うまくいかないチームの特徴を、名著「失敗の本質」が見事に説いていた 【前編|負ける戦略の5要素】
ビジネス書の中でも名著の一つとして数えられる「失敗の本質―日本軍の組織論的研究」を読んで、改めて失敗にはパターンがあることを痛感。
成功はアート 失敗はサイエンス
という名言もありますが、失敗は再現性があるので、しっかりと回避策を研究して実践すれば高い確率で負けにくくなります。
第二次世界大戦で大敗した日本軍について「なぜ負けたのか」にフォーカスを当てて研究し執筆された本書で、明らかにされた「負ける戦略の特徴」「負ける組織の特徴」。
トータル9つの要素を、今後の自戒をこめてnoteにまとめてみます。
まず今回は「前編|負ける戦略の5要素」です。
【1.戦略目標】 負ける組織は、目標が「幕の内弁当」みたい
勝利した米軍は戦略目標を絞り込み「空母のみを狙ってその他は放っておいていい」など目標を基本的にクリアにしていた。一方で日本軍は「こことあそこも制圧しつつ和解に持ち込む努力もしてほしい」など、何がメインなのかがわからない幕の内弁当のような目標設定をしていた。
現代風に具体例を示すなら
・コアターゲットのリピート率を高めつつ老若男女に広く認知させたい
・お得意様が満足するサービスにしたいけれど幅広いニーズも満たしたい
・社会課題を解決したいが大きく儲けたい
現場からしたら「つまり何が大事なんですか・・・?」と優先順位がコンフリクトする状況。行動・判断の軽快さが損なわれるので、確かに失敗する確率は高まります。
チームを率いるとき、同じ罠に引っかかりはじめたら「SMARTの法則*」と「OKR*」で状況を打開するのが良さそうです。
*SMARTの法則
以下の5つの因子をすべて備えた目標を「良い目標」と評価するもの
・Specific(明確性) … 目標は明らかか
・Measurable(計量性) … 測定可能か
・Assignable(割当設定) … 担当者がアサインされてるか
・Realistic(実現可能性) … 実現できる話か
・Time-related(期限設定) … 〆切を設定しているか
OKR(Objective and Key-Results)
Googleが率先導入している目標管理手法。書籍も多く出ていたり非常に評価が高いフレームワーク。Googleで提供している以下のページでの学習が有効
https://rework.withgoogle.com/jp/guides/set-goals-with-okrs/steps/introduction/
【2.戦略志向】 負ける組織は、短期決戦がお好き
米軍は「この戦いは長期戦になるだろう」と考え計画を練り準備を進めたのに対し、日本軍は「短期決戦をしかけて米軍が和解を求めてくると思う」と、短期的な見通しで計画を立てていた。
その結果、兵糧・兵器・人材・資金、様々な面で資材が枯渇し打ち手が少なくなり、敗北に繋がった。
現代でも
・中長期計画はもたず四半期程度でしか計画を考えない
・場当たり的に考える(ノリで反応する)
眼前のことを全力で頑張ってたらなんとかなるだろう、という楽観的で短期的な思考に陥るチームは多々あります。しかし、サイバーエージェントの藤田社長は、東洋経済オンラインや新R25などのメディアで忍耐がいかに重要かを説いています。
「洗面器に顔を突っ込んで最後まで顔をあげなかった者が勝つ」
これにつきるなと。短期決戦思考の罠に落ちいた時の処方箋は、以下の記事を読み返すにつきます。
【3.戦略策定】 負ける組織は、「今までの勝ちパターン」に固執する
書籍ではもう少し難しい言い方をしており、正確には「日本軍はこれまでのパターンをもとに帰納法的に仮説をたてインクリメンタリズム(増分主義)的観点でこれまでの傾向をもとに計画を立てていた」というもの。
他方で米軍は、立証された原理原則・真理をもとに仮説を組み上げる、いわば演繹的なアプローチをベースにしていた。そして大きな計画絵図(= グランドデザイン)を描いてから個々の計画に落とし込んでいた。
現代でも、多くの組織は今までのパターンを並べて、共通するであろうルールを導き出して、仮説を立て、なんだか根拠はないけれども「来年は今よりよくなる」と信じて何割り増しかで計画を立てる。よくありますね・・・。
・売上はなんとなく前年比105%
・クリスマスあたりはきっと儲かる
計画を紐解いた結果、「ここはエイヤです」「僕の勘です」と言われることが多々ありますが、勘もエイヤもなくなるまで計画を詰めるのをやめてはいけないんですよね・・・。それこそ、合宿というかセルフ軟禁をして欲しいと常々思います。
こういった戦略策定思考に陥った場合の処方箋は、なんといっても名著「プロフェッショナルマネジャー」が適切です。
本は最初から読み始めるがビジネスは逆だ。
最後からはじめてそこに達するためにしなければならないことをする。
緻密に因数分解をして、納得いくまでプランを詰める姿勢でなければ、確かに負けやすいといえそうです。
【4.戦略オプション】 負ける組織は、プランBとか考えないし必要としない
米軍では「もしここでイベントフラグが予定通りならプランAで予定外ならプランB」といった戦略オプション(=戦略の選択肢)を広めに用意していたのに対し、日本軍はそういった準備を基本的にしなかった。
また戦略オプション自体も、時代や状況に応じて進化させる必要があったにも関わらず、日本軍が当時用いていた戦略プランは明治期に秋山真之が起草した「海戦に関する綱領」をもとに1901年に制定された「海戦要務令」がもとであったという。
40年前の進化していない戦略オプションで、状況に応じた別案もない。それでは、勝つのがかなり難しいことが容易に想像できます。現代でも似た事例は容易にあります。
・いい仕事をしてたら不況とか世界情勢とか気にしなくていいでしょう
・事業の出資がとまったらとか、そういう万が一の話は直面したら考えよう
なぜに戦略オプションを用意しないのか、びっくりです。
以前とある経営者の方に「プランBや撤退基準を用意したほうがいい」と助言した際に「いや不退転の覚悟なんで撤退基準とか不要。あと私は運がいいから何とかなる」と豪語されていました。
こういった思考の罠に陥った場合の処方箋はまさに本書しかないです。戦略オプションを狭くもち、さらには進化・発展を怠った結果がどうなるのか、ふんだんに書かれています。
【5.技術体系】 負ける組織は、偉い人がワンオフで一点豪華な道具をもちたがる
書籍では作戦を遂行する上で使う兵器やデバイスらをとりまとめて「技術体系」と読んでおり、ここの違いも勝敗を決める大きい要素だったと話している。
軍が勝つか負けるかは「兵器の性能」と「兵器の量」の掛け算で決まると、すでに第一次世界大戦でランチェスター法則が説いているが、まさに米軍はこの考えに則り「高水準かつ企画化された兵器を開発して量産する」を徹底し、大量の兵器を用意した。一方で日本軍は「世界最高峰の戦艦《大和》」や、乗り手それぞれのオーダーに対応したワンオフ機体など、「高水準かつ平準化」とは程遠い機体開発に走った。結果、兵器の量はいうまでもなく米軍が圧倒していた。
一点豪華主義でワンオフな道具を好む事例といえば
・汎用性のないフルスクラッチの社内業務システムを導入
・あまりユーザーが多くない高いけどかっこいいソフトの導入
・謎にカッコよくて人気(ひとけ)のない応接スペース
書いていて気づきましたが、勝ち方/生き方/働き方に、妙にカッコつけて経営されてるチームは、結構こういう思考の罠に陥りやすいです。
なにより【1.戦略目標】から 【4.戦略オプション】までが当てはまる場合、自ずと【5.技術体系】は一点豪華主義になってしまうのだとも思えます。
目標は曖昧で短期決戦思考でプランBなどもないのですから・・・。
とかく、この思考の罠への処方箋は「ランチェスター戦略*」につきます。チームの戦力を客観視した上で、量が足りているのか、性能が十分なのかを見極めた上で、パソコンの買い替えだったり冷静に判断すべきです。
*ランチェスター戦略
イギリス人の航空工学の研究者F.W.ランチェスター(1868〜1946)が第一次世界大戦のとき提唱した、戦争における戦闘員の減少度合いを数理モデルで示した「ランチェスター法則」。これを元に田岡信夫(1927〜1984)が考案した企業戦略モデルをランチェスター戦略とよぶ。
・第一法則(一騎討ち戦など)→営業力=武器効率×兵力数
・第二法則(広域戦など)→営業力=武器効率×兵力数の2乗
と状況にあわせて戦い方を定量化している。
さいごに
前編として戦略編を大まかにまとめてみましたが、すでに5つの要素を満たすだけで簡単に負けやすい組織をつくれそうだと恐ろしくなりました。
加えて前編・後編いずれも日本軍の是非を問うものではないので、そういったコメントやポジショントークには応じないこと、予めご了承ください。
さて、後編の編集、がんばります!
終
いいなと思ったら応援しよう!
サポートいただけたら、嬉しくて本屋に行くと思います・・・笑


コメント