解体だけで約30億円、清掃まで含めれば50億円も
資材費や人件費の上昇を受け、建設費は大きく膨らんでいる。片山氏は、コロナ禍の頃と比べても1.5倍以上、イオンモール熊本の開業時と比べれば、倍以上かかる可能性が高いと話す。
「いま同じ規模の建物を造れば、当時よりはるかに高くなります。今回は新しく建てるのではなく、壊れた建物を調べながら直さなければなりません。費用はさらに膨らむと思います」(片山氏、以下「」も)
更地に新築する場合は、設計図に沿って工事を進められる。損傷した建物では、まず被害の範囲を見極めなければならない。
爆発の影響で鉄骨が曲がっていれば、外から見える部分だけを直すわけにはいかない。どの柱を残せるのか、建物全体の強度に問題はないか。検査を重ね、修理する範囲を決める必要がある。
工事中に新たな損傷が見つかる可能性もあり、見積もりには追加工事を見込んだ予備費が織り込まれることもある。新築と違って工事の全体像を描きにくい点が、費用を押し上げる。
そんな修理の前に待っているのが、がれきの撤去である。崩れた内装材や設備を集め、敷地の外へ運び出せば終わりではない。
コンクリート、鉄骨、ガラス、断熱材などを分別し、法律に沿って処分する必要がある。大型施設ほど量が増え、作業に使う重機や人員も多くなる。
「撤去業者はどこでも呼べるわけではありません。処分先も、近隣で許可を得ている施設に限られます。災害で壊れた建物が一斉に増えれば、業者も処分場も足りなくなり、価格が上がっていきます」
平時であれば、複数の業者から見積もりを取り、条件を比較できる。大規模災害の後は、道路が寸断されていることもあり、選択肢は狭まる。営業再開を急ぐ施設には、安くなるまで待つ余裕もない。
作業量に応じた相場が見えにくい点も、費用を押し上げる。住宅なら坪数から再建価格をある程度見積もれるが、爆発で飛散したがれきの範囲や処分量は、現場を詳しく調べなければわからない。
イオンモール熊本の延床面積は約3万6300坪。鉄骨造の解体費用を1坪当たり5万〜8万円として計算すると、建物の解体だけで約18億〜29億円となる。上限に近い条件なら、約30億円に達する計算だ。
さらに、館内に残った商品や什器、設備、内装材などの分別・搬出・処分に加え、粉じんや汚れの除去といった清掃作業も必要になる。被害の広がり方によっては、片付けにかかる費用全体が50億円程度まで膨らむ可能性がある。
ただし、これは延床面積と一般的な解体単価をもとにした概算である。建物のすべてを解体するのか、一部を残して修復するのかによって、実際の費用は大きく変わる。