リバーズエコ社長の投稿から考える「言葉の悪用」-『ケーキの切れない非行少年たち』を他者を叩く武器にしてはいけない-
以下のポストをご覧ください
X(旧Twitter)で話題を集めたポスト
『ケーキの切れない非行少年たち』の中で著者は、「境界知能にいる人々が非行に走る前に学校や社会で困らないよう支援していこう」と繰り返し何度も何度も訴えています。
— ochanoma!!! (@ochasuki111) July 28, 2026
しかし、その趣旨を理解せず実際に広まったのはモニ科さんがおっしゃる通り、「ケーキ切れそう?」という侮辱の言葉でした。 https://t.co/7dQxD94gbM
「障害児」という言葉が有名になって、他人を『ガイジ』と呼んで侮辱する人が出てきた。
— ミオン (@myouzinmion) July 29, 2026
「アスペルガー症候群」が有名になれば『アスペ』。
「ケーキの切れない非行少年たち」で『ケーキ切れなそう』。
そして『みいちゃん』
ラベルだけ何度も変えるのを繰り返して、中身は何も変わっていない。 https://t.co/N6rB7Fhqee
これは現在、X(旧Twitter)上で多くの共感を集め、議論を呼んでいる指摘です。
『ケーキの切れない非行少年たち』
(宮口幸治 著)
この中で著者が最も伝えたかった切実なメッセージが、ネット上で最悪の形で曲解され、「相手を馬鹿にするための侮蔑語」として独り歩きしてしまっている現状を危惧する声です。
冒頭のポストにある通り、かつて「障害児」が「ガイジ」という蔑称になり、「アスペルガー症候群」が「アスペ」という煽り文句に変わったように。今度は「ケーキが切れない」という言葉が、全く同じように他者を攻撃するツールとして消費されています。
ラベル(表面上の言葉)だけを変えて、相手を見下し、傷つけるという「悪意の中身」は何も変わっていないのです。
そもそも、なぜ著者は「ケーキが切れない」という言葉を見出しに使ったのでしょうか。
児童精神科医である著者は、少年院で非行少年たちと向き合う中で、彼らの中に「円いケーキを等分に切ることができない」といった、深刻な認知の歪みや「境界知能(知的障害の基準には当てはまらないが、知的な支援が必要な状態)」を抱える子が多くいることに気づきました。
彼らは「馬鹿だから」犯罪に走ったのではありません。社会や学校が彼らの見えない障害(SOS)に気づけず、適切な支援の手からこぼれ落ちてしまった結果、非行という形でしか生きられなかったのです。
著者は、*彼らが罪を犯す前に、社会全体で気づき、支援していく必要がある」と訴えるためにこの本を書きました。決して、知的に遅れのある人たちを笑い者にしたり、他者をマウントしたりするために書かれた本ではないのです。
著者の願いを踏みにじる、リバーズエコ小川社長の暴言
しかし、こうした著者の本来の趣旨や、実際に境界知能で苦しんでいる当事者の存在を完全に無視し、この言葉を極めて悪質に「武器化」している実例があります。
X上で「リバーズエコ小川社長」と名乗る人物の過去の投稿を見ると、意見の合わない相手や、自分が気に入らない他者を攻撃する文脈で、以下のような言葉が幾度となく、執拗に使われています。
リバーズエコ小川社長のポスト
ケーキが切れない馬鹿に日本語は通じないようですね。
— リバーズエコ小川社長 (@RyoOgawa12) January 28, 2023
ケーキを切れない馬鹿にとって難し過ぎる質問かもしれません。
— リバーズエコ小川社長 (@RyoOgawa12) January 28, 2023
ケーキが切れない界隈にはハードルが高過ぎます。
— リバーズエコ小川社長 (@RyoOgawa12) January 31, 2023
どうした?ケーキ切れないの?🎂
— リバーズエコ小川社長 (@RyoOgawa12) April 7, 2023
ケーキの切れない界隈オールスターズで草
— リバーズエコ小川社長 (@RyoOgawa12) April 11, 2023
自称法律に詳しい界隈はネットでの法解釈&自己都合の法解釈しかできない&ケーキが切れないので一生理解できないと思います。
— リバーズエコ小川社長 (@RyoOgawa12) April 29, 2023
ケーキが切れない連中に粋な配慮は通じない。額面通りでしか捉えられない。生い立ちというより、人の善意を汲み取れない病気だと思います。
— リバーズエコ小川社長 (@RyoOgawa12) December 21, 2023
マジでケーキ切れないんでしょうね...
— リバーズエコ小川社長 (@RyoOgawa12) March 10, 2024
お前ケーキ切れなさそう
— リバーズエコ小川社長 (@RyoOgawa12) August 10, 2024
どしたん?ケーキ切れん系の知能の人?
— リバーズエコ小川社長 (@RyoOgawa12) August 10, 2024
これらの発言は、単なるネット上の口が悪い煽り合い、では到底済まされない深刻な問題を孕んでいます。
なぜ、この言葉の使い方が「社会悪」なのか
支援の文脈を「愚弄」している
本来、社会から孤立しがちな人々を理解し、救うために専門家が必死に言語化した概念を、単に「自分より知能が低い(と思い込んだ)相手」を罵倒するための棍棒として振り回しています。これは、当事者や支援者の切実な努力を根底から踏みにじる行為であり、著者が最も危惧していた「無理解」そのものです。
偏見(スティグマ)を拡散し、当事者をさらに追い詰める
同氏の投稿では、「ケーキが切れない」という状態を、「馬鹿」「頭おかしいやつ」「社会不適合者」といった極めて差別的で攻撃的な言葉と直接結びつけています。
こうした発言が公開の場で「笑い」や「相手を黙らせるマウント」として消費され続けると、社会全体に「境界知能の人=関わってはいけないヤバい人たち」という強烈な偏見が植え付けられます。その結果、本当に支援を必要としている人々が「自分は頭がおかしいと思われるのではないか」と怯え、さらに声を上げづらくなるのです。
言葉の刃を振るう前の「想像力」
冒頭のポストが指摘した「ラベルだけ何度変えても、中身は何も変わっていない」という悲しい連鎖。
リバーズエコ小川氏の一連の投稿は、まさにその連鎖の最前線にある、最も露骨で醜悪な実例と言わざるを得ません。
社会問題の解決のために生まれた言葉を、他者を殴るための便利な石ころのように扱うのは、知的な怠慢です。
最後に
私たちは今一度立ち止まり、ネット上で何気なく使われているその言葉が、「本来誰を救うためのものだったのか」を想像する必要があります。言葉の悪用を許さない社会の空気を、私たち自身で作っていくべきではないでしょうか。


コメント