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たぴとは。/ちゃんの小説

たぴとは。

5,330文字10分

とっっっっってもアホな話です。すみません。
たぴがヒトの器官(?)として存在している世界(?)で☀️と🦅の初対面の話。

※よつのたぴたちがちょっといかがわしいことをしている描写があります、すみません。
※捏造だらけ、たぴに変な能力がある、すみません。
※すみません。

TLで見るみなさんのたぴとうちに来たたぴは純粋に愛でています、ほんとうです、かわいいです。最近たぴ萌えが激しい。

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たぴとは。
 たぴとは、胎児と母体を繋ぐへその緒に連なったヒトの器官のうちのひとつである。出産時にへその緒とともに切り離され、その後は赤子のそばで保管される。へその緒がないヒトはいない、つまりたぴは一人につき必ず一匹いる。そう、一匹と数える。なぜヒトは器官のひとつであるたぴを一匹と扱うのか。それは彼らが愛らしい見た目と沈み込むようにやわらかい肌を持ち、自分とそっくりの顔は感情豊かに動く、そしてなにより持ち主から完全に独立した存在だからである。器官というより自分の相棒、ほとんどの者はそういう扱いだ。単なる器官がどういう理屈でそうなっているのかを医師から聞いたことがあるが、むずかしい話だったのであまり覚えていない。ただ、約二百年まえの医学文献に突然現れた彼らは歴史的には新しい存在なので不確かな事も多く、毎年のように論文が発表され情報が更新されているらしい。採餌を有利にするためキリンの首が長いように、砂漠で生きるラクダに脂肪のコブがあるように、水が干上がる乾季にハイギョが呼吸できるように、いくとせを経て環境適応のためヒトに備えつけられた機能と言われているが、いまだにたぴたちの役割は解明されていない。ちなみに、たぴは愛称である。もっともっとむずかしく長い名称があるが、英訳したどこかの四文字から取られている。
 なぜか司にはうまれつきたぴがいなかった。両親はあたまを悩ませたが、たぴは特にいなくてもヒトの身体には支障がないことはわかっている。海外でも前例があったらしく医師はそういうものだと司の両親を納得させた。ただヒトとともに在るだけ。その愛らしさから癒しの存在ではあるが、某スタンドのように後ろに控え有事の際に戦ってくれたりはしない。なので母子手帳にも〝無tapi〟の記載以外は他の子どもとあまり変わらず、どちらかと言えば優良健康児として司は育った。学校でたぴがいないことをからかわれたりしたが、運動ができる司は友人がたくさんいていじめなどはなかった。いつの時代もかけっこが速い男子は人気者なのだ。でも司はいつも友人の肩に乗っているそれを見てずっと思っていた。たぴってなんだろう。
 たぴとは精神的繋がりを感じるらしい。今更いなくなることなど考えられない、とまわりは言う。話すわけでも助けるわけでもなく、ただそこに在る。司が年齢を理由にクラブを断られたあのときも、金がなくてリンクに通えなかったあのときも、同好会でジャンプができなくなったあのときも、たぴがいたらよりどころになったのかなと、築四十年木造アパートの一階、六畳に寝転びながら、すきま風にさらされた頭で考えたこともある。これは、スケートから離れていたときのことだ。……たぴってなんだろ。
 それから数年後、いのりのコーチとして奮起し始めたある日、司の人生にとって重要な存在に会ってしまった。夜鷹純、司がスケートの道をあゆみ始めるきっかけを作った張本人。彼には思いがけない言葉をかけられ司は複雑なこころもちだったが、いのりへ投げたものは聞き流せなかった。喉がからからになりながら反論した。許せなかった。司のなかの夜鷹純という人物へのあこがれが、雪崩のようにガラガラと壊れていく音が聞こえた。そして宣戦布告をし終え最後に彼の顔を見つめたとき、あるものが目に入った。夜鷹純の右肩にはもちろんみなと同じく彼のたぴがいる。しかし左肩に、黄色いたぴが一匹。
 そのたぴを見た瞬間、司はわかった。
 ──あれは俺のたぴだ……!
 たぴとは精神的に繋がりを感じるという。司には、いま初めてそれがわかった。
 生まれた瞬間にどこかへ行った薄情者め!いままでどこでなにをしていた!
 言いたいことはたくさんあったが唾と一緒に飲み込み、司のたぴを左肩に乗せている彼に訊いた。
 「……あの、いまの流れで言いにくいんですが、あなたの左肩に乗っているのって」
 「……?ああ、この黄色?三十……、いや二十五、六年前かな、急に僕のところにきた」
 慣れたように司のたぴをつまみ上げた。となりのいのりが「司先生に似てる……かわいい!」と嬉しそうな声を出し、彼女のたぴもふんふんと頷いている。
 「たぶん、それ俺のたぴです」
 「なんできみのたぴが僕のところに?」
 「なんででしょう……?」
 離しても離してもついてくるから厄介だった、そう言いながら夜鷹は司のたぴを放り投げた。ヒトは意外とたぴの扱いが雑なのだ。
 司のたぴが本来の持ち主の手へ渡るその瞬間、黒いものが目の前を猛スピード横切り、気付けば司のたぴが消えていた。一瞬、海鳥が獲物と間違い奪っていったのかと思ったが、黒い犯人は夜鷹のたぴだった。彼は司のたぴの耳あたりを器用にくわえ夜鷹の肩へ戻った。
 「……でもいつもこうなる」
 はあ、と夜鷹はため息をついた。聞けば、何度か司のたぴを離そうとしたがそのたびに彼のたぴが取り戻してくるらしい。
 どうしよう、いままではたぴがいなくても平気だったけど、存在を知ったからにはやつがそばにいないと落ち着かない。これが、自分のたぴ……!?
 司が初めての感情に戸惑っていると、いのりが司のパーカーの裾をそっと引っ張った。
 「!いのりさん、ごめんね。お母さんのところに戻ろう」
 「司先生のたぴが見つかって良かったですね!きっと司先生のところに戻りたがっていると思います!」
 いのりはこころから喜んでくれているようだ。彼女と出会ったころ、司にたぴがいないことを知り驚いていたのを思い出した。
 「……そうだね!」
 そうだ、無理矢理にでも引き剥がして連れて帰らないと。ヒトには必ず一匹のたぴがいるんだから。失礼します、と断りを入れてから夜鷹の肩へ手を伸ばすが、夜鷹のたぴは司のたぴとともに消えてしまった。
 「消えた!?」
 「無駄だよ、何回も試した」
 ほんとうの持ち主がいるのにそれでも帰りたがらないなんてね、と夜鷹は言い捨てた。司は、え、たぴって姿を消せるの?と動揺した。いのりは「インビジブルがすごく上手!」と関心している。たぴが消えるのは常識なのか……。司はいままで必要がなかったので、たぴに関する知識が薄かった。新しい用語を知った。
 これからどうしようと悩んでいると、夜鷹が「僕の主治医の元へ行こう」と言う。腹痛は内科、歯痛は歯科、頭痛は脳神経外科、というように、たぴにはたぴの専門病院と専門家がいる。そこに行くべきだと夜鷹は提案した。餅は餅屋だ、いい案だと思った。
 いのりを両親へ送り届けたあと、タクシーで夜鷹とたぴ専門病院へと向かった。やっぱりたぴ科って呼ぶんですか?と司が夜鷹に聞けば、何言ってんだコイツ、という顔をされ、司は納得がいかなかった。タクシーのなかでは、夜鷹のひざでふたりのたぴ同士がずっと引っ付いているのが見えて、居心地が悪かった。
 「この黄色い子の持ち主が見つかったんだね、良かった」
 夜鷹のたぴの主治医は朗らかな高齢の男性で、司はほっとした。たぴ科は司がふだん行く内科とあまり変わらなかった。患者がたぴということを除けば、見慣れた光景である。主治医の机のうえにももちろん彼のたぴがおり、持ち主とそっくりな顔でほほえんでいた。
 「それで、持ち主に返そうとしても帰りたがらない、ということかな?」
 相変わらず夜鷹と司のたぴはくっついていて、……こういう言い方をしたくはないが、イチャイチャしている。病院でよく見る、ちいさな丸椅子の真ん中で二匹は顔を寄せ見つめあっていた。司のたぴは顔が赤い。その顔やめてくれ!思わず司は自分の顔を覆った。
 「はい。だからどうにかしてください」
 面倒くさそうに言った夜鷹の言葉に主治医はむずかしい顔をした。
 「それが簡単に出来たらいいんだけどね」
 そう言って机の上に置いてある用紙を渡された。A4サイズ紙の上部に〝たぴで運命のヒトがわかる!〟とおおきく書かれている。ポップな字体がすこし癇に障った。こちとら緊急事態だぞ。
 「これは最近わかったことなんだけど、たぴ同士の気が合ってしまえば、それはもう引き離すことはほぼ不可能なんだ」
 夜鷹さんがつぎの診察に来たときに伝えようと思っていたのになかなか来ないから~、と主治医は呑気に笑った。
 「それでやっと来たと思ったら他たぴの持ち主まで連れてきちゃって驚いたよ!」
 他たぴ。司は新たな用語をまた覚えた。
 「そしてね、ここからが大切なこと。たぴ同士の相性が良ければ、持ち主たちの相性も抜群なんだって。これは精神的にも肉体的にも」
 「えっ」持ち主の相性?
 「通常、たぴたちは馴れ合わない。だからここまで仲がいいのはほんとうに珍しい。確率的には一億三千分の一。日本にいたら相当ラッキー!ってこと。私も実際に見られて幸運だよ~」
 司は手元の資料に目を通し始めた。およそ二百年前、世界は政治改革や宗教戦争で混沌を極めており大勢の死者が出た。有名なフランス革命期もこの頃だ。次々と死者が出るなかでヒトは絶滅の危機を感じ、子孫を残すため、受精・着床がしやすい相性のいい番を手っ取り早く探せるように進化を遂げた、環境適応をする動物のように。それがたぴという、いわゆる相性計測器だった。しかしヒトはまだ進化途中で、たぴたちは多少馬が合うくらいじゃあ反応しない。いまはまだ、馴れ合い、ふれあい、イチャイチャしたい、子孫を残したいと思える好相性100%の相手──パーフェクトマッチングというらしい──にのみ反応すると。そしてその相手と出会える確率は奇跡に近い。つまり、運命のヒト。これは、たぴ同士が反応した者を対象にした実験と考察から導き出された結論らしい。国の研究が始まった約百年前から数えて、パーフェクトマッチングの症例数も約百件。世界で見て、一年に一組のペースだ。そのなかには持ち主が同性同士のいうケースもあったという。子孫を残すための進化じゃないのか?と、司は喉まで込み上げてきたが、なんとなく恥ずかしいのでくちに出すのは止めた。
 司はたぴたちを見た。やつら、今度はキスをし始めている。夜鷹の顔はとても見ることができない。お願いだから止めてくれ……。
 「明浦路さんのたぴは、明浦路さんが生まれた瞬間たまたま近くにいた夜鷹さんに反応してしまったのかな?たぴたちにとったら持ち主よりマッチングの方が大事なのでそのまま離れられなかったんだろうね」
 聞けばそのとき夜鷹はおなじ名古屋市内にいたという。俺が生まれた瞬間こいつは夜鷹さんの元まで飛んで行ったのか……。
 「まあ、子孫云々はあなたたちには関係ないけれど、こころと身体の相性はいいみたいだから安心して。たぴが離れないから同居も考えてみてよ!」
 主治医はからからと笑った。
 司はあたまを抱えた。簡単に言うけど、そんなの無理に決まってるだろ……!
 ちらりととなりにいる夜鷹を見上げる。診察中はずっと彼の方を向けなかったが、いまはどんな顔をしているのだろう。
 「……ハァ、一部屋貸してあげる」心底面倒くさいです、という表情で言った。
 「え!?離れないならそのままそっちで預かってもらっても大丈夫です!いままで俺にはたぴが必要なかったですし」
 夜鷹は怪訝な顔をした。そして司のたぴを指でさす。やつら、今度はおくるみをモゾモゾしはじめたぞ。おいやめろ!
 「……きみは、あれがそばにいなくてもいいの?」
 「それは……」
 ──ずっと思っていた。どうして俺にだけたぴがいないのだろう。
 両親も兄弟も友人も街ゆく人々、みなそれぞれのたぴがいる。それなのに司だけがいない。両親が気にすると思いくちには出さなかったが、正直に言うとずっとさみしかった。自分だけいつもひとりだと強く感じていた。俺にたぴがいたら、それは何色だろう。どんな顔をして、どんなふうに笑うんだろう。ほくろもあるのかな。俺の、俺だけのたぴ──。
 ひと目見ただけでわかった、自分のたぴだと。あの存在が自分の相棒、片割れ、分身、そう認識してしまったいまは、離れることは考えられなかった……。
 ……いやしかし!
 「だからって同居はちょっと……!」
 「そう。きみがいいならいい」
 あっさりと夜鷹は引き下がったが、
 「ほんとうにたぴから離れられるならね」と、最後につけ加えた。
 ……たぴってなんだよ!?
 夜鷹純にそこまで言わせるたぴってほんとうになに?司はたぴとは離れられないこの衝動を理解できずまま、「いったん考えさせてください……」と伝えた。
 「さっきも言ったけど、身体の相性もパーフェクトマッチングしてるから安心してね!」
 主治医が明るく言う。ちょっと黙っててくれないかな!?司は唸る。
 やつらの方を見ると、すでにお互いのおくるみを脱がし合い音を立ててキスをしていた。
 おいやめろ!俺たちのまえでおっぱじめるな!
 
 しかしたぴたちがあまりにも良さそうなので、もしかして自分たちも──?と持ち主ふたりが意識し始めるのも時間の問題である。
 

コメント

  • 鳴海

    最初から成立しているよつたぴ。つよい。パーフェクトマッチング、運命が約束されたつがい。つよい。(2回目)本体にも見習っていただきたいです。

    6月21日
  • *遼*
    6月10日
  • ナツキ
    3月26日
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