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恋のキューピッドは暴走中/柿ノ木の小説

恋のキューピッドは暴走中

7,721文字15分

同年代として逆行した司と光は共に、いずれ現れるであろういのりと夜鷹のコーチになる為に金メダリストを目指す。その裏で光は、前世では叶わなかった司と夜鷹の恋を成就させるべく奮闘していく。

※司と光が同年代として前回の記憶を持って逆行しています
※夜鷹といのりも同年代として逆行していますが、此方は前回の記憶がありません
※司は加護家に、光は狼嵜家に生まれています
※捏造過多の設定ですのでご留意下さい

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狼嵜光にとって夜鷹純は“特別”だった。大事なコーチで、目指すべき人で、この世界で一番美しいスケートの象徴でもあった。他人にドキドキしたのは彼が初めてであったし、鴗鳥やライリーの様に子供に対して慈しみを持って接する様な人でもなかったけれど、でも確かに其処には彼なりの優しさもあったのだ。一度は光の元から去り、まぁ其処から本当に紆余曲折があって再びコーチとして戻って来てくれたのだけれど。そんな大切な人だったから、光は彼には誰よりも何よりも幸せになって欲しかった。でも、只の生徒である自分が彼の幸せを決めつけるのは無礼であるとも弁えていたから、だから“その事”についても終ぞ口を噤んだのだ。
でも、何故か夜鷹よりも先に旅立ったあの男の葬儀で、一瞬だけ夜鷹のその顔を見た瞬間に光は彼等の関係に口出しをしなかった事を激しく後悔した。この世の何よりも愛おしく大切なものに触れるかのような手で、その男の頬を一瞬だけ撫でて夜鷹は葬儀に最後まで残る事なく去っていった。その時に見つめていた後ろ姿が、光が最後に見た夜鷹の姿でもあったのだ。

という記憶をふと思い出した。


狼嵜光、10歳。朝目覚めた瞬間に突然前世の記憶を思い出しました。
どうかしてるって?それは光だって同感だ。でも思い出してしまったのだからどうしようもないだろう。これが只の夢だと思えればどれ程楽だっただろうか、それでも光には何故かその記憶が確かにあった事だという確信があった。生まれ変わり、というよりは逆行に近い現象だと思うが、それにしても前回とは異なる点も多々ある。先ず第一に光は狼嵜家に引き取られるまでは孤児であった筈だが、今回は初めから狼嵜家の娘として生まれている。以前は目が回るほどのお稽古に明け暮れたものだが、今回は祖母がまだまだ壮健な事もあり光の味方となってそれを防いでくれてもいる。光は摩訶不思議な現実に目を回し、それこそ熱まで出した。しかし寝ても起きても変わらぬ現実に早々に自分を納得させもした。これくらいメンタルが図太くなければメダリストなどやってられないのである。
それに、生まれ変わろうとも光のやりたい事は変わらない。今回は10歳からというやや遅いスタートになってしまったが、家族に頼み込んで光は意気揚々とずっと待ち侘びていたスケートリンクへと降り立った。当然以前とは異なる体のバランスを掴むのには苦労したが、一度感覚を掴んで仕舞えば後はもう此方のものだった。メキメキと才能を伸ばして、直ぐに幾つもの大会で優勝して、でも光が一番会いたかった人達には出会えなかった。もしかすると、生まれる時代が違うのか、まだこの世界にいないのか。そう思うと心が凍りついたように冷たくなったけれど、でも氷の上から降りる事なんて出来なくて光は変わらず女子ノービスの絶対女王であり続けた。そんな時だった、

「知ってる?男子ノービスにめちゃくちゃスケート上手い子が入ってきたんだって」
「知ってる!もう4回転サルコウ飛べるんでしょ、凄いよね」
「今あっちのリンクで練習してるって!」

咄嗟にあの人だ、と思った。光がずっと目指していた、世界で一番綺麗なスケートをするあのメダリスト。噂話をしていた彼女達の横を駆け抜けて、光は自分の荷物も置いたままリンクに駆け込んだ。やっと、やっと、やっと会える!!まだ人もまばらなリンクに目を走らせる。そうして、光は見つけた。

「えっ?狼嵜さん?」
「…………明浦路司そっちかよッ!!!!!」


コメント

  • かくとん(千鶴子)
    6月19日
  • El
    4月15日
  • 美濃上総@育児奮闘なう
    4月13日
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