実的ではありません。
「営業時間が長いこと」と「筐体が長時間遊ばれていること」は、同じではないのです。
筐体は、遊ばれていない時間にも費用がかかる
ゲームセンターの筐体は、ほとんどプレーされていない時間でも、設置を続けるだけで費用が発生します。
電源を入れていれば電気代がかかります。
オンライン対応のゲームには、通信費や各種サービスに関する費用が必要になる場合があります。
故障した際には、修理費や交換部品代が必要です。
古い筐体では、メーカーの保守対応が終了していることもあります。その場合は、中古部品を探したり、別の筐体から部品を移植したりしながら、何とか稼働を続けなければなりません。
日常的な清掃やメンテナンスにも手間がかかります。
そして、筐体が置かれている場所にも店舗の賃料がかかっています。
どれほど貴重なゲームであっても、長い間ほとんどプレーされなければ、店舗として置き続けることが難しくなるのが現実です。
限られた店内スペースをどう使うか
ゲームセンターの店内スペースには限りがあります。
その中で、どのゲームを置き、どのゲームを入れ替えるかは、営業を続けていくうえで非常に重要な判断です。
一部のプレイヤーから強く支持されているゲームであっても、実際のプレー回数や売上が少なければ、設置を続けることが難しくなります。
特に大型音楽ゲームの場合は、筐体本体だけでなく、安全に遊ぶための空間や、順番を待つお客さまの場所も必要です。
大型筐体1台分のスペースに、複数台の小型ゲーム機を置ける場合もあります。
同じ場所へ、より多くのお客さまに利用していただけるゲームを設置した方が、店舗全体としては売上を確保しやすくなることもあります。
利用する側から見れば、好きなゲームが撤去されることは非常に寂しいことだと思います。
しかし店舗側は、一つのゲームだけではなく、店全体の営業を続けるための判断をしなければなりません。
クレーンゲームが店舗の中心になった理由
現在のゲームセンター運営において、クレーンゲームは非常に大きな存在となっています。
クレーンゲームは、普段ビデオゲームを遊ばない方でも参加しやすく、子ども、家族連れ、友人同士、観光客など、幅広い層に利用していただけます。
人気のアニメやゲーム、キャラクターなどの景品を用意することで、ゲームを遊ぶことよりも、景品そのものを目的として来店する方にも足を運んでいただけます。
クレーンゲームにはさまざまな大きさの機種があり、店舗の広さや客層に合わせて売り場を構成しやすい特徴もあります。
景品を入れ替えることで、同じ筐体でも売り場に変化をつけることができます。
店舗として営業を続けることを考えれば、ビデオゲームのスペースを減らし、クレーンゲームを増やす判断は、決して不自然なものではありません。
もちろん、クレーンゲームも簡単に利益が出るわけではありません。
景品の仕入れ費用、在庫管理、補充、設定調整、接客などが必要です。景品が取られ過ぎても経営が成り立たず、反対に取れなければお客さまに楽しんでいただけません。
売上が大きいからといって、そのまま大きな利益になるとは限りません。
それでも、幅広いお客さまに利用されやすいことから、多くの店舗で重要な収益部門となっています。
家庭でもゲームを遊べる時代になった
かつては、最新のゲームや対戦相手を求めて、ゲームセンターへ足を運ぶことに大きな意味がありました。
しかし現在では、家庭用ゲーム機、パソコン、スマートフォンから、いつでも多くのゲームを遊べます。
オンライン対戦を利用すれば、自宅にいながら全国のプレイヤーと競うこともできます。
ゲームを遊ぶために、必ずゲームセンターへ行く必要があった時代ではなくなりました。
この遊び方の変化は、ビデオゲームや対戦ゲームを中心とする店舗にとって、大きな環境の変化です。
もちろん、大型の専用筐体、店舗ならではの音響、実際のボタンやレバーの感触、同じ場所に集まった人たちとの交流など、ゲームセンターにしかない魅力は今も残っています。
しかし、その魅力だけで高額な設備と店舗全体を維持することは、以前より難しくなっています。
新しいゲームを置くことも簡単ではない
古いゲームを維持するだけでなく、新しいゲームを導入することにも大きな費用がかかります。
筐体によっては、本体価格だけで数百万円に及びます。導入後も通信費、更新費用、保守費用などが必要となる場合があります。
人気シリーズの最新作であっても、設置する地域や店舗の客層によって、利用状況は大きく変わります。
新しい筐体を導入しても、想定していたほどプレーされなければ、購入費用を回収することはできません。
そのため、小規模な店舗ほど新作を積極的に導入しにくくなり、結果として大型チェーン店との設備の差が広がっていきます。
大型店には最新機種が並び、小規模店には旧作や古い筐体が残る。
しかし、その古い筐体も、故障や部品不足によって維持できなくなれば、店舗が持っていた特徴そのものが失われてしまいます。
消えているのは、私たちが好きだったゲーセン
クレーンゲームを中心とした店舗も、もちろんゲームセンターの一つです。
景品を取る楽しさがあり、家族や友人と気軽に遊べる場所として、多くの方に利用されています。
しかし、ビデオゲーム、音楽ゲーム、対戦ゲーム、麻雀ゲーム、旧作筐体などを目当てに通ってきた方にとっては、クレーンゲームだけが並ぶ店舗を見ても、「昔よりゲームセンターが増えた」とは感じにくいのではないでしょうか。
ゲームセンターがすべてなくなっているわけではありません。
時代や利用する方の変化に合わせて、店舗の形が変わっているのだと思います。
ただ、その変化の中で、ゲームを練習するために通った場所、常連同士で記録を競い合った場所、学校や仕事の帰りに立ち寄った場所が、少しずつ失われています。
昔ながらのゲームセンターが減っている理由は、一つではありません。
電気代や人件費の上昇、料金を値上げすることの難しさ、高額な筐体の購入費と維持費、限られた店内スペース、家庭用ゲームやオンラインゲームの普及、そしてクレーンゲームを中心とした市場への変化。
さまざまな要因が重なった結果、これまでと同じ形で営業を続けることが難しくなっています。
1プレー100円で遊べることは、お客さまにとってはゲームセンターの大きな魅力です。
しかし店舗側から見ると、その100円の積み重ねによって、数百万円の筐体を購入し、電気代や人件費を払い、故障を修理し、次の新しいゲームを導入していかなければなりません。
ゲームセンターは、たくさんの100円玉によって支えられている場所です。
その100円玉一枚の中から店舗に残る金額は、決して大きなものではありません。
それでも、長く親しまれてきたゲームや筐体には、家庭用ゲームでは味わえない魅力があります。
画面の前に立ち、実際のボタンやレバーを操作し、同じ場所に集まった人たちと記録を競い合う。
一台のゲームをきっかけに会話が生まれ、世代や住んでいる地域を超えて、人と人がつながる。
それも、ゲームセンターが長い間持ち続けてきた大切な役割だと考えています。
プレイハウスエリナでも、それぞれの筐体が持つ価値を大切にしながら、できる限り遊べる環境を維持していきたいと考えています。
ゲームセンターがどのような事情を抱え、どのように変化しているのか。
そして、1プレー100円で遊べる環境を維持することが、決して当たり前ではないということ。
今回の記事を通じて、その背景を少しでも知っていただければ幸いです。
参考資料
※1 一般社団法人日本アミューズメント産業協会
「メディアのみなさまへ」
データ提供:日本アミューズメント産業協会
※2 株式会社帝国データバンク
「『ゲームセンター』の倒産・休廃業解散動向」
2024年4月7日公表
試算について
本文中のbeatmania IIDX LIGHTNING MODELの回収年数は、次の条件による説明用の単純試算です。
・筐体価格を1台280万円と仮定
・設置台数4台、合計1,120万円
・1プレー100円
・年間営業日数313日
・帝国データバンクが公表した、ゲームセンター運営企業全体の「売上100円当たり平均6円」の営業利益を参考として使用
実際の筐体価格、契約内容、メーカーへの支払い、電気代、通信費、修理費、稼働状況および店舗全体の利益率によって、実際の回収期間は大きく異なります。
また、売上100円当たり平均6円という数字は、beatmania IIDXの1プレーごとの利益を示したものではありません。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
プレイハウスエリナ
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こういった昔ながらのゲームセンターを残していくには俺らみたいなゲームマニア略してゲーマニや新規のお客のニーズに答えながらやっていかないという事がよくわかる記事でした。 店長これからも常連の一人としてこの命ある限り支援させてもらいます。
ビデオゲームやアーケード主体とした店舗は年々減少していますね。 リサイクルショップ系のクレーンゲーム専門店が爆発的の広がっている現状を見ると市場の変化を感じざる得ません。 経営環境が大変厳しい時代ですが、エリナさんにはがんばっていただきたいと思います。
筐体の購入代も経費に含まれるから 100円のうち94円相応分が経費になり 残りの6円分相応が営業利益になるわけであって 筐体の購入分を差っ引いた結果残る6円を基準にプレー回数を論じるのは あまりにも不誠実な計算の仕方ではないかと感じました。