災害時、音は命を救えるか――「聞くドローン」の最新研究
2026.7/31 TBSラジオ『Session』OA
Screenless Media Lab. は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、2026年7月28日に発生した「令和8年熊本地震」を受けて、災害時における音の役割について考えます。
◾️報道ヘリは救助の妨げか
当ラボではこれまでも、災害と音に関わる研究やニュースを紹介してきました。
まず今回の震災でも、メディアがヘリを飛ばしていることで救助に差し障りがあるとSNSで指摘する声がありましたが、これは単純な話ではありません。
2021年のNHKの記事で解説されていますが、それによれば、(少なくとも現在の)報道ヘリは上空で無線のやりとりを行っており、救助のヘリに無線で場所を伝えたり、ヘリからの映像をみている放送局の人が、救助要請している場所を調べて関係機関に通報したりしているとのことです。
また、救助ヘリは1000~1500フィート(300~450メートル)を飛びますが、報道ヘリはそれより高い2500フィート(750メートル)を飛ぶことで棲み分けをしたり、なるべく地上に響く音を少なくしているとのこと。とにかく、ヘリ単体だけでなく、様々な機関と「連携すること」。これがなにより重要でしょう。
◾️視覚障がい者、聴覚障がい者に向けたサービス
「Uni-Voice(ユニボイス)」という音声コードがあります。これは印刷物に付けられた専用のコードを読み取ることで、書かれた情報を音声で読み上げてくれる仕組みで、特定非営利活動法人「日本視覚障がい情報普及支援協会(JAVIS)」が中心となって開発したものです。
そして、この仕組みをより多くの人が使いやすくするために、「Uni-Voice事業企画」という企業がスマホアプリ「Uni-Voice Blind」を開発し、Uni-Voiceの機能をアプリに搭載しています。
このアプリは、GPSで現在地や指定した場所の災害リスク情報や気象情報、避難所案内などを自動音声で読み上げることも可能です。したがって、視覚障がい者だけでなく、高齢者や日本語が不慣れな方など、様々な人を対象に、スクリーンレスで防災情報を得られるサービスとなっています。
こうした機能は「耳で聴くハザードマップ」とも呼ばれ、災害時はGPSから周囲の災害情報が読み上げられるだけでなく、自治体と提携している地域のユーザーは、最寄りの避難所などへの音声誘導も可能にしています。
以前にも紹介した「耳で聴くハザードマップ」は、以降も利用範囲が拡大され、2026年7月時点で公式サイトによると、北海道から熊本県まで20都道府県が掲載されています。熊本県でも熊本市を含む45市町村全域が対象で、現在地の気象・避難情報、洪水や土砂災害などのリスク、周辺の避難場所を音声で確認できます。
またプリンターなどで有名な電子機器企業の「ブラザー工業」が、聴覚障がい者向けの音声認識アプリを開発しています。これは、聴覚障がい者個々人の発話データをAIが学習し、即座に文字化するというものです(7秒の発言が1秒で文字に変換されます)。
発話支援アプリは「ACCELEVOICE(アクセルボイス)」と命名され、2026年3月からトライアルの受付が始まりました。一般向けの商品化ではないものの、開発は着実に進んでいます。
◾️要救助者を「音で探す」
災害と音をめぐっては、情報を届けるだけでなく、音で人を探す研究も進んでいます。東京科学大学、熊本大学、産業技術総合研究所の研究チームは、複数のドローンと地上ロボットが連携して要救助者の声を探す「群アクティブ聴覚システム」を2024年に発表しています。また2025年の国際会議でも実環境における性能検証を報告しています。
研究では、ドローンには16個のマイクを並べた「マイクロホンアレイ」が搭載されています。2機のドローンが同じ音を聞き、音が届く方向を組み合わせることで、声の位置を推定する仕組みです。
実験では、2機のドローンを20メートル間隔で高度8メートルに飛ばし、声を出す人との距離を変えながら、どの程度の声を検出できるか調べました。比較的近い条件では75dBA(デシベル・エー:デシベルを人間の耳の聞こえ方に合わせた音量)程度、約40メートル離れた条件では90dBA程度の声から検出できました。一度におよそ20メートル×40メートルの範囲を探索できるとしています。その後は地上ロボットが現場に向かいカメラで状況を捉える方法です。
便利なドローンですが、音響的な弱点として、やはりドローンの飛行音そのものが周囲の音をかき消してしまうという点です。先程の実験でも、75dBAですでに蝉の鳴き声など、人が明確に「うるさい」と感じるレベルです。つまり、大声を出してはじめて認識できるというものです。したがって、衰弱して大きな声が出せない人や意識を失っている人を発見することはできません。
こうした弱点はありつつも、ドローンの発展によって今後はより音量を抑えたものや、1度着陸してスピーカーで声を出してもらうようにするなど、対策は可能だと思われます。実際、ドローンを着陸させた場合は10メートルで55dBAという、人の普通の会話レベルから聞こえます。
災害は残念ながら今後も続きます。当ラボは今後も、音を利用した災害対応の技術開発に注目したいと思います。


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