成田空港の滑走路新設・延伸計画で大きな方針転換となる。
空港を運営する成田国際空港会社(NAA)や、国と千葉県、空港周辺9市町でつくる4者協議会は、必要な用地を強制的に取得できる土地収用制度の手続きをNAAが進めることで合意した。
滑走路の新設・延伸は、航空路線網の中心となる東アジアの「ハブ空港」としての国際競争力を強化し、訪日客の受け入れ拡大にも欠かせない。成田空港は首都直下地震の際には、国内外からの物資受け入れ拠点としても期待されている。着実に整備を進めることは重要だ。
NAAは並行して任意での用地取得の努力は続けるという。交渉を継続するのは当然だが、公益性を考えれば収用を進めることもやむを得まい。
昭和53年に開港した成田空港は、未買収地を強制収用した県の行政代執行を発端に、過激派による暴力を伴う反対運動が激化し、死者が出たほか個人を狙ったテロも起きた。そうした経緯を踏まえ、交渉による用地取得が進められてきた。
方針を転換するのは用地の取得が一部で難航し、計画に遅れが生じているからだ。NAAは住民説明会を400回以上開催するなど丁寧な交渉で用地取得を進めてきたが、必要な用地の4・8%に当たる約53ヘクタールで契約のめどが立っていない。
滑走路の新設・延伸計画は平成30年3月に4者協議会で合意した。A・B2本の滑走路に平行する3500メートルのC滑走路を新設するとともに、B滑走路を1千メートル延伸し大型機の運航を可能にするとしていた。
このうちC滑走路の供用開始は、用地買収の遅れで当初計画の令和11年3月から延期する見通しとなっている。かつてのような暴力を伴う反対運動は認められていないとはいえ、楽観は禁物だ。収用を進める場合は警戒を怠ってはならない。
成田の滑走路新設・延伸が実現すれば年間発着数の上限は現在の34万回から50万回に増え、羽田空港と合わせ年約100万回となる。政府は両空港を「首都圏空港」と位置づけ、一体的な運用を進めていく方針だ。
このため、両空港を短時間で結ぶ鉄道網の整備も計画されている。成田の機能強化を最大限に生かすためにも利便性の向上を図ってもらいたい。