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壁ぐらいうちにもあるよそれよりも/ととたの小説

壁ぐらいうちにもあるよそれよりも

15,348文字30分

原作軸JGPF頃時空、やることやってるよだつかですが、夜鷹出番がほとんどありません
特大注意:14巻巻末の『つかさのあたらしいかのうせい?』を好き勝手にし、モブのマッチョがいます
ゲイの人へのインターネット特有ステレオタイプムーブ描写を含みます
巻末の漫画、かけてもらいたかっただろう言葉をあのタイミングでもらった司はちょっと複雑だったんじゃないかと思いました
わたしはいま狼煙をくらって大変なことになっています、助けて、許せるかたよろしくお願いいたします

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「壁ぐらいうちにもあるよ」



「やったー!ジムがある!」
JGPF出場選手のコーチという重責から一時的に解放された司は、ホテルに併設されたジム、そしてそこに並ぶトレーニングマシンに目を輝かせた。
「海外のホテルは宿泊者向けのジムがあるの嬉しいな~っ」
思わず弾んだ声が出る。
司の筋肉はおもに自重トレーニングによって作られている、筋肉は自分の重みで積み上げていくものだという考えによるものだが、かといってマシーントレーニングに興味がないわけではない。
今の立場は選手に帯同するコーチである。本当なら部屋で作戦を練ったり少しでも長く眠って体調を整えておくべきだ。
だがSP第一位発進なんてこの上なく幸先のいいスタートを切ったいのりの事を思うと、居ても立っても居られなくなってしまう。
以前、あまりに腹を立てて川べりを走って「クソガキ~~!!」と叫んだことを思い出した。
ここは中国である、さすがにホテルの外に出るのはまずいだろう。夜だし。
ふと、ホテルから抜け出してきたとある少女のことを思い出した、そこでくらわされた泥の味も。
彼女は自分が言わなくたって今日のいのりさんのSPを見てくれたはずだろうが、FPも絶対に見てもらいたい。

「さてと……」
司はチェストプレスマシンを選んだ。椅子に座って胸の前でバーを押し、主に腕や胸を鍛えるマシンである。
さっそくマシンの腰をかける部分を軽くタオルで拭き、グリップが乳首の位置に来るよう調整する。ウエイトも軽いものから。
深く腰掛け、肩甲骨を寄せて息を吐きながら胸を張る、息を吸いながら戻す……
トレーニングを開始すると、こわばっていた筋肉がほぐれて「!トレーニング!?いつもとちがうやつ!?」とばかりに弾んでくる。
かわいいやつらめ、うんうん、長旅だしずっと緊張してて疲れたよな、スーツも着てたし――
司が自分の筋肉と対話をし始めて、30分ほど経った時だった。
「Hi!ARE YOU……」
男性の声が斜め後ろかかった。マシントレーニング中に声をかける時は少し離れて、というルールを守った位置から。
『君は大会出場者?』英語だった、司にもわかった。
司にもわかるということは、とてもゆっくり喋ってくれたか、もしくは司のように英語が母語でないのだろう。
マシンから手を離して振り返るとそこには赤毛で緑の目をした、体格の良い白人中年男性が笑顔で手を軽く上げている。
いい人そう!なぜって、とてもいい筋肉をしている。司はいい筋肉をしている人に対してちょっと、ガードが低くなってしまう。
「Hi!A R E Y O U……」
もう一度、聞き取りやすく繰り返された。
そこでまだ司は返事をしていない事を思い出す。思い出せ義務教育!

「Hi…… は はい コーチとして 引率で……」
やっとのことで司が答えると、中年男性は緑の目が四方白目が見えるぐらいぱかっと目を見開いた。表情がわかりやすい、何か驚かれている。
とりあえず伝わったみたい。
――っと、中年じゃないかも。
司は気を引き締める。アジア勢以外の年齢は本当にわかりづらい、もしかすると自分と同じぐらいか年下の可能性だってあるからだ。
「~~~~!」
「えっ、えっと、な、何語!?」
何か彼はババババと喋った、さっきと比べてスピードが段違いに上だし、英語ではないらしい。
おそらく彼の母語で何か独り言を言ったのだろう。たぶんロシア語ではないのだけわかる、何故なら以前レオニード・ソロキンに話しかけられた時と発音が全然違ったからだ。

彼はもどかしくなったのか、スマートフォンを司に向かって見せた。
お、翻訳アプリかな、と思って覗き込むと。

『ボディビル・北京大会』
バチバチの筋肉をギラギラにした水着の男女が並ぶ写真だった。
ぼでぃびる……?
司が言葉を失くしていると、彼は更に声を大きくした。司も地声が大きいほうだが彼は更に大きいらしい。

「選手じゃない?」
「い、いえ~す」
英語学習の一番の敵は、発音を恥ずかしがること――「apple」と発音をしたやつをバカにするやつが一番ダサい。
わかっているけど、照れる!
「You……君 素質あるよ!」
「お、ぉ……」
Ohってこの発音であってる?そしつ、そしつ、さいのう、――才能?
「僕がトレーナーになってあげる!一緒に優勝目指そうよ!」

とどめとばかりに、彼は見事な腕の筋肉をムキムキ!と見せつけて来た。
正直司のリスニング力では聞き取れない単語がいくつかあったが、その筋肉は司に内容を正しく伝える。
筋肉も言語だ、それも司にとっては共通の言語。
何言ってるかわかるぞ!という喜びは一瞬だけ。

――僕がトレーナーになってあげる!一緒に優勝目指そうよ!

「のおっ!!」
「Oh」
強い調子で司が叫んだものだから、向こうは驚いたように肩をすくめた。なんだい、なに?なぜ?広い額に困惑のシワが刻まれた。
「NO!NO!まっ……まいすぽーつイズ!フィギュアスケート!!」

それだけ宣言すると司はマシンから完全に立ち上がる。部屋に戻ろう!
彼は額の皮膚ごとぐっと眉毛を上げて、「……ふぃぎゅあすけーと」と呟いた。恐らくフィギュアスケートには詳しくないらしい。
「Oh……Jun Yodaka?」
いま夜鷹純って言った?
まさかこんな異国の地で、それもジムで、ボディビルダー関係者?の人間から夜鷹純の名前を聞くなんて。やっぱりあの人ってすごい!ワー!
「イエス!!!」
司もややパニックになってしまっている。何がイエスだ。アイアムノットヨダカジュンだよ!

「サンキュー!! バット ソーリー マイスポーツイズフィギュアスケート!ソーリー!」
鴗鳥慎一郎式お辞儀術で二度頭を下げると、司は逃げ出した。


部屋に戻る。ドッと疲労が押し寄せて来た、トレーニングなんかほとんどできなかったからこれは精神的な疲労だ。
ベッドに腰を下ろすとかいてもいない汗を新しいタオルで拭う。
「はー……」
とりあえず部屋にあったバスタオルを折りたたんでヨガマットがわりにし、腹筋と腕立て伏せを始める。ホテルに言えば借りられる可能性もあったが、気力がなかった。
「そうだ、さっきのいのりさんに話そうかな、『先生きのう、すごくマッチョな人にムキムキ褒められたんだよ~』とか……」
リズミカルに筋肉へ反復運動を積んでいると、血液が巡って体温が上がってくる。
身体を動かしていたほうが考えがまとまりやすい。

「いのりさん笑ってくれると思うし、うん……」
姿勢を変えて、プランクに。息を吸い込んで腹筋に意識を集中させる。

『ねえ、君のその筋肉は――』
司は自分の身体についてたずねられた時のための言葉を用意している。
『あはは、たまに元ペアの選手かって間違われます、アイスダンスにこんなに筋肉は必要ないですもんね、このムキムキは趣味です』
もう何回も言ってきた。本当だ。
だが、彼はそうじゃないと首を振る動作すら省いて言葉を続けてきた。
『それは、君の、あきらめる理由?』
鷹の瞳が司を貫く。
今も昔も司の憧れで眩しくて遠くて、でも見失う事すらできない、まばたきすらも惜しい一番星は司にそう聞いた。

「――っ、」
司はプランクを止めた。
「やっぱりいのりさんに、終わったら何食べたい?って話にしようかな、それか、何か見に行きたいところある?とか……」
選手の試合前の集中力を高めるのもコーチの大事な仕事だ。選手一人ひとり違った人間だ。スケートの話題をあえて出さない方がいい事もあれば、スケートのことだけ話す方がいい時も、逆に何も言わない方がいいことも。
俺は、俺の言葉がいのりさんの足をひとつも引っ張ったりしたくない。
そうだ、中部ブロック大会の時だったっけ、俺の言葉がどうか背中を押す力になって欲しいって思ってた。
あれからいのりさんは本当に強くなった、誰もが認める立派な選手だ。だから俺は押すだけじゃなくて引っ張らないようにもしたくて。
いのりさん、俺は貴方の力になりたいんだ。


さてJGPFの結果は言うまでもないだろう。Twitter(自称X)のトレンドも賑やかだ。
司は嬉しすぎてダブルギャルピースのポーズのままリンクの半周を駆け回ってしまった。いぇーい!
もう半周はいのりにせがまれ、ハッピーリフトで。いえーい!!
「コーチが一番リンクカバー広くてどうすんねん!」
まだ走り出したい気持ちをおさえられずソワソワしている司の背中を蛇崩が、バチン!と叩いた。
「あイダッ」
「……もぉ~~~ッ」
バチン!
「いだッ……えっ、蛇崩先生泣いてます?」
「泣いとるわけないやろ~~っ」
蛇崩遊大、彼は「ぼちぼち」を信条としてのめりこんだり叫んだりすることをあまりせず、クールにふるまう事が多い。
だが彼もまたフィギュアスケートに魅せられ、教え子を導こうとするコーチなのだ。
司の喜びが理解できないわけがない。それどころか。
やったやん、やったやん司先生、なあ!そら走りたくなるわな!走ってええよって言いたい!走るな!
なあ!あの、ジャンプの指導方法を教えてくださいって言ってた司先生がやで!?
ヨレッヨレのTシャツで不安そうにしてた司先生が!そういや靴忘れて駅まで取りに走ってたな。
いのりちゃんはスゴい、ホンッッマにすごい!まあうちの子もスゴい。
けど、なあ!あんな「コーチなんてわかりまちぇん」みたいな顔してた司先生が!走ってええよ!アカン!
「くぅ~~!」
「え、どうしたんですか蛇崩先生、」
「は~い!天才のワタクシが解説しちゃいま~す!感極まっていま~っす!」
「……なんで?」
「ハイ、感極まってますぅ……っておおい!解説のしどころがちゃうやろ!なんで感極まってるか説明するんやそ・こ・は!今あのヒヨココーチやった司先生が、世界に通じる立派なコーチやって証明されたことに感極まっとんねん!」
「アハッ!本場のノリツッコミ、嬉し~」
「えっ!俺、立派なコーチ……?」
「バカァ!!言うとくけど関西人のバカはアホより重いんやからな!」
バシン!
もう一発、蛇崩は司の背中を叩く。ええスーツがしっとり汗で湿っている。
「ちゃんと急ぎでクリーニング出しとけや!ホテルのフロントに言えばやってくれるはずやで!」
「ハァイ!ありがとうございます!!」
「ええよッ!!」

そのころ結束いのりは前髪をきっちりと結び直し、カメラに向かってキメ顔を披露した。ピース!(使命感)
ひゃったぁあああ!
光ちゃんは絶対に見てくれている。光ちゃん!光ちゃん!
きっといるかちゃんも見てる。絶対に。
理凰君から短く「おめでとう」とLINEが来ていた、時差があるのにリアルタイムで送ってくれたところ、理凰君らしかった。



今回の女子シングルは終わったものの、まだ全体では残っている競技があるしエキシビションもある。
だから帰国まではまだ数日かかる、瞳とは連日オンラインで打ち合わせをしているし、部屋で仕事もしていた。
主な相談事としては一気に押し寄せたマスコミ対応をどうするか、がメインである。
休みを取って観客としてついてきた洸平も参加せざるをえない。
ここまでの結果になると思っていなかった、というよりは目の前の競技のことで頭がいっぱい過ぎてそっちにまるで考えが至っていなかった。
本気のマスコミ対応なんてルクス東山に経験がなかった。
「鴗鳥先生の『応援ありがとうございます、すべては選手の努力の結果です、次もいい結果を出せるよう努力します』方式、これがやっぱりいいと思うんだけどどう?」
『そうね~~私もそれがいいと思うわ、下手に何か言ってごらんなさいよ、うちのお父さんみたいになるわよ』
「あ、アハハ……」
司と洸平は顔を見合わせて苦笑した。
師匠である高峰匠はとにかく問題発言が多かったからだ。
『そんなんどうでもいいだろ』『もう帰っていいか?』『あ?ここ禁煙?まあいいか』『次に梟木の名前出したやつ髪の毛全部毟る』『実力だっつってんだろアホか』
当時そこまでネットが盛んでなくてよかった。
『コウくんがそっち行ってくれてよかったわ~~司くんがやらかしそうになったら止めるのよ、全力で』
「う、うん」
「信用がなさすぎる……」
『司くんも!コウくんが口喧嘩しそうになったらリフトして逃げて』
「うん!」
「えっ!?……ひーちゃん!?司くん!?」
鴨川洸平、アイスダンス元全日本選手権銀メダリスト。
礼儀正しく、穏やかな物腰、やわらかな人当たり、周りの空気を読む――そんな印象だが彼の本質は結構苛烈なのである。
最近では保護者でも「案外亭主関白になるタイプよね……」などという声も上がった。
『このあいだ口論してたわよね、わりと大声で』
「うっ」
「瞳さん、洸平くんは……」
『わかってるわよ!美玖ちゃんのこと言われてたんでしょ!そいつちゃんと殺した!?』
「ま、まあ」
『ならよし!次は言わせる前に私に報告すること、いいわねっ』
「はい……」
一番血の気が多いのは、昔も今もこのお姫様だ。
『それにしても、こんっなにいい結果になるなんてねえ、あのいのりちゃんが……やだ泣きそう。もうお問合せ来まくり、帰ってきたら忙しいわよ~~』
「そんなに?」
「シングルは勿論だけど、今回アイスダンスも大躍進だったでしょ?名古屋でアイスダンスやるならうちしかない!って」
「えっ、アイスダンス希望?嬉しい~」
『司くん、仕事が増えるわよ~~楽しみにしててね、馬車馬のように働かせてあげる!おほほほ!』
「わ、わ~~い」

お姫様との通信を終えて、洸平とも別れる。
まさか洸平が加護一家と隣になっていたなんて、とんでもない偶然があったと聞いた時にはびっくりした。
二人は今日観光しているらしい、司君もおいでよ!と言われたけど断った。
『水入らずの家族旅行してください!』
そう言ったら左右から尻を叩かれた。右の尻を叩かれたなら、左の尻も叩かれなさい。
『……家族でしょ、司くんは』
羊の睨みは年々鋭くなっていく、羊っておだやかでモフモフな動物じゃなかったっけ?
今はさすがに仕事中なので結局行きはしなかったが。
今回の旅行と観戦で羊に思うところがあったらしいとは耕一の談だ。

心のどこか、司はどこへ行っても自分は異物だと思っていたフシがあった。
同好会でも、アイスダンス選手時代も、コーチになった時も……
それを言い当てられたような気がした、だから「ごめんなさい」と謝罪した。
『羊さんごめんね、日本に帰ったら、お詫びとお祝いに俺がごちそうします』
『……司くんが?』
『うん、約束する。……サイゼリヤでいい?』
『いいよ!サイゼ大好き!』

安くておいしい庶民の味方、サイゼリヤ。
安いからじゃない、サイゼリヤって『ファミリー』のレストランだから。
羊は賢いのでそれをちゃんと理解した。そして、
『フォカッチャ10枚食べる、むん』
『ぜっっったい食べきれないでしょ!プチにしなさい!』
なお、サイゼリヤは『フォッカチオ』が正式名称である。


貧乏暇なしと言うことばがある。
あくせくあくせく働いているのにお金がないという意味だ。
だが司はその言葉に対しては貧乏暇だらけの方が嫌だなと思っていた。
かつてシングルの選手になりたかった司だが、氷に乗る事ができない、ジャンプの練習もできない。
だからアルバイトを入れたいが高校生ができるアルバイトなどたかがしれている。
身を粉にして働きまくって、お金を作って、それで思い切り氷に乗りたかった。

選手を引退してショーキャストを目指していた時もアルバイトを次から次へ入れてもまだ不安だった。
ようやく練習以外の時間をすべて仕事にあてることが可能になったが、オーディションなどそうそうない。
休息を人間は必要とするから休むしかない。
だが司は休みが嫌いだった。
俺は間違っているのか、このままでいいのか、氷のことだけ考えて生きていけるようになるのか。
でも氷から離れられない。離れたくないんだ。
人間は負けを取り返そうとする生き物で、賭けてきたものが多ければ多いほどそこから逃げられなくなるという。
俺が今も氷にしがみついているのは、今まで賭けてきたものに目がくらんでいるだけじゃないのか。
今からなら、まだ二十代だしろくな職歴も学歴もないけれど、健康だ、頑張って働けば安定した暮らしになることだって可能だろう。
でも、でも俺は……
そんな考えがよぎるたびに、司は手元のスマートフォンで夜鷹の動画を再生した。
スマートフォンは学生時代兄からのお下がりから何台も変わった。この動画だけはずっと手元にある。

あの時いのりは叫んだ、スケートは『お守り』だったと。
だから、司にも今ならわかる。俺もね、きっとずっと夜鷹純がお守りだった。


「今もだよ」
蛇崩が言ってくれた通り、自分はコーチとして結果を残せたと言っていいだろう。
実感はないけど実績がある。実績も実感も無かった選手時代と比べたら大きな違いだ。
かつて俺が会いたかったコーチになる、その夢を叶える道は『選んだ』道だ。
これしかない、と移り渡って来た道じゃなくて自分で選んだ道。
なのに何度でも司は夜鷹純のスケートに心が弾み、新鮮に胸がときめく。
迷いそうになると夜鷹純の動画を再生するというルーチン。
司はまだ、夜鷹純に恋をしている。

考えることは山ほどあるが、まずは体を動かしたくなった。そうだ、ジムへ行こう、この間はせっかくのマシンを全然使えなかったもんな!
司はさくさくと練習着とタオルを手にすると併設のジムへ向かった。

ジムの受付に利用を告げると、アジア系の女性スタッフは流暢な日本語でこう言った。
「あら貴方、イノリ・ユイツカのコーチですね!」
「えっ!」
「素晴らしかったわ!おめでとう!」
「……えっ、と、ありがとうございます」
なぜ知っているんだろう、と思ったがよく考えたらこの時期選手がどこのホテルに宿泊しているかについては運営側も把握している。
選手と帯同するコーチについてスタッフが知っているのもおかしくない。
全くの身内外からの賛辞は構える暇もないからか受け入れられやすい。
彼女は受付をしながら、
「っと、そうだった。イノリユイツカのコーチ、貴方に伝言を預かっているの」
「伝言?」
「先日ジムで貴方を、ボディビルダーに勧誘したって人。お詫びをしたいから機会を貰えないかって」
「ああ!」
「どうする?会いたくないって言うなら断ってくれていいって言ってたけど」
「そんな、お詫びなんて」
司は手を振ったが、それは『会ってもいい』と受け取られてしまったようで。
「じゃあ連絡入れるわね、鍛えながら話すなら奥のランニングマシン使うといいわ、休憩室はあっち」
「ありがとう、ございます」


5分もしないうちに赤毛の彼はやってきた。大きな動作で小走りにやってくると抱きしめられる。ふわっとあったかい、シャンプーの清潔な香りがした。
「オメデトウ!」
「わっ!サ、サンキュウ」
彼が発したのは日本語だったのに、つい司は英語で答えてしまった。
タイにも中国にもハグの文化はない。だがオーストリアにはあった、ハグやビズの文化にこれから慣れていく必要がある。
いのりは司に「日本中の氷に乗ろうって言ってくれましたよね、でも、世界中の氷に乗りましょう!」といった。
あの小さな子がこんなに大きくなって。ううっ。

「あっ、これ、コレ、あー、」
スマートフォンのアプリを起動して、何事か話しかけた。
『このあいだはごめんなさい とても失礼でした』
再生されたのは女性の声だった。大柄なムキムキ白人男性の翻訳なのがどこかおかしみがあって、司も笑う。

『性別まで設定できるのか!有償版はすごいな!』

『私のことはマオマオって呼んでほしい、ちょっと発音が難しいんだ、』
「ま、まおまおぉ?」
かわいい猫ちゃんが想像されそうな名前を提示されて、司がつい不思議そうな声を出してしまう。
『ミャオミャオでもいいけど、■■■■■・■■・■■■■って言うんだけど、』
彼の名乗った名前は、猫が連続で欠伸した音、としか言いようのない。たしかに発音しづらい!
日本人の司の耳にはマオミャオ・ンャミャオ・マォマーオみたいにしか聞こえない。
まおまおってガラでは到底ない、けれど赤毛のムキムキ男性をとりあえず司はマオマオ(仮)と呼ぶことにした。
「イエス、ミスターマオマオ」
『マオマオ!』
おそらくはさん付け要らないと言われたのだろうな、と司も察する。
「マオマオ……」
マオマオ(仮)はOKのサインを作った。ボディランゲージって有効なんだなとわかる。
英語学習を目標にしているが、とっさに身振り手振りも出せるようにしていこうと思う。

『とりあえず、やっていく?話はそれから!』
マオマオ(仮)は居並ぶマシンをあごでしゃくってしめした。
「じゃあ……俺はウォーキングにします」
そういうことになった。司は受付を振り向く、さっき伝言してくれた女性スタッフがこちらを見ているので、ぐっと親指を立てて見せた。
彼女も頬を持ち上げてにっこりと笑い、親指を立てて返してくれる。

二人は隣り合ったルームランナーを選んだ。
『よし、セットしてみたから、話しかけてみてもらえるか』
「えっと、こんにちは~」
スマートフォンホルダーにセットされたマオマオ(仮)のiPhoneに向かってやや大きめの声で司が話しかけるとアプリは問題なく翻訳をした。
翻訳されたマオマオ(仮)の母語はやはり英語でもロシア語でもなさそうだ。
『OKだ。逆にそっちはどう?』
「こちらは、問題ありません」
翻訳されることを考えるとつい言葉が固くなる。日本語は主語を省きがちなのを実感した。

『まずは、この間は大変失礼なことをした。申し訳ない、素晴らしい選手の素晴らしいコーチだと言う事を、全く知らなかったんだ』
「いえ、私も慌ててしまい、失礼しました」
言ってみて司は日本語の一人称の多様さに気付く。私、僕、俺……
マオマオ(仮)は音を出さないよう拍手する仕草をした。ウインク。
『あらためておめでとう!』
「ありがとうございます」
『私はフィジカルトレーナーをやっているんだけど、フィギュアスケートについては疎くて』
「あ、夜鷹純……」
『そう!JunYodaka……私が知っている選手はそれくらい、もうずいぶんと、そう15年ぐらい?前の選手だけど』
「彼は今も最強で、彼のスケートは世界で一番かっこいいです!」
つい翻訳を通す気安さから言葉を並べてしまった。
マオマオ(仮)はフィジカルトレーナーらしく、うんと頷いて、
『いい脚をしてたなあ……』
「あはは、四回転ジャンプには脚力が必要なので細身に見えても太腿は太い人が多いです。スピードスケーターほどではありませんが……」
『そう!四回転、TVで見ただけなのに目が離せなかった』
「おれもそうです」
信じられないな、日本語の通じないところに来て、夜鷹純という言葉だけで会話が続いている。
『あと顔』
真顔でマオマオ(仮)が言うから司もつい頷く。
「スケートも顔も超かっこいいです」
脚だけじゃなくてからだも、とはさすがに言わない。
夜鷹純 全裸もすごい バキバキだ アラフォーなのに かっこよすぎる。一句詠めちゃうもんな。
『熱烈なファンなんだね、えーと、テュカサ・アケ・ウラード……?私の名前もそうとうだけど、君の名前もなかなかだ。日本ではよくある名前なのかな』
どうやら結束いのりのコーチ、というところから調べてくれたらしいが発音に笑ってしまう。
「日本でもかなり珍しいです、いまだに間違われることが多いです、ツカサと呼んでください」
『テュカサ』
「はい、マオマオ」
並んで歩きながら、会話は続く。マオマオ(仮)は司の身体を頭の上からつま先までを眺めた。
『この間は上半身のトレーニングだったから気づかなかったけど、君は下半身が華奢だな』
「きゃしゃ……ああ、そうですね。上半身に比べたらあまり筋肉はつけていません」
『ねえボディビルダーの才能って、なんだと思う』
突然たずねられ、司は唸った。才能、いまも司の胸を少し突き刺す単語だ。
「地道に毎日トレーニングできる、とかですか?」
『いい筋だ。これは所説ある、中には遺伝子レベルの話をする人もいるし、私は先生から『美食家でないこと』と言われた』
「グルメ……?」
『ボディビルダーは栄養第一、毎日同じものを食べることが多いから、美食家は向かないってこと』
「ああ……」
それなら、あの人も。
『私が思う才能とは、筋肉と会話できる、なんだ』
「会話」
マオマオは腕を大きく振るフォームに切り替えた。ぴったりとしたトレーニングウェア越しにもわかる筋肉の盛り上がり。
偶然後ろを通った女性の視線がそこに注がれたのに司も気づいた。
『何が足りていて、何が欲しいか、身体の声を正しく聞き取れる』
「……夜鷹純は、自分の身体の歪みを自分で検知して、ケアすることも可能なんですよ」
『自分で!?魔法みたいだな、我々を失業させるつもりか?』
夜鷹純は自分で自分の整体も行える。なんだそりゃ、すごすぎる、かっこいい。
最近知った情報をつい、司は口にした。オタクだから推しの話をさせてもらえるのがうれしくて。
「ねっ!そろそろ彼は40歳になるんですが、煙草も吸うし食事も全然摂らない、けどゴリッゴリに健康で、1日4時間、週5で氷に乗ってます」
『なんだそれは』
「なんだそれはなんだよなあ……」
『彼は今も美しい?』
「はい!」
力強く司がうなずくと、マオマオはきれいに揃った白い歯を見せて笑った。
そういえばボディビルダーの人は笑顔とか歯にも気を遣うんだっけ……などと。

『ボディビルダーは理想と向き合うんだ』
「理想と」
『よく言われるから、聞いたこともあるだろ。ボディビルダーの筋肉は見た目だけで、実用性ゼロ、喧嘩が弱いとか』
「……はい」
『見た目だけ?ふふっ、自分が思う理想の美しさを構築して表現する。その美しさを他人に認めさせる。それがボディビルダー。そのためにはまず自分が理想の姿をはっきりと把握することが必須だ』
「なるほど」
『私は消防士も大好き、実用的な筋肉ももちろん美しいとも!』
「ん?」
『知らない?現役消防士のカレンダー、チャリティで販売されるやつ』
「ああ!」
司は思い出した。海外ニュースかなにかで見た、上半身を脱いだ消防士たちがかわいい犬を抱っこした写真を並べた全年齢向けセクシーカレンダーだったように記憶している。
なぜ覚えているって、たしかそれを見たのは大須のリンクの休憩室で、昼のワイドショーかなんかだった。
それを見た瞳が『経営難になったら司くんに脱いでもらおうかしら』などと言っていた。
『毎年いろんなところのを買ってる!おかげでパートナーからは、そろそろ壁が足りないんじゃないなんて皮肉を言われてしまった』
「はは、俺も、上司にクラブが困ったらカレンダーを作るって言われたことがあります」
『それはいい!是非ほしい!ああ、うちの壁がまた足りなくなる』
「あはははっ」
久しぶりに司は屈託なく笑った気がした、何も普段は笑えていないわけではない。
知り合いではない人と話すことの気安さというものがあるのだ。

『動画で見た限りだけど、君の教え子、小さいのにうまく体が使えているなあと感心したよ』
「ありがとうございます。振り付けは上司がやりましたが、その感情表現や、動作の再現は俺も踊って、彼女と一緒に理想を探したものです」
『……うん、私達やボディビルダーは鏡と向き合う事が多いけれど……そう、君は鏡、そういうこと?』
「そう……かもしれません」
『……君は心に鏡があるんだね』
鷹の目を心の鏡とあらわされたの、いいな、覚えておこう。

『そうだ、こう見えて私は結構フィジカルトレーナーとして地位があるんだよ~』
恐らく日本語であれば、「それなり」とかそういう言い方だったのだろうが、彼もまた翻訳しやすい言葉を選んだのだろう。
『他人を磨く仕事をしていると、つい、輝きを見つけた時に傲慢になってしまう、気を付けているけれど』
傲慢。
『才能のあるなしについて発言するのは責任がある言葉だ。軽々しく使ってはいけない』
「――それは、俺も、そう思います」
だからこそ、自分を信じてくれたいのりには自分の持ちうる全てで応じたい。
『私たちは『見つけた』と思いたがってしまうが、向こうが私に『見つかってくれた』、向こうが私を『選んでくれた』と改めて思う』
「見つかってくれた……」
『そして、彼らは『もう別のものを見つけている』ことだってある』
「……」
マオマオ(仮)は改めて両眉を八の字にして、顎を引いて、じっと司を見る。
『だから、ごめん』
「!……いいえ、いいえ、」

司は少し考えてから、肩の力を意識して抜き、ルームランナーの速度設定を落とし、早口にならないよう気を付けながら言った。
こういう時に翻訳を挟むと言うのはいいな、誤解されないようにと一度脳内で整理してから言葉にするので冷静になる。

「――俺はもともと、フィギュアスケートシングルの選手になりたかったんです。夜鷹純と同じところに行きたくて――でも、日本でスケートを習うと言う事はとても、金銭面や環境面で難しい」
だから、
「俺はコーチが欲しかった。夜鷹純まで導いてほしかった。本当は、夜鷹純に教えて欲しかった。そして、俺の才能のあるなしを誰かに――できれば、夜鷹純に決めてもらいたかった、俺はそういうふつうの子供だったんです。いや、始めるには遅かったんですが――誰かに見つけて欲しかった」

いつか王子様が現れて、私を見つけてくれる。
少女達の夢を司は笑ったことがない。何度も何度も夜鷹純の教え子になる夢を何度も見た。そして目覚めては泣きそうになるあの朝の虚しさを忘れない。

「だから、先日貴方に才能がある、導いてあげる、と言われたとき、俺の望んだ言葉が、望まない方向に与えられたことに動揺したのは――確かです」
『うん』
「でもこの経験を、いのりさん――生徒です、生徒に考えてもらう材料として、活用したい」

ニコは上半身を司の方に傾けて、手を伸ばして司を撫でるようなしぐさをした。触れはしない。見るからに柔らかくあたたかそうな優しい手のひらだった。
ああ、あの人の手はひやりとしていて、骨ばんでいて、優しくない、無遠慮に俺を掴んで、爪さえ立ててくる。でも掻き毟られたい、消えない傷を増やして欲しい。

マオマオ(仮)はすごくいい笑顔で、
「テュカサ、きみはとてもカワイイ、スゴイ、エライ、マッスル」
と、日本語で言った。
「あっは!日本語でマッスルは、ムキムキ!って言います」
『ムキムキ』
「はい、ムキムキ!……あ、ここプロテイン無料なんですよね!貰ってこようかな」
併設のドリンクバーには様々なフレーバーや素材のプロテインパウダーが大きなボトルに並んでいる、宿泊者は利用無料だ。
無料という言葉に司は弱い。スーパーで生もののビニールをつい貰ってしまう。
『NO!テュカサ、危機感がないな、フリーのプロテインの成分は確認した?私なら、大会中ウォーターサーバーの水も飲まない』
「えっ」
『テュカサ、世界的な選手のコーチだろう、ドーピングの疑惑は水でも年月でもクレンジングでも落とせない』
ボディビルダーの歴史とは常に、ドーピングとの戦いでもあった。
「軽率でした。ああ、そういえば夜鷹純も大会では基本的に持参したものしか口にしないんだった」
『だろう?プロフェッショナルだな。そうだ、この後部屋に来ない?仲良くなりたいな、もっと話をしよう!』
「――えっと、サンキュー、バット、ノー。ラウンジなら」
司は顔を赤らめながら、英語もつけ足した。
きみはとしうえのおとこばかりすきだな――苦々しいと言わんばかりのあの声と冷たい視線を思い出したのだ。
『おっと!しかし、いい子だねテュカサ、ちゃんと危機感を持って。――待てよ、もしかしてアッチの心配をされた?よく私がコッチだと――』
後半、何か小声でぶつぶつ言いだしたマオマオに司はきょとんとしていると、受付の女性がやってきた。
「お水のボトルならございますよ」
「あ、ください!」
『テュカサ、連絡先交換しよう!』
「わぁ!いいんですか!?」


吸血鬼みたい。あの白く細い、つめたい指が、司の胸を軽く突いた。緊張していたので指先は沈まない。
きろっと睨まれて力を抜くと、ふょ、と数回つつかれた。
「ふん」
なぜか後ろめたくなってしまう。
ええと、以前一度リフトを失敗して、瞳さんを一度怪我をさせてしまって、そこから筋肉をつけるようになりました。
「――それは、言い訳?」
言い訳?とは……
「だから、重くて跳べないと言い訳をしたいのかな」
!いいえ。――いいえ、はい、少しはあったかもしれません。
シングルの選手から遠ざかる理由を、跳ばない理由にしたのは、少しはあったかもしれない。
昔は。昔です。
でも。俺はこのあったかい身体のこと、今は少しは好きになれたんです。
筋肉は俺に答えてくれた。ずっと一緒に居てくれたから。風邪だってほとんどひきません!
「――そう、言い訳じゃないならいい。触り心地も、悪くないしね」
ふょ。ふょ。かり。かり。
……あの、そこ乳首なんデスケド……。
「?だからだけど」
筋肉の話してませんでしたっけ?だからだけどじゃないだろ。


『テュカサ、また会おう!チュッ!』
「はい!色々ありがとうございました!」
翻訳アプリを使わないでもこれぐらいはわかる。
帰国当日、ホテル前でマオマオ(仮)と大騒ぎで別れると、いのりが小走りにやってきた。
「司先生すごい!お友達ですか!」
「うん!」
「私もタイのクンちゃんから、おめでとうのメッセージ貰っちゃいました!」
「そうなんだ!」
「司先生……彼は……」
「美蜂先生?」
いつも冷静な美蜂が顔を赤らめ、興奮した様子で声を震わせた。司の肩を掴む。痛い。リンゴなら砕けてる。
「かッ……彼!フィジカルトレーナーのマオマオじゃないですか!!……フィジカルトレーナーのレジェンドです、私大ファンなんです、尊敬しています、いま!今すぐ追いかけて、紹介してください!」
「エ!!?」
「早く!!」
「ハイッッ!ま、マオマオーー!!プリーズ!!待って!!!」



その日、司が飛行機の中で爆睡している最中。
Instagramに以下の動画がアップロードされた。
彼、フォロワー数とてつもないフィジカルトレーナーであるマオマオ(愛称)が中国で司と出会い、友達になったことを真面目に語ったものだ。
『ハーイ、マオマオだよ!この間中国で素敵な出会いがあったんだ……
テュカサ!スケートのコーチをやっている。
豊かな大胸筋に華やかな大殿筋、服の上からでもはっきりと美しさが見て取れた!
彼はすごくトークが上手で、勉強家、私達はたちまち仲良くなった。
年齢はもう30歳近いんだって。信じられない、日本人が若く見えるって本当なんだな。
彼は14歳で夜鷹純に心を射貫かれ、彼ともっと仲良くなりたいんだって
応援するよ!僕らは友達。またね。
ところで彼のカレンダーは2部欲しいな(笑)ほんとは10部でもいい(笑)壁が足りないよ バーイ』


しかし。彼が早口なことと、自動翻訳や字幕が残念だったこと、彼がゲイであることを表明していること。
それらによって日本のインターネットの民は面白おかしく性的に切り抜いて改変してしまった。
ショート動画が無断転載の方が伸びてしまう――そういうことがある、あってしまった。
レジェンドオカマッチョに明浦路司が見つかってしまった件。として。

『ハァイ、マオマオよ~ん!この間中国で、とんでもないスケベちゃんを見つけちゃった。
テュカサ!スケベートの伝道師♡
オッパイはプルンプルン、お尻もぷりんぷりん。服の上から舐め回しちゃうワ。
彼ったらすんごい床上手、ほしがりさん、私達は勃起試合したってわけ。
年齢はもう30歳近いんですって、これがジャパンのワビ・サビ・ロリ。
でも彼は14歳で夜鷹純に貫通済みなの!彼でもっとナカがヨくなりたいって
応援しちゃう!ウチらホモ勃ち。いつでも♡
ところで彼のセクシーマッスルカレンダーは10部欲しいな(笑) 壁が足りな~~い♡ バァイ』


一番最初に気付いたのはルクス東山FSCヘッドコーチ、高峰瞳である。
「つ、司くんこれどういうこと!?セクシーマッスルカレンダー!?えっ?は?つ、司ぁ!!!」


16:00 夜鷹純が起床。彼は寝起きのグダグダの中スマートフォンで本件を見つけてしまう。
明浦路司は不運である、本家のマオマオ(仮)の動画ではなく、転載動画が見つかってしまった。
「……セクシーマッスルカレンダー?」
寝起きだったからかもしれない、夜鷹も動揺した。
「壁ぐらいうちにもあるよ」
それよりも床上手だってどういうことだ
もっとナカがヨくなりたいってなに
14歳で?何の話、僕が未成年に手を出したことになっている?
夜鷹はまず、慎一郎に電話をした。
「慎一郎くん、セクシーマッスルカレンダーって知ってる?」
鴗鳥慎一郎は律儀に挨拶をして、質問に質問で返した。
『おはよう純くん、……セクシーマッスルカレンダーってなに?』

コメント

  • *遼*
    6月21日
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