「社会そのものがデザインでできている」――クリエイター・佐藤可士和の整理し続ける人生
そんな折、佐藤を指名して、まさに丸ごと任される仕事が飛び込んだ。 「キリンレモンの商品開発をやってほしいと。『どこからやっていいんですか』と聞いたら、『名前とか、パッケージとか、味とか』。『名前を変えたら、キリンレモンじゃなくなりますよね』と言うと、『炭酸が全然売れていないから、変えても売れればいい』。それで、『チビレモン』というのを考えて、名前、パッケージ、味のディレクション、広告キャンペーン、店頭に並ぶところまで一緒にやりました。やっぱり手応えがあったんです。広告だけやっていると、靴の上から足を掻いている感じで、かゆいところに手が届かないもどかしさがあった。ようやく靴を脱いで直接触れた感覚があって、で、会社を辞めようと思いました」
セブン-イレブンをもっとよくするには?
独立後は仕事の幅が広がり、企業経営の領域に踏み込むことが増えていく。代表的な仕事の一つが、セブン-イレブンの店頭に並ぶ「セブンプレミアム」。セブン&アイグループのプライベートブランドだ。 「16年前、鈴木敏文会長(当時)に『セブン-イレブンをもっとよくしてほしい』と言われて。当時はメディアで『コンビニ飽和論』が出てきていました。これ以上コンビニをつくっても、もう伸びないと」 とはいえ、セブン-イレブンはコンビニ業界のトップを走る。佐藤が「すでにいいと思いますが」と言うと、予想外の答えが返ってきた。 「鈴木会長が『今、来店しているのは、主に20代、30代の男性。人口の半分は女性だし、高齢社会にもなる。そういう社会のニーズに対して適切な商品を作れていません。きちっとやれば、最低でも倍にはなるでしょう』と。素晴らしい経営者だなと。飽和していると言われている時に、こういうスケール感でビジョンを描いているなんて。『だから君のやることは山のようにあるんじゃないの』と言われ、『おっしゃるとおりですね』と」
そこで考えたのが、プライベートブランドのリブランディングだ。 「改革するレイヤーには、店舗、商品、コミュニケーションがあります。セブン-イレブンの場合、一番インパクトがあるのは商品自体をメディアにすることだと思いました。お菓子や雑貨など、機能が異なるものをどうしたら一つのブランドとして見せられるか」 ロゴ、フォントなど、デザインのルールを定め、4000を超えるアイテムのデザインを監修。バラバラだった商品群を整理することで、棚の見え方、そしてブランドの見え方を変えた。 「最初の5、6年、過去最高益を更新し続けました。例えばセブンカフェも日本で一番売れているコーヒーで、80億杯以上売れている。プライベートブランドが、安いから買うものではなくなったと思います。新しい意味は作れたのかなと。今は競合他社に加えて、ドラッグストアやスーパーも参入してプレーヤーが複雑化しているので、その次を考えなければならないフェーズですね」