広島市安佐南区出身の西川美和監督の5年ぶりとなる新作映画「わたしの知らない子どもたち」が10月に公開される。東京大空襲で家族を失い、路上に放り出された戦争孤児たちのしたたかな生命力をぬくもりのある視線で捉えている。本作の主人公は、少し年齢が離れた2人の女性であり、小さな恋の物語も初めて盛り込んだ。「子どもたちが見ることのできる戦争映画を作ってみたかった。今まで自分が手を付けてなかったことを全て詰め込んだ映画になった」と語る意欲作だ。(渡辺敬子)
※記事の最後に西川美和監督のプロフィルや監督作品、主な著作一覧があります。
―新しい映画が生まれたきっかけを教えてください。
2021年に公開した前作「すばらしき世界」は、暴力や犯罪を繰り返して長期服役した男が、刑務所を出て社会復帰を目指す現代劇だった。原案となった佐木隆三さんの小説「身分帳」には、戦争孤児ではないけれど、母親に施設に置いていかれ、進駐軍のキャンプに入り浸り、使い走りにされて裏社会に取り込まれていく幼少期も描かれている。そんな「昭和の裏戦後史」も前作に盛り込みたかったけれど、時間とお金がかかるだけに諦めていた。ただ、終戦直後の路上に放り出された子どもたちや、背景は引っかかっていた。

20年春頃だった。前作の撮影が終わり、編集し、いよいよ仕上げていく時期に新型コロナウイルス禍が始まった。後は音を入れるだけの段階で、完全に作業がストップしてしまった。ずっと家に居ないといけないから、時間だけはたっぷりある。次の作品のことを少しずつ考えるようになった。今まで自分が手を付けなかった、大きなことにも取り組めるかもしれないと思い、いろんな資料を読むことから始まった。当時はどんな映画になるのか、再び映画をつくることができるのかすら、見通しは立っていなかった。
調べていく中で、当時の子どもたちが手を尽くして生き延びようとする姿は、悲惨ではあるけれども、一方で非常にきらめいて