麻生太郎氏が皇室典範改正を主導・消費税減税に反対…党内から「政権にマイナス」の声、支持率も急落
自民党内で唯一の派閥を率いる麻生太郎副総裁が存在感を際立たせている。特別国会では、皇族数確保に向けた改正皇室典範の成立を主導。高市早苗首相が決断した飲食料品の消費税減税には、首相の「後ろ盾」でありながら面前で「反対」を唱えた。ただ、高い人気を誇ってきた高市内閣の支持率急落は、異論が残る中での皇室典範の拙速な審議が一因との見方があり、党内では「政権の足を引っ張っている」と冷ややかに見る向きもある。 ■高市首相支える「国力研究会」 「乗り気」の麻生太郎氏、武田良太氏も加わり「呉越同舟」 「私の意見としては反対だが、首相として決めたことは尊重せにゃならん」。7月28日、自民党本部。首相から事前に飲食料品の消費税を1%に引き下げる方針を伝えられた麻生氏は、容認しつつも納得したわけではないとくぎを刺したという。
8年9カ月にわたり安倍晋三政権などで財務相を務め、消費税を2度引き上げた麻生氏。首相が消費税減税を掲げて衆院選に大勝した後も「社会保障費の財源確保がどれだけ大変か」と周囲に語るなど、一貫して否定的な考えを示してきた。自ら連立入りを働きかけてきた国民民主党も反対しており、重ねた努力が水泡に帰すことへの懸念もあった。 首相は、あえて人目に付く党本部で麻生氏と会談した。昨年の総裁選で麻生派の議員票を動かして高市政権を誕生させた功労者なだけに「気を使った」(政府筋)とみられる。ただ麻生氏周辺は「恥をかかされただけだ」と不満を漏らす。 ◇ 麻生派は2月の衆院選で初当選した議員ら18人を加え、60人に勢力を拡大。党内では他の旧派閥も活動を活発化させているがまとまりに欠け、同派は「党の屋台骨を支える集団」(鈴木俊一幹事長)として党内基盤が弱い首相を後押しする。 一方、衆院の重要ポストを握る主流派の立場を利用し、特別国会では官邸も欺く“奇策”を仕掛けた。 麻生氏が成立にこだわった改正皇室典範。与党提出の衆院議員定数削減法案などに野党が反発し国会が空転した影響で、審議入りが危ぶまれていた。膠着(こうちゃく)を打開したのが麻生派出身の森英介衆院議長だった。首相の外遊直前の7月1日に与野党7党の幹事長らを集め、典範改正案を「最優先」で成立させるよう求めた。 定数削減法案の成立を急ぐ日本維新の会の反発が見込まれたが、麻生氏は布石を打っていた。6月25日夜、都内で鈴木氏と共に、国民の玉木雄一郎代表、榛葉賀津也幹事長らと会食。今後の協力関係などについて話し合い、維新をけん制した。 首相と蜜月関係を築く維新の頭越しに国民と関係を深める麻生氏の姿勢に、維新幹部は「むかついた」といら立ちを隠さない。自民関係者は「麻生さんは首相を出し抜いてでも皇室典範さえできればいいと思っていたはずだ」と解説する。 ◇ もっとも、一部野党が修正を求めた典範改正の成立を急いだ代償は小さくない。7月中旬以降の報道各社の世論調査で内閣支持率は10%前後下落。「立法府の総意」とは言い難い内容をわずかな審議で成立させた強引な手法や、物価高対策などの成果が少なかったことが要因との見方が大勢だ。麻生氏側近は「審議時間が少なかった」と認めつつ「国会が終わったから下げ止まるだろう」と強がる。 8、9月には内閣改造・党役員人事が見込まれる。焦点の一つが、麻生氏の義弟で、党運営を取り仕切る鈴木幹事長の処遇だ。高市総裁誕生後、麻生氏が唯一希望した人事とされ、交代した場合は政権のパワーバランスが変わる可能性がある。「誰を幹事長に据えるかによって、首相が麻生さんの存在をどう考えているかが見えるだろう」。自民幹部はつぶやく。
西日本新聞