スペインへの移民6万人殺到の影にモロッコの揺さぶり工作か EUが再発阻止へ緊急会合

スペインの飛び地セウタで、モロッコから泳ぎ着いて越境を試みる移民=7月30日 (AP=共同)

【パリ=三井美奈】北アフリカにあるスペインの飛び地領セウタで7月末、モロッコから移民6万人が流入したのを受け、欧州連合(EU)は今月4日に緊急閣僚会合を開くことを決めた。流入の背景を巡っては、モロッコが移民を外交の揺さぶり手段に使ったという見方が浮上している。

SNSで「国境開放」流布か

セウタは地中海に面するスペインの自治都市。モロッコはかつて領有権を主張したが、現在は国境を両国がそれぞれ管理する。スペイン政府関係者は「事前情報があれば、こんな事態にはならなかった」と述べ、モロッコから国境沿いへの若者集結について全く連絡がなかったと認めた。

スペインの報道によると、若者たちは事前にトラックでモロッコ側の国境に集まったが、国境警備隊は制止しなかった。「国境が開放される」というSNSメッセージが流布されたという情報もある。

スペイン政府は1日までに、ほぼ全員がモロッコに戻ったと発表。サンチェス首相はモロッコとの協力関係を強調するが、左派の連立与党からは「モロッコが危機を作った」という非難の声が出た。サンチェス首相が7月20日、モロッコと領土問題で対立するアルジェリアを4年ぶりに訪問したことが背景にある。移民流入が加速した30日は、モロッコ国王モハメド6世の即位記念日にあたり、スペイン紙ムンドは「モロッコがスペインの主権に移民圧力をかけた」と論説で主張した。

2021年にも移民流入騒ぎ

こうした見方が広がるのも、セウタでは2021年にも移民流入騒ぎが起きたからだ。この時はスペインが、西サハラ独立派指導者の入院を受け入れたことが引き金になった。西サハラは北アフリカにある旧スペイン領。モロッコが領有権を主張するのに対し、アルジェリアは独立派を支援してきた。

EUではこのほかにも、移民が国境不安化の手段にされた例がある。ロシアが22年にウクライナ侵略を開始する数カ月前、親露国ベラルーシが中東からの移民数千人を集めて隣接するポーランドに追いやり、国境に揺さぶりをかけた。

今月4日のEU緊急会合はオンラインで行われる。スペインの移民政策に不満を示すイタリアやデンマークの呼びかけで、開催が決まった。両国の主導でEUでは不法移民追放に向けた制度作りが進むが、スペインは逆行するように不法残留者50万人に就労許可を与える計画を発表し、EU内であつれきが深まっていた。

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