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この作品「あるショーの物販バイトの話」は「よだつか」「よだつか目撃談」等のタグがつけられた作品です。
あるショーの物販バイトの話/はるの小説

あるショーの物販バイトの話

3,648文字7分

アイスショーで物販バイトしてるモブが『司先生のアクスタ、もう在庫が切れるんだが!?』と焦ってるところにいのりちゃんたちが買いに来る話。

※ほんのり61話のネタバレを含みます※

主成分
・モブ視点
・つかぴのアクスタをいのりちゃんから奪おうとする大人げないよだじゅん
・バチバチするいのりちゃんとよだじゅん
・ショーで物販があるならつかぴのグッズもあるのでは!?という願望
・アイスショーのことを何も知らない人間が書いている
・短い話
・だいたいツイッターで呟いていたネタ

もしアイスショーでもグッズにランダムがあったら理凰くんは真面目だから自引きできるまで頑張っちゃいそうだし、いのりちゃんはシステムがよくわからないまま引いて「司先生じゃない人が出てきて困ってたら近くにいた親切な人が交換してくれた」とかいいそうだし、よだじゅんは豪運なので一発でつかぴを引くと思います…
よだじゅんにもランダムに苦しんでほしくない?????

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は~いよい子の皆、私はしがない物販バイトのお姉さんだよ!

いや、しがなくはない。物販レジは戦争だ。殺気立つ客と長蛇の列を相手に笑顔で捌き続けるのは大変なことなのだ。時にはトラブルが起きたりSNSで炎上したりするハードなお仕事だ。
今日はアイスショーの物販で、今のところ無茶なクレームをつけてくるお客さんには遭遇していない。ツイてるといいたいところだけど、私はすでに不運の予感がしていた。

だって、今日バンバン出まくっている司先生、もとい主演キャストの一人である明浦路司のアクスタがすでに残部極少になっているんだもの……!!

設営のときから嫌な予感はしてたんだよ~!! 馴染みのバイト仲間ともダン箱見て「これしか在庫用意してないの? まずくない?」と言い合ってたんだから!

そもそも今回のショーはアンコール公演みたいなものだ。前回のショーにときに「つかぴの演技ヤバすぎんか」「あの熱血コーチの演技でこんなに鳥肌立つなんて思ってなかった」「司先生の手で神が降ろされるのを見た」等々、SNSで大いに話題になっての再演なのだ。それなのに司先生の新しいアクスタを前回と同じ数しか用意してないのはまずいって、発注数を決める偉い人は思わなかったんですかね!?
私は笑顔で接客しながらダラダラと冷たい汗を流した。

まずい、物販開始15分で司先生のアクスタが売り切れるわ、コレ。

そしてレジのせいじゃないのにレジの私らに怒りが向けられるパターンだ。あ~ツイてない。
そう思ったとき、弾むような声がいった。
「パンフレットとバナータオルと、それに司先生のアクリルスタンドを三個ください!!」
聞き覚えのある声にエッとお客さんを見返して、思わず叫び声を上げそうになってしまった。

いっ、いのりちゃんだ~!!!

うそうそ、本物!?
信じられない、生のいのりちゃんだ!! 凛々しい!! 美しい!! 可愛い~!!!
そりゃ司先生が出るからいのりちゃんも観に来てるだろうなとは思ってたけど、まさか私のレジに並んでくれるなんてえええ!!!
あ~最高、生のいのりちゃんを見れるなんて幸せすぎる、ツイてないとかいってごめんなさい、今日は最高の日です……!!!

私は突然の推しの登場に胸の内で絶叫しながらも、顔には一切出さずに接客スマイルで対応した。そして真っ先に司先生のアクスタを取りに行く。頼む頼む、まだ残ってて、いのりちゃんの分がないなんてありえないでしょ!!!
ダン箱を開くとなんと最後の三個だった。やったー!!! と内心で叫びながら全部取ってレジへ戻る。同時にチーフに売り切れを報告する。私がパンフレットなどを含めてレジを打っている途中で、チーフから「明浦路司のアクスタ完売です!」というアナウンスが流れた。長蛇の列がどよめく。

「えっ、司先生のアクリルスタンドが完売!?」

驚くいのりちゃんに、私は笑顔で軽く頷いて見せる。そうなんです、いのりちゃんの分で最後だったんですよ。さすがいのりちゃん!
そう思っていたら、いのりちゃんの後ろから酷くショックを受けている声が聞こえてきた。

「そんな、明浦路先生のアクスタ、もうないんですか……!?」

これもまた聞き覚えのある声だったので、エッと思って見ると、そこにはなんと鴗鳥理凰くんがいた。わわっ、その隣にいるのは狼嵜光ちゃんだ!! 皆で買いに来てたのか~! 一緒にいる大人は……、誰だろう? 鴗鳥先生じゃない、サングラスをかけた黒ずくめの男性だ。どこかで見たこともあるような気もするけれど……。

「いのり、三個買ったんだよな!?」
「うっ、ううっ、駄目だよ、これは私がうっかり落としちゃったときのためのもので……!」
「アクスタは落としても簡単には割れないから! 頼む、頼むよ、いのり……! 俺は明浦路先生のアクスタを飾る場所をもう決めてるんだよ! だいたい、前回のショーのとき、物販も何も知らなかったお前に一から教えてやったのは俺だろう!?」
「うう~!! ぐぬぬ……、ぐぬ……、くぅ……、大事にしてよね……! 理凰くんだから特別に一つ譲ってあげるんだからね……!!」
「わかってる!! ありがとう、いのり!!! お前は最高だ!!!」

いのりちゃんが苦悶の表情でアクスタを一つ袋から出して理凰くんに渡した。
見守っていた私は二人のやり取りに『いいものを見せて頂きました……』と内心で熱く感謝をしていた。周りの並んでいるお客さんたちもそうだったに違いない。皆ニコニコしている。完売は辛くてもいのりちゃんや理凰くんの手に渡るなら許せる。そんな空気が漂った。
そこでいのりちゃんが恐る恐るというように隣を見ていった。

「光ちゃんも欲しい……?」
「えっ? あぁ、私は全然……全然、部屋に飾る場所がないから! いのりちゃんが持っているほうがいいと思うな!」
「そう!? そっかな、えへへ」

ニッコニコのいのりちゃんに私たちまで笑顔になった。
そのときだ。
一緒にいた黒ずくめの男性が口を開いた。

「僕のは?」

いのりちゃんがまじまじと男性を見上げる。
理凰くんと光ちゃんがぎょっとした顔になる。
いのりちゃんは先ほどまでとは打って変わった冷たい声でいった。

「ありませんけど。完売したそうですよ」
「いのり、二つ持ってるよね」
「これは二個とも私のです!」
「一つ譲ってもいいよね」
「いいわけないです~!!! いやです~!!!」

なっ、何事!?
というか誰よこの大人げない男は!? いのりちゃんに向かって司先生のアクスタを寄越せなんて、ずいぶん図々しいな、おい!! いのりちゃんと司先生はスケート界では有名な最強師弟なんですけど!? どこの物知らずよ!?
私は苛々と黒ずくめの男を見た。周りのお客さんたちも冷ややかな視線を男へ向けている。
しかし黒ずくめの男はおもむろにサングラスを外し、前髪をかき上げていった。

「司がスケートを始めたのは僕の演技を見たからだよ。だから僕にはそれを手に入れる権利がある。そうだよね?」



よっ



よっ



夜鷹純だ───ッ!?!?!?!




うっっっそ!?!?!?! あの伝説の金メダリスト!? 最強の絶対王者!? 引退以来消息不明といわれていたあの夜鷹純!? まままままマジで!? 生きてたの!? なんでここに!? なんでいのりちゃんと司先生のアクスタを争ってんの!?
うそうそ本物!? そっくりさんじゃなくて!?

私は心の中で叫んだ。周りのお客さんたちも同じ気持ちだったにちがいない。誰もが自分の眼を疑うような顔をしていた。

そこに、いのりちゃんが冷たくいった。

「でも司先生の今の夢は私のコーチですから。夜鷹さんが入ってくる余地はないので諦めたほうがいいと思います」
「司がアイスショーに出るのは僕が勧めたからだよ」
「ちがいます~!!! それは夜鷹さんの思い上がりです~!!! 司先生は私と一緒に突き進むためにアイスショーに出ることにしたんです~!!!」




本物の夜鷹純だ───ッ!?!?!?!




物販の行列から悲鳴が上がった。「よだじゅん!?」「嘘でしょ!?」「本物の純様!?」などという叫び声が聞こえてくる。

まずい、ここで騒ぎになったら怪我人が出かねない。私は一気に青ざめた。

しかし理凰くんと光ちゃんは状況をきちんと把握していたらしい。すぐに動いて、理凰くんがいのりちゃんを、光ちゃんが夜鷹純を引っ張っていく。光ちゃんは最後にこちらを向いてすまなそうにぺこりと頭を下げた。なんていい子なのか。私はじーんと感動した。

四人が去っていくのを追いかける人間はさすがにいなかったらしい。ざわめきを残しながらも列が元に戻る。私も気持ちを切り替えるべく、レジに集中した。



ちなみにその夜、ツイッターで『司先生のアクスタをいのりちゃんとあの夜鷹純が奪い合っていたんだが!?』という呟きが軽く炎上していた。

批判するコメントのほとんどは、『生きてるかどうかもわからん王者の名前を軽々しく使うな』『よだじゅんがアクスタを買うとかデマにしても解像度低すぎ』『司先生のアクスタが早々に完売したのは自分も腹立つけど、こういう意味わからんネタはもっと嫌い』などだった。

私は「本当だよ~!!!」と叫びたくてもバイトなりの守秘義務として何もいえないため、ただそっと元ツイートにいいねを押したのだった。

なお、さらに数日後、夜鷹純の公式アカウントが突然作られ、司先生のアクスタ宣伝ツイートが引用されて『買えなかった。もう一度作って』と呟かれたことにより、炎上アカウントの主は『だからいったじゃん!!! デマじゃないっていったじゃん!!!』と泣いていた。周りは謝っていた。

私もいたわりをこめて全力でいいねを押したのだった。



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コメント

  • 高野

    私も全力でいいねを押させていただきました。

    7月4日
  • らっちょ
    6月30日
  • 夜猫
    6月30日
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