7月下旬、多摩市の永山駅前の通路がコインパーキングとなりました。
コインパーキングの詳細
小田急・京王の永山駅を降りて改札を出て1つ下の階に降りて右へ、改札から約30秒の部分です。
左にはミネ薬局、右には串カツ田中や、肉汁餃子のダンダダンがある前の部分で、これまでは歩行者専用の通路または広場として一般に開放されていた空間です。
改札階のある一つ上の階の方が人通りは多いものの、バスロータリー階でもあり、駅前であり、歩行者の多い空間でした。
歩行者用の開口部は記事1枚目のバスロータリー側と、この写真の精算機横のみで、他はすべて塞がれています。ミネ薬局からプラザ永山(東秀)へは、地上階では最短距離での行き来ができなくなりました。
2025年には日本医科大学多摩永山病院への通路を遮断
この通路は、三次救急医療機関に指定され救急救命センターを有する日本医科大学多摩永山病院から、永山駅へほぼフラットに移動できる経路でした。この通路の撤去により、段差のない経路では道のりがほぼ倍になり、坂道を移動する必要が生じました。
上記多摩永山病院のページには、院長名で以下のように記載されています。
なお、撤去される上空通路は多摩市、日本医科大学多摩永山病院に所有権のない建築物であり、現状ではいかんともしがたい状況であることをご理解賜りますようお願い申し上げます。
日本医科大学多摩永山病院 院長
アミューズメント施設の土地
では、なぜこんなところにコインパーキングが作られたのでしょうか。
公図や登記簿より、周辺の土地の所有権の状況を調べたところ、この通路は、竹取の湯やプレゴ(ぱちんこ店)を運営するジョイパックアミューズメント株式会社の所有地です。
ミネ薬局や串カツ田中も、ジョイパックアミューズメントのテナントとして入居しているようです。
公共空間のように見えたこの通路は、実は民間企業の土地であり、その企業が自分の土地に駐車場を作ったに過ぎないと見られます。
建築基準法では、総合設計制度といって、一般に開放される公開空地を設けることで容積率の緩和を受けられるという制度もありますが、都の許可実績一覧によると、その対象ではありません。
また、駐車場法では路外駐車場として500㎡以上の駐車マスを設ける場合は届け出の対象となり、警視庁の現地確認や立入検査が行われますが、マスの数から計算してその対象ではないと見られます。
東京都福祉のまちづくり条例的にちょっと気になる点はあるものの、断定できない中での言及は避けます。
個人的には、こんな場所にこんな施設を作ったことに失望と呆れ、センスのなさを感じますが、法や契約等を侵さない限り、残念ながら何を作ろう、何を撤去しようと地主の勝手といえば、その通りです。
民間企業に公共を担わせる限界
なぜ民間企業の土地?
永山駅周辺は多摩ニュータウンの一角に位置し、当時の日本住宅公団、現在のUR都市機構が、新住宅市街地開発事業により整備を行いました。これは土地を全面買収して整備する手法です。
永山駅周辺は、商業や業務・サービス機能の集積拠点である「地区センター」として整備され、1974年の京王永山駅開業にあわせた「グリナード永山」を皮切りに、順次施設が開業してきました。
永山駅北側は、当初は、グリナード永山2号館と、道を挟んだ向かいにはカーディーラーが入居した3号館(のちに東京トヨタ自動車株式会社(現:トヨタモビリティ東京株式会社)に土地建物を売却)が立地し、その他の部分はグリナード永山の平面駐車場となっていました。
当時の航空写真を見ると、駅から北・東・西に歩行者通路が整備されているのがわかります。
当時の土地の所有者は、URグループ会社でグリナード永山などを運営する新都市センター開発株式会社の所有でした。当時から歩行者通路部分は分筆されていませんでしたが、公団の事業会社の所有だったため特に問題はなかったものと思われます。
登記簿によると、その後1988年には、グリナード永山2号館を除く土地(現:ジョイパックアミューズメント・プラザ永山)について、多摩センターの土地と交換する形で、公団が取得しています。同年には現在のような筆に割られ、1992年にジョイパックレジャー株式会社と株式会社ヒューマックスエステートに売却されました。『多摩ニュータウン事業誌』によると、この売却には、1988年に土地付施設譲受人の募集を行い決定したもので、公団法第29条3号に基づき、躯体・外装を公団が、内装を譲受人が行うことで、1992年に開業したとされています。なお、2006年~2007年にかけてジョイパックアミューズメント株式会社に所有権移転されています(いずれも関連会社)。
また、残る土地は公団が賃貸住宅・店舗(プラザ永山)を整備し、1991年に入居されています。
工事中の航空写真を見ると、工事中は車道に沿うように仮設(?)の通路が設けられています。
北側、トヨタディーラーへ向かう横断歩道橋も一時撤去のち再構築されているのを見ると、当時整備までを行った公団として、歩行者通路を維持する意図はあったように感じられます。
一方で、公共通路となる空間を、民間企業に託したのか、また、そのような筆の割方にしたのかは疑問です。
歩車分離のまちづくり
多摩ニュータウンは「歩車分離」のまちづくりが実践されたことが知られています。
『多摩ニュータウン事業誌』によると、1966年に認可された公団の滝山団地において歩行者専用道路を設ける試みがされ、1967年に都市計画学会賞を受賞するなど、当時の公団内で歩行者専用道路の導入を検討し始めていた時期でした。
結果的に、新住宅市街地開発事業で整備を行った多摩ニュータウン全体で歩行者専用道路が整備され、駅から離れた場所へも、車道と一度も交わらずに行くことが可能な地区が多いです。
ちなみに、多摩センターに2008年にオープンした「クロスガーデン多摩」は、歩行者専用道路側に駐車場導入路を整備し、館内へは平面交差する構造となっています。しかも歩行者側が「止まれ」。
この構造について、市議会で疑問視する議員の発言があり、当時の市長が「市としての指導が事業者に受け入れられなかったことは大変遺憾」と答弁しています。
折戸小夜子 議員
2.仮称クロスモール多摩建設における問題について
1)多摩市の街づくりにおける景観と歩車分離の考え方について伺います。
2)仮称クロスモール多摩の建設に関しての経緯について伺います。
3)仮称クロスモール多摩の出店計画の周辺住民に対しての説明会の状況と、住民の意見・要望について伺います。
渡辺幸子 市長
次に、2の1)についてお答えします。
多摩ニュータウンは、歩行者の安全性・利便性・快適性を確保するため、車道を通らずに通行できる歩行者専用道路ネットワークを整備してきました。
また、景観についても、デザインや住棟計画など、地域の特色があらわれるよう整備されてきました。さらに、駅周辺地区においても、それぞれの拠点地区にふさわしい景観づくりに努めてまいりました。
2)についてお答えします。
仮称クロスモール多摩は、都市再生機構が、平成16年に事業用定期借地として募集を行いました。
現在、事業主である株式会社コスモセブンが、家電量販店を軸とした複合的なショッピングモールとして、本年春以降の開店を目指し、工事を進めています。
これまでの経過につきましては、平成18年7月に事業主から「施設建設協議」が提出され、多摩市宅地開発指導要綱に基づく市との協議が始まり、さらに、平成19年6月には建物計画の変更が示されたことにより、改めての協議を行ってきました。
また、平成19年10月24日には、大規模小売店舗立地法に基づく届け出が東京都に提出され、開発事業者による説明会が11月28日と12月20日に実施されています。
3)についてお答えします。
説明会に参加された市民の方々からは、施設への出入り口に関することや、レンガ坂に沿った進入路に関すること、出店を予定している店舗に関することなどの意見が市に寄せられました。
特に、建物駐車場への進入路と歩行者専用道路からの店舗への出入りが重なることから、安全性を危惧する声が多くあります。
本市といたしましては、これまでの協議において、できる限りの指導・要請はしてまいりましたが、残念ながら根幹的部分では事業者の協力が得られませんでしたが、引き続き、施設利用者の安全はもちろん、一般交通の安全や、植栽などにより景観に配慮することなど、要請してまいります。
折戸小夜子 議員
では、クロスモールの建設の問題について、移ります。
これは、皆さんはもうご存じだと思うんですけれども、ちょうど中央公園のわきですよね。わきのところで建設がされているわけですけれども、これだけ中央公園が広くて、ここがレンガ坂なんです。こんなきれいな写真なんですが、そこで、今、建てているところなんですね。こっち側が建てていて、これがレンガ坂。レンガ坂は、よくお祭りで全部フリーマーケットをやっていて、大変にぎやかになっているところだと思うんですね。
それで、多摩市も、先ほど言ったみたいに、歩車道分離の考え方で来ているということで、特に多摩センターの中央通りに面する駐車場も、すべて歩車道分離をされているわけですよね。
そういう意味で、今回、ここの建設があって、第1回目の図面を持ってきた。それをまた差しかえてしまったということがあるかと思います。その点についてはいかがですか。
小林克巳 都市づくり部長
今回の建設につきましては、平成18年9月の時点で個々の建設協議が整ってきたんですけれども、その際に、店舗の大きさ、また広さ、こういったところから、駐車場の問題が議論になっておりました。その関係で、駐車場スペースを広くとるというよりは、店舗面積を変更したいというような趣旨のもとに、事業者のほうから変更協議が出されてきました。その内容につきましては、建物の位置が北側に寄ってきたということで、その変更の申請がされてきた経緯でございます。
折戸小夜子 議員
それで、その図面の変わった部分は、今は肝心なところをおっしゃらなかったんですけれども、何ですか。
小林克巳 都市づくり部長
具体的に変わった部分といいますと、公道から店舗の駐車場に入る動線、特にレンガ坂から店舗に対する利用者の動線が車道動線と重なってきたというのが変更の部分。それから、建物につきましては、面積が縮小されてきているというところでございます。
折戸小夜子 議員
それについて、市はどのような指導をされたんですか。
小林克巳 都市づくり部長
これは当初の申請の段階からでございますけれども、当初の申請の段階では、車の動線と人の動線、これは一部重なっている部分もございましたが、ブリッジで、要は人の動線よりも下に駐車場の車路がございました。
変更申請をされたときには、すべて、3カ所ございますけれども、全く駐車場と人の動線が重なってしまうというところから、市としては、この変更申請に当たって、当初計画のほうが望ましい。ただ、当初計画も全く望ましいというものではなかった。当初の時点でも、もう少し配慮しなさいということは言ってきておりましたが、さらに悪化の方向にたどったという中では、市としては、当初計画に戻すようにという指導はしてきた状況でございます。
折戸小夜子 議員
その指導にどうして従わないんでしょうか。市が、先ほど市長の答弁にもございましたように、景観、あるいは歩車道分離をずっとやってきた。これを許してしまったら、また次のこともあり得るのではないでしょうか。何がそこに原因があるんですか。
小林克巳 都市づくり部長
歩車道分離の考え方の中で、当然、多摩市としては、歩車分離、要は人々の安全のための通行動線として確保してきました。その動線から建物に入るのに、車との動線、これが重ならないことが望ましい姿であるということはもちろんだと思います。
そういう中で、私どもは事業者に対してということで協議をしてきましたけれども、今回、あくまでも事業借地ということで、20年間の一定期間である建物と、それから商業施設であるということの中で、どうも、事業者のほうの考え方の一つの中で、投資的な経費をどれだけにするかというところからも原因としてはあるのではないかと。それからまた、地形上の話もあるのではないかというふうに考えております。
折戸小夜子 議員
地形上のことと言いますけれども、住民説明会のときに、業者の説明では、車路を低くすると、レンガ坂の並木が近くなって、並木の根を傷めることになるので、市のほうからそれは避けるように注意されたからとか、そういうふうに説明するんですって。そういうことを言うということ自体は、これはやはり今の市の答弁の中からは考えられないようなことですけれども、そういう事態があったということ自体は問題ではないかと思うんですけれども、その認識はどうでしょうか。
小林克巳 都市づくり部長
行政としては、現在そこにある樹木、これはレンガ坂からの関係でございますけれども、その樹木を傷めるからその施設のつくり方がどうのこうのといった指導をしたことはございませんし、多摩市としては、安全な店舗の入り口、これを求めてきた経過でございます。
後略
板橋茂 議員
(4)多摩中央公園レンガ坂沿いにできた商店街からの車両出入口の安全対策を求める声をどのように受けとめておられるのか伺います。
渡辺幸子 市長
(4)についてお答えします。
「クロスガーデン多摩」への歩行者誘導に関して、市民の皆さんから寄せられているご意見については、本市としても課題と受けとめています。施設計画の調整過程において、市としての指導が事業者に受け入れられなかったことは大変遺憾に思います。誘導員の適正配置等、適切な安全対策を講じるよう引き続き事業者に申し入れを行っていきます。
後略
なお、クロスガーデン多摩は、事業用定期借地20年が満了し、2026年をもって閉店・解体される予定です。(地権者はUR都市機構)
このように、多摩ニュータウンでは歩車分離のまちづくりが根付いており、今回、通路にコインパーキングが整備されたことは、住民であれば、違和感を覚えた人も多いことでしょう。
公共施設を民間企業が持つ難しさ
今回、このようなことがあったことで、公共的な施設を民間企業が保持することの難しさが表面化したのではないかなと思います。
今回の駐車場の件は、まだ議会が開かれていないので発言はありませんが、2025年のデッキ通路撤去の際には市議会で発言があり、市長答弁では「現時点においては、お示しできる予定等はございませんが、引き続き周辺地権者と話をしながら、よりよい解決策を模索していきたい」としています。
阿部裕行 市長
当該歩道橋は駅改札から日本医科大学多摩永山病院方面に向かう歩行者動線として、約30年間、譲渡を受けた民間事業者により維持管理されてきました。
歩道橋撤去工事の経過につきましては、提出した資料5)に記載のとおり、本市は令和7(2025)年9月26日に撤去工事施工業者が窓口に来庁したことで、撤去の事実を把握し、速やかに民間事業者に連絡を取りました。そして、10月3日に民間事業者を訪問し、点検により経年劣化でコンクリートの爆裂等が見られることや、安全性を優先し撤去すること、歩道橋のかけかえについては未定であることなどを確認しました。
その後、10月24日から通行止めとなり、撤去工事が開始され、11月19日までに工事が完了しました。
(2)についてお答えします。
当該歩道橋撤去により、駅利用者の利便性や駅前の回遊性が大きく低下し、多くの市民や来街者にご不便をおかけしているものと認識しています。
そのため、本件を把握してからすぐに対応等を検討しましたが、建設コスト試算には歩道橋の位置や構造、材質、規模等の想定が必須である上、昨今の建築資材や人件費の高騰等を考慮すると、莫大な費用となることが見込まれるものの、設計費用なしには概算額も算出できません。
また、それ以前に、従来の歩道橋の設置経緯や利用の状況等を考慮しますと、本件工事の主体はどこが担うべきか、十分な検討と協議が必要と認識しています。
そうしたことから、現時点においては、お示しできる予定等はございませんが、引き続き周辺地権者と話をしながら、よりよい解決策を模索していきたいと考えています。
2025年第4回定例会
また、稲城市若葉台の分譲マンション「ワルツの杜」内の遊歩道は、若葉台地区の歩行者ネットワーク上重要な経路ですが、底地は官地ではありません。団地管理組合法人の看板が設置されています。こうした通路は、もしかしたら自治体と管理協定等を結んでいる可能性もあります(わかりませんが)。
多摩ニュータウンのすべての歩行者通路が民間所有というわけではなく、そのほとんどは官地もしくはUR所有です。URは日本全国の団地を見ても、部外者の排除はほとんど行っていません。
多摩ニュータウンがまちびらきしてから半世紀余り。私人のご厚意や官民協調で成り立ち、維持されてきた都市空間の公共性を、これからの時代にどのようにしていくのか。永山駅前の一角で起きたこの変化は、多摩ニュータウンが次の50年を迎える上で、避けて通れない課題であると思います。
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タグ:多摩ニュータウン再生
撮影日:2026年7月31日、8月1日 記載内容は執筆日または撮影時のものです。変更があった場合も追記できていない場合があります。
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