NHKの井上樹彦会長は29日の定例記者会見で、長崎県の端島(通称・軍艦島)の元島民でつくる「真実の歴史を追求する端島島民の会」が、軍艦島が朝鮮半島出身者にとって強制連行された「地獄島」だったとする論調に反論するドキュメンタリーを公開したことに絡み、「私の思いも、(元島民に謝罪した)稲葉延雄前会長とまったく変わるものではない」と述べた。
同会が制作したドキュメンタリー「軍艦島の真実を追い求めて~報道の噓と戦い続ける元島民たち~」は約25分の映像で、16日からウェブ上で公開されているが、井上氏は「制作されたのは承知しているが、まだ見ていない」とした。
ドキュメンタリーでは、韓国メディアなどで軍艦島が劣悪な環境で朝鮮半島出身者が働かされた場所として虚偽の紹介が行われ、その根拠にNHKが昭和30年に放送した番組「緑なき島」の端島炭坑の内部とされる映像が使われていると指摘。元島民はNHKに映像が端島炭坑のものではないと主張、令和6年12月に東京簡裁で成立した調停でNHKは「端島炭坑の様子を映したものであることを明確に裏付ける資料等は、確認できなかった」と認め、7年3月に当時の稲葉会長が謝罪した。こうした経緯と、誤ったイメージを払拭するため今後も会の活動を続けることなどをまとめている。
ただ、NHKは調停で「番組の端島炭坑の映像が、端島炭坑以外のものであるとの結論には至らなかった」とし、名誉毀損や人権侵害の成立は認めていない。また、NHKは稲葉前会長の謝罪を報じていない。
「許諾なく利用は遺憾」
井上氏は会見で「NHK番組の映像の一部が番組の趣旨とは関係なく、許諾もなく韓国国内の放送など第三者に使用されたことは大変遺憾」と表明。
その上で、「この『緑なき島』の映像をめぐっては、調停が成立した後に稲葉前会長が元島民の方々と面談し、長期にわたって名誉を傷つけられたとお感じになるなど大変つらい思いをさせてしまい申し訳なく思っていると伝えた。私の思いも、稲葉前会長とまったく変わるものではない」と述べた。また、「NHKとしても調査結果やこれまでの経緯を分かりやすくまとめてホームページに掲載しており、英語版でも見られるようにしている」と説明した。