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壁の一部が崩れた熊本南病院=7月29日午前、熊本県宇城市(撮影・河合仁志)
最大震度7を観測した熊本県の地震は、重病の人や入院患者を支える医療機関にも深刻な被害をもたらした。天井や壁が崩れ落ち、今も続く断水や停電。診療の休止を余儀なくされ、患者を他施設に緊急搬送するケースも相次ぐ。建物や設備の復旧には時間がかかり、診療再開の見通しが立っていない施設もある。災害関連死を防ぎ、命をつなぐ拠点が揺らいでいる。
玄関前に並べたマットレスに身を横たえる30人ほどの患者たち。熊本県宇城市の熊本南病院では、7月28日の強い揺れで壁が剥がれ落ち、天井からは水漏れが発生。一部の患者を屋外に避難させた。
「患者さんは皆、不安そうな表情で、『こんな思いをさせて申し訳ない』という気持ちでいっぱいだった」。事務部長の内枦保(うちへぼ)雄一さん(54)はこう振り返る。地震の発生は午後4時27分。「日が傾き始める時間帯だったから、まだよかった。もし昼間だったら、暑さでもっと大変なことになっていただろう」
同病院は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)といった神経難病の患者を受け入れており、人工呼吸器で命をつなぐ患者もいる。停電後も自家発電の設備が稼働していたが、診療の継続は難しく、約120人の入院患者を他院に搬送した。
この搬送を担った一人が、災害派遣医療チーム(DMAT)として直後に被災地入りした福岡大病院(福岡市)の医師喜多村泰輔さん(58)。ストレッチャーを押している際に余震が起こり、ガタガタと響く音に緊張が走ったという。喜多村さんは「怖かったけれど、一刻も早く患者さんを安心できる場所に運びたい一心だった」と語った。
厚生労働省によると、熊本県内の86の医療機関で断水や停電などの被害が発生し、8月1日午前の時点で、46カ所で断水、5カ所で停電しているという。熊本南病院も診療再開のめどは立っていない。
断水が続く被災地では、多くの水を必要とする人工透析の継続も難しい。過去の震災でも医療支援を行ってきたNPO法人ロシナンテス(北九州市)理事長で医師の川原尚行さんは、熊本県八代市のJCHO熊本総合病院から透析患者3人を熊本市内へ搬送した。川原さんは「医療を途切れさせないよう、外部からの支援が求められる」と説明する。
医療機関だけでなく、福祉施設も深刻な状況に直面している。熊本県内の障害者施設などに支援に入ったNPO法人「災害人道医療支援会(HuMA)」常任理事で、聖マリア病院(福岡県久留米市)の医師矢野和美さんは「元々の人手不足に加え、職員自身も被災しており、業務が逼迫(ひっぱく)している」と話す。利用者のおむつ交換の回数を減らさざるを得ないなど、ケアの質の維持に苦慮する施設もあるという。
県外からの医師派遣や後方支援を受けて、支えられている被災地の医療。矢野さんは「感染症や食中毒を防ぐため、消毒液やウエットシートなどを活用し、できる限り清潔な環境を保ってほしい」と訴える。(斉藤幸奈、丹村智子)