陸上自衛隊の情報部隊が大学教授ら民間人に接触し、本人の同意なく「愛国心」や「性的嗜好(しこう)」など私的な情報を収集していたと、熊本日日新聞が報じた。
小泉進次郎防衛相は「不適切な活動は確認されていない」と述べたが、報道が事実なら、国民監視につながりかねない違法性が疑われる活動だ。第三者委員会などによる独立した調査を求める。
この部隊は朝霞駐屯地(東京都・埼玉県)にある陸自中央情報隊所属の現地情報隊。2007年に新設され、自衛隊の海外派遣に必要な現地情報の収集を担う。
報道によると、同隊は対象国の事情に詳しい研究者やNPO法人の職員に接触し、相手の思想信条や異性関係、負債状況、信仰、犯罪歴といった機微情報などをリスト化。メールのやりとりや面談の際の報告書も作成していた。
隊員が接触する際、身分を明かさない場合もあり、数千人分の報告書をまとめていたという。
個人情報保護法は行政機関が不正な手段で個人情報を集めることを禁じており、身分を隠した活動は同法違反の可能性がある。憲法13条に由来するプライバシー権や同19条で保障された「思想・良心の自由」をも脅かしかねない。
機微情報を含む報告書が行政文書として適切に扱われていたか否かについても説明が必要だ。
自衛隊の情報活動を巡っては、イラク派遣反対運動に参加した市民らが情報保全隊に監視されたと訴えた訴訟で、仙台高裁は16年、プライバシー権の侵害を理由に情報活動の違法性を認めている。こうした教訓が生かされていなかったとしたら、問題の根は深い。
防衛省は報道内容に関し、調査の必要性を否定しているが、自衛隊に対する市民の不信が募る可能性もあり軽視すべきではない。
4月の自民党大会で現役自衛官が国歌斉唱をリードし、自衛隊の政治的中立性が問題視された経緯もあり、独立した機関が調査すべきは当然ではないのか。
今月31日には国家情報会議の初会合が開かれ、政府はスパイ防止法などの策定を急ぐ。安全保障に情報収集は必要だが、民主国家の情報活動には透明性を確保し、暴走を防ぐ仕組みが不可欠だ。
治安、情報機関や軍事組織が独善に走ることは歴史が証明する。国民は組織の監視と民主的統制を巡る議論を絶やしてはならない。
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