フェミニストカウンセリングで、初めて「私は悪くなかった」と知った日
「私が悪かった」と思い続けていた
「あなたは悪くありません。」
その言葉を初めて聞いた日のことを、今でもよく覚えています。
けれど、その時の私は、その言葉を受け取ることができませんでした。
「そんなはずはない。」
心の中で、すぐに否定していました。
もし私が夜遅く歩いていなければ。
もしあの道を選ばなければ。
もし車に乗らなければ。
もし、もっと強く抵抗できていたら。
「もし」がいくつも頭の中を巡り、そのたびに最後は「私が悪かった」という答えにたどり着いていました。
そう考えることが、いつの間にか当たり前になっていたのです。
身体は、あの日を忘れていなかった
事件から時間は過ぎても、身体はずっと緊張したままでした。
人の視線が怖い。
後ろから足音がすると身体が固まる。
夜になると息苦しくなる。
眠ろうとしても眠れない。
それなのに、私は「弱い自分」が悪いのだと思っていました。
周りには
「もう忘れたほうがいい」
「前を向きなさい」と言われることもありました。
私もそうしたかった。
忘れられるなら、忘れたかった。
前を向けるなら、とっくに向いていました。
でも、身体は私の意思とは関係なく、あの日を忘れてはくれませんでした。
初めて安心して話せた場所
フェミニストカウンセリングでは、初めて安心して話せる時間がありました。
話したくないことは話さなくていい。
泣いてもいい。
黙っていてもいい。
途中でやめてもいい。
そんな空気の中で、少しずつ言葉を口にできるようになりました。
そして、ある日、カウンセラーが静かに言いました。
「悪いのは、暴力をふるった相手です。」
その一言は、とても穏やかでした。
責めるでもなく、励ますでもなく、ただ事実として語られた言葉でした。
私はうなずくことも、泣くこともできませんでした。
「違う。」
「でも……。」
そんな思いばかりが浮かんできました。
長い間、自分を責め続けてきた人間にとって、
「あなたは悪くない」という言葉は、優しい言葉であると同時に、とても怖い言葉でもあったのです。
もし私が悪くなかったのだとしたら。
では、どうして、こんなにも苦しい思いをしなければならなかったのだろう。
どうして人生が変わってしまったのだろう。
その問いに向き合うことのほうが、ずっと苦しかったのかもしれません。
「私は悪くなかった」という言葉
それでも、私は通い続けました。
一度で人生が変わるようなことはありませんでした。
二度、三度と足を運び、そのたびに少しずつ、自分の中にあった固い何かがほどけていくような感覚がありました。
「あなたは悪くありません。」
その言葉は、毎回違う言い方だったかもしれません。
けれど、伝えようとしてくれていたことは、いつも同じでした。
私は被害を受けたのであって、加害をしたわけではない。
暴力を選んだのは相手であり、その責任まで私が背負う必要はない。
頭では少しずつ理解できるようになっていきました。
でも、長い間、自分を責め続けてきた心は、そんなに簡単には変われませんでした。
回復は、ゆっくり身体にも届いていった
「私は悪くなかった。」
そう頭で理解できるようになるまでには、それほど長い時間はかかりませんでした。
でも、その言葉を身体が信じられるようになるまでには、もっと長い時間が必要でした。
少しずつ眠れる夜が増えました。
笑える日が増えました。
誰かを信じてみようと思える瞬間が生まれました。
驚いた時に身体がこわばることはあっても、
「また元に戻ってしまった」と絶望することは少なくなりました。
今振り返ると、回復とは「元の自分に戻ること」ではなかったように思います。
傷ついたことを消すことでもありません。
傷ついた自分を責めることを少しずつやめて、「それでも生きていていい」と思える日が増えていくこと。
それが、私にとっての回復でした。
あの日の私へ、そしてあなたへ
もし今、この文章を読んでいる誰かが、自分を責め続けているとしたら、伝えたいことがあります。
あなたが悪かったから、傷つけられたのではありません。
暴力を選んだのは、相手です。
その事実は、誰にも書き換えることはできません。
私も、すぐには信じられませんでした。
だから、今日、信じられなくても大丈夫です。
言葉は、心よりも先に届くことがあります。
そして心よりも、もっとゆっくりと身体に届いていきます。
焦らなくても大丈夫です。
私もそうでした。
いつか、その言葉が心だけではなく、身体にも静かに届く日が来ることを、私は願っています。
その日は、明日かもしれません。
一年後かもしれません。
もっと先かもしれません。
でも、その日が来ることを、私は知っています。
なぜなら、私のところにも、その日はちゃんと訪れたのですから。
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