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この作品「夕闇に溺れて」は「腐術廻戦」「篤寛」等のタグがつけられた作品です。
夕闇に溺れて/Lackの小説

夕闇に溺れて

1,715文字3分

Xに上げたものです。Xに上げたやつと比べて若干の加筆修正があります。
当たり前に日車術師ifだし付き合ってる。
ただし二人とも病んでます。
自分の癖との和解を目指しました。

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電気の付いていない真っ暗な部屋に、微かな呼吸音が聞こえる。部屋の主である日下部篤也は、その暗がりをただ見つめていた。
部屋にいるのは日車寛見。日下部の同僚であり、恋人である。今は日下部の部屋のベッドの上で布団を頭から被って、丸くなっていた。
日車寛見は精神的なストレスが溜まりに溜まって限界になると、本人曰く「やってはいけないことだと思っていた」と言う名の奇行に走る。過去には、服を着たまま風呂に入っていたことだってあった。
こういった奇行には慣れていると自負していた日下部であったが、今回のようなことは初めてであった。
その内容は「恋人の部屋を占領する」こと。
現在二人は付き合ってはいるものの、同居はしていない。なにぶん、呪術師という職は忙しく、人手不足であるため同居をするにあたっての時間が取れていなかったのだ。そのため、互いの家の鍵を渡して事前にどちらの家に行くかを相手に伝えるなどして二人だけの時間を作っていた。
今日は特に日車から君の家に行きたいとは言われてなかったため、日車が日下部の家にいることは本来あり得ないはずで。
この状況に、日下部は心底驚いていた。が、声を荒げなかった。
普段の日下部ならそれはもう十二分に驚いていたはずだが、今日の日下部は一味違った。
彼もまた、精神的ストレスが限界だったのである。

「……人んちで何してんですか、先生」
「……日下部。君には迷惑をかけていると思う。だがすまない……今は一人にしてくれないか」
「……じゃあなんで、俺の家に来たの」
「……分からない……」
暗闇から聞こえる声はやけにか細い。弱々しく、輪郭がぼやけている。
人が死ぬ間際の声に似ていると日下部は思った。
「……、質問を変えるわ。……俺が一人になりたくないって言ったら、アンタ、どうする」
「………君はズルいな」
「ハハッ、そりゃあどうも。生憎俺はこういう男なんでね」
ちょっくら失礼しますよ、と言って日下部は部屋に入り日車に近づいた。ただし電気は付けないまま。
扉は入る際に日下部が後ろ手で閉めたので、部屋の中には完全なる闇が現れた。
先程まで見えていた日下部の姿が見えなくなった途端、日車は急に不安になってしまった。闇には終わりがない。永遠の底なし沼だ。もがけども、もがげども、深みに嵌まっていく。普段ならこれくらいの暗がりなんて気にもとめないのに。やはり今日はダメだ。ダメな日だ。
「日下部…どこにいるんだ、日下部…」
返答はない。部屋中に日車の声だけが響く。
確かに同じ部屋にいるはずなのに、日下部の気配を感じない。そのせいで心の不安はますます大きくなる。心細くてたまらなくて、年甲斐もなく泣きそうになった。
「…あつや…」
日車が滅多に言わない下の名前のほうで日下部を呼んだとき、後方から声がした。
「ここにいるよ、寛見」
日下部は息を殺して日車の後ろに回り、布団の中に潜りこんでいた。そしてそのまま日車を抱きしめる。
「っ、いつの間にそこにいたんだ、日下部…」
「ダメ。名前で呼んで。さっきみたいに」
日下部は日車の腹を拘束していた腕を解き、近くにあった日車の手を取って指を絡めた。
一本一本確かめるように触れていく。日車の手は、指先が酷く冷たかった。
「…篤也」
「もう一回。寛見」
「……篤也」
日下部の掠れた声が日車の耳に届く。
距離が近い。視界が不明瞭な分、彼の僅かな息づかいまでもが明確に感じられて。日車は内心どうにかなりそうだった。
日下部が更に近づいて、囁き声で日車に呟く。
「……どこにも行かないで」
「側にいて」
弱ったような、縋り付くような声だった。この男も、不安になってしまったのだろうか。俺と同じで、怖くなってしまったのだろうか。
肩に重みを感じる。どうやら日下部が自分の肩に頭を置いたようだ。
そんな声で懇願されては、日車はもうどこにも行けない。
「……ああ、いるよ…」
「側に、いるから…」
だから、君も、そばにいて。
口に出そうとして出せなかった言葉を飲み込んで、日車は自分の指に絡まれている日下部の指を絡め返した。
外では消えゆく太陽が、名残惜しそうに輝いていた。

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コメント

  • menaka
    7月20日
  • 小夜双☆スカィWeb
    7月20日
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