仕事や家を探せない…スマホ契約できない「携帯ブラック」の困難 #マイノーマル
飲食業界で働き盛りだった埼玉県の田中佑喜さん=仮名=(42)は、病気がきっかけで働けなくなった。貯金もなく、路上生活を送るようになり、通信費が払えなくなったスマートフォンは使用不能に。料金滞納者の「ブラックリスト」に載ったことから新たなスマホが契約できず、次の仕事や住む場所も探せなくなり「何も考えられず、先が見えなくなった」。 【ひと目でわかる】「携帯ブラック」とは何か 今や生活に不可欠なスマホを持つのは誰にとっても「普通」のことだが、スマホが持てなくなった「携帯ブラック」状態の人は全国で400万人に上るとの指摘もある。病気や失業などきっかけはさまざまだが、実態を探ってみると「個人的な事情」と単純に片付けられない課題が見えてきた。(時事ドットコム取材班 山本舜也)
◇誰にも相談できず「死を考えた」
「ここが、ホームレス状態に陥った人が利用する緊急一時シェルターです」。NPO法人「ほっとポット」(さいたま市)の代表を務める宮澤進さんに案内され、施設に入った。ほっとポットは弁護士会と連携し、貧困を背景に犯罪をした人を受け入れており、社会福祉士の資格を持つスタッフが生活再建を支援。半年間でアパートへの転居までつなげる。 田中さんは2026年1月、この一室に身を寄せた。埼玉県で生まれ、高校を経て、とび職やスーパーの店員として働いた。4年ほど前からは商業施設に入るフードコートの店長を務めたが、25年夏ごろ上司と部下の板挟みになり、「精神的に参ってしまった」。適応障害と診断され、退職を余儀なくされた。 独身で実家に住んでいたが、両親との関係は悪かった。過去に両親の勤務先が倒産、数年前に兄を自殺で失い、さまざまな費用を「すべて払ってくれと言われた」。消費者金融を利用せざるを得ず、家庭での会話はなくなっていた。 仕事を失ったタイミングで、耐えられずに家を出た。公園や街中をさまよい野宿する日々。「頼れる人がおらず、死ぬことも考えた」。そうした中でスマホの通信料を滞納。気付いた時には解約されていた。数カ月の路上生活の後、何もかも嫌になり、自転車を持ち去った容疑などで逮捕された。所持金は2万円ほどだった。