今回の地震で震度7の揺れを観測した熊本県氷川町では、これまでに125棟の家屋が全壊するなどあわせて800棟以上で被害が確認されました。氷川町は、さらに被害が増えるおそれがあるとしています。
今回の地震で震度7の揺れを観測した人口1万あまりの氷川町は、町内全域で断水となっているほか、停電も広範囲で続くなど、ライフラインへの大きな影響が出ています。
こうした中、町が住宅などの家屋の被害について調べたところ、
30日午前11時の時点で
▽125棟が全壊したほか
▽138棟が半壊し、
▽一部損壊が616棟と、
あわせて879棟の家屋で被害が確認されたということです。
氷川町は、さらに被害が増えるおそれがあるとして確認を進めています。
2人の息子守った男性「近所の人と協力し耐えていきたい」
28日の地震で震度7の揺れを観測した熊本県氷川町では倒壊を免れた住宅で、家具が壊れるといった被害が相次ぎ、住民が片づけに追われています。
このうち、氷川町宮原に住む松本安正さん(46)は、28日、地震が発生したとき、自宅で仕事をしていました。
大きな揺れを感じたため、とっさの判断で一緒にいた2人の息子に覆いかぶさり、倒れてくる棚などから守り、子どもたちにけがはなかったということです。
震度7の揺れを観測した地震から2日がたった30日も自宅には食器やガラスの破片が床に散乱していて、厳しい暑さの中、松本さんは家族とともに玄関周りの片づけに追われていました。
松本さんによりますと、電気は29日のうちに復旧しましたが、断水はいまも続いているため、入浴などができないということです。
松本さんは「揺れが起きた際は立っていられないほどで、自分がどうなっているかも分からない状況でした。近くに寄って来た子どもに『大丈夫』と繰り返し伝えました。水さえ復旧すれば、ある程度の生活はできると思うので、そこまでは近所の人と協力しながら耐えていきたい」と話していました。
氷川町役場前 食料や飲み物の配付
氷川町では町役場の前で食料や飲み物の配付が行われています。
地震で大きな被害が出ている氷川町では30日、水やお湯を入れて食べる保存食のアルファ化米やペットボトルに入った水、子ども用のおむつなどが配られ、避難生活を送る人たちが受け取りに来ていました。
また、町内全域で断水が続いていることを受けて、町役場の前では、自衛隊による飲料水の給水も行われ、訪れた人が専用の大きな袋に水を入れていました。
50代の男性は「物資の配付はありがたいです。水や電気などライフラインが壊滅していて、ガソリンも尽きそうです。なんとか復旧してほしいです」と話していました。
また、50代の女性は「熊本県内の弟の家に避難し、日中のみ片づけのために自宅に戻っていますが、水も食料も足りないし1人暮らしの方々のことを思うと心配です」と話していました。
氷川町周辺のガソリンの出荷状況は
経済産業省によりますと、30日午前11時の時点では、今回の地震の被災地の熊本県八代市、宇城市、氷川町にあるガソリンスタンドのうち、22軒は営業しているものの、停電の影響などから16軒は営業を停止しているということです。
また、八代市にある2つの油槽所は地震で周辺の道路に被害が出たことからガソリンの出荷を停止していましたが、30日夕方から徐々に出荷を再開しているということです。
経済産業省の担当者は「被災地のガソリンスタンドでは、行列も出来ていると聞いているが、油槽所から問題なく出荷できるようになれば、通常時の需要の4倍程度のガソリンを出荷できるので、相当程度、供給は安定してくると思う」と話しています。
断水の高齢者施設では窮状をSNSで訴える
氷川町にある高齢者施設では、断水の影響で飲料水が少なくなり、施設の運営を続けられるか、不安を募らせています。
氷川町にある特別養護老人ホームは88人のお年寄りを受け入れていて、28日の地震では入所者3人が軽いけがをし、施設の床や壁にひびが入る被害がありました。
29日は停電が続いてエアコンも使えなかったことなどから、お年寄り24人が熱を出すなど体調不良の訴えが相次いだということです。
断水も続いていて、飲料水は備蓄でしのいでいるものの施設のタンクには5トンほどしか残っていません。
水を使わずに提供できる非常食も残りは数日分で、このままの状況が続けば、数日後には施設の運営ができなくなるおそれがあるということです。
30日は町の要請を受けた水道事業者が施設を訪れ、1トンの水をタンクに補充しましたが、今後の見通しは立っていません。
こうした中、施設は30日、施設長みずから水が足りなくなっている実情を訴える動画を職員と撮影し、SNSに投稿しました。
特別養護老人ホーム「早尾園」の松尾俊司施設長は「少しでも応援が来てほしいとの思いで思い切って動画の投稿を考えた。ライフラインが元に戻らないと、適切なサービスも提供できず、職員も疲弊してきているのでいち早くライフラインを復旧してほしい」と話していました。
農業用のパイプラインも地震で故障 地元農業団体が臨時給水
氷川町では農業用地に水を引くパイプラインが故障したため、ポンプを使って水路からの給水を始めています。
氷川町では町内を流れる氷川から農業用地に水を引くパイプラインを設置していますが、28日の地震で故障し、供給がストップしているということです。
地域では特産のイチゴが苗を育てる時期を迎えていることなどから、地元の農業団体が29日から臨時の給水を行っています。
氷川近くの水路では、農業団体の職員がポンプを使ってトラックの荷台にのせた500リットルのタンクに水をくみ上げていました。
給水を受けたイチゴ農家の男性は「この時期は水がないと苗がすぐに枯れてしまう。給水が始まってありがたいが、早くパイプラインが復旧してほしい」と話していました。
氷川土地改良区の谷口拓郎さんは「ナシ農家やイチゴ農家が20軒ほど水をくみに来ている。今後もポンプに使う燃料を確保できるか不安もあるが、農家のために頑張っていきたい」と話していました。
給水は当面、午前7時から午後7時に氷川大堰管理事務所で行われるということです。
町の役場では県に職員の派遣要請 職員の疲労が日に日に増し
氷川町の役場では物資配付などの対応にあたる職員の疲労も日に日に増しています。
町役場にはおよそ130人の職員がいますが、発災直後から対応に追われていて、30日も避難物資の配付や電話への対応などにあたっていました。
こうした状況に、職員のなかには熱中症とみられる症状が出る人もいるなど職員の疲労も日に日に増しているということです。
町では、県に職員の派遣の要請をしているということです。
地元の商店が2日ぶりに営業 駄菓子の販売を再開
震度7の揺れを観測した氷川町では、不安な気持ちで過ごす子どもたちに少しでも笑顔になってもらおうと駄菓子などを扱う地元の商店が30日、2日ぶりに営業を再開しました。
氷川町で駄菓子などを販売している創業80年以上の商店では今回の地震で建物の倒壊は免れましたが、冷蔵庫や棚などが倒れたり調理器具が使えなくなったりしました。
家族総出で店内の片づけを進め、電気も復旧したことから2日ぶりに被害のなかった駄菓子の販売を再開しました。
昼すぎには町内にある実家の片づけに訪れたという家族連れが訪れ、小学生の子ども2人がスティック状のゼリーや、スナック菓子などを買っていました。
父親は「片づけ作業に追われる中、子どもたちが退屈せずに買い物を楽しめるお店はありがたいです」と話していました。
店を営む森口幸惠さんは「地震で店の中はぐちゃぐちゃになりました。大変な時だからこそ、地域の人たちの交流の場になるような店にしたいです」と話していました。
厳しい暑さが続く中、店では今後、アイスの販売もできるよう準備を進めていきたいとしています。
被災のスーパーマーケットが臨時の屋外販売所
氷川町にあるスーパーマーケットでは、停電の影響などで使えなくなった店舗の近くに臨時の屋外販売所を設けて食料品を売り出しています。
氷川町にあるスーパーマーケット「ファミリーフードありさ宮原店」では、地震の影響で停電しているため店舗での営業ができなくなりました。
商品も棚から落ちるなどの被害を受けましたが、無事だった食料品を見つけ出したほか新たに商品も仕入れることができたということで、臨時の屋外販売所を店の近くに設けて売り出しています。
販売されているのはパックごはんやレトルト食品、それにお菓子など日持ちのする商品が中心で営業を知った町内の人たちなどが手に取っていました。
食料品を買いに訪れた女子大学生は「ほとんどの店が開いていないので、ありがたい気持ちでいっぱいです。以前のような生活はできていませんが、水道と電気は使えるので、買ったものを調理して食べたいと思います」と話していました。
社長の吉田翔太さんは「『開いていて助かります』と声をかけられることもあります。困っている人の助けになればと思っているので、できる範囲で頑張りたい」と話していました。
断水の障害者施設に支援物資が次々と届く
氷川町にある障害者施設には、県内外から支援物資が届いています。
氷川町宮原にある40人ほどが生活する障害者施設「氷川学園」では、建物に大きな損傷はありませんでしたが、断水が続いているほか食料品なども手に入りづらい状況が続いています。
施設には支援物資が次々と届いていて、30日午後にはNPO法人「災害救援レスキューアシスト」の代表理事、中島武志さんが訪れ、飲料水やインスタント麺、ウエットティッシュなどを寄付しました。
中島さんは10年前の熊本地震でも支援にあたったということで、「福祉施設は避難所と比べると支援から漏れてしまう面があると感じてきたので、高齢者施設や障害者施設などに物資を届けて回っています」と話していました。
このほか施設には地元の農家から生活用水2500リットル、宇城市の企業から総菜パンなど500食、熊本市の障害者施設から紙おむつなどの寄付があったということです。
氷川学園の管理者の村山智さんは「支援は非常にありがたく、食品や衛生用品などが集まっています。一方で、トイレなどに使う生活用水が足りない状況が続いています」と話していました。
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