少女の母親と姉
遺族提供 るなさん(仮名)
バレンタインイベント
向井義博弁護士
自白を迫る発言記された被疑者ノート
涙でにじんだるなさんの文字
少女の母親
るなさんの遺影
記者会見
元検事 郷原信郎弁護士
遺族提供 元気だったころのるなさん
■いわゆる「人質司法」について
障害者福祉施設で働いていた16歳の少女は、2025年2月、隣にいた人をかみつこうとした利用者を止めに入りました。しかし、4カ月後、暴行容疑で逮捕、勾留され、その後不起訴になりました。無実を訴えるも自白を強要され精神的に追い込まれた少女は、急性ストレス障害などを発症。摂食障害などに陥り、5カ月後、16歳で亡くなりました。少女の母親と姉がサンテレビの取材に応じ、「真実が知りたい」と「警察や検察に謝ってほしい」と切実な思いを語りました。
体重が20キロまで減少した少女 るな(仮名)さん。2025年12月14日、低栄養状態などによって、16歳で亡くなりました。
少女の母
「真実を明らかにしていただきたい。悪いことをしたんだったら、謝ってほしいですね」
るなさんの母親は、兵庫県内で障害者福祉施設を経営し、障害者支援に力を注いできました。そんな母の姿を見て、るなさんは、障害者支援の道に進むことを決意し、仕事に励んでいました。
少女の母
「障害福祉がキラキラした仕事で、素敵な仕事で大好きって言っていたんですよ。警察の検察の不祥事を誰がちゃんとただすことをやっていただけるのか」
■ 暴行容疑で逮捕
訴状によりますと、るなさんは、2025年6月17日午前7時ごろ、明石警察署の署員に任意同行を求められ、その後、男性スタッフとともに利用者への暴行容疑で逮捕されました。
少女の姉
「あの子がそんなことする訳がない。一番利用者さんのことが大好きで」
あの日、るなさんの身に何が起きたのでしょうか?2025年2月、るなさんと男性スタッフは、事業所で行われたバレンタインイベントで、他の利用者にかみつこうとしていた
重度の知的障害がある利用者を止めに入りました。しかし、「顎付近を複数回、手のひらで押さえつけた」などとして、4カ月後、暴行容疑で逮捕されました。
少女の母
「顎を押さえた疑いと言われたので、『私その日その場にいましたけど』と。逮捕したというのはどういうことですか?『暴行疑いです』と」
現場にいた32人に聞き取りをせず、知的障害のある1人の目撃証言のみで逮捕に至ったことに、るなさんの弁護人を担当した向井義博弁護士は、ずさんな捜査による不当逮捕だと主張します。
少女の弁護人を担当した向井義博弁護士
「他の方からもきちっと聞き取りをして、現場がどんなところかをしっかり見ていただいて、障害福祉の現場、実情をきっちり見ていただければ逮捕なんか必要じゃない。現行犯以外で暴行の被疑事実で身体拘束までしなければいけないというのはごくごく限られる。4カ月前の暴行被疑事実で逮捕され勾留され、勾留延長された。しかも被疑者は16歳の少女で、少年法の趣旨から言っても、保護しながらやっていかなければならない。そういう観点が今回全く抜け落ちている。自白を強く迫るような取調べや偽計による自白を獲得しようとするような対応があったと聞いている。さらに身体拘束中に少女がきちんとご飯を食べられていないということに対して健康管理上の問題など、大きな問題点が多々ある」
■ 目撃証言「オーバーだった」 被害者ノート「少年(院)に行きたいんか?」
「虐待ではないか」と保健所に相談した利用者の目撃証言は、その後一転します。
少女の母に送られた手紙の一部
「あごをおさえてたと言ってしまったが じっさいはあごに手をそえていた。オーバーに言ってしまった」
「自分が言ったことのふりかえりをすると、ぎゃくたいではないと思った。オーバーに言ってしまってすみませんでした」
無実を主張し続けたるなさんの被疑者ノートです。当時の取調官が自白を迫っていたことがうかがえます。
「本当はやったんだろう。正直に言え」
「27日にバイバイできると思ってんの?」
「今すなおに言え。27日に帰されへん。その方がお母さんは心配」
「心わって話せ」
「いつまでがんばるん?」
「少年(院)に行きたいんか?」
また、男性スタッフが自供したとうそを伝えていたことが記されています。
「今言ったら楽になるぞ 〇〇は言ったぞ」
「なんで〇〇と言ってることが違うんやろうな」
神戸地検は、神戸地裁に対し勾留請求と接見等禁止を要求。2度の勾留延長が認められ、身体拘束は18日間に及びました。16歳のるなさんは、小野警察署の留置場に移され、
母と会うことも認められませんでした。
少女が記した被疑者ノート
「何もしていないのに。自由をかえしてほしいです」
「負けません」
るなさんが記した2冊のノートは、至る所で文字が涙でにじんでいました。
少女が記した被疑者ノート
「また来る。来ないでほしい。かえれない。ママに会いたい」
「本当にいつもありがとう。ごめんね。どんな事あってもずっと世界一番自慢。大好きママ」
「ママあいたい。不安でいっぱい。ごめんね。えいが行こうね」
「本当に10日間だけがいいです。なにもしてないのにショックで食べれない」
逮捕から17日目の2025年7月3日、るなさんは、食事がほとんどとれず、留置場で倒れ、北播磨総合医療センターに救急搬送。ストレス性胃腸炎と診断されましたが、再び留置場に戻されました。
少女の母
「(医師から)点滴をして帰らせましたと言われたので、帰らせたんですかと。脱水症状が出て。私らも福祉の仕事をしているので、点滴打って様子見るとか看護措置はないんですかって言ったら、明石警察署の方が留置場に戻していいと」
少女の姉
「ご飯とか食べられていますか?あーはいはい。食べていますよと。被疑者ノートを改めて見たら食べていないって書いてあるのに、うそばっかりつかれていたんやなと思って」
「勾留されている時にあの子が番号で呼ばれていて。『何番全然食べへんねんけど』って目の前で陰口言われたって。なんで16歳の子にそんなことするんかなって。当たり前じゃないですか。トイレも丸見えやから何も考慮してくれへんからそれで食べられなくなって。見られたくないから、そこから食べられなくなったって」
■「やめて近づかんといて」「怖い」
翌日の2025年7月4日、不起訴処分となり釈放。その後、男性スタッフも不起訴処分となりました。
少女の母
「抱きついてきて足もふらふらで。一生懸命しがみついてきて、抱きしめた時にはもう骨だらけでした。体も震えていますし、やせ細った姿で家族全員が騒然としてしまった。私たちが知っているあの子の姿ではなくて」
少女の姉
「あの子が出てきたときにママって泣きながら走ってきて。抱きついて。ねえねえ(姉)ごめんね。迷惑かけてごめんね。そんなことないよって言っているんですけど」
「(取り調べで)彼氏おるんか?どこまでいったんやって。うそばっかり言われた。ママにはよー言われへんって」
釈放された翌日に計測した体重は27.7キロ。18日間の身体拘束後、10キロ減り、急性ストレス障害(ASD)や心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されました。
少女の母
「元気で明るかったあの子はもう…。とにかく『怖い。離れたくない。ずっとおって』そんなこと捕まる前は聞いたこともない。亡くなる日までうなされていました。『怖い。やめて。出して』とそんなことを言っては飛び起きて。とにかく少しでも寝られるようにといろいろやっても、とにかく『怖い。離れたくない』って。トイレもお風呂も全部一緒だった。」
少女の姉
「お昼寝している時も、思い出して『やめて近づかんといて。怖い』って。ずっと一緒にいたんですけど、食べても食べてもやせ細っていって」
深刻な摂食障害に陥ったるなさんは、心身の不調が続き、通院や入院、訪問診療などで治療を受けましたが、2025年12月14日、低栄養状態で亡くなりました。
体重は20キロにまで減少していました。
少女の母
「この世の中は目に見えない戦争みたいなことが起きているようにしか私には見えません。きょうだいも苦しんでいます。うなされています。妹を助けられなかった。お姉ちゃんを助けられんかったって毎日苦しんでもがいて。私は逮捕され、警察に謝ってもらえていないことで、家族が犯罪者のきょうだいって思われるんかなと言って、泣き叫んだこともありました。1人の命が亡くなって。ましてや大人が子どもをこんな形で。国民を守る立場の人がここまでした。誰が警察、検察をしっかりと問いただしてくれるのか。素敵な兵庫県であってほしい。福祉のまちを掲げているのであれば、本当にそういう県になってほしい」
少女の姉
「私何もしていないけど、犯罪者なんかなって言っていて。違うよ。あんた何もしてないやん。ちゃんと証拠もあるやんこっちは。大丈夫よと。何回も警察署の人に謝ってほしいと言っても『もうその件は終わったんで』って。私は母と一緒に真実が知りたいのと、るなに謝ってほしいんです。あの子はずっと謝ってほしいって言っていた。他にも被害を受けた人がいるなら、その人たちの分もしっかりと真実を明かして、正しくみんなが過ごせるようにしたいんです」
国と県を相手に提訴
逮捕された日から丸1年の6月17日。違法な捜査や身体拘束が原因で亡くなったとして、るなさんの遺族が国と県を相手に約1億1000万円の損害賠償を求めて提訴しました。
記者会見(少女の母)
「真実を教えてほしいです。本日の提訴は事実を明らかにするためのものです。もし過ちがあったのであれば、それを認め、ただしていただきたいです」
この問題について元検事の郷原信郎弁護士は
「これは許しがたい人質司法の事案だと思います。障害のある人を押さえようと手を添えた。それを疑うような事情があったとは思えないですよね。まず嫌疑があると判断したこと自体に問題があるし、16歳の少女を勾留したという判断、勾留請求をしたという判断にも重大な問題があると。こういったことがなければこの少女が命を落とすことはなかったわけで、大川原化工機事件に匹敵する検察の対応、それを容認した裁判所の対応は非難されるべきだと思います」
サンテレビの取材に対し、兵庫県警は、7月13日時点で、
「個別の事件のコメントについては差し控えさせていただきます」
神戸地検は、
「ご遺族が国家賠償請求を提訴した旨の報道は承知しているが、個別事件の捜査の具体的内容に関わる事柄であり、訴状の送達も受けていないため、コメント取材をお受けすることは差し控える」と回答しています。