日米両政府が関税交渉で合意してから1年がたった。トランプ関税が日本経済に与えた影響は。

 まず円安が関税の悪影響を和らげる。というのは、円安になると、米国でのドル建て販売価格を低く抑えやすくなり、関税による値上がり分の一部を相殺できる。

 日本の自動車メーカーは、関税分だけ丸々輸出価格を引き下げ、輸出数量は維持するという行動を取った。輸出側が関税を吸収してしまったので、関税を課しても米国での販売価格は不変となり、台数ベースでは輸出は減らなかった。

 そこで円安である。1年前から比べて1割程度円安になったので、15%ドル建て価格を引き下げても、日本円の手取りは数%の減少にとどまったと思われる。

 一方、円安は輸入価格を高めるという。内閣府のマクロ経済モデルによると、10%の円安が起きた場合、物価の押し上げ効果は0・2%程度とされている。

 物価への数量的影響とメカニズムは、円安が進むと、ガソリンなどの燃料や輸入原材料の価格が即座に上昇し、原材料コストの上昇が食料品などの最終価格に広く価格転嫁されるというプロセスになるが、日本経済は内需が大きいので、物価への悪影響は他国に比べて少ない。

 今回の円安で、最終的にGDPが増え、税収も増えたので、マイナスを補うプラスがあった。これは、本コラムで、何度も繰り返しているが、古今東西知られている「近隣窮乏化」がやはり成立した。

 結論としては、トランプ関税は日本経済には大きな問題でなく、日本経済が得たものも失ったものもあまりなかったというのが筆者の感想だ。あれほど大騒ぎしたが、今はそういう意見も少ない。

 米政府は、通常であれば、円安は近隣窮乏化なので自国経済に悪影響であるが、トランプ関税をしていたので、ある程度容認のスタンスであったと思う。米国としても、関税を課すと、米国人に対する課税であり輸入物価を押し上げるのは間違いない。となると、輸入価格上昇の批判を受けたくないので、米国の輸入価格を下げる円安、つまりドル高を容認したのであろう。

 関税という人為的なことをやっても、市場にはそれを是正する動きを示すことがあり、今回の円安はその表れとも考えられないだろうか。

(たかはし・よういち=嘉悦大教授)

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