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わいせつ教員を徹底排除!DBSだけじゃない英国の子どもの安全保護(セーフガーディング)とは?

日本大学教授・教育政策・こども政策・子ども若者の権利
イギリスはわいせつ教員に厳しい。日本はいまのままで大丈夫か?写真:イメージマート

教員による児童生徒の盗撮、わいせつ行為などの性犯罪が相次いでいます。わいせつ教員・盗撮教員を徹底排除するイギリスの子どもの安全保護(セーフガーディング)について紹介します。

こども性暴力防止法(日本版DBS)の施行を来年度に控え、イギリス調査を実施していました。イギリス滞在中に、教員による卑劣な盗撮事件、わいせつ事件が報道され、日本からの取材が相次ぎました。

あらためて、イギリスで子ども若者を性暴力やそれ以外のヒューマンリスク(虐待、いじめ、差別発言等)から守る仕組みである、子どもの安全保護(セーフガーディング)の仕組みについて発信することが必要と考え、記事を執筆しています。

この記事ではイギリスはイングランド地域を意味しています。

1.DBS・学校内防犯カメラは当たり前

それ以外にも何重にも子どもをヒューマンリスクから守る仕組みがあるイギリス

まずイギリスでは、教員以外にも、子どもに一定時間接する教育実習生や学校でのボランティアに対しても、DBSチェック(いわゆる犯歴チェック)が義務付けられています。

日本のこども性暴力防止法では、有罪判決となった性犯罪だけが犯歴としてチェックされますが、イギリスではそれ以外の犯歴、以前の職場からの児童生徒への不適切な関わりなどの通報内容等も記録されています。

学校外の学童、スポーツクラブや音楽クラブや放課後の宿題クラブ(日本の学習支援に相当)などのコーチ・講師やボランティアなど、学校外活動の関係者にもDBSチェックが義務付けられています。

オンラインで子どもたちに接する職やサービスの従事者も同様です。

今回のインタビュー中に乗ったタクシーの運転手さんも、学校への送迎で子どもだけを乗せることがあるため、DBSチェックを受けていると教えていただきました。

ただし、個人事業主のベビーシッターや家庭教師などはDBSチェックの対象外で、このことはイギリス政府も保護者に繰り返し周知をしています。

また、イギリスの学校・園では学校内の防犯カメラは当たり前です。

これはわいせつ行為や盗撮の訴えがあったときに、基礎自治体・警察とも連携し状況の検証をしたり、法廷証拠能力のある動画・音声を確保するためにも必要だからです。

また校長などの責任者が許可しない限りは、教員は児童生徒と2人きりにならないことが徹底されています。

許可なく児童生徒と2人きりになる行動についても、防犯カメラで監視ができるようになっています。

それ以外にも、何重にも子どもをヒューマンリスクから守る仕組みがあります。

・職員採用の際から潜在的加害者をチェックし、排除する初犯対策

・全教職員、スタッフ、ボランティアへの研修が必須

・安全保護主任(Designated Safeguarde Leads)と安全保護チームの必置化

・通報義務をおこたった大人もDBSに記録搭載という厳格ルール

・.子ども・保護者にも複数の相談・通報窓口が周知されている

DBSと同様にこれらのルールは、学校・園だけでなく、学校外の放課後活動でも導入されているのです。

2.教職員採用の際から潜在的加害者をチェックし、可能な限り事前排除する初犯対策

性暴力だけでなく不適切指導・セクハラ・パワハラ等の行為を禁じた行動規範への同意も必須

学校・園では、教職員採用の際には、子どもを守るための安全な人材確保(Safer Recruitment)のガイドライン整備・遵守と、心理テストや面接、推薦者への人物確認など、何重もの手続きが課せられています(英国教育省,2025,Keeping children safe in education,2025,pp.57-92)。

これは、潜在的加害者をチェックし、可能な限り事前排除する初犯対策として重要なのです。

また採用時には、性暴力だけでなく不適切指導・セクハラ・パワハラ等の行為を禁じた行動規範への同意も必須となります(実際の小学校における行動規範, Staff Code of Coduct Policyの事例)。

試用期間には防犯カメラ等による行動確認も行われます。

児童生徒への性暴力、不適切指導だけではなく、教職員やスタッフ同士のセクハラ・パワハラ等も禁止行為に相当します。

雇用主である学校には労働者の安全を守る責務もあるからです。

子どもの安全安心だけでなく、教職員・スタッフの安全・安心を脅かす行為も排除することで、学校全体の安全・安心を実現する、ということがイギリスの子どもの安全保護(セーフガーディング)の基本設計なのです。

学校・園に勤務する大人が、これらの行動規範に違反した場合には、処分や解雇の対象となるのです。

日本では、職場でのルール整備自体が、イギリスと比較すると甘いことが理解されます。

また、教員間のハラスメント加害者が被害者を自死や休職に追いやったり、同じ加害者教員が児童生徒に不適切指導をしてしまう、そんな状況を野放しにしている日本にとっても、大いに参考となるのではないでしょうか。

日本でも教員の行動規範については、私立学校・園や国立大学附属学校では法人の就業規則改正で対応できますし、公立学校でも教育委員会での規則整備で導入可能と思われます。

こども家庭庁が現在検討中のこども性暴力防止法施行に際して、こども性暴力の防止措置に関するガイドラインも、大いに参考になると思われます。

3.全教職員、スタッフ、ボランティアへの研修が必須

DBSチェックや、採用時の厳しいチェックを経て、学校・園で働くことになった場合にも、全教職員、スタッフ、ボランティアへの研修が必須です。

各学校で年1回必須とされているほか、基礎自治体が学校・学校外で働く人々に対し独自研修も実施しています。

業界別の独自研修やワークショップもさかんに実施されています。

子どもに関わる大人たちは、性暴力は許されないこと、疑い事例も含めて通報義務があること、被害者中心主義で事態の改善にあたること、などが当然のルールとして共有されているのです。

4.安全保護主任(Designated Safeguarding Lead)と安全保護チームの必置化

とくに今回のイギリス調査で、あらためて重要性を感じたのは、安全保護主任(Designated Safeguarding Lead)と安全保護チームの必置化です。

安全保護主任(Designated Safeguarding Leads)は、イギリス政府の認定資格であり、学校ではこの主任が校長とともに子どもの安全保護の責任を負います(英国教育省,2025,Keeping children safe in education,2025,pp.171-176)。

より高度な研修を受けた教員や職員が、その役割を担います。重責であるため、給与・手当面でも優遇されています。

また安全保護主任のもと、子ども・保護者や教職員からの相談・通報をともに担当する安全保護チームも必置化されています。

学校の場合には、チームに女性も男性も含まれており、女子だけでなく男子児童生徒が被害を受けた場合にも相談しやすい体制となっています(イギリスの中等教育学校の事例)。

学校・園だけでなく、学童・スポーツクラブや非営利セクターによる学習支援の現場など、学校・園以外でも同様に安全保護主任と安全保護チームが必置化されているのです。

5.通報義務をおこたった大人もDBSに記録搭載という厳格ルール

たとえば、あなたが学校の教員だったとします。

同僚の教員が、責任者の許可なく子どもと2人きりになっているのではないか、学校の行動規範で禁じられている私的なSNSのやりとりをしているのではないか、そのような疑い事例を発見した場合、24時間以内に安全保護主任に通報義務が課せられています。

もしそのルールに違反したことがあきらかとなった場合、通報義務をおこたった大人もDBSに記録搭載という厳格ルールがイギリスにはあるのです。

これは性暴力に限ったことではなく、児童生徒が保護者やそのパートナー、あるいは保護者以外の誰かからの虐待を受けているのではないか、との疑い事案も同様です。

イギリスでも児童虐待は深刻化しており、児童虐待の早期発見と早期介入・早期保護も、重視されているからなのです。

わずかな疑い事案でも通報しないことは、子どもを見捨てること、そのような意識もイギリスでは子どもに関わる大人に広く共有されています。

6.子ども・保護者にも複数の相談・通報窓口が周知されている

子ども・保護者にも複数の相談・通報窓口が周知されています。

まず子どもや保護者にも、性暴力被害・ハラスメント・不適切指導が起きたときやその懸念を感じた場合、各学校・園や学童・スポーツクラブなどの安全保護主任・チームに相談・通報することが周知されています。

そして基礎自治体も子ども・保護者からの相談・通報を受け付けることができます。

くわえて学校・園や放課後活動の安全保護主任や校長、責任者が適切に対応していないという疑念がある場合には、英国教育省(Department for Education)や、全英児童虐待防止協会(NSPCC)に子どもや保護者の相談窓口が設置されています。

イギリスのサッカークラブの事例では、クラブの安全保護主任・チーム以外にも自治体、プレミアリーグ、サッカーにおけるセーフガーディングの専門団体、スポーツにおける児童保護団体、全英児童虐待防止協会などの複数の相談先が、HPに公開されています。

このように複数の相談窓口があることを子ども・保護者に周知徹底することで、学校・園や学校・園以外での隠ぺいを防ぐことも国をあげて取り組まれているのです。

7.あらゆるヒューマンリスクに徹底対応する、というイギリスの子どもの安全保護(セーフガーディング)

今回の記事は性暴力対応を中心にしてきましたが、実はイギリスの安全保護(セーフガーディング)は大人から子どもへの性暴力・不適切指導や虐待だけでなく、子ども同士の暴力行為・盗撮・性暴力・誹謗中傷・差別発言・過激主義・SNSトラブル等にも対応する仕組みなのです(英国政府,2023,Working Together to Safeguard Children2023)。

そこには子どもを守るため、あらゆるヒューマンリスクに徹底対応する、というイギリス政府をあげた姿勢があります。

こども基本法・教育基本法にもとづき、関連法が整備され、様々な政府ガイドラインが、学校・園にもそれ以外にも適用されているのです。

日本は自然災害や通学路の安全については、学校安全として重視してきましたが、イギリスと比較した場合、ヒューマンリスクへの対応はあまりに初歩的な段階と言えます。

おわりに

こども性暴力防止法施行は重要な第一歩

国をあげて子どもたちを守り抜く日本へ

あまりに弱かった日本の学校・園や学校外活動のヒューマンリスク対策にとって、こども性暴力防止法は、子どもたちを守るための重要な第一歩です。

こども性暴力防止法の施行にむけ、こども家庭庁もガイドライン整備を行っていますが、全教職員・スタッフへの研修など、イギリスでも重要とされている取り組みが日本でも導入される予定です。

イギリスの徹底した取り組みに比べ、日本の取り組みは不足しているのではないか、そう感じられる方も多いかもしれません。

しかしイギリスも2012年からDBSの本格運用が開始され、2014年から学校・園での子どもの安全保護(セーフガーディング)の仕組みが義務化されました。

イギリスでの10年以上の取り組みが、ここまでの日英の違いを生んでいるのです。

そして英国の関係者は「私たちの今の仕組みでも、子どもたちを守り切れてはいない」と日々、改善に取り組んでいるのです。

私たちがまず見習わなくてはならないのは、国をあげて子どもたちを守り抜く政府・社会や大人たちの姿勢だと考えています。

子どもたちを性犯罪や虐待・いじめ等のヒューマンリスクから守り抜く、その第一歩がこども性暴力防止法なのです。

卑劣な性犯罪者たちから、子どもたちを守りぬく日本へ、英国に学びつつ、私たちも取り組みをすすめなくてはなりません。

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ありがとうございます。
日本大学教授・教育政策・こども政策・子ども若者の権利

末冨 芳(すえとみ かおり)、「子ども若者が幸せな日本に」、教育政策・こども政策での分野横断型の研究活動を展開。専門は教育行政学、教育財政学。教育費問題の専門家として、2014年より内閣府及びこども家庭庁にて子どもの貧困対策の審議会委員を務める。こども基本法、こども性暴力防止法、小学校35人学級、教員の働き方改革、高校無償化、児童手当の所得制限撤廃など、国会参考人として提言の実績。主著に『子ども若者の権利とこども基本法』(明石書店,編著)、『子育て罰―親子に冷たい日本を変えるには』(光文社新書,編著)、『教育費の政治経済学』(勁草書房)、『子どもの貧困対策と教育支援』(明石書店,編著)など。

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