青山学院大が入学金を20万円から8万円に値下げ 稲積学長インタビュー「受験生の負担格差を解消したい」 

2026/07/29

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青山学院大学は2027年度学士課程の入学者から、入学金を現行の20万円から8万円に引き下げることを決めました。授業料を含む学費全体の見直しと一体化した改定になります。なぜ今、こうした決断に踏み切ったのでしょうか。稲積宏誠学長に聞きました。(写真=青山学院大学提供)

受験料負担に格差がある

――入学金の値下げを決めました。どういう理由があるのでしょうか。

受験生の初年次での経済的な負担の増大と、不公平感の存在という問題意識がきっかけでした。背景には、年内入試(総合型・学校推薦型選抜)の比率が急上昇していることがあります。年内入試で早期に進路が決まる受験生と、一般選抜で複数校に出願する受験生では、初年次の負担に大きな格差が生じています。さまざまな関係者から話を聞くと、一般選抜の受験生は受験料だけで50万円近くかかるケースもあるそうです。加えて、最終的に入学しない大学にも入学金を支払わなければなりません。複数の大学に入学金を納めると、初年度で200万〜300万円の負担になることは珍しいことではないと聞き、これは放置できないと感じました。

――年内入試の受験生が増えていることで、状況が変わってきているのでしょうか。

昔は一般入試が主流で、「複数校に入学金を払うのはやむを得ない」という感覚でしたが、年内入試が広がった今は不公平感を覚える保護者が増えているということを聞いて、強く納得しました。

入学金は「入学できる地位の対価」

――入学金そのものの意味についても見直したのでしょうか。

「入学金とは何か」という説明責任を問われていると感じています。本学の入学金は今まで20万円でしたが、率直に言えば、それが何に使われるのかということを明確には説明してきていませんでした。入学金を支払う状況は2つに分かれます。一つは「入学する権利を確保する人」で、本学では「延納者」と呼んでいます。もう一つは、入学の意思を示して、前期の授業料まで支払った人で、本学では「完納者」と呼んでいます。入学金は返還しませんので、どちらも同じコスト負担だというのはおかしいとして、対応を考えました。

入学金は入学できる地位の対価のみと位置付け、20万円から8万円に値下げをします。その代わりに、大学における基本的な支援(学生ID・学籍の管理、学内施設・サービス利用など)を受けるための費用である在籍基本料に、その準備のための費用を加えたものを新たな「在籍基本料」として、従来の前後期各4万円(年間8万円)を、各6万円(年間12万円)に引き上げて、入学を辞退した人(完納者)には前期の在籍基本料は返還しないという形にしました。在籍基本料を返さないことが最高裁判例との整合性を持つかどうかは、本学の民法の専門家と詳細に議論しました。入学の準備にかかる費用も在籍基本料の中に含めていると明確に説明することで、判例との整合性は保たれるとの判断に至りました。

――入学しない場合には、授業料は返還するのですか。

授業料に関しては、今までも返還していますが、それは変わりません。ただし、新しく施設設備料を授業料に含めることにして、授業料は年間で3万円増額し、毎年1万円ずつ漸増していきます。

――入学金を値下げする代わりに、授業料は値上げをするということですか。

残念ながら、本学の研究教育環境のさらなる向上を図るためには、入学金の問題とは関係なく、授業料の値上げは必要でした。ただし、初年次での大学としての収入が減少することで、数年間は全体の収入は下がります。大学としては、入学してくれた学生には、しっかりと学びの環境を提供することで、在学中に応分の負担をしてもらいます。研究教育環境を向上させていくことを前提として、学費をどれぐらい値上げすれば、入学金を値下げした分と相殺されるのかは十分に試算しました。

――入学した学生からは、授業料をしっかりと納めてもらうことで、大学全体の経営を考えたということですね。

この考え方が基本です。ただし、国が積極的に修学支援制度を整備していることに加えて、本学も、経済支援を含む奨学金制度の整備を積極的に進めています。研究教育環境の整備のために学費値上げをすることの理解を得る必要がありますが、それに加えて、奨学金を含む学生支援の充実を図ることが、大学としての責務だと考えています。

自分が通う大学にお金をつかう環境に

――文部科学省が入学金の額の抑制と負担の軽減のための方策を講ずるように通知を出した影響は大きいのですか。

それもないわけではないのですが、大学としては、特に地方の学生にもっと入学してほしいという思いがあります。今、都会での生活費が高騰している中で、保護者の負担を考えると、東京に行かなくても良いのではないかと考える家庭もあると思います。そういうことに対して、特に初年次の負担軽減を実現させるために、入学しない大学に対しての負担は減らしたいという大学からのメッセージだととらえてもらいたいです。

――他大学へも影響があると思いますか。

入学金を支払った後で入学を辞退する学生がどれぐらいいるかは、私立大学間や国公立大学との併願者の数など、大学によって全く違います。私大連(日本私立大学連盟)でもいろいろと議論がありましたが、大学によってそれぞれの事情があります。しかし、授業料も含め、しっかり教育に投資できる環境を整えることは必要で、入学を確定した学生が、自分が通う大学に対して集中的に費用を負担する仕組みに改めて、受験生全体の初年次負担を適正化していく。それが受験生に対する大学としての誠実な姿勢だと考えています。

稲積宏誠学長(写真=青山学院大学提供)

<プロフィル>
稲積宏誠(いなづみ・ひろしげ)/1956年生まれ。2023年12月から青山学院大学学長。早稲田大学理工学部卒、同大学院理工学研究科機械工学専攻博士前期課程修了。工学博士(早稲田大学)。専門は情報理論、人工知能など。

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(文=朝日新聞社会部記者・平岡妙子)

稲積宏誠学長(写真=青山学院大学提供)
稲積宏誠学長(写真=青山学院大学提供)

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