結果は唯一の一流ペアだった
芸能パロで某格付けのあれの話。なお始まっていない。
俳優な夜鷹とアイドルな司です。そして夜鷹は司推し。
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バラエティはNG、というわけではないけれど、本人の気質と周囲への影響力と他者とのコミュニケーション不足等の諸々の事情により基本的には出ない、ということになっている。本人がNGを出しているわけではないが、周囲が勝手にNGなのだろう、と思い込んでいる。それに関しては特に問題はないし、面白くもないのに笑わなければならない番組に出なくてもいい、ということで夜鷹としては楽ではあった。
ただ、一つだけ毎年打診が来るバラエティがあった。二択あるいは三択の問題を出し、出演者の教養を試す、というようなことをしているのだったか。番組としては知っている……というよりは毎年企画の説明をされるため否が応でも覚えてしまった。
なにをすればいいのか、どういった内容なのか。そんな話はされているが、それに頷いたことはなかった。そもそも夜鷹は食べ物が好きではない。なにかを食べる、という行為も好んでいない。にも関わらずそれも問題には出てくるのだ。食べたくないものを食べさせられるのは不快であるし、それを断れば番組にならない。となれば断るのが当然であり、正しい選択だったのだ。
それでもめげずに毎年打診をしてくる番組側のスタッフは肝が据わっているのか諦めが悪いのか。どちらにしろ今年も否を突きつける。そのつもりだったのだが。
「それ、相手指定してもいいの」
「え⁉ あ、ペアの相手ってことですか⁉」
「そう」
例年ならばやらない、の一言で断るそれだったのだが、違う言葉を返したからか交渉しに来たスタッフが変な声を上げた。間の抜けた声というべきなのか。別にどうでも良いが。
夜鷹に出演を依頼してくる番組は基本的にペア、アイドルやアーティストであればグループで出演している。夜鷹の場合はペアを組むのが嫌であれば一人での出演も、と言われているが、どちらにしろ今まではするつもりはなかった。今年は違うだけで。
基本的に夜鷹は共演NGというのは出していない。相手から出されている場合はあるかもしれないが、そんなことは知らないので。それを気にするつもりはないし、共演NGな相手がいたのであればそれを調整するのはマネージャーや会社側の仕事であって夜鷹の仕事ではない。
「ちなみにどなたをご指名かお聞きしても……?」
「明浦路司くん」
「あけ……ああ‼ アイドルの司くん‼」
相変わらず彼の苗字はいまいち覚えてもらえないらしい、と思うが、夜鷹も最初は明浦路、という名前は頭に入ってこなかった。というよりも名前を覚える方がはやかったのだ。アイドルをしている彼は苗字で呼ばれるよりも名前で呼ばれることの方が多いから。
アイドルの明浦路司、といえばトップアイドルと言える。それもソロの活動でそれだけ名前が売れているのだ。元々はグループで売り出していたのだが、ほかのメンバーとの能力の差なのか、それともそれ以外になにか問題があったのか、グループ間で仲違いし結果として司だけがソロで活動するようになった。
とはいえそのグループ自体、司以外のメンバーは歌もダンスもコミュニケーション能力もそこそこで突出した物がなかった。その結果まあ、最近はあまり見ることがない。グループの人気も司が押し上げていたのだろう。本人はそんなことはない、と否定するけれども。
夜鷹は基本的に共演者を覚えることはないし、興味がある人間にしか興味がない。そもそも夜鷹は俳優だ。アイドルとは分野が違うし、番組で共演したとしてもさほど記憶に残る相手はいなかった。女性アイドルは妙に声をかけてきたりはしたが。それは出会いを求めてであるためばっさりと切り捨てることが多かったが。そもそも近付いてこられても困るし。
アイドルという職業を見下しているわけではないが、共演したとしてもぐっとくることはなかった。だが、司だけは違った。
そもそも夜鷹が司を知ったのは彼のライブをニュースで特集していたところからだった。時間としては五分にも満たないその時間で夜鷹は司の歌とダンスに引き込まれた。自身が出演しているドラマや映画の主題歌ですらも耳に残ることがないのが大半であるのに、司のそれは、少しの時間でも残ったのだ。
そこから親友であり夜鷹が所属している事務所の社長でもある慎一郎に司の情報を集めてもらって、ライブの過去映像なんかも見た。その結果まあ、これが所謂ファンと呼ばれるものなのだろうな、と言うぐらいには興味を持った。一緒に見た慎一郎も司に興味を持ったようだが。残念ながら事務所ではアイドルの売り出しはしていないため引き抜くことはできないようだが。
夜鷹の記憶に残った歌とダンスの理由は、司の持つ表現力にあった。曲に合わせて表情もダンスも変わり、その曲の世界観にぐっと引き込まれる。ドラマや映画を見ているわけではないのに、それぐらいの満足感があったのだ。彼に演技をさせてみたら面白いだろうな、とも思った。
アイドルが演技をすることに関して夜鷹は否定も肯定もしない。俳優一本でやっている人間の中にはアイドルに片手間に自分たちの分野を荒らされては困る、なんてことを言う者もいるのだが、そうやって荒らされるのはその俳優の実力が足りていないだけだろうに、と思う。そもそも起用するのは監督だったり原作者だったりとそちらが決めているのだから。受けるのは当然演者側ではあるが。
否定も肯定もしない夜鷹だったが、司にはやらせてみても面白いかもしれない、と思った。そこから共演まで持っていったのは慎一郎とマネージャーの手腕だったが。その時も随分と面白かった。共演者を食わんばかりの勢いの演技だったのだから。彼の演技力は、表現力はすさまじかった。そこから少しずつ交流が増えていって、今ではお互いのスケジュールがあれば食事に行くぐらいにはなっている。
とはいえ夜鷹も司もそれぞれがそれぞれ忙しいため、その頻度はあまり高くはないのだが。現場でふとした時に見かけるため、その時には声をかけることもある。司も夜鷹を見かければ笑顔を浮かべて駆け寄ってくるし。駆け寄れなかったとしても手を振ってくれる。これがファンサービスというやつか、と真顔で思うことも多い。司はファンサービスのつもりはないようだが。そもそも夜鷹が司のファンだ、ということを理解していない。何度も言っているというのに。
「夜鷹さん、司くんと何度か共演されてましたもんね」
「よく知ってるね」
「いやー……実は自分も司くんのファンでして。チケットの倍率の高さにいつも泣いてます」
へぇ、と思う。ファンなのに明浦路という苗字を覚えていなかったのか、と思うが、あれは覚えていないのではなく普段の呼び名が先に来ただけなのかもしれない。ライブのチケットに関しては夜鷹も自分名義で取っている。運が良いのかなにが理由なのかはわからないが、今のところは行きたいと思った日程には必ず行くことができている。
どうしてもスケジュールの都合上参加できないライブもあるのだ。できる限り慎一郎にどうにかしてもらうようにはしているが。撮影もいつも予定通りにいくわけではないのだ。共演者の問題があったり面倒事が起こったりもするので。
「それで。どうなの」
「司くんのスケジュール次第ですが……了承が取れたらお二人での出演は問題ないです。むしろ二人並んで座る姿を見たいです」
「そう」
嬉しそうにするスタッフに随分と私情が入っている、と思うが、夜鷹としては司と共演できるのであればそれでいい。というよりも共演できないのであれば出演するつもりもない。そして確か収録予定の日は司のスケジュールは空いていたはずだ。
どうして知っているのか、と問われれば司本人から聞くことが多いからだが。お互いのスケジュールを把握していないと食事にも行けないので。どうしても他者に言えない内容というのは存在しているため、どんなことをするのか、なにに出演するのか、というのは言わないことが多いが。別にいいのだ。その日が空いているのか空いていないのかが知りたいだけなので。
「司くんのオッケーが出れば夜鷹さんには出演していただけるということでいいですか……?」
「うん。食べたり飲んだりはしないけど」
「そこは司くんに任せましょう。いっぱい食べる彼が好きなんですよね」
司がこの場にいたら自分の意見と意思は⁉ というツッコミが入りそうだが、そこはまあ。いいだろう。そもそも夜鷹は食事をするつもりも飲み物を飲むつもりもないので。ワインの飲み比べだとかそういったこともアルらしいが、それをするつもりはない。司がやればいいので。
色んなものをたくさん食べる司がいい、という気持ちはわかる。正直言えば夜鷹もそれがあるからこそ司を食事に連れて行っているのだ。夜鷹自身は食べないのに。
彼が目の前で美味しそうに食べ物を食べているとそれだけで満たされる。お腹がいっぱいになるような気がするのだ。実際にそうであるわけではないのだが。まあ、たくさん食べさせるのは楽しいからそれでいい、と思っている。
司も極端にスタイルを崩したりすることはできないが、それでも食事をすることは好きなようで誘いを断られることは基本的にない。あとは食べて消費します‼ というのが本人の談だ。夜鷹が聞いた範囲ではあるが、司の運動量は相当なものだと思う。
夜鷹自身もそれなりに鍛えているしトレーニングもしているが、司もそうだ。それがなければ長時間歌って踊る、ということはできないのだろう。本人もダンスをするのが好きだ、と言っていたし。歌はそこまでらしい。上手いのになにを言っているんだか。
そういえばグループで活動していた時は司は歌の割り振りは少なかったが激しいダンスやキレのあるダンスが多かったな、と思い出した。あれは本人の意思が反映されていたのか。司のファンからは歌割りに悪意がある、と言われていたらしいが。まあ、確かにほかのメンバーは突出して上手いわけではなかったから、司の歌を削る必要はなかった気がする。本人が言い出したのであれば仕方がなかったのかもしれないが。
「では一旦司くんの事務所の方に打診を――」
「待って」
「はい?」
司が出演できるか否かで夜鷹の出演も決まるのだからさっさと打診をしてスケジュールを押さえて話を次に持っていきたいのだろう。だが、一々移動するのは面倒くさいし手間だ。夜鷹がいくわけではないが。
直接話をすることができるのであれば、さっさとしてしまえばいい。時間は有限であるし面倒なことはさっさと片付けるのがいい。夜鷹のこの番組への出演の可否は好きにすればいい、と慎一郎にもマネージャーにも言われているから夜鷹の側は自由なのだ。一応先には言っておいたが。司が出るのであれば出る、と言うことは。慎一郎とマネージャーには。
自身の端末を取り出し、数少ない連絡先……というよりも登録している連絡先は慎一郎と司のものだけなのだが、そのうちの司の方にコールをする。確か今の時間は事務所でレッスン中のはずだ。本人が言っていた。そして事務所であればすぐに社長である耕一とも話ができる。そうすれば速いのだ。全てにおいて。
夜鷹は以前端末を高頻度で壊していたのだが、司の写真だとかそもそもの連絡先だとかを入れるようになってから壊すことはなくなった。まあ、たまに画面が割れたりするが。そこはご愛嬌ということで。壊さなくなっただけましだと思っている。それを思っているのは夜鷹だけかもしれないけれど。知らないが。
連絡するにあたって唯一レッスンに集中しすぎて司が気が付かない、という可能性もあるが、その場合は慎一郎から耕一に話を通してもらえばいいだろう、と思う。楽であるし。耕一はきっと断らないだろうから。あまりの無茶振りでなければ。
『はーい。お久しぶりです夜鷹さん』
「うん」
『なにかご用ですか?』
司は軽く息切れをしている。ということはダンスレッスン中だったのかもしれない。あるいは新曲の振り入れだとか。そのあたりのスケジュール全てをしっかり把握しているわけではない。当然だ。夜鷹と司は所属事務所が違うのだから。同じであったとしても全てを共有するわけではないし知ることができるわけではないけれども。
そもそも夜鷹が覚えているスケジュールは司のものだけだと言われればそうなのだが。ほかの人間のスケジュールには興味もないので。
「再来月、確か空いてるよね?」
『ん? えー……っと、はい。空いてます。食事……ですか?』
「そっちは別の空いてる日に。その日は僕とバラエティの共演。いいね?」
『はい‼ ……はい? え、夜鷹さんがバラエティ⁉』
「詳細は慎一郎くんからいくと思うから。よろしくね」
『や、あの今の了承のはいでは――』
言葉を重ねて断られそうになったためとりあえず切っておく。スケジュールが空いていたら大体は了承が出るだろうし、こちらで先に話を進めて置けばいいのだ。外堀は先に埋めるに限る。一応打診はしたのだから。
食事をする日についてはまた別の日に誘うことにして、バラエティの方は話を進めていても問題はないだろう。慎一郎から耕一に話が行けば上手くまとまるだろうし。まとめてくれるだろう彼らならば。そこは夜鷹の仕事ではないので。
「いいって」
「目の前で凄い会話が繰り広げられてた気がしますけど気にしないことにしますね。とりあえずお二人出演で話を進めておきますね‼」
「うん」
話が早いのは楽でいい。恐らくスタッフは夜鷹の出演の了承をとにかく取ってこい、とでも言われているのだろう。毎年断っているから彼も諦め気味だった気はするが。
そこに降ってわいたチャンス、となればそれを掴まないわけがない、ということか。そのあたりの考えについてはどうでもいいのだが。夜鷹としては司と共演するのならば出てもいいか、と思っただけであるし。
食べ物や飲み物に関してはやらないが、芸術関係で外す気はないので。食べ物や飲み物に関しては司に頼むつもりであるため、食事に連れ回して良い物に舌を慣れさせてもいいかもしれない。司だって稼いでいるしお金がないわけではないのだが、本人がお金を使うのが下手というか。そういった部分があるため夜鷹が連れ回してはお金を使っているのだ。司のではなく夜鷹のではあるが。
「一応企画についてはご存じかと思いますが、詳細はすぐに送りますのでよろしくお願いします」
これからやることがあるのでそれでは、と席を立ったスタッフに夜鷹の了承が取れたら取れたでやることは多いのだろう。もしも司の了承が取れずに夜鷹と司両名の出演がダメになった場合についても考えなければならないのだろうし。
スタッフというのは色々と大変なのだろうな、と思う。自分には関係がないこと、とは流石に言えない。何を作るにしてもスタッフがいなければできないことは多いし。雑に扱う趣味はない。丁寧に扱う趣味もないけれど。
「出演、することにしたんだね」
「司くんが了承すればね」
「それは頑張らないと」
スタッフが出て行ったのを見たのか、それともそろそろ時間だろうと判断したのか慎一郎が入れ替わりでやってきた。出演するつもりではあるが、司次第であることは確かだ。それをわかっているからこそ慎一郎からその言葉が出たのだろう。
頑張るも何も彼ならば結果的に了承を得てきそうだが。なんだかんだ彼も押しが強いところがあるのだ。夜鷹をバラエティに出演させたい、とずっと思っていたわけではないだろうが、夜鷹と司が共演することを楽しんでくれている部分がある。
夜鷹が楽しそうだから、というのもあるのかもしれない。それは否定をしないが。司の姿を見ていると楽しいのだ。不快になることがないからこそ。