つぶれた1階から「ここー」 消防つながらず…4時間で弟救出
激震が襲った被災地では、2016年の熊本地震に耐えたり、補修したりした民家の損壊が相次いだ。
最大震度7を観測した氷川町の前村正良さん(72)は、母ハナエさん(96)と一緒に隣接する八代市のスーパーで買い物中に地震が発生。急いで帰宅すると、築90年の木造2階建ての自宅は、1階部分が完全につぶれていた。
留守番を頼んでいた弟の秀良さん(69)が閉じ込められた可能性があり、「どこかえー」と叫ぶと、姿は見えなかったが、玄関だった場所から「ここー」と返事があった。
消防に通報してもつながらなかったため、近所の人手を借りてリフトで梁(はり)を持ち上げ、チェーンソーで柱を切った。
4時間後、トイレの下敷きになっている秀良さんが見つかった。崩れ落ちた木材に挟まれた右手は骨折していたが、一命は取り留めた。
弟は助け出したが、これから先は高齢のハナエさんとともに自宅隣の納屋で避難生活をすることになり、不安は大きい。16年は大きな地震が続いた。「これ以上、地震が来てほしくない」。ため息が漏れた。
「せめて苦しんでいなければ…」
一方、同じく震度7を観測した宇城市では、自動車整備業の杉浦成生さん(67)が、倒壊した自宅の下敷きになった同居の兄、臣夫さん(73)を亡くし、悲嘆に暮れていた。
「せめて苦しんでいなければいいな。今はそんなことくらいしか考えられない」
同市で1人暮らししている女性(60)は、自宅の窓ガラスが落ちてなくなり、玄関部分も損壊して通れなくなり、「もう住めない」と判断した。
犬を飼っているため、市役所隣の避難所前で車中泊した。16年の地震では犬が嫌いな人に気を使い、避難先で肩身の狭い思いをしたからだという。
「年齢と身寄りがないことで家を借りづらい。行政が住むところを用意してくれればいいけれど、そうでなければ車中泊が続くのかな」
改築した自宅「建て替えるしか」
介護ヘルパーの松田京子さん(69)は地震発生後、職場から帰宅すると、自宅にひびが入り、塀が倒れていた。
16年の地震後に補修し、リフォームしたばかりだった。
熊本市から駆けつけた親戚から「基礎がやられている。建て替えるしかないばい」と言われ、頭を抱えた。
「じゃあ、住む場所を探さないといけない。でも、何から手を付けていいかわからん。これは、もう無理ばい」
避難所となっている宇城市の小川防災拠点センターでは、770人以上の被災者が一夜を明かした。
施設には72時間稼働する非常電源があるが、節電を理由に冷房の使用を一部区画に限っていたため、駐車場で車中泊をしたり、路上で過ごしたりする人も多かった。
娘と避難した60代女性も施設内の暑さに耐えかね、路上に段ボールを敷いて過ごした。
市内は29日、最高気温が35・2度に達する猛暑日となった。女性は「地震が続いているし全く寝付けなかった。冷房がないままでは体調が心配。ただでさえ、家がむちゃくちゃになり、この先の生活に不安がいっぱいの中避難してきているのに」と疲れ切った表情を見せた。【川地隆史、滝川大貴、菅野蘭、川畑岳志】