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この作品「機縁」は「篤寛」のタグがつけられた作品です。
機縁/むにの小説

機縁

25,661文字51分

壊れた男同士の相互ケアが好きすぎて、夏。n番煎じとわかっていても、自CPの成立を見届けたくて書きました。この篤寛は、ょゎょゎヵヮィィぁっゃと元気強気寛見の提供でお送りします!

※原作最終回後、「愛縁」novel/28356854軸の日車サイド。本作単体でもお読みいただけるかと思います◎日下部サイドのお話も、後日改めて書く予定です。

※言うまでもなく捏造たっぷり!特に日下部本人やその周辺の諸々を捏ねに捏ねくり回しています。

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 今夜くらいちゃんと寝とけよ。最後の作戦会議を終えて自室に戻る際、日下部から受け取った台詞。その温もりを胸に抱き、音の粒と声の輪郭をなぞりながら毛布にくるまっている。心臓からじんわりと染み渡っていく残響の余韻に身を委ねても、明日の決戦を前に神経は昂り眠気が訪れる気配はない。羊を数える代わりに、彼との思い出を数えてみることにした。
 日下部と初めて顔を合わせたときに抱いたものは違和感だった。軽い口ぶりと不釣り合いな鋭い眼光。柔らかい声色の奥に隠された芯。肩の力が抜けているようで隙のない受け答え。妙にチグハグな立ち振る舞いは、協力者とはいえ部外者である俺への牽制が込められているのかもしれない。一度はそう合点した。しかし、おかしいと感じたことを放っておけない俺の性分は曖昧を許してくれなかった。日を追うごとに、目で追うたびに気づかされる。俺に対してだけではない。日下部は皆に対して平等に、冷えた手触りの優しさで接していた。一見、同僚、生徒、どちらでもない者たちとも気安くやりとりしている。事実、俺との会話だって気負いや気概を感じさせない。それなのに、日下部の言葉には隔たりが見え隠れする。誰だって仄暗い過去はあるだろう。彼らのような生業であれば尚更。だとしても、日下部の背後に垣間見える闇はひときわ濃い。加えて、何か決定的な罪の香りがする。立ち昇る安堵と渦を巻く嫌悪。身に覚えがある重苦しい匂いは鼻腔にこびりつき、呼吸の邪魔をする。薄くなる酸素に目が眩み、その手の汚れをよくよく見せてくれないかと求めたくなってしまう。だからといって、固く握り込まれた拳を無理やり開くような真似はしたくなかった。俺は君との距離感を気に入っている。不思議と落ち着く時間と空間を壊したくないから、君がおろした透明な帳の外で今日まで大人しくしてきた。この夜が明けたら死地へ向かうというのに、今にも芽吹きそうな感情を持て余して。

─ 機縁 ─

 これまでの睡眠負債を返済するような昏睡から目を覚ますと、すでに戦いの幕は引かれていた。全身全霊で自分を罰したかったのに、役目を終えたはずの体は再生を止めなかった。死ぬ覚悟があったことに間違いはない。ただ、心残りがなかったといえば嘘になる。本当は日下部のことをもっと知りたいという未練が、俺をこの世につなぎとめてしまったのではないか。改めて自分と向き合う一人の時間がほしいのに、日下部はそれをよしとしなかった。お互いに療養期間を言い渡され、寮暮らしを続ける身。ひとつ屋根の下に逃げ場はない。おまけに俺の片腕は三角巾で吊られているときた。今度は日下部がこちらの動向を目で追うようになった。俺自身が不便や不自由に気づく前から、目敏く左側で待機している。
「面倒見の良さに拍車がかかっていないか、日下部」
「あ? こんくらい普通だろ。怪我人なんだから甘えとけ」
「君だって怪我をしている」
「あんたよりはマシですね~」
 そう言って聞く耳を持たず、痒いところに手を伸ばしてくる。無骨な掌のわりに繊細な指先。思いがけない器用さで丁重に扱われるたび、俺の命にも価値があるのではないかと錯覚してしまい困った。日下部の体温を間近で感じると顔が熱くなる。正直勘弁してほしいのに、舌と上顎が張り付いて「やめてくれ」のひと言が出てこない。いつもの俺なら、急激な体温上昇と口渇感の理由を突き止めるはずだ。にもかかわらず、明らかな状態異常を受け入れている。わからないことをそのままにしておきたいなんて、自分が自分ではなくなったようで心もとない。しっかりしろと己に喝を入れ、果たせていない意思を再び軸に据え直す。とうに結界は開けているのだ。やることは決まっている。自罰が失敗に終わった以上、たとえ見限り見限られていても縋る先は一つしか知らなかった。

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コメント

  • 菅流@芋づる式
    7月29日
  • 小夜双☆スカィWeb
    7月29日
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