事故の前。赤い血によって視野が悪いことがわかる(手術動画より。画像は加工しています)
法廷で語られた「カルテ不記載」
まずA医師は本人尋問において、松井氏は電子カルテの記載を日常的に怠っていたと証言している。
「基本的に、どの患者も診察した日には、必ず何かしらカルテを書かないといけないと思うのですが、毎日、書かないということは、彼の特徴としてあります。3日間抜けたりとか、週のうちの2、3回ぐらいしか書いてなかったりとか、そういうのはたくさんあります」(A医師の尋問調書より)
さらに、連続した医療事故を受けて2020年2月末に手術禁止命令が出された後、あるいは病欠から復帰した後の松井氏の行動について、こう証言した。
「特に病欠から帰ってこられたときとかは、ほとんど終日、カンファレンスルームにいました。(中略)先生がカンファレンスルームから、患者さんを実際に診ずに、適当な指示ばっかり出してるということで、脳外科の病棟のスタッフから、そういう苦情が僕のほうに……たくさん寄せられました」(同前)
「松井氏は患者の病室へ足を運ばず、カンファレンスルームから電子カルテ経由の指示だけを出す」――看護師側からのそんな苦情が科長であるA医師のもとへ相次いでいたと証言されている。ただしこれはA医師側の証言であり、松井氏側はこうした評価に同意していない。
A医師は、松井氏が他科の試薬を無断で流用したというトラブルについても証言している。
「放射性同位元素という試薬を使ってやる検査があったんですけど、その放射性同位元素は検査のときに2本、必要なんですけども、発注が1本だったがために、神経内科の試薬を、無理やり自分の患者さんに回したということで、放射線科の技師長さんからクレームが僕に来ました」(同前)
A医師がこれを注意したところ、松井氏はこう食ってかかったという。
「『先生は一体どっちの味方なんですか、どっちを信じるんですか』って言われたんですけども……松井先生には悪いですけど、うそを言ってるんだなと思いました」(同前)
なお、この点についての松井氏本人の反論は、訴訟記録の範囲では見当たらない。
(後編につづく)
◆取材・文/高橋ユキ(ノンフィクションライター)