【10年の現場で培った"伝わるデザイン"】ゲーム業界出身デザイナーが、AI時代に見出した「人にしかできないこと」
大橋 裕加さん
ゲーム制作会社にて、バナー・アイテム画像・キャラクターまわりのデザイン制作などに従事。ゲーム内で使われる細かな素材から、ユーザーに情報を届けるクリエイティブまで幅広く担当。
その後、SpiralAIに参画。現在はAIエンタメプロダクトにおけるデザイン制作を担当し、少人数体制の中で、AIと人間の手を組み合わせた制作に向き合っている。
ゲーム業界の現場で見つけた「デザインの面白さ」
Q. デザイナーを志したきっかけを教えてください。
もともと、エンタメに関わる仕事がしたいという気持ちはありましたね。
ただ、それがイラストなのか、ゲームなのか、自分の中ではまだはっきりしていなかったんです。
転機になったのは、OBの方が勤めていたスマホアプリ系のゲーム制作会社でインターンをしたことでした。
現場に入ってみて特に印象的だったのは、ゲームって本当にたくさんの人の手で作られているんだな、ということです。細かいアイテム一つを作るだけでも、ただ絵を描いて終わりではなくて…
アイテム一覧に並んだときに見やすいかとか、ゲームが重くならないようにどのサイズで作るかとか、他の要素と色味がぶつからないかとか...考えることがすごく多かったんです。
そういう細かい判断が積み重なって、ようやく一つの素材としてゲームの中に入っていくんだなと感じました。
その「見えない工夫」の多さが、私の中ではすごく印象的で。
ゲームって、人の熱量や工夫でできているんだと実感して、この道に進んでみたいと思うようになりました!
デザインは「伝わること」がいちばん大事
Q. 仕事をする上で、大切にしているデザイン観はありますか?
一番大事にしているのは、「これは最終的に誰が見て、どう機能しなければいけないのか」という視点です。
おしゃれだけど何を伝えたいのかわからないデザインって、たまにあるじゃないですか...私はそういうものにはしたくないんです。
デザインは、伝わらないと意味がない。
でも、ただ伝わればいいわけでもなくて、見た人の心に入ってくること、今のトレンドから外れていないこと、誤解を生まないこと。その全部を考える必要があります。
だから、文言もプランナーさんとすり合わせますし、表現が強すぎないか、期待値を上げすぎていないかも確認します。
「見た人がその情報を得てよかった」と思えるものにしたいんです。
あと、デザイナーにとって言語化はすごく大事だと思っています。
「なんか違う」ではなく、何が違和感を生んでいるのか。色なのか、余白なのか、文字の優先度なのか。そこを分解できないと、良いものには近づけない。
デザインには正解がないぶん、悪さをしている要素を見つける力が必要だと思っています。
AIに対する複雑な気持ち。それでも可能性を感じた理由
Q. 数ある選択肢の中で、なぜAI×エンタメのSpiralAIを選んだのでしょうか?
正直に言うと、AIに対しては複雑な気持ちもありました。
私は絵を描く側の人間でもあるので、生成AIに対して抵抗感を持つ人たちの気持ちもわかります。
誰かの作品を身勝手に学習させたり、そこから出力されたものを自分の作品のように見せたりするのは、やっぱり違うと思うんです。
そうした使われ方が広がってしまったからこそ、AIに嫌悪感を抱くクリエイターも少なくないのだと思います。
一方で、AIが創作のサポーターとして機能するなら、すごく可能性があるとも思っています。自分の中にあるアイデアを広げたり、ラフの段階で客観的な視点をもらったり、より良いものを作るために使うことはできると思うんです。
入社前の面談で、佐々木さんが「ドラえもんを作りたい」と話していたんです。その言葉が、かなり印象に残っています。
ドラえもんの道具も、使い方を間違えれば良くない結果になる…
でも、本来は人の「やりたい」を助ける存在ですよね。
AIも同じで、どう使うかが問われている技術なんだと思いました。
だからこそ、AIをポジティブな形でエンタメに活かしていく会社であれば、自分も向き合ってみたいと思いました。
SpiralAIで感じた、人間にしかできないこと
Q. 入社してから、デザイナーとしての働き方は変わりましたか?
大きく変わりましたね...
前職ではデザイナーが複数人いて、自分が作ったものに対して必ず誰かの目が入りました。SpiralAIでは、少人数体制なので、自分の判断で出す場面がかなり増えました。
その分、自分の目が本当に合っているのか不安になることもありますが、その緊張感があるからこそ、自分が10年積み上げてきたものを使っている実感があります!
AIを使ってみると、「ここはAIで早くできる」という部分もあれば、「これは人が見ないと成立しない」という部分もかなりあります。
たとえばキャラクターの表情や角度、バナーの細かな見え方、情報の優先順位。
綺麗なものは出せても、それが本当にそのキャラクターらしいのか、ユーザーに正しく届くのかは、人間が判断しなければいけません。
AIがあるからデザイナーが不要になるのではなく、むしろ判断する力や、最後に仕上げる力の重要性が高まっていると感じます。
AI時代でも、デザイナーの価値はなくならない
Q. それでも「デザイナーじゃないとできないこと」は何だと思いますか?
細かい違和感に気づくことだと思います。
「ここを少し変えたら、もっと見やすくなる」
「このキャラクターは、こっちの見せ方の方が魅力が伝わる」
「この文字の置き方だと、情報の優先度がずれて見える」
そういう小さな判断は、言葉にしきれない部分も多いです。
でも、その積み重ねで、クリエイティブの印象は大きく変わります。
AIで綺麗な画像を作ることは、これからもっと簡単になると思います。
でも、綺麗なだけでは人の心は動かない...
人が何に惹かれるのか、どこに違和感を持つのか、どうすればキャラクターや作品の魅力が伝わるのか。
そこを考え続けることが、デザイナーの価値だと思っています。
進化に置いていかれず、頼んでよかったと思われるデザイナーでいたい
Q. これからSpiralAIで挑戦したいことはありますか?
大きな野望があるタイプではないんですよね...
でも、今のように仕事を任せてもらったときに、「やっぱりデザイナーに頼んでよかった」と思ってもらえる状態は、ずっと保ちたいです。
AIの進化を避けることはできません。だからこそ、排除するのではなく、どう向き合うかが大事だと思っています。
新しい技術を使いながら、自分自身もアップデートしていく。
そのうえで、人間だからこそできる判断やこだわりを失わない。
AIと人間の手を組み合わせながら、ちゃんと心に届くものを作れるデザイナーでいたいです。


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