憲法改正の是非を問うための手続きを定めた改正国民投票法が成立した。しかし、ネット広告の制限や資金規制、偽情報対策などの課題は放置されたまま。公平で公正な投票環境を整えずに改憲を発議し、国民投票を行うようなことが許されてはならない。
改正法は、なり手不足の投票立会人の選任要件を緩和するなど、投票環境整備に関する3項目を公職選挙法の規定にそろえる内容で形式的な手直しにとどまる。
2021年改正時の付則で3年をめどに講じるとされたネット広告や資金の規制など「必要な法制上の措置」は手つかずのまま。
今回の改正でも、3年をめどに対策を講じることがあらためて付則に盛り込まれたが、これ以上の放置は許されない。国会は速やかに対応しなければならない。
ネットやSNSの虚偽情報や誹謗(ひぼう)中傷が選挙に与える悪影響は年々深刻になっている。
今年2月の衆院選では、自民党が高市早苗総裁(首相)出演のネット動画広告を大量に出稿し、ネット利用者らの投票行動に影響を与えたと指摘されるなど、資金力の多寡が有権者の投票行動を左右する状況も生まれている。
国民投票の運動期間は60~180日。公職を選ぶ選挙運動期間の5~17日よりも長く、偽情報による弊害や資金力の多寡に伴う影響がより深刻になることが予想される。公平で公正な国民投票の環境を整えることは喫緊の課題だ。
先の特別国会で改正された公職選挙法は、選挙運動に関するSNS対策を強化。ネット利用者が虚偽情報を公にして選挙の公正を害すことを禁じ、人工知能(AI)で作成、改変した画像や動画を投稿した場合は、その旨を表示する義務を課した。
同様の対策を国民投票法でも講じる必要性は参院憲法審査会の質疑で野党側が指摘したが、与党側は「検討項目になり得ると考えている」と述べるにとどめた。
このため、同審査会は改正国民投票法を可決した後、選挙運動に関するSNS対策を国民投票法でも同様に講じるよう求める付帯決議を採択した。
決議に法的拘束力はないが、憲法は国の最高法規だ。SNSの虚偽情報や誹謗中傷、大量のネット広告が改憲に影響を与える状況を放置してはならない。速やかに対応するよう国会に強く求める。
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