さまざまなるハッピーおたおめストーリー
webオンリー「あなたは私の金メダル」のために書きました、開催心から感謝いたします
9/4 あけうらぴ誕生日おめでとうございます。うらぴ愛されオールキャラ+よだつか
原作軸謎ハッピー未来!!幸せになってくれたのむ
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さまざまな、明浦路司の誕生日の話がある。
case0.加護羊の話
まだ司がアイスダンスの現役選手だったころ、羊は時計を指さしてこう言った。
「0:00と24:00ってなんか変なの」
加護家のリビングの時計はアナログ時計と言われるものだ。
対してテレビの画面にはデジタル表示がされている。
「うーん」
何気ない羊の言葉に司はきちんと考えて、
「俺は、その日の始まりなら0:00で、その日の終わりなら24:00って言うかな」
後で調べておくね、行ってきます!
その後、きっと司は調べて羊に説明をしてくれたはずだった。
9月3日 23:55 ベッドの中でスマートフォンを握りながら羊は息をひそめる。
羊はあえて、ドアを開けてまだ起きているだろう彼の部屋に突撃をしなかった。
「九月三日が終わる……」
そして九月四日、彼の誕生日がやってくる。
case1.結束いのりの話
気付けば0:04なのでいのりはベッドの上で跳ねた。
「ほわァ!アッアッ!」
悲鳴を押し殺しながらさっきまで握っていたスマホを手繰り寄せ、LINEを開く。
『明浦路司先生 誕生日おめでとうございます!!!!』
そこには事前に何度も推敲してあとは送るだけになっていた文章が送信欄に残っている。
シュポ!!と音を立てて送信した。
普段22:30にはとっくに寝ているいのりだが、今日はなんとしてでも0:00ちょうどにLINEを送りたかった。
23:30頃からストレッチをしたり、本を読んでみたりしと時間を潰してみてもこういう時ばかり時間は全然進まない。
なんでぜんぜん時間たたないのかな~~貸切の時間はすぐ終わっちゃうのに……
と言っていたら00:04なのだ。泣きたくなってしまう。自分ときたらこんな事ばっかりだ。
絶対に一番に送りたかった。絶対じぶんが一番がよかった。
もしかしたらもう他の人が送ってしまったかもしれない!いやだ!
送ってすぐ、既読がつく。返信の通知だ!
『いのりさんありがとう 今年もいのりさんが一番乗りだね』
「わ~~!!」
中学生になっていのりは司とLINEを交換したが、いのりが深夜に送信すると司は必ず注意をする。
年末と、お正月と、クリスマス。
そしてこの誕生日だけが、司に日付変更を越えてLINEを送っても許される日なのだ。
「先生、お誕生日おめでとうございます」
先生にとって、毎年成長を楽しみにしてもらえる存在でありたい。ずっと。
case2.鴗鳥理凰&鴗鳥慎一郎の話
23:50に理凰は父を呼んだ。
「父さん!」
「本当に今でいいのかい、まだ23:50だ」
「いいのっ」
年相応、いや少し幼いぐらいにムキになって慎一郎のパジャマの背を叩く息子。
ちょっと前までは熱も痛みもないというような顔をしていたのを思い出すと笑顔も漏れようというもの。
「はやく!」
「わかったよ」
慎一郎はスマホを手にするとLINEを開く。
『明浦路先生、夜分に失礼いたします。息子理凰よりお誕生日のお祝いメッセージを転送させてもらいます。
明浦路先生 誕生日おめでとうございます 先生と出会ってから
(中略)
俺はまだエビにも光にも敵いませんが、いつか必ず俺が一番になります、先生に期待される存在になります
追伸 エビには内緒にしてください』
理凰が昼間のうちから練りに練った文章である。
名目上別クラブの生徒とLINEを交換するわけにもいかないため慎一郎が代理で送信をしているのだ。
『慎一郎先生、理凰さん ありがとうございます 楽しみにしています』
遅いどころか前のめり――理凰と慎一郎の姿勢のようで、どこかほほえましかった。
一応理凰にも、一番最初のおめでとうLINEはいのりに譲ってやろうという気持ちがないわけでもなかった。
だから、まあ前日の最後を掠め取る作戦に出たというわけ。
case-10.狼嵜光の話
6月4日、アイスダンスの生徒の引率で東京に行った時の事である。
生徒はこちらの親族の家に一泊することになったので司は先に帰ることになっていた。
『光から、明浦路先生が東京にいるのならスターフォックスのリンクまで来て欲しいそうです』
「え?」
『なんでも渡すものがあるとか……もしお時間のご都合があるようでしたら』
まさか泥じゃないだろうな……と一瞬腰が引けたのは秘密だ。
「こんにちは。そこに立ってください」
「え?」
「いいから」
司は言われるがままリンクサイドの手すりを掴んで立った。
光はふた蹴りでリンクの中央へたどり着く。彼女は練習着のウエストにポータブルスピーカーを括りつけている。
「――見て」
誰もいないリンクに曲がかかる、司の知らない曲だった。
曲に合わせ、光が長く助走を取って――久しく単独では見たことのない2Aを降りる。
狼嵜光はノービスB時代にはもう3Aを跳べている。
だが、見劣りをするどころか見どころしかない美しさに司はまっとうに見惚れた。
3分弱、光は見たことのない振り付けを踊り終え、司に向かって微笑む。
「退屈でしたね?」
「――そんな!まさか!色んな選手の誰とも違う、かといって狼嵜選手の今までのプロとも違う――誠実で素敵な振り付けだった、」
くっと光は顔をしかめた。狼が欠伸をこらえた時のような――どこか親しみのある。
「用件は以上です、もう帰っていいですよ」
「えェ!?」
光は一枚の紙を尻ポケットから取り出した。受け取って広げて見ればそれはノートの切れ端で、光の字で曲名と構成が書かれている。
「お誕生日おめでとうございました」
「まだ3カ月も先だけど!?」
「10カ月遅れのつもりでした」
狼嵜光が生まれて初めて作った振り付けだということ。
そして全て2回転までで構成されたその振り付けは、明浦路司が生まれて初めて貰う自分のためのプログラムであること。
お互いに知らない。
case3.白鳥珠那の話。
0:00ちょうど。実は当日一番乗りは白鳥珠那であった。
『もしもーし!ツーくんお誕生日おめでとう~、よっアラサー!どう?電話嬉しい?一番乗り?歌おうか?』
『ジュナくんありがとうございますまた来年』
『あれェ!?年末!?』
case4.ルクス東山
「司せんせー!おはようございまーす!」
「はあいおはようございます!」
「せんせー!いのりちゃんからもうおめでとう聞いた?」
「うん!今年も一番乗りだよ!」
「瞳せんせー!洸平せんせー!いのりちゃんもう司せんせーにおめでとう言ったってー!!」
「それ言っていいんだっけ?」
「あと5分そこで足止めしてえ!!まだ飾り付けできてない!」
「ひーちゃん声デカいって!!!」
雪は司に、ペーパータオルを差し出した。
司ときたらもう半分泣いている。
瞳と洸平が二人で買ったプレゼントを見る前から。
なんなら生徒達がいのりからのお祝いメッセージを受け取ったかどうかを気にしてくるあたりで、
もうむずむずしている。
ルクス東山の生徒達はみな、いのりがどれだけ司に一番におめでとうを言いたいか知っていて、
こんな風に気にしてくれている。
「はーいみんな、今日は司先生のお誕生日でーす!!」
「ふあ゛あ゛あ゛」
最近任されるようになった年少さんクラスの合唱で、司、シャビシャビになるぐらい泣いた。
case5.恩師
「匠先生、瞳先生なら今保護者さんとのMTGで外してますよ」
「おう」
高峰匠は時々冷やかしみたいにルクスのホームにも顔を出す。
瞳からきつく言われているので、顔の傷跡にはガーゼをあてて隠している。
「やれてんのか」
「え?」
「そこそこやれてんならいい」
「……はい!」
「やる」
投げて寄越された缶コーヒーを、司は受け取って礼を言った。
case6.皆さん
「それでは司先生の誕生日を祝って、かんぱーい!!」
カンパーイ!
「ハァーッ、皆が集まる強化練習の日に生まれてくるなんて司先生は幸運ですね~~ッ」
「輪太郎がもう絡んでる、」
「蛇崩先生はさすがに来られなかったから来月飲みましょうだって」
「すべてがない」
「すべてって何?」
「いるかのリハビリも順調だし、たまには飲んでいいって嫁さんが」
「あんみつください」
2時間飲み放題に、生ビールやプレミアム焼酎、日本酒なんかもついた普段よりも少しいいコース。
黄色やオレンジや赤の強い色の目立つ、成人男性が持て余さない程度の花束。
自分で買うのはちょっと勇気のいるプロテイン。
女性陣一押しだというふかふかのタオル。
ずいぶん昔の夜鷹純インタビュー記事が掲載されたFSC向け広報誌。
オリンピック銀メダリストによる人体(ちょっと)切断マジック。
『本日の主役』『あんたはエラい』とデカデカ書かれた二本のタスキ、
星のついたとんがり帽をかぶり、
両手にプレゼント入りの袋をさげ、花束を潰さないように抱え、
どこから誰が見てもわかる、『主役』だ。
「今日は本当にありがとうございました、みなさんおやすみなさい」
22:30に解散し、司は歩き出す。
居候させてもらっている加護家へ向けてではない。
かつて「生きてるだけで素晴らしいという言葉が嫌いだった」と言った男の元へ、司は向かう。
case???:
「こんばんは」
「うん」
夜鷹はソファに腰を下ろすと言うより深く体を沈み込ませて、映画を見ていた。
映画を見ているというよりは曲を聞き、脳内の氷の上で誰かを躍らせている。
ソファ横のコーヒーテーブルに置かれた灰皿にはろくろく吸われないまま長い灰を作っていた。
「何その格好って聞いてくれませんか?」
「……なにその格好」
夜鷹は素直に司の言葉を復唱してくれた。
何故僕がそんなことを言わなきゃいけないの、と言おうとしたが、あんまり司が幸せそうに笑っているので気が変わった。
『本日の主役』『あんたはエラい』とデカデカ書かれた二本のタスキ、
星のついたとんがり帽をかぶり、
両手にプレゼント入りの袋をさげ、花束を潰さないように抱え、
どこから誰が見てもわかる、『主役』だ。
「実は俺、今日誕生日なんです」
間があった。
「……そう」
夜鷹はなるべく、険しくない言葉を選んだ。選べるようになっていた。
以前なら「だから何」と言っていたかもしれない。
少しだけうまくやれた。
だが夜鷹はまだ、誰より自分をうまく愛せない人間でもあったので、
「なのに来たの?」
などと言ってしまう。
そんな夜鷹の内心などまるであっけらかんと照らして司が笑った。
「だから会いに来たんじゃないですか!」
少しばかり入ったアルコールに助けを借りているのも少しばかりあるだろうが、なにより誕生日が強力に背中を押していた。
「……僕におめでとうを言われに来たの」
「はい!」
夜鷹は軽く頷いた。
「シャワーを浴びてきなよ」
「アレ!?おめでとうは!?」
今言ってくれる流れでしたよね!?司が目を白黒させると、
「23:59に言う」
「……!」
一番とびきりのプレゼントを、どうやら今日と言う日の一番最後にベッドで司は受け取ることになるらしい。
後半だと加点がつくのはフィギュアスケートの話だが、惚れた弱みというのもある。
さまざまな、明浦路司の誕生日の話があった。