れいわ新選組の山本太郎前参議院議員の政界引退・代表辞任に伴う同党代表選挙が7月31日に投開票され、同党幹事長の山本譲司衆院議員が新代表に選出された。新代表の最大の課題は、党創設者であり、カリスマ的人気で中央政界に“れいわ旋風”も巻き起こした山本太郎氏に全面依存してきた党運営の刷新。再出発に向けて、まずは党名変更と新体制作りに取り組むことになる。
同代表選には山本譲司氏のほかに、元衆院議員の阪口直人氏、東京都三鷹市議の石井礼子氏が立候補。国会議員と党役員の11票に、地方議員や党員に割り振られた11票を合わせた計22票を争い、山本氏が15.59票を獲得、圧勝した。
選出後、山本新代表は党のYouTubeチャンネルで「消費税廃止は言い続けなければならない。原発推進に歯止めをかけるれいわの政策は間違っていない」などと、これまでの消費税廃止や脱原発などの看板政策を堅持すると表明。そのうえで「チームとして機能する政党づくりをしたい」として、自らを中心とした挙党体制を築く考えを示した。
一方、山本太郎氏は健康問題とスピード違反による検挙を受け、7月9日に政界引退と代表辞任を表明。その際、“遺言”の形で「党名変更」も含めた再出発を求めていた。
「実刑・服役から再起」という異色の過去
山本新代表は党名変更をはじめ、「解党的出直し」に挑むが、山本太郎氏の政界引退に伴って主要幹部が党を離脱したことで、関係者の多くは「れいわ消滅の危機」と口をそろえる。
それだけに、当面は「新党再編の中核として生き残れるか、解体・消滅を余儀なくされるのかの瀬戸際に立たされる」(政治ジャーナリスト)といった厳しい見方が広がる。
山本新代表は、菅直人元首相の秘書を経て、都議2期を務め、1996年に民主党から衆院議員に初当選して、中央政界にデビュー。しかし、2000年に秘書給与詐取事件で東京地検特捜部に逮捕されて議員を辞職し、実刑判決を受けて服役した。
その際、山本氏は知的障害者の受刑者の世話係を務め、出所後にそれらの体験をまとめた著書『獄窓記』を出版するなど、自らの経験を踏まえて社会復帰支援で活動。それを目にとめた山本太郎氏のラブコールを受け、れいわから昨年の参院選に出馬した。
今年の衆院選でもれいわから出馬して比例で復活。約25年ぶりに永田町に復帰し、中央政界でも「波乱万丈の異色の過去を持つ政治家」として知られていた。
「ひろゆき&いずみ新党」がれいわの受け皿に?
現在のれいわ所属議員の中で、昨年の参院選で当選した3氏は28年の次期参院選で議員辞職し、次点候補に議席を譲る「れいわローテーション」の対象となるが、新代表選出に伴って、前代表が決めた「ローテ制度」の見直しも取りざたされている。
こうした党運営上の課題に加え、党や櫛渕万里前共同代表の秘書給与疑惑をめぐる司法当局の本格捜査説も浮上するなど、新代表を取り巻く政治環境は極めて厳しい。さらに、「山本太郎氏とともに強烈な個性で党を支えてきた大石晃子氏も離党したことで、すでにれいわの独自色は消えた」(永田町関係者)との評が少なくない。
さらに、新代表の脅威となりつつあるのが「ひろゆき&いずみ新党(仮称)」の登場だ。インターネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき(西村博之)氏と、前明石市長で参議院議員の泉房穂氏が7月末までに「新たな地域政党」として設立したもので、両氏が共同代表となる。
この新党の当面の目標は27年春の統一地方選への参戦で、東京都を最初の重点地域とし、候補者を公募して都内11選挙区に擁立。併せて、8道府県の知事選や首長選にも候補者を擁立する方針だ。
泉氏は「地方自治体から少子化対策や子育て政策を進める」と説明。そのうえで「全国でまさに政治の成功事例を示して、それを突破口に国政選挙に行って(参戦して)、本当に国を変えるということではないか」と、近い将来に国政政党を目指す考えを力説した。
同氏の説明によると、10月上旬に正式な党の名称を公募で決定する。その際、減税や給付金などで「国民が使えるお金を増やす」ための重点公約も公表する予定だ。 また、スタート時は泉、ひろゆき両氏が共同代表を務めるが、泉氏は「新しい政治には新しい人がいい」と、将来的には新たな党首を擁立したい考えも示した。
泉氏はまた、候補者公募における現職国会議員の取り扱いについては「入りたいという声があった場合に考える」と踏み込まず、「ウソつき政治と決別し、約束を守る政治を実現したい」「明石市長時代の実績を最大限生かしたい」と強調した。
そうした中、政界関係者の間でも「『ひろゆき&いずみ新党』には、すでに中道改革連合や国民民主党のリベラル系が結集する動きがある。2年後の参院選や次の衆院選では国政政党となって一定の勢力となる可能性があり、れいわからの離党者や支援者の受け皿にもなる」(国民民主党幹部)との見方が出始めている。
さらに、事実上の党首とみられる泉氏は、新党のイメージカラーについて、自身が愛用するシャツにちなんで、ピンク色とする考えを示した。ピンクは国政ではれいわのイメージカラーで、「新党が新れいわの吸収を狙ったのでは」といった見方も広がる。
「ひろゆき&いずみ新党」が夏以降の台風の目に
政界では高市早苗首相の消費税減税決断をめぐって自民党内が大混乱するなど、夏以降の政局展開は極めて不透明だ。そうした中で、れいわの再出発や「ひろゆき&いずみ新党」が登場したことは「革新陣営内の勢力争いと絡めた限定的話題」(政治ジャーナリスト)との位置づけから、現時点では各メディアも大々的報道は避けている。
ただ、自民党の苦戦が予想される次期参院選をめぐっては「高市政権が生き残るためには衆参ダブル選も有力な選択肢」(自民党長老)という見方もある。その場合、新れいわも含めた『革新系新党』が、大政党にとっても無視できない存在となる可能性は否定できない。今後も政局の混迷が続けば、改めてその動向が注目されることになりそうだ。